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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
9.融合③
しおりを挟むアヤの口に鍵の宝珠が入り、台座の中に沈み込む。
「っくしょう!ラゼル、やりやがった!」
『台座に迂闊に近づいたのはマズかったわね』
「てめぇがいつまでもいがみ合ってるからだろ!アヤに策をとか言っときながら、何やってんだよッ!?」
『”てめぇ”って……私、一応神よ?ほんと、口悪いわね~……エルと正反対だわ』
「やかましい!このままだと、台座が動き出す!この世界がどうなろうが知ったことじゃねぇが、アヤだけは返せッ!アヤは俺のものだ!誰にもやらんッッ!!」
『あなた……自己中って言われない?もう、ほんと…私の子ってどうしてこうも……』
ぶつくさ文句を言う女神を無視し、グレインバルドは台座と台座の前にいるラゼルを睨みつける。
「はははは!鍵に台座……揃うべき物が揃った。闇が訪れる。静寂と混沌が支配する。我の求めし、我のもの……この時を如何程に待ったか…さぁ、台座よ。その力を示せ!我が望むは”全ての無”!この世界のありとあらゆる有を無に帰し還せ!!」
ラゼルが言い放つと、台座が発光し、ゆっくりと、先程とは逆向きに旋回しだす。
「台座が動き出した。完全に繋がれば、アヤを取り戻すは難しくなりやるぞ!?」
「……俺がやる」
『やるって何を?まさか!ラゼルを消す気?やめなさい!神殺しは許さないわ!私がさせないわよ!?』
「……消さない限り、台座は止まらんし、アヤも取り返せない。あれを取り返せるなら、俺は、甘んじて罪を負う」
『こンの~~~~!!馬鹿息子!やめろって言ってんでしょうがッ!?ギル!あんたもとめなさい!!』
「グレインバルド。やるのは、我だと言うたはず。其方はひっこんでおれ」
『~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!』
女神を無視し、それぞれが勝手な事を言う。
三者三様に睨み合うのに、ラゼルがクツクツ笑い出す。
「何をするでも良いが、そのように悠長にしておって良いのか?光はこの間にも失われよるぞ?」
『ラゼル!元はと言えば、あんたが悪いんでしょうがッッ!?』
「我のせいかや?根本辿れば、原因作りしは其方ぞ?アウフィリア」
『~~~~~~~!!!!どいつも、こいつも!!』
腕組みし、余裕に笑うラゼル。
クツクツ笑っていたラゼルが、不意に眉をひそめて動きを止める。
『何よッ……?!』
「音が……この、音は何ぞ?」
『音?何、言って…………え?待っ、て…水の』
ラゼルに続いて、女神もまた動きを止める。
「アウフィリア。何だ、音って……?!」
グレインバルドが問うと同時に、部屋全体が青白く霞む。
ピチョン、ピチャンと、水滴が水面に落ちる音が辺り一帯に響く。波紋が至る所に現れては消える。
「こ、れは…………」
覚えのある光景、覚えのある音。
驚愕、困惑するグレインバルドに、女神は渋い顔をする。
『私の力?……ううん、違うわね…誰よ、一体』
「アウフィリア…水は其方の力であろう?これは…」
[ 知 ら ず と も 良 い … … 土 俵 よ り 退 け よ 、 ラ ゼ ル ]
一言一句、区切るかのような、それでいて有無を言わせぬ言葉が響く。
「なっッ!?ぐっ!!あぁぁぁああッッッ!!!!!」
声が響くと、途端に、ラゼルの体にまるで陶器に走るかの如くヒビが入る。
ピシビシ、バキバキと壊れ物かのように……人のような血が流れる事はなく、代わりに、真っ黒な煙のようなものが流れ出した。
それまでと打って変わり、苦痛と苦悶に顔を歪めるラゼル。
「な、んだ…これ、は?!何だッッッ!これはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
盛大に叫んだラゼルの額、喉元、胸の中心にビシンッと大きな音で亀裂が走る。
ポゥッ、ポゥッと、ラゼルを取り囲むように方陣が現れ、真珠色の光の線が複雑な紋様を描きながら、包囲していく。
「アウフィリア……何だよ、これは!?」
『待って頂戴……私にも、何が何だか…』
ラゼルを中心に、真珠色の彩色の方陣が描かれていく。あまりの美しさと、圧倒的な力にグレインバルド、ギルゼルトはおろか、女神でさえ動けない。
ゴボ、リと、ドロドロのタールのような物がラゼルの口から溢れ出す。
苦しそうな息の中、ラゼルがニヤリと笑う。
「ふ、ふふ…ははっ、はははは!な、るほど……そう、か………そう、来やるか?、ククッ!良いだろ、う……それも、また良かろうて…」
笑いながら一人呟くラゼルが、俯けていた顔を上げる。
「アウフィリア、よ……其方が、愛し子は、何とも興味深き者よ……」
『ラゼル!?何を?!何を言っているの?!』
「ふ、ふっ……これは、直接に触れた我にしか分からぬ事……気分が良い…宿願、果たせぬは多少悔しいが、我慢できる。其方らが知らぬ事を、我しか知らぬが愉快だでな…故に、我も同じき事を言おう……」
紅い唇を、場違いなほどに艶然と微笑みに吊り上げ、ラゼルが口を開く。
「知らずとも良い」
バリンッと、けたたましい音を立て、ラゼルが、ラゼルであったものが木っ端微塵に砕け散った。
ラゼルが散ると、台座が止まり、台座の盤面が真っ黒に変色、ゴトンと音を立てて地面に落ちる。
地に落ちた台座から、取り込まれていたアヤの体が抜け出す。
「アヤっっ!!」
グレインバルドの呼びかけに、ふうっと息を吐いたアヤの口から鍵の宝珠が飛び出た。
宝珠に手を差し伸べた女神の手に、宝珠が収まると、アヤの体が重力に従い落ちる。
「っっと!!」
慌てて下に滑り込み、グレインバルドが受け止めた。
「アヤ?アヤっ?!」
頬を軽く叩くと、閉じていた目がふっと開く。瞳を認め、グレインバルドは息を呑んだ。
ニコと、いっそ、無邪気とも言える笑みをアヤが浮かべる。
「ーーーーーーーーーー」
そっと囁かれた言葉に、グレインバルドが目を瞠ると、アヤは再び微笑み、糸が切れたように意識を失った。
*戦闘はこれにて終了です!m(_ _)m
二部あともうちょいです。ここまで、お読みくださりありがとうございます!
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