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「そ、そんなことを言っていいのか!? わたしが呼び出され、そしておまえがここにいるということは、再びおまえがわたしの婚約者になるということだろうが!」
「はあ……?」
マブロゥ様のわけの分からぬ主張に、再びわたくしは気の抜けた返事をしてしまいました。
こんな馬鹿と再婚約なんてありえませんし、お父様とあれだけ言ったのにまだ分からないとは、どれだけおめでたい脳内なんでしょうか。
ちらりと辺りを窺うと、レアンドレ様たちもあきれていらっしゃいます。
「おまえの婚約者なら、わたしは未来の公爵だな! 泣いて謝るなら、今までの無礼は許してやってもいいぞ!」
……阿呆です。筋金入りの阿呆がここにいます。
ふんぞり返るマブロゥ様を周りの者はかわいそうな者を見る目で見つめています。
「なにを言っておりますの。わたくしの夫は、あくまでも公爵家の婿であって、公爵位を継ぐのはわたくしです。第一、あなたはもうバチール男爵家に婿入りした身分ではありませんか。まるで対象外ですね」
「なっ、なんだと、適当なことを言うな! まったくかわいげのない女だ! せっかくわたしが妻にしてやろうと言ってやったのに、その厚意を無にしようとするとは!」
マブロゥ様お得意の、都合の悪いことは聞かない癖が出ましたよ……。いい加減疲れますね。それに、あなたの妻なんて死んでもごめんこうむります。
うんざりしていると、ありがたいことにレアンドレ様が加勢してくださいました。
「……あきれるな。適当もなにも、婿に入った男爵家でおまえは家を継げないと言われただろうに、少しは骨身に染みたかと思っていたがまだ理解していなかったのか」
「あ、あれは、嫡男がいたからだ! そうでなければ……っ」
「男爵家でさえそうなのに、なぜおまえが公爵になれると思うのだ。女性でも爵位の継承は認められているし、惣領姫のセレーネが公爵家を継ぐのが一番順当というものだろう。そもそも、陛下がおまえは人の上に立つ器ではないと、臣籍降下の際には領地を与えず、おまえよりも身分の高いセレーネの婿とすることに決めたというのに、まだその意味が分からないのか」
「なんだと! そんなわけはない! わたしは誰よりも優秀だ! 貴様のような愚か者とは違ってな!!」
……あー、あー、あー……。
わたくし、そうとしかもう表現できませんでした。
王太子であるレアンドレ様に指をさして、上からの物言い以上の侮辱行為です。もはや死に急いでいるとしか思えません。そして、王子様方とわたくしを警護している近衛騎士たちのマブロゥ様への視線が恐ろしいです。
……まさかこの馬鹿、レアンドレ様が王太子であるということを知らないのでしょうか?
「どちらが無礼なのだ! 兄上は──」
さすがに黙っていられなかったのか、ダレン様が割って入ろうとします。けれど、レアンドレ様はそれを片手で制しました。
「おまえの主張などどうでもいい。おまえが公爵位に就くことも、ましてやセレーネの夫になることなど生涯ない」
「そんなことはない! 叔父上はわたしの有用性をよくご存じのはずだ!」
「──なにをやっている」
頭の痛くなりそうな主張が繰り返されている場に、まさに天恵の、ですが冷ややかな声が響き渡りました。
お父様の登場に、マブロゥ様が顔を輝かせます。
「お、叔父上! あなたなら──」
「陛下がお待ちだ。妄言を吐いてないで、さっさと移動しろ、クズ」
お、お父様……。
普段紳士なお父様から、クズという言葉を聞くなんて……。
言われたマブロゥ様のみならず、王子様方もびっくりした顔をされています。
……お父様の『陰の国王』という二つ名は、どうやらうわべだけではなかったようです。
「はあ……?」
マブロゥ様のわけの分からぬ主張に、再びわたくしは気の抜けた返事をしてしまいました。
こんな馬鹿と再婚約なんてありえませんし、お父様とあれだけ言ったのにまだ分からないとは、どれだけおめでたい脳内なんでしょうか。
ちらりと辺りを窺うと、レアンドレ様たちもあきれていらっしゃいます。
「おまえの婚約者なら、わたしは未来の公爵だな! 泣いて謝るなら、今までの無礼は許してやってもいいぞ!」
……阿呆です。筋金入りの阿呆がここにいます。
ふんぞり返るマブロゥ様を周りの者はかわいそうな者を見る目で見つめています。
「なにを言っておりますの。わたくしの夫は、あくまでも公爵家の婿であって、公爵位を継ぐのはわたくしです。第一、あなたはもうバチール男爵家に婿入りした身分ではありませんか。まるで対象外ですね」
「なっ、なんだと、適当なことを言うな! まったくかわいげのない女だ! せっかくわたしが妻にしてやろうと言ってやったのに、その厚意を無にしようとするとは!」
マブロゥ様お得意の、都合の悪いことは聞かない癖が出ましたよ……。いい加減疲れますね。それに、あなたの妻なんて死んでもごめんこうむります。
うんざりしていると、ありがたいことにレアンドレ様が加勢してくださいました。
「……あきれるな。適当もなにも、婿に入った男爵家でおまえは家を継げないと言われただろうに、少しは骨身に染みたかと思っていたがまだ理解していなかったのか」
「あ、あれは、嫡男がいたからだ! そうでなければ……っ」
「男爵家でさえそうなのに、なぜおまえが公爵になれると思うのだ。女性でも爵位の継承は認められているし、惣領姫のセレーネが公爵家を継ぐのが一番順当というものだろう。そもそも、陛下がおまえは人の上に立つ器ではないと、臣籍降下の際には領地を与えず、おまえよりも身分の高いセレーネの婿とすることに決めたというのに、まだその意味が分からないのか」
「なんだと! そんなわけはない! わたしは誰よりも優秀だ! 貴様のような愚か者とは違ってな!!」
……あー、あー、あー……。
わたくし、そうとしかもう表現できませんでした。
王太子であるレアンドレ様に指をさして、上からの物言い以上の侮辱行為です。もはや死に急いでいるとしか思えません。そして、王子様方とわたくしを警護している近衛騎士たちのマブロゥ様への視線が恐ろしいです。
……まさかこの馬鹿、レアンドレ様が王太子であるということを知らないのでしょうか?
「どちらが無礼なのだ! 兄上は──」
さすがに黙っていられなかったのか、ダレン様が割って入ろうとします。けれど、レアンドレ様はそれを片手で制しました。
「おまえの主張などどうでもいい。おまえが公爵位に就くことも、ましてやセレーネの夫になることなど生涯ない」
「そんなことはない! 叔父上はわたしの有用性をよくご存じのはずだ!」
「──なにをやっている」
頭の痛くなりそうな主張が繰り返されている場に、まさに天恵の、ですが冷ややかな声が響き渡りました。
お父様の登場に、マブロゥ様が顔を輝かせます。
「お、叔父上! あなたなら──」
「陛下がお待ちだ。妄言を吐いてないで、さっさと移動しろ、クズ」
お、お父様……。
普段紳士なお父様から、クズという言葉を聞くなんて……。
言われたマブロゥ様のみならず、王子様方もびっくりした顔をされています。
……お父様の『陰の国王』という二つ名は、どうやらうわべだけではなかったようです。
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