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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!
12.オモチャで遊ぶと決めた女性より、タチの悪いモノはない!
しおりを挟む「…………………………………………………カレス」
「カナデ。兄上、でしょ?」
「……………………何でいるわけ?今、御前演武会の最中…カレスは」
「カナデ。あ・に・う・え!」
「カレス、、、ぁにぅぇは、会場にいるべきだろ?」
いやいや名を呼んだ俺に、第3皇子カレスが満足そうにニッコリと微笑んだ。
俺の平穏を壊す元凶となりうる奴だ。できれば、というか、絶対!何が何でも近づきたくない、近寄らせたくない奴でもある。
それに、なぁんとなく……俺がこの世界でのカナデじゃない事に気付いてるようなフシがある。
胡乱な目を向けるが、まったく意に介さず、ニッコリ優雅(見るだけならそうだが、俺から見たら胡散臭さ大全開だ)に微笑んで俺を見下ろす。
どうでもいいが、体に回した腕離してくれ……
一応、外そうとていていしてみるが、見事にビクともしない。
皇子って白馬に乗って、あはははは!みたいな軟弱イメージしか浮かばんが、実際はそうでもないのだろうかと、ついつい現実逃避し遠い目になってしまう。
「カレス様……ごきげんよう。珍しいですわね?誰にでも愛想よく、誰に対しても分け隔てなさらず、誰にも関心のない貴方が、お身内とはいえ、異母弟などをお庇いにいらっしゃるとは」
「そうだね。まぁ、基本、私は興味を引かれるものが少ないから。関心が湧かなければ、普通に優しく接するだけだよ。関心がないからって、冷たくしなきゃいけないわけじゃないしね。ほら、いつ関心が湧くか分からないし?」
嫌味たっぷりなナターシャ姫に対し、カレスは変わらずフンワリ笑顔のままだ。
が、気のせいか?バチバチ火花飛び散ってる気がすんのは?
そして、またまたどうでもいいが、俺を間に挟まないでくれ……
巻き込まれてるだけなのに、このとんでもないアウェー感は何なんだ?
「相変わらずいい加減なようでいて隙がない御方ですこと…」
「貴女に誉められるなんて光栄だ。宜しければ、お席までお送りを?」
「結構よ。私は飼い犬のつまみ食いを躾に来ただけ。おかげで、不愉快ではあるけれど、面白くて有意義なモノが得られましたわ」
ちらっと視線が寄越された。
途端、全身に意味不明な鳥肌が立つ。
言うなれば、ヘビを前にしたカエル。それがしっくりくる。
思わず、カレスの腕をギュっと掴んでしまう。
「楽しみだわ……ここから先は傍観に徹した方がよさそうね。ユーグ、戻りなさい。戻った後は、好きにして構わなくってよ」
「へぇ?いいのか?」
「私1人のモノにしておきたかったけれど……放った方が楽しめそうだわ」
口元を扇で覆い、クスクス笑うとナターシャ姫がそのまま貴族席へ向かって去っていった。
「目をつけられた、かな?」
「は??」
何か今、もの凄~く不吉な言葉が聞こえた気がすんですけど?
あと、、、
「いい加減、離してくんない?」
抱き枕やぬいぐるみじゃねぇんだから、いつまでも抱っこはされたくない。
「う~ん……嫌だね」
「は?え?」
「せっかく腕の中に囲えて可愛いし、今離せば、カナデは二度と大人しく抱かれてくれないだろうし」
「な、、!ば、ッ、馬鹿じゃん!!抱かれてって、妙な言い方すんな!!」
めっちゃ焦る。カレスが言うと、何でもない言葉でも、変にいかがわしく聞こえて仕方ない。
今更ながら、超危険極まりない男の腕に拘束されている事実に慌てだした。
「は・な・せ~~~~~~~~~~~~~~~!!」
「そんな、嫌がらなくても良くない?あぁ、それとも、何か期待してる?なら、応えないとね?」
「ぎゃーーーーーーーー!要らねぇ!要らん!離れろ!変態ッッッ!!」
端整な顔が近づけられ、悲鳴をあげて体を仰け反らす。
「戯れあってるとこ悪いけど、いいか?」
カレスの顔を手で押し返し、全力で拒否する俺と、ふんわり笑みを相変わらず浮かべたまま、あり得ん力で迫るカレスで攻防を繰り広げる中、横手からかかった声に、2人してそちらへ視線を向けた。
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