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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
8.女神の腕(かいな)②
しおりを挟む『仕方ないわね…手のかかる子達だこと』
声が聞こえた瞬間、周りが白く、真っ白な空間に切り変わる。
「アストラル…」
バルドもギルも、ラゼルも居らず、居るのは俺一人。
「な、んで…?」
『私が場を切り取ったからよ』
後ろから、再び聞こえた声に振り向く。
見知らぬ女の子が、宙に浮かんでいた。真珠色の髪に、右目は湖面の蒼、左目はアメジストの瞳の、七~八歳くらいの……
「だ、れだ?」
『はじめましてね?もっとも、魂の記憶では、私の事は刻まれているのでしょうけど、この姿でそうなるのは仕方ない事ね。私はアウフィリア。世界創造主の一人。花と水の守護女神。あなた達、魔導の原点、魔導の母よ』
女神!!
ニコと無邪気に微笑む女神に、俺は言葉を失い目を見開く。
母って……だって、どう見ても…
『見た目と実際は比例しないわよ?この姿は今、お気に入りなだけ。あ!女に歳は聞かないでね?人の女性はこう言うんでしょ?』
クスクス笑う女神に、俺はまだ言葉が出てこず。
『だいぶ、混乱してるわね?大丈夫かしら?』
「え、っと…深く、考えない事にする…」
『それが賢明ね』
ニッコリ笑い、フワリと目の前まで移動してきた女神に、俺は戸惑いながらも答えた。
しかし、問題は何で今アストラルに?
『だから、私が切り取ったのよ』
「切り取った?」
先程も思ったが、どうやら考えている事は女神に筒抜けらしい。
首を傾げると、女神が小さく頷く。
『神、女神は人の理に不可侵よ』
「らしいな…聞いてる」
『だから、私も理に関わるつもりはなかったのだけどね~……私は一度、間違えてしまっているから』
困ったように微笑み、溜息をつく。
女神が一度間違えた事?
『そうよ。あなた達、魔導を初めて生み出した時に…一度、ね』
それって………
『分かった?ラゼルとの口論で、神の台座を創り出してしまった事。私とラゼルの争いにあなた達を巻き込んだ事。光の魔導をこの世界から消し、ギルゼルトをあんなにしてしまった事。あら、一度じゃなかったわね』
クスクス笑う女神に、俺は盛大に呆れて顔をしかめる。
「ラゼルと喧嘩って……何で、あんなモン創ったんだ?迷惑以外ナニモノでもないだろ?」
『神々の酒宴の席で口論になってね~…まぁ、酒の勢いってやつよ』
「…………………………」
開いた口が塞がらない。酒の勢いって…
どんだけ暇と力持て余してるか知らないが、こっちは完全にとばっちりだ!
『私は、まぁ、そんなわけで?あなた達の理を、盛大に捻じ曲げてしまってるから…今回ばかりは黙ってようと思ったのだけど…さすがに、魔導殺されかけて黙ってる親はいないわ。それに、あまりに力の差がありすぎて不公平でしょ?あいつには、私も頭きてるから、そろそろ目の前から退場してもらわないとね』
「助けに入るなら、もっと早く入ってくんない?俺たち、かなりズタボロなんだけど?」
『しょうがないでしょ?私は他の神達と違って、いろいろ制約がかかってんの!おいそれと自由には動けないのよ!』
初めて会った女神だが…何となく、分かる。制限かけなきゃ、いろいろやらかすから、おそらく、女神より高位の神に禁止を言い渡されてんだろう。それくらい、やる事なす事、滅茶苦茶な空気がプンプンだ。
『失礼な子ね!アルシディアとはまったく似てないったら!』
「当たり前だろ?俺は俺。アルシディアじゃない」
『生意気な子。アルシディアは私に口答えなんかしなかったわよ?……まぁ、もっとも。あなただから…』
「???」
『何でもないわ。さて、残念だけど、私が力を貸せるのは一回よ。今回だけの魔導。この先も使うには、あまりに危険だから…この一回限り使ったら、記憶から消させてもらうわね?いいかしら?』
「ラゼルを……殺すのか?」
不安になり聞くと、ゆっくり首を振られる。
『それは、ないわ。できないし、むしろ、私がさせないわ』
「どういうこと?」
『あなたもさっき聞いたでしょ?』
「さっき?さっきって………あ!」
思い当たり、小さく声を発した俺に、女神が頷く。
『神殺し』
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