318 / 465
第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
8.女神の腕(かいな)①
しおりを挟む「リヴァイア・ランス!」
【ダークネス・ロンド!】
バルドが氷を纏った水槍を、ギルが衝撃波を放つ漆黒の刃を、俺たちに迫り来る火球に放つ。
「「ブレイク!!」」
二人の声がハモり、火球が空で爆発した。
「ッッッ!!!」
結界があるとはいえ、怖いモンは怖い!バルドとギルが俺に駆け寄り、前面両サイドで守るように立ち塞がる。
二人が睨み付ける先には、ラゼルを包み込んだ火柱。
「くっ!クックッ!アッハッハははははは!!なるほど…少しはやりおるな?が……!!」
ラゼルの笑い声が聞こえ、逆巻いていた火柱が、ラゼルの腕の一振り一瞬で霧散する。
「まるで、児戯よ。我には効かぬな」
優雅とさえいえる微笑を浮かべ、佇むラゼル。傷はおろか、衣服に焦げさえない。
「おい…!冗談にしても笑えねぇぞ…」
「チッ!!やはり、効かぬか…!」
嘘だろ?何か、本格的にマズいかも…相手は神とはいっても、こっちは二人(俺もいるけど…ほとんど役に立たない…)も居るのに!?
これ、かなり無理ゲー?(汗)
「貴様の魔導で無理なら、俺の全破棄が通じるとは思えんが……やってみるか?」
「やめよ…無駄な魔導を使うでない。ラゼルを倒す倒さぬは二の次。問題は、台座を如何にして破壊するかだ」
ラゼルの動きを封じないことには、台座に近づくことさえできない。
「如何した?諦めるなどと、つまらぬことを申すでないぞ?見苦しく足掻く様が楽しく美しいのだ。我を失望させるな」
クックッと笑うラゼルに、俺たちは身構える。
こいつ…!完全に遊んでる!!((((;゚Д゚)))))))
「人がどうこうできる域を超えてるって…!」
「台座を破壊以前の問題だな…俺たちとて、女神の魔導と呼ばれる者だ。敵わなくとも、突破口くらいはあると思ったが……ここまで、力の差があるなんざ、思いもしなかった」
ギリギリと歯を噛みしめるバルドに、ギルもまた渋い顔で押し黙る。
二人がどうにかできないようなもの、俺が加わったところで、焼け石に水。第一、俺には攻撃系の魔導は一個しかなく、その魔導も神化し何とか使える代物。今の不安定な状態では使えない。
「如何した?来ぬのか?なれば、我から参ろうか?」
ニヤリと笑い、ラゼルが両手を広げ、手のひらを上に向ける。パリパリと電光のようなものが立ち上がる。赤黒いそれを握り込み、ラゼルが再び広げた両手の平を合わせる。
【ブラッディ・メイス】
部屋の四方八方に黒い電柱が立ち上がり、バリバリッとけたたましい音を立てた。
背中に走る、言い知れない怖気に、俺の体が竦み上がる。
「グレインバルド!アヤを守れ!これは……!!」
「ッッッ!?」
「チぃッッッ!!!」
ギルが叫び、短く詠唱し前方に結界を張るのと、バルドが同じく結界を張り、俺に覆い被さるのが同時。物凄い衝撃と、一瞬の重力。鼓膜が破れるのではと心配になるほどの轟音。目も開けられないくらいの光の後、閉じた瞼が一気に闇に堕ちた。
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
ほんの数分、気を失っていたらしい。
震える瞼を押し開き、ゆっくり目を開けた。
「……ぅ……ッ!くっ!!」
ズキンと走った体の痛みに呻く。体が重い。何か、上に乗ってるような……?
ハッと目を開け、体を起こすと、俺の上に乗っていたもの。バルドの体がグラリと傾ぐ。
慌てて抱き留めた。
「バルドッ?!バルド!バルドッッッ!!」
俺を庇い、結界を突き破ったラゼルの魔導を受けたらしい。あちこち怪我を負い、血が流れていた。
「うっ…!ぐ…ぁ!は、ぁ……ア、ヤ?」
「バルド…大丈夫か?!」
「……つッ!あ、あぁ…かなり、いってぇけどな…なん、とかだ」
必死に呼びかけると、顔を盛大にしかめつつ、バルドが目を開けた。こめかみから顎まで血が流れ落ちている。
「ギル…!ギルは?!」
無事を確認し、思い出して見渡すと、俺とバルドの正面にギルが跪いていた。
「ギルッ!!?」
「……っ、!ぐぅ……、大、事ない!」
「何、言って…!だって!!」
ギルは……バルドより、ひどい。ラゼルの魔導を直に受け、正に、満身創痍。
あり得ない。女神の魔導の結界だ。それを、まるで、ビニールの膜を破るかの如く、安々と……
「加減はしておいた。早々に壊れては興醒め。我は長く戯れたいでな」
腕を組み、場違いなほどに柔らかく微笑むラゼルに、俺は怒りと恐怖に体を震わせる。
駄目だ…
力が、違いすぎる。
のろのろと俺を庇った二人に目をやる。
悔しい。力がない。俺だって……目の前の大切な人たちを守りたいのに。守られてばかりの、力がない自分が情けなくて、悔しくて……
涙が溢れ、唇を噛み締め固く目を閉じ、俯いた俺の耳に、不意にそれは聞こえた。
『仕方ないわね…手のかかる子達だこと』
2
お気に入りに追加
2,223
あなたにおすすめの小説
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
平凡くんの憂鬱
慎
BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。
――――――‥
――…
もう、うんざりしていた。
俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど…
こうも、
堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの-
『別れてください』
だから、俺から別れを切り出した。
それから、
俺の憂鬱な日常は始まった――…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる