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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章

11.世界創造せし、7柱②

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「神の領域ってのは、何なんだ?」
『あなたや、アヤが実際に持っていて使ってる力。神化って呼んでいるものよ』
「俺の神化は、レーテの力だ。実際に、俺自身が神となったわけじゃねぇが?」
『そりゃそうよ。人が神になれるなんてあるわけないわ。あくまでも、神の力を使う。使う事のできる者が踏み込む区分。それが神の領域よ』
「なるほど…で?本来知らなくていいって言ってたのは、なんの事だ?」

俺の問いに、女神がソファに座り直す。ちらっとアヤに視線をやるが、よく眠っているようで起きる気配はない。それに安堵し、少し表情を緩めると、女神がクスッと少し呆れを含ませた苦笑を漏らした。

『聞かせたくないの?』
「知らなくていいんだろう?だったら、面倒は俺一人でいい。知るべきと判断すれば、その時だ。わざわざ厄介ごとに首を突っ込む必要はねぇよ」
『大事にしてるのね?』

それには応えず無言で睨む。揶揄されるのは好かん。

『はいはい。分かったから、睨まないで頂戴』
「余計な事はいい。さっさと話せ」
『分かったってば……さっき、可能性としてと言ったのは、世界創造神の事よ』
「創造神は、お前だろ?」
『そうよ。ただし、創造神の一人よ。確かに、アーケイディア大陸は私が創ったわ。魔導も私。けど、私の他にあと六人の神が携わってるの。7柱創造神はしらそうぞうしん

女神の他に神がいるなんざ聞いた事もない。
人の伝記では知り得ない、裏の神話とやつか……

「聞いておいてなんだが…女神の魔導とはいえ、人である俺が知っていい話か?」
『いいか、悪いかなら、よくはないわね。でも、話さなきゃ話になんないのも事実。ただの人なら話さないわ。だけど、さっきも言ったけど、あなたはこちら側の領域に入っているの。だから話す。話せるのよ』

止むに止まれずというやつか。聞いたからには、聞けるとこまで聞くしかあるまい。

『多分……と、いうかそれしか思い浮かばないけど。アヤの理には、私以外の神が関わっているわ』
「お前以外の神?」
『多分、ね』
「多分って事は、可能性がない事もあるんだな?」
『どうかしら…私も、自信ないわ。なにせ、アヤこの子に関しては、あれこれ柵つけすぎちゃって。創った私自身が踏み込めない領域さえできちゃってるから』

あははと笑う女神に、胡乱な視線を向ける。好き勝手されるのは好かんが、肝心な時に何もしてくれないはもっと困る。

「無責任すぎんだろ?」
『分かってるわよ。理を壊さないように、ちゃんと助けるわ。アヤとギルに関しては、悪いと思ってるのよ?』

そう思うなら、もっとうまく動いて欲しかったが……
言うだけ無駄だな。

「で?話を戻すが、アヤの理に関係する神ってのは?」
『誰かまでは分からないわ。私の他に創造神は六人。私が知っているのは三人だけ。一人はあなたも知っているわよ?』
「……ラゼル、か?」
『そう。あと、光のルーと、全能神ユクトディオス。ただ、ルーはないわね』
「何故だ?」
『睡っているからよ』
「睡っている?」

神が?どういう事だ?

視線で問うと、アウフィリアが肩をすくめる。

『何故とか理由は知らないわ。彼女に会ったのは、世界創造の初めだけ。まぁ、彼女に限らず、他の神の事もよくは知らないの。知っているのはラゼルくらいね』
「ルーは女神なのか?」
『そうよ』

アウフィリア以外の六人の神・世界創造・アヤを操った謎の者・眠る女神……
訳が分からん。
話が突飛すぎる。確かに、神の側の事情が関与する話だ。人の身が知っていい話ではない。

「アヤを操った者は気にはなるが……危害は加えられてねぇし、今のところ、実害はなし…これ以上は考えても答えは出んな」
『まぁ、そうね。約束した以上、何かあれば力は貸すわ。出来る範囲で、だけどね』

あまりアテに出来そうな答えじゃねぇが、女神にしてはこれができる譲歩だろう。

「アウフィリア、ラゼルはどうなった?」
『死んではないわ。退けられただけよ。ただし、むこう何千年かは顕現できないくらい、ケチョンケチョンにやられたけどね』

いい気味~と、愉快そうに女神が笑う。
分かっちゃいたが、こいつ、性格悪ぃな。半ば呆れつつ、気になる事をもう一つ。

「ギルゼルトは、どうなった?」
『あら?気になるの?』

揶揄うような女神に、顔をしかめる。

「別に聞きたくて聞くんじゃねぇよ。アヤの為だ」
『そうでしょうね。ギルとラゼルの糸は切れたわ。ギルは闇堕ちの楔は切れたけど、その代わり、ラゼルから受けてた闇の魔導の供給も絶たれた』
「と、言うと?」
『ギルは、ギル自身の魔導で、残された時間を過ごす事になる。あの日、止まったギルの時間が動き出したの。ただ、これも人の世界の理に反しているから、そこまで残されてないわ。魔大陸の、あの塔で…生を終える事になる』

魔大陸のあの塔から出る時聞いた話と変わりない。

ー「其方らは、其方らの場所に帰れ。我は、暗黒の塔この場所で朽ちる事を望む。我が、アヤを傷つけた。アヤの理を捻じ曲げた。幸せな時と場所の中で生きておったものを、二度と取り返せぬ場所に無理やり奪ってきた。欲の為に奪った命も多数ありやる。この手は、血に染まりきっておるでな…罪と孤独のこの塔を墓標とするがふさわしい。アウフィリア。我が死んだら、輪廻には暫く戻すでない。死して尚、贖罪の熾火に灼かれるが似つかわしい……」ー

最後に見た奴の顔は穏やかで、全てを受け入れていた。
背を向け、塔の中、奥へと歩いていくギルゼルトに、俺もまた、意識を失ったアヤを腕に抱え踵を返した。

『アヤには何て言ったの?』
「最重要の咎人とがびとだ。だから、女神により封ぜられた」
『賢明ね。生死を曖昧にしつつ、簡単には会えない事を匂わせる上手い説得だわ』

自分が傷つけられるより、人が自分の為に傷つく事を気に病むアヤだ。案の定、ギルゼルトの処遇につき、沈んだ。

『傷ついたアヤ伴侶はあなたが慰めて癒してね?まぁ、すでにしてるようだけど?』
「無論だ。いらん世話はいい。話は終わりか?なら、帰れ」
『……ホント、自己中ね!まぁ、いいわ。あなた達、魔導の周りには私も目を光らせておきましょう』
「分かった…」
『何事もない事を祈るけどね』

小さな不安を浮かべたまま、女神が消えた。

フゥッ、と息を吐き、眠るアヤに視線を向ける。
上から見下ろすように覆いかぶさり、吐息を零す唇を指でなぞる。
ピクンと擽ったがり、顔を軽く横向けるのに、小さく笑みがこぼれる。
抱き込むように引き寄せて横になると、アヤが甘えるように体をくっつけてきた。
寝顔だけなら、とは無縁。
だが、俺が大切に想う目の前の光は、つくづく厄介事とは離れられんらしい。

「護ってやるよ…お前は、俺のただ一人の光だからな」

額に口付け、更に深く抱き込む。
小さく息を吐き、穏やかに眠るその寝顔を暫し眺め、俺もまた、束の間、微睡むべく、ゆっくりと目を閉じていった。







*二部、終了です!ここまで、読んでくださりありがとうございます(o^^o)
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