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8.閉幕
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「そ、それなら、味噌や醤油を使った料理なら──」
「……もう良い」
まだまだゴネそうなユリア嬢の言葉を国王陛下の重々しいお声が遮られます。
「転生者の知識が聞いて呆れるわ。それならば、なぜシルフィーニ男爵領は疲弊しているのだ? 男爵家が代々慎ましく暮らしていたものを言っても聞かぬそなたの過分な贅沢で家も領民も貧しくなったのだ。なんという親不孝者か!」
「ち、違います……、わ、わたしの家は貧しくなってません……」
最後は吐き捨てるようにおっしゃられた国王陛下の剣幕に、ユリア嬢はしどろもどろになってます。温厚な陛下をここまで激怒させるとは逆にすごいですわ。
「そなたがクローディア殿に冤罪をかけようと工作している時点で、もう調べはついておる。……クローディア殿に事情を話し、赦しが得られれば、そなたは修道院に送られるだけでまだ済んだものを」
「な、なんで、わたしがそれだけで修道院なのよ!」
ユリア嬢、陛下にその口調はまずいですわ。
それにしても、まだ自分がしたことの重大さを分かっていませんのね。
グランゼリアの女王になるかもしれない者を侮辱したのです。わたくしを実の娘のように可愛がっておられるあちらの国王陛下に知られたら、惨殺コースですわよ? それに比べたら、修道院行きはかなりの温情だと思います。
「一応ジェシーの想い人だからということで大目に見たが、甘かったわ。親不孝者のそなたのせいで、シルフィーニ家は一族郎党処刑。国家転覆罪はもちろん公開処刑だ。このような国辱、そなたは楽に死ねると思うな!」
ユリア嬢はしばらく愕然とした顔で陛下を見つめた後、きっ、とわたくしを睨みつけました。
「なんで、なんでよ! あんた、あんたのせいよ! あんたがわたしを虐めないから!」
ユリア嬢がわたくしに飛びかかるような勢いで言ってきますが、近衛騎士に押さえられているため、それは叶いません。
「……そもそも、あなたとわたくしは接点がありません。お門違いな逆恨みですわね」
嫌な言い方ですが、たとえユリア嬢を虐めたとしても、わたくしは罪に問われなかったでしょうし。
恨むのなら、自分の馬鹿さ加減を恨みなさい。……これはユリア嬢だけでなく、ジェシー様にも言えますが。
わめくユリア嬢が地下牢に連行されて行ったのを見届けた後、国王陛下はその頭を下げられました。
「クローディア殿、此度は誠にすまなかった」
「父上、このような場で頭を下げるなど……!」
馬鹿王子が抗議していますが、いったい誰のせいだと思っているのでしょう。……わたくしも陛下がここまでされるとは思っておりませんでしたので驚いていますが。
「──黙れ。舞踏会はこれにて閉会。クローディア殿、正式な謝罪は後ほど。騒ぎを起こした第三王子の処分は追って措置する」
──国王陛下の重々しい宣言で、この茶番劇はとりあえず幕を下ろすことと相成りました。
「……もう良い」
まだまだゴネそうなユリア嬢の言葉を国王陛下の重々しいお声が遮られます。
「転生者の知識が聞いて呆れるわ。それならば、なぜシルフィーニ男爵領は疲弊しているのだ? 男爵家が代々慎ましく暮らしていたものを言っても聞かぬそなたの過分な贅沢で家も領民も貧しくなったのだ。なんという親不孝者か!」
「ち、違います……、わ、わたしの家は貧しくなってません……」
最後は吐き捨てるようにおっしゃられた国王陛下の剣幕に、ユリア嬢はしどろもどろになってます。温厚な陛下をここまで激怒させるとは逆にすごいですわ。
「そなたがクローディア殿に冤罪をかけようと工作している時点で、もう調べはついておる。……クローディア殿に事情を話し、赦しが得られれば、そなたは修道院に送られるだけでまだ済んだものを」
「な、なんで、わたしがそれだけで修道院なのよ!」
ユリア嬢、陛下にその口調はまずいですわ。
それにしても、まだ自分がしたことの重大さを分かっていませんのね。
グランゼリアの女王になるかもしれない者を侮辱したのです。わたくしを実の娘のように可愛がっておられるあちらの国王陛下に知られたら、惨殺コースですわよ? それに比べたら、修道院行きはかなりの温情だと思います。
「一応ジェシーの想い人だからということで大目に見たが、甘かったわ。親不孝者のそなたのせいで、シルフィーニ家は一族郎党処刑。国家転覆罪はもちろん公開処刑だ。このような国辱、そなたは楽に死ねると思うな!」
ユリア嬢はしばらく愕然とした顔で陛下を見つめた後、きっ、とわたくしを睨みつけました。
「なんで、なんでよ! あんた、あんたのせいよ! あんたがわたしを虐めないから!」
ユリア嬢がわたくしに飛びかかるような勢いで言ってきますが、近衛騎士に押さえられているため、それは叶いません。
「……そもそも、あなたとわたくしは接点がありません。お門違いな逆恨みですわね」
嫌な言い方ですが、たとえユリア嬢を虐めたとしても、わたくしは罪に問われなかったでしょうし。
恨むのなら、自分の馬鹿さ加減を恨みなさい。……これはユリア嬢だけでなく、ジェシー様にも言えますが。
わめくユリア嬢が地下牢に連行されて行ったのを見届けた後、国王陛下はその頭を下げられました。
「クローディア殿、此度は誠にすまなかった」
「父上、このような場で頭を下げるなど……!」
馬鹿王子が抗議していますが、いったい誰のせいだと思っているのでしょう。……わたくしも陛下がここまでされるとは思っておりませんでしたので驚いていますが。
「──黙れ。舞踏会はこれにて閉会。クローディア殿、正式な謝罪は後ほど。騒ぎを起こした第三王子の処分は追って措置する」
──国王陛下の重々しい宣言で、この茶番劇はとりあえず幕を下ろすことと相成りました。
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