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女神選抜試験
第22話 ルーカス対策
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──月曜日。
クリスはレイフの言った通りに、朝一番に彼の部屋へ行った。
どうやらマリーは神殿にまだ来ていないらしい。
「おはようございます、レイフ様。昨日はどうもありがとうございました」
「おはよう、クリスティアナ。昨日はよく眠れた?」
「はい、おかげさまで」
実はよく眠れなかったのだが、クリスは彼に心配をかけまいと嘘をついた。
「それならよかった。じゃあクライドのところに行くからついてきて」
「はい」
ほっとしたような笑顔になるレイフに、クリスも微笑んで頷いた。
「……そう言えば、マリーは今日も体調不良のようだね」
歩きながらのレイフのその言葉に、クリスは一瞬足を止めてしまった。
「まあ、そうなんですの?」
朝一番でというレイフの言葉に従って寮を出てきたが、その前に寮母にマリーの様子を聞いてくればよかった、とクリスは反省した。
「帰りましたら、彼女の様子を窺いに参りますわ」
そして、また差し入れを持って帰ろう、とクリスは思った。
「うん、そうだね。そうするといいよ」
レイフがクリスの言葉に頷いた。
二人が話しているうちに、クライドの部屋の前についた。
「クライド、レイフだよ。クリスティアナを連れてきた」
レイフがドアをノックしてそう言うと、侍従が応対に出てきて、すぐにクリス達は部屋へ通された。
「クリスティアナ」
その途端、嬉しそうなルーカスの声がして、クリスはぎくりとする。
「おはようございます。クライド様、……ルーカス様」
「おはよう、クリスティアナ。……なにか顔色が悪いようだが」
それはあなた様のせいです、とはクリスは言えなかった。
「おはようございます。わざわざ来て貰って悪かったですね。……どうぞこちらへ」
クライドが応接セットのソファにクリス達を案内する。
その結果、クリスの隣にレイフ、目の前にクライド、その隣にルーカスが座ることになった。
「クライド、これは酷いだろう。クリスティアナの隣にはわたしが座るべきだ」
「あなたが隣にいるとクリスティアナが怯えますから」
ルーカスの抗議に、クライドはすげなく答えた。
一方クリスはクライドのこの配慮にほっとしていた。……しかし、ルーカスに斜めからじっと見つめられているのだが。
クリスは侍従から出された紅茶に手を伸ばし、それに気づかない振りをした。
「……さて、本題に入りますが、クリスティアナ、あなたの魔物討伐の件です」
「はい」
クライドに話を出されて、クリスはカップをソーサーに戻した。
「レイフに話を聞きましたが、このルーカスに襲われそうになったそうですね?」
「はい、そうですわ」
その途端、ルーカスがなんとも切なそうにクリスを見てきた。
「だが、あれは君への愛ゆえだ。信じてほしい」
「愛っていっても、それは君の片想いだろ。君の想いはただの押しつけだよ」
レイフが突っ込むと、ルーカスはむっとして反論した。
「わたしはクリスティアナに言ってるんだ。それを横から口出ししないでほしいね」
「……わたくしもレイフ様の言う通り、押しつけだと思いますわ」
昨日腰を抜かす程驚かされたこともあって、クリスは冷たく横を向いて答えた。
「クリスティアナ……」
切なげにルーカスが名を呼んだが、クリスはそちらを見ることはしなかった。
「ああ、これはルーカス、クリスティアナに嫌われたようですねぇ」
クライドが面白そうに言ったので、クリスはそちらに向いた。
するとクライドの愛情度が上がっていた。
「面白がらないでくれないかな、クライド。……クリスティアナ、どうか機嫌をなおしてくれないかい」
「……二度とこんなことを繰り返さないと誓ってくださるのなら」
クリスとしては随分と妥協したつもりなのだが、ルーカスはそれでも不満だったようだ。
「それは難しいね。魅力的な君と一緒にいてその気にならないというのは」
それを聞いて、クリスは頭が痛くなってきた。
「話になりませんわ」
クリスがこめかみを押さえていると、レイフが気を利かせて治癒魔法をかけてきた。
「あ、ありがとうございます」
「うん、どういたしまして」
そんなやりとりをレイフとしていたら、ルーカスがつまらなそうに言ってきた。
「君の隣でいい顔をしているレイフも心の中ではどんなことを考えているか分からないよ」
すると、レイフがむっとした。
「君と一緒にしないでほしいな」
「そうです。レイフ様に失礼ですわ」
「だが、レイフは君の頬にキスしてたじゃないか。抱きしめはしなかったが、していたら考えてもおかしくないね。君は抱き心地がいいから」
「な──」
抱き心地がいいとは何事か。それではセクハラではないか。レイフもそう思ったようで呆れたような顔をしていた。
「まあまあ、ルーカスは少し口を慎むように」
思わずクリスが真っ赤になると、見かねたようにクライドが間に入った。──そしてまたクライドの愛情度が上がったようだ。
「ルーカスはクリスティアナの立場を考えてほしいですね。そんな一方的な想いでは彼女にも迷惑でしょう」
「クライド様、ありがとうございます」
かばわれたクリスはクライドに礼を言った。すると親密度と愛情度が上がった。
「いいんですよ。……ただ、このままでは魔物討伐どころではないでしょう。そこでルーカスの力が必要な時にはわたしを訪ねてきてください。一緒に楽園に行きますから」
「まあ、それは心強いですわ」
正直ルーカスと二人きりになったらなにをされるか分からなかったので、クリスは喜んだ。
「君は冷たいね。そんなにわたしと二人きりになるのが嫌かい」
「普通に接してくださるのであれば歓迎いたしますけれど、ルーカス様はそうではないでしょう?」
できればクライドを煩わせたくはないのだが、ルーカスがいつ暴走するか分からないのでクリスは彼と二人きりにはなりたくないのだ。
「愛している君と二人きりで手を出せないなんて拷問にも近いね」
「それを我慢するのが人間だろ。出来なきゃけだものだよ」
「クリスティアナの頬にキスしていた君がそう言うのかい」
「あれは親愛のキスだよ。その証拠に唇にはしていない」
「本当は唇にしたかったんだろう? やせ我慢だね。わたしには喜ばしいが」
ルーカスとレイフの口論はだんだんとエスカレートしていく。
クリスは二人を止めるべきかと思ったところへ、クライドがパンパンと手を叩いた。
「まあまあ、二人ともその辺でやめておきましょうか。クリスティアナが困ってますよ」
するとルーカスとレイフは口をつぐんだ。
「あの、それではクライド様、ルーカス様、魔物討伐の時はよろしくお願いします」
クリスは協力者に頭を下げた。
すると、クライドの数値が上がった。
「さっそく今から出かけますか?」
「いえ、今日はギルバート様に挨拶に参りたいと思っていますので、魔物討伐は明日からお願いいたします」
いくら楽園に火の魔物がはびこっているとしても、これ以上ギルバートに会わないでいるのは得策ではないとクリスは思っていた。
「そうですか。それもよいでしょうね。あまり特定の魔術師と疎遠になるのもまずいですし」
クライドはクリスの意見に頷いた。
「はい」
「ギルバートのところに行くなら、わたしも一緒に行くよ。彼も君の魅力にやられないと限らないから」
ルーカスの言葉にクリスはぎょっとする。
そこまで付いてこられてはたまらない。
「つつしんで遠慮いたしますわ」
「そうですよ。あなたにはこれからお説教がありますからそのつもりでいてください」
途端にルーカスは渋い顔になった。
「それじゃ、僕達はこれでおいとまするか。クリスティアナ、行こう」
「はい。それではごきげんよう」
そしてクリスはレイフにエスコートされてクライドの部屋を出ていく。
その間際に少々恨めしそうにルーカスが見てきたが、クリスは気にしないことにした。
それから、ルーカスへのクライドのお説教が始まった。
クリスはレイフの言った通りに、朝一番に彼の部屋へ行った。
どうやらマリーは神殿にまだ来ていないらしい。
「おはようございます、レイフ様。昨日はどうもありがとうございました」
「おはよう、クリスティアナ。昨日はよく眠れた?」
「はい、おかげさまで」
実はよく眠れなかったのだが、クリスは彼に心配をかけまいと嘘をついた。
「それならよかった。じゃあクライドのところに行くからついてきて」
「はい」
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「まあ、そうなんですの?」
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「帰りましたら、彼女の様子を窺いに参りますわ」
そして、また差し入れを持って帰ろう、とクリスは思った。
「うん、そうだね。そうするといいよ」
レイフがクリスの言葉に頷いた。
二人が話しているうちに、クライドの部屋の前についた。
「クライド、レイフだよ。クリスティアナを連れてきた」
レイフがドアをノックしてそう言うと、侍従が応対に出てきて、すぐにクリス達は部屋へ通された。
「クリスティアナ」
その途端、嬉しそうなルーカスの声がして、クリスはぎくりとする。
「おはようございます。クライド様、……ルーカス様」
「おはよう、クリスティアナ。……なにか顔色が悪いようだが」
それはあなた様のせいです、とはクリスは言えなかった。
「おはようございます。わざわざ来て貰って悪かったですね。……どうぞこちらへ」
クライドが応接セットのソファにクリス達を案内する。
その結果、クリスの隣にレイフ、目の前にクライド、その隣にルーカスが座ることになった。
「クライド、これは酷いだろう。クリスティアナの隣にはわたしが座るべきだ」
「あなたが隣にいるとクリスティアナが怯えますから」
ルーカスの抗議に、クライドはすげなく答えた。
一方クリスはクライドのこの配慮にほっとしていた。……しかし、ルーカスに斜めからじっと見つめられているのだが。
クリスは侍従から出された紅茶に手を伸ばし、それに気づかない振りをした。
「……さて、本題に入りますが、クリスティアナ、あなたの魔物討伐の件です」
「はい」
クライドに話を出されて、クリスはカップをソーサーに戻した。
「レイフに話を聞きましたが、このルーカスに襲われそうになったそうですね?」
「はい、そうですわ」
その途端、ルーカスがなんとも切なそうにクリスを見てきた。
「だが、あれは君への愛ゆえだ。信じてほしい」
「愛っていっても、それは君の片想いだろ。君の想いはただの押しつけだよ」
レイフが突っ込むと、ルーカスはむっとして反論した。
「わたしはクリスティアナに言ってるんだ。それを横から口出ししないでほしいね」
「……わたくしもレイフ様の言う通り、押しつけだと思いますわ」
昨日腰を抜かす程驚かされたこともあって、クリスは冷たく横を向いて答えた。
「クリスティアナ……」
切なげにルーカスが名を呼んだが、クリスはそちらを見ることはしなかった。
「ああ、これはルーカス、クリスティアナに嫌われたようですねぇ」
クライドが面白そうに言ったので、クリスはそちらに向いた。
するとクライドの愛情度が上がっていた。
「面白がらないでくれないかな、クライド。……クリスティアナ、どうか機嫌をなおしてくれないかい」
「……二度とこんなことを繰り返さないと誓ってくださるのなら」
クリスとしては随分と妥協したつもりなのだが、ルーカスはそれでも不満だったようだ。
「それは難しいね。魅力的な君と一緒にいてその気にならないというのは」
それを聞いて、クリスは頭が痛くなってきた。
「話になりませんわ」
クリスがこめかみを押さえていると、レイフが気を利かせて治癒魔法をかけてきた。
「あ、ありがとうございます」
「うん、どういたしまして」
そんなやりとりをレイフとしていたら、ルーカスがつまらなそうに言ってきた。
「君の隣でいい顔をしているレイフも心の中ではどんなことを考えているか分からないよ」
すると、レイフがむっとした。
「君と一緒にしないでほしいな」
「そうです。レイフ様に失礼ですわ」
「だが、レイフは君の頬にキスしてたじゃないか。抱きしめはしなかったが、していたら考えてもおかしくないね。君は抱き心地がいいから」
「な──」
抱き心地がいいとは何事か。それではセクハラではないか。レイフもそう思ったようで呆れたような顔をしていた。
「まあまあ、ルーカスは少し口を慎むように」
思わずクリスが真っ赤になると、見かねたようにクライドが間に入った。──そしてまたクライドの愛情度が上がったようだ。
「ルーカスはクリスティアナの立場を考えてほしいですね。そんな一方的な想いでは彼女にも迷惑でしょう」
「クライド様、ありがとうございます」
かばわれたクリスはクライドに礼を言った。すると親密度と愛情度が上がった。
「いいんですよ。……ただ、このままでは魔物討伐どころではないでしょう。そこでルーカスの力が必要な時にはわたしを訪ねてきてください。一緒に楽園に行きますから」
「まあ、それは心強いですわ」
正直ルーカスと二人きりになったらなにをされるか分からなかったので、クリスは喜んだ。
「君は冷たいね。そんなにわたしと二人きりになるのが嫌かい」
「普通に接してくださるのであれば歓迎いたしますけれど、ルーカス様はそうではないでしょう?」
できればクライドを煩わせたくはないのだが、ルーカスがいつ暴走するか分からないのでクリスは彼と二人きりにはなりたくないのだ。
「愛している君と二人きりで手を出せないなんて拷問にも近いね」
「それを我慢するのが人間だろ。出来なきゃけだものだよ」
「クリスティアナの頬にキスしていた君がそう言うのかい」
「あれは親愛のキスだよ。その証拠に唇にはしていない」
「本当は唇にしたかったんだろう? やせ我慢だね。わたしには喜ばしいが」
ルーカスとレイフの口論はだんだんとエスカレートしていく。
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「まあまあ、二人ともその辺でやめておきましょうか。クリスティアナが困ってますよ」
するとルーカスとレイフは口をつぐんだ。
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クリスは協力者に頭を下げた。
すると、クライドの数値が上がった。
「さっそく今から出かけますか?」
「いえ、今日はギルバート様に挨拶に参りたいと思っていますので、魔物討伐は明日からお願いいたします」
いくら楽園に火の魔物がはびこっているとしても、これ以上ギルバートに会わないでいるのは得策ではないとクリスは思っていた。
「そうですか。それもよいでしょうね。あまり特定の魔術師と疎遠になるのもまずいですし」
クライドはクリスの意見に頷いた。
「はい」
「ギルバートのところに行くなら、わたしも一緒に行くよ。彼も君の魅力にやられないと限らないから」
ルーカスの言葉にクリスはぎょっとする。
そこまで付いてこられてはたまらない。
「つつしんで遠慮いたしますわ」
「そうですよ。あなたにはこれからお説教がありますからそのつもりでいてください」
途端にルーカスは渋い顔になった。
「それじゃ、僕達はこれでおいとまするか。クリスティアナ、行こう」
「はい。それではごきげんよう」
そしてクリスはレイフにエスコートされてクライドの部屋を出ていく。
その間際に少々恨めしそうにルーカスが見てきたが、クリスは気にしないことにした。
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