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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編

3.旦那さま奮戦!生まれ来る子は実は……?!②

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何だろう?
すっげぇフワフワする。
閉じていた目を開ける。真っ白な空間に、漂っていた。

ーここ、は?ー

あれ?声が……
発したはずの言葉は音を結ばず、頭の中に響くように聞こえた。両手を見降ろし、体も見た。
体は問題なく動く。
ただ、地も天もない、何もない空間に浮く体。

ーアストラル…かな?でも、なんか違う?ー

ディオンや女神が何度か繋いだ空間、アストラルに似てはいるが、何か違う。
アストラルでは普通に喋れたし、言葉も声になってた。
だから、アストラルではない。けど…………

ー知って、る?ー

そう。知ってる。俺、これに似た空間を……
でも、どこで?
考え込み下を向くと、視界にキラッと小さな光を捉えた。
手を伸ばし、それを取り上げる。

ーこれ……ー

手の平に乗せたそれは、小さく、紫色の光を弾く。

ーア、メジスト?え…ッ、な…んで?ー

小さな小さな欠片。あの魔大陸の、闇との戦闘で失くしたのと同じ石。
何で、これが?
欠片を見つめていた俺の視界に、またキラキラとした光が映る。
無数の紫の煌めき。帯状に伸びるその光の先に、真っ白な何か立体的なものが……

ー人?誰か……ー

近付くと、真っ白なそれは人の形をしていた。髪は淡いラベンダーにミントグリーンがかった真珠色。瞳は閉じられてるから分からないけど、長く煙る睫毛も同じ色で、肌は抜けるような白さ。白いロングワンピースのようなフワフワしたドレスに身を包んでいる。
眠っていても分かるくらいの物凄い美人。

ー何で、こんな場所に?ー

知っているように感じていたこの場所が、この美人さんの出現で分かんなくなった。
それに……

ー涙?泣いて、んのか?ー

固く瞳を閉じ、眠る彼女の目端から涙が流れる。流れた涙は、彼女の体から離れると、紫の煌めきに変わり、チリンと小さな音を立て落ちる。地のない場所に横たわったままの彼女の体の周りには、アメジストが煌めき取り巻いていた。
それを見つめていた俺の足元からも、チリンと小さな音がする。

ーえ……ッ?ー

ハッとして足元を見ると、同じくアメジストが落ちていた。
そっと自分の頬に手をやる。

ーへ?な、何で?!俺、泣いてッ?!ー

濡れた頬に慌てふためく。
自分が泣いていることにも気付かず、何故、涙が流れているのかも分からない。
動揺し、一旦離れようとした俺の目の前で、横たわる彼女の周りを取り巻くアメジストが一斉に浮かび上がる。

ーな、なに?!ー

浮かび上がったアメジストが一つに纏まり、淡く光りだす。

ーわっ!な、、これッ?!ー

カッと俺の全身が光に包まれる。急激に力が抜ける。
まただ!あの時と一緒。
力が。魔導が。

ー吸い取られッ!ー
ー『ーーーーーーーー』ー

ガクンと、まるで繋がっていた糸が切られるような衝撃が走り、地ではない地に膝をつく。
のろのろと顔を上げると、真珠色に蒼い光を纏った玉と、蒼に真珠色の光を纏った玉が俺の前に浮いていた。いつの間にか、あの美人さんは消え、元の何もない真っ白な空間に戻っている。

ーあの時の…光の…ー
ーな……な……い、で…ー
ーえ……ッ?ー

小さな掻き消えそうな声が聞こえた。
フワッと光の玉が蛍のように動き、俺の涙で濡れた頬を撫でていく。
ほわりと温かくなり、分からないが何か安堵を感じて座り込んだ。
フワフワと浮かぶ光の玉。そっと両手を広げ、招き寄せる。

ーこっち、おいで?ー

表情があるわけじゃないから分かんないけど、どこか嬉しそうに、光の玉が俺の方に飛んでくる。
真珠色に蒼い光を纏った玉が俺の広げた腕の中に。
継いで、蒼色に真珠色の光を纏った玉が来ようとして、突如、白い球体に包まれ、更に、真っ白な文字のような紋様の帯が取り巻いた。

ーなっ!?何だよッ、これ?!ー

慌てて手を伸ばすが、球体に包まれた玉には触れられない。取り巻く帯を引き剥がそうと手をかけるが、ともすれば、ペラペラなリボンのようなそれは、見かけに反して、強力な粘着テープで貼り付けられたかのように強固でビクともしない。
俺を排除しようとしてるわけじゃない。その証拠に、手が弾かれたりはしない。ただ、触れない。
球体の中、玉が所在なさげにふよふよ浮かぶ。

何だろう……分からないけど、泣いてるように思う。

胸がギュッと締め付けられるように痛み、白い球体ごと腕の中に抱き込む。

ーごめんな?抱き締めてやれなくて…ー

そっと目を閉じ囁くと、意識が揺らいでいく。
結局、ここが何処かも分からず、あの美人さんが誰なのかも分からない。
夢か現実か。
応える声はなく、再び白い光にゆっくりと沈んでいった。








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