ゴージャス系公爵令嬢は地道に生きる

舘野寧依

文字の大きさ
上 下
8 / 32

8.閉幕

しおりを挟む
「そ、それなら、味噌や醤油を使った料理なら──」
「……もう良い」

 まだまだゴネそうなユリア嬢の言葉を国王陛下の重々しいお声が遮られます。

「転生者の知識が聞いて呆れるわ。それならば、なぜシルフィーニ男爵領は疲弊しているのだ? 男爵家が代々慎ましく暮らしていたものを言っても聞かぬそなたの過分な贅沢で家も領民も貧しくなったのだ。なんという親不孝者か!」
「ち、違います……、わ、わたしの家は貧しくなってません……」

 最後は吐き捨てるようにおっしゃられた国王陛下の剣幕に、ユリア嬢はしどろもどろになってます。温厚な陛下をここまで激怒させるとは逆にすごいですわ。

「そなたがクローディア殿に冤罪をかけようと工作している時点で、もう調べはついておる。……クローディア殿に事情を話し、赦しが得られれば、そなたは修道院に送られるだけでまだ済んだものを」
「な、なんで、わたしがそれだけで修道院なのよ!」

 ユリア嬢、陛下にその口調はまずいですわ。
 それにしても、まだ自分がしたことの重大さを分かっていませんのね。
 グランゼリア大国の女王になるかもしれない者を侮辱したのです。わたくしを実の娘のように可愛がっておられるあちらの国王陛下に知られたら、惨殺コースですわよ? それに比べたら、修道院行きはかなりの温情だと思います。

「一応ジェシーの想い人だからということで大目に見たが、甘かったわ。親不孝者のそなたのせいで、シルフィーニ家は一族郎党処刑。国家転覆罪はもちろん公開処刑だ。このような国辱、そなたは楽に死ねると思うな!」

 ユリア嬢はしばらく愕然とした顔で陛下を見つめた後、きっ、とわたくしを睨みつけました。

「なんで、なんでよ! あんた、あんたのせいよ! あんたがわたしを虐めないから!」

 ユリア嬢がわたくしに飛びかかるような勢いで言ってきますが、近衛騎士に押さえられているため、それは叶いません。

「……そもそも、あなたとわたくしは接点がありません。お門違いな逆恨みですわね」

 嫌な言い方ですが、たとえユリア嬢を虐めたとしても、わたくしは罪に問われなかったでしょうし。
 恨むのなら、自分の馬鹿さ加減を恨みなさい。……これはユリア嬢だけでなく、ジェシー様にも言えますが。

 わめくユリア嬢が地下牢に連行されて行ったのを見届けた後、国王陛下はその頭を下げられました。

「クローディア殿、此度は誠にすまなかった」
「父上、このような場で頭を下げるなど……!」

 馬鹿王子が抗議していますが、いったい誰のせいだと思っているのでしょう。……わたくしも陛下がここまでされるとは思っておりませんでしたので驚いていますが。

「──黙れ。舞踏会はこれにて閉会。クローディア殿、正式な謝罪は後ほど。騒ぎを起こした第三王子の処分は追って措置する」

 ──国王陛下の重々しい宣言で、この茶番劇はとりあえず幕を下ろすことと相成りました。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

伯爵令嬢は王子に婚約破棄され生きたまま鳥葬刑にされた。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 4話で完結です。 応援お気に入り登録お願いします。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

処理中です...