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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!
9.副官補佐は超・問題児⁉︎③
しおりを挟む「王族……って」
軽く目を瞠り、ユーグが俺を見る。
「誰が?」
「この場合、俺しかいないだろ⁈」
何だそれはとばかりな態度に対して、くわっと突っ込む俺に、ユーグが喉奥で笑う。
こいつ…!ふざけてんのか⁉︎
揶揄われているとかしか思えないんですけど!
ムッスリと睨みつける俺に、ユーグが口の端でニヤリと笑った。
「まぁ、そんな姿だからな。ただの侍従やそこいらじゃねぇのは分かってたが?」
姿?
訝しみが表情に出たか、ユーグの手が俺の顎にかけられ上向かされた。
「黒鉛石すら敵わんくらいの漆黒の髪に、蒼と黒を混ぜたような不思議な色合いの瞳。この国じゃまず滅多とお目にかかれん。つまるところ、お前は……」
バシッと音を立てて、俺の顎にかかるユーグの手を叩き落とす。
「第13皇子、カナデだ!気安く触るな!!」
睨みつけたまま言い放つ。
皇子で王族(自分自身、まだあんま自覚ないが…)と分かれば、さすがにこの男も怯むだろう。
内心ホッとしながら肩を力を少し抜く。
目を見開くユーグに、少し溜飲が下がる。ゆっくり距離を取り、、かけた俺の腕が掴まれ、グイッと強引に相手へ引き寄せられた。
先程より尚、体と顔が近付く。
「なるほど。噂の第8貴妃様の、、、ね」
「ッッッにすんだよ⁉︎俺、皇子だって、、、」
「言ったな」
「なっ⁉︎だったら、分かってんなら離れ、、」
「関係ねぇな」
「!!!!!!!!!!」
フンと鼻で吐き捨てられ唖然とする。
関係ない?関係ないっつったか?この男。
皇子で王族って偉いんじゃねぇの?
普通、失礼働いたら怯む相手なんじゃねぇの?
何、何?何なの??どういう事だ⁈
訳も分からず目を白黒させる俺に、ユーグが不敵に笑む。
腰を抱かれて体が近付く。胸に両手を当てて思いっきり突っ撥ねるが、ビクともしない。
服越しにも、固く引き締まった筋肉を感じる。
こいつ、ただの不良兵士じゃない!
これ見よがしな鍛えた筋肉じゃなく、実戦的なそれ。いくらそういったものとは無縁に育った俺だって、それくらいは感じて分かるくらいに……
「離れろって!俺、皇子だって、王族だって言ってるだろ⁈これ以上は洒落になんないって!!」
「これ以上、、、ね?期待してんのか?何かしてほしいんなら応えるが?」
「し、し、してないッ!してないしてないしてない!!するわけないッッッ!!」
慌てふためいて喚く俺に、ユーグが堪え切れないとばかり盛大に吹き出した。
目端に涙まで浮かべてゲラゲラ笑う。
憮然とする俺に、ユーグが笑いを伴わせたまま視線を合わせてきた。
「可愛いなぁ、皇子サマ。いや、笑ったわ」
「別に笑わせるつもりじゃ……あんた、、、、、ユーグがふざけるから、、」
「ふざける、、ねぇ?確かに、最初の方はそうだが……」
ツと寄越された流し目。少し危険な空気を纏わせたそれは、悪い男の色を含んでいて、訳も分からず体がビクッと戦慄いた。
無意識に逃げかけた体が、軽く動かされたユーグの動きに阻まれ封じられた。
よくよく考えたら、何この格好。
腰抱かれて体密着されて、何抵抗もせず大人しくしてるんだよ、俺ってば!!
今更ながらに危険極まりない体制に持ち込まれている事に、遅ればせながら危機感抱く。
必死に身動ぎ、少し緩んだ拘束に逃げ出しかけた体が壁に背をつけられ押さえ込まれた。
勢いと強い拘束に顔を顰める。
「い、った!!な、にすッッッ」
ほぼゼロ距離になった顔の近さに目を見開いた。
「やっ、、!」
開きかけた唇は言葉を紡ぐ事なかった。
と、いうか開けない。
俺の視界いっぱいに映る端整な顔。柔らかく、強引に塞がれた唇。
「んーーーーーーーーーーーッッッ!!」
押し退けようと、突っ撥ねかけた手首を掴まれ動きが封じられた。重なる口づけを振り解こうと動かしかけた頭を、後頭部に回された手で固定されてしまった。
「んうっ!!ッッッ、~~~~~~~~~~!!!」
必死にもがくが、拘束は一切緩まない。
唇を覆い隠すほど深く口づけられ、パニックで息もままならず、思わず喘いだのがマズかった。
スルッと入り込んだユーグの舌が俺の舌に絡みつく。
これ以上ないくらいに目を見開き、思わずその舌先に歯を立てる。
「つッッッ!」
「……ッは!!」
痛みに一瞬ユーグが怯んだ隙に口づけを解く。腕を突っ張り、何とか少し体を離すことに成功し、息苦しさから涙が滲む目で睨みつけた。
言いたい事は山程だ。あらゆる罵詈雑言をぶつけてやりたいが、息がなかなか整わない。
俺に噛まれた舌先をちろりと出し、ユーグが不敵に笑む。怒ってる風もなく、どこか楽しげだ。
「口づけで舌を噛まれたのは初めてだな」
「………………ッ」
キッと更に強く睨むと、手首が掴まれ、先程よりはやんわりと壁に背をつけられ押さえ込まれた。
くそ!力がなかなか戻らないから抵抗できん!!
往生際悪く逃れようと試みるが、思ったように力が入らない。
「抵抗するのは構わねぇよ。従順なだけの侍女や侍従は食い飽きたしな。歯応えがある方がむしろいい」
「さ、、、ぃて、や、ろぅ!!」
整いつつある息の下から罵るが、相手はどこ吹く風だ。
悠々と押さえ込まれる自分自身に舌打ちしたい。
この体弱すぎる!!
「一つ言っとくがな、皇子サマ。抵抗されればされるほど、男はその気になるんだぞ?」
「知るッ、、、か!………ッぁ??」
『俺も男だ!!』と続くはずの言葉は音にならなかった。目の前と頭がぐらりと一気に回る。
ふぅっと、一瞬で暗くなっていく意識。
まだまだ言い足りない。それに、こんな奴の前で意識を失うわけには……
必死に繋ぎとめようとした足掻き虚しく、プツンと俺の視界と思考が暗転した。
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