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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
1.卵持参で逃避行?宰相様、いい加減にして下さい(怒)④
しおりを挟む「ラァムの実?ラァムの実ってあの?使ったの?アレイスター様?!」
「そうだ。何かあったら助力してもらう。それを条件で余分に貰ってきたんだ」
バルドの言葉に呆気に取られた。
ラァムの実は、魔大陸にある不思議な卵、のような実で、同じ性同士で子作りする為の実。
そう…この実を使うと、男同士でも子供ができる。
以前、バルドの結婚問題があり、アレイスター様から仕入れた情報と命を受けて、半ば眉唾で行った魔大陸で手に入れたのだ。
ラァムの実は、犬狼族っていう魔物が守る木から生る。
そこで知り合った犬狼族の少年、ユフィカ。ユフィカの兄のラトナ。二人と知り合い、犬狼族の間で起こった問題を解決して、数の制限を設けるのを条件に貰う事ができた。
貰った卵は三つ。一つは俺とバルドの。一つは予備で、残り一つはアレイスター様にってのは聞いてた。
でも、ラァムの実って……………………
「アレイスター様……実を使って、子供できたんだよな?……………………誰との子?」
一番の疑問はそれだ。
ラァムの実は同じ性同士で子作りする為のもの。って事は、アレイスター様は男だから、当然、相手もそうなる。アレイスター様は亡くなった正妃様との間に、皇子二人、皇女一人がいる。だから、子供は十分で…
それでも作ったんなら、よっぽど相手の事……
「お前は知らなくていい」
「えぇ…?気になる~…」
「妙な詮索すんな。不敬だぞ?」
「いや、だって、さ」
分かっちゃいるが、気になるモンは気になる。
下世話かもだけど、アレイスター様は………………
「アヤ!今すぐ、考えんのやめろ」
「んな事言ったって、さぁ」
苦虫噛み潰したようなバルドの渋面に、俺は軽く肩を竦めた。
「上なのかな?とか…下なのかな?とかさ…気になるじゃん」
つまり、抱かれる側と同じか、抱く側と同じか……
「さっきも言ったぞ。知らんでいい」
「バルドは知ってんのか?」
「知ってるが、お前には教えん。それに相手は聞いたところで、お前は面識ねぇから、意味もない」
「そ、なの?えぇ…でも、気になるなぁ~…うわ!?」
う~う~あ~あ~言ってたら、急に手首を掴まれ抱き寄せられた。
二人してソファに倒れこむ。バルドの体に俺が乗る形。
途端に、昨日の事が思い出されて、体がカァッと熱くなる。
最後の記憶は寝室のベッドの上だけど、グッズグズになるまで啼かされたのはここで、記憶もまだ生々しい。
「人の事はどうでもいい。ラァムの実で兄上に子ができた。できる事が分かったなら、次は?」
「次……?えぇ、ッと…次、て?」
そろ~っと視線をうろつかせる俺に、下からバルドが見上げてクスと小さく笑う。
う……!!ちょっと、空気がマズい。
「ひっ?!にゃぁ、ん!!」
足の間に差し入れられた膝を、ぐりっと曲げるようにされて擦られ、下着を掻い潜った手が尻の間に潜り込み、後ろの秘孔を指で撫で摩った。
途端に、ピリッとした軽い痛みと、ムズムズする掻痒感に、悲鳴が上がる。
「な、にすんだよ!?変な声出ちゃったじゃん!」
「昨日、実を使っておけば良かったな。あれだけ愛し合ったなら、かなり実に力が注がれたはずだ」
「ッッッ!」
確かに、ラァムの実なんか使わなくたって、一発で孕むくらいに濃厚だった……
だけど、それ今言うか?!
それに……………………
「バルド、やだからな?」
「まだ何も言ってねぇよ」
「言わなくても分かる!無理だから!!」
軽く睨み付けると、バルドが溜め息をつく。
いや、溜め息つきたいの俺の方だから。
何で、この皇子様は無駄に元気かな?
武人騎士だからって言ったって、鍛え方が城の精鋭兵たちと変わりないって…………皇子のクセにどんな鍛え方してんだ?
「無理させたから、傷になってないか見るだけだ」
「なってない!」
「見てもないのに分かるのか?痛いんだろ?」
「見てないけど分かるし!まぁ…痛いけど、我慢できなくはないし…」
「だから、見るって言ってんだろ?」
「やだ!馬鹿ッ!!ただ、見たいだけだろ?!」
「そうだ」
開き直んなぁーーーーーーーーーー!!
逃げようともがくが、ガッシリ抑えられて動けない。
「も!ほんと、馬鹿だろ?!」
「何で抵抗する?お前の体で見てねぇとこなんかねぇよ。今更だろう?」
「そういう問題じゃないし!今更だろうがなんだろうが、あんなとこ、ホイホイ見せる場所じゃないだろう!?」
「確かに普段してる時も、薄明かりやらなんやらであまり見せてはくれんからな」
「そ、ゆこと、言うなーーーーーー!!」
最悪だ!
あまりの恥ずかしさに死ねるわ!
怒り心頭、真っ赤になってプリプリ怒ったら、クツクツ笑いながら胸に抱き込まれた。
「怒るなよ?可愛いだけだぞ?」
「可愛い言うな……」
ムスッとして言ったら、声を上げて笑い、益々抱きしめられる。
人形じゃないし、抱き枕でもないから痛いんですけど?
文句言いかけたら、上下逆転し、ソファに押さえつけられた。
また、この態勢?昨日と一緒……
「バルド…ほんと、無理だから」
「見るのもか?」
「…………恥ずかしいから、無理…」
「見るだけ……「じゃ、おさまらないだろ?いっつも、そうじゃん」
言葉尻奪って言ったら、苦笑しておでこにチュウされた。
誤魔化した……
ヤる気満々だったな?この、バカ皇子!!
胡乱な目を向けると、降参とばかりに小さく笑いそのまま覆い被さられる。
「ナ・コルテスにはラァムの実も持っていく。古狸どもが何を言おうが、お前が俺の唯一の妃だ。こっちのゴタゴタなんざ知らん!あちらでは、好きなだけお前と睦み合える」
それって……俗に言う蜜月ってやつでは?…
うわぁ、本気か?
一気に、自分が人妻(?)になったような感覚に陥る。
一人百面相してたら、頬に手を添えられ視線を合わされた。
「アヤ……キスは?」
甘く強請るように請われ、軽く息を呑む。
バルドは狡い。
弱く来られたら突っぱねらんないの知ってる。知っててやるんだから。
「勝手にすればい、だろ?」
「許しがなきゃできねぇよ…お前が”してもいい”って、言わなきゃできん」
普段言わなくても強引にするクセに!
勝手にしろと言うのは簡単だけど、甘えられれば無下にできない。
「しなくていい……」
「アヤ…?ッ!!」
訝しんだバルドに構わず、俺は自分からその唇を奪う。
軽く離れた唇の間から言葉を発する。
「俺が、する…から」
途切れがちにそう言うと、バルドが一瞬目を瞠り、ゆっくり満足そうに破顔する。
「上出来だ……」
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