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1.婚約破棄
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「クローディア・リーデンベルグ、貴様との婚約を破棄する! 貴様は公爵令嬢という身分を笠に着て男爵令嬢であるユリアをいじめた! そんな心根の腐った女など妻と呼ぶのも穢らわしい。わたしには未来の国母たるこのユリアがふさわしいのだ!」
「……は?」
エレミア王国国王夫妻主催のとある舞踏会にて、わたくしクローディア・リーデンベルグはこの国の第三王子であるジェシー・エレミア殿下に突然奇想天外な難癖をつけられました。
いろいろとツッコミどころはありますが、とりあえずこの場で一番大事なことを問いただしましょう。
「あの……国母とはいったいどういうことですの?」
この国には既に立派な王太子殿下がいらっしゃったはずで、通常ならばその婚約者が未来の国母と呼ばれる立場におられるはず。もしかしたら、わたくしの知らないところで政変でも起こったのかしら。
わけがわからないながらも、わたくしはジェシー王子に問いました。
すると、ジェシー王子は縋りつくユリア嬢の腰を抱き寄せながら、馬鹿にしたような笑みを向けてきました。……なんだかムカつきますわねえ。
「高貴で優秀なわたしほど次期国王にふさわしい存在はない。兄などすぐに蹴落としてくれる」
……ということは、クリストフ王太子殿下は廃嫡されたわけではなく、これは完全なるジェシー王子の暴走ということかしら。
その考えを肯定するように、傍に控えていたわたくしの護衛騎士のオーティスが耳元で囁きました。
「第三王子は今までも国王陛下に王太子にふさわしいのは自分だと訴えていたようですね。国王は第三王子に公の場でそれを言わないように釘を刺されていたとのことです」
「……なるほど」
国王陛下の命に背き、愚かにもこのような衆人環視の場でそれを口にしてしまうとは。
わたくしは扇子を開いて溜息を押し殺します。
……たとえ愚かでも身のほどを知っていればよろしかったのに。
わたくしは、とある方々が入場されて来られたのを目の端で確認すると、目の前の馬鹿(もうこれでいいでしょう)に視線を移します。
「オーティス様! もう無理しなくてもいいんです! クローディア様は断罪されたんです。罪人にオーティス様を縛る権利はないんですから!」
今までジェシー王子に縋りついていた男爵令嬢がいきなりオーティスの傍に駆け寄ってきて叫びました。
ユリア嬢……だったかしら。なんだかこの娘も頭弱そうね。
貴族最下位の一男爵令嬢が、王家に連なる血筋の公爵令嬢たるわたくしをこうも堂々と罪人扱いとは。
「黙れ。この無礼者めが」
見た目だけは可愛らしい桃色の髪の男爵令嬢に、わたくしの護衛騎士は一般的に麗しいと称されるその顔を嫌悪に歪ませ、忌々しげに吐き捨てました。
「……は?」
エレミア王国国王夫妻主催のとある舞踏会にて、わたくしクローディア・リーデンベルグはこの国の第三王子であるジェシー・エレミア殿下に突然奇想天外な難癖をつけられました。
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この国には既に立派な王太子殿下がいらっしゃったはずで、通常ならばその婚約者が未来の国母と呼ばれる立場におられるはず。もしかしたら、わたくしの知らないところで政変でも起こったのかしら。
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すると、ジェシー王子は縋りつくユリア嬢の腰を抱き寄せながら、馬鹿にしたような笑みを向けてきました。……なんだかムカつきますわねえ。
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「第三王子は今までも国王陛下に王太子にふさわしいのは自分だと訴えていたようですね。国王は第三王子に公の場でそれを言わないように釘を刺されていたとのことです」
「……なるほど」
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「黙れ。この無礼者めが」
見た目だけは可愛らしい桃色の髪の男爵令嬢に、わたくしの護衛騎士は一般的に麗しいと称されるその顔を嫌悪に歪ませ、忌々しげに吐き捨てました。
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