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28.動かぬ証拠……って、これが!?
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「──ビッチ・スタインは嘘を言っている」
冷ややかに目をすがめながら、当然のようにシダースさんが言った。
うっわ、ビッチちゃん、ここまで来て嘘ついちゃうのか。さっき陛下が偽証罪になるっておっしゃってたのに、強心臓だなあ。
「嘘じゃないです! ねっ、サバス様、そうですよね! 教科書はサバス様からもらったんですよね!?」
「え……っ、そ、そう言われてみれば、そうだったかも……?」
ビッチちゃんの迫力に押されたのか、サバス様がキョドりながらそう答える。
うっわー、サバス様チョロすぎ! いくら鳥頭だったとしても、裁判で適当なこと言っちゃだめだろ!
「……ビッチ・スタインの発言は虚言である」
「だから、虚言じゃないですってば! もー、なんど言ったら分かってくれるんですか!?」
これだけシダースさんが指摘しているのに、ビッチちゃんはぷんぷんというように頬をふくらませた。でもかわいくなーい。
……だから、精霊のシダース様に嘘は通じないんだって、いつになったら理解するのかな?
こうやって彼らが嘘をつくのが分かっていたから、シダースさんが審判の役目をしているんだって、いい加減気づいてほしい。
「ビッチ・スタイン、シダース様に嘘は通じぬ。そのような見苦しいまねは……」
「だから、嘘じゃないですって! そんなどうでもいいことよりも、マグノリアがわたしをいじめた動かぬ証拠がここにあります!」
とうてい陛下に対してとる態度でも言葉使いでもないビッチちゃんは、懲りもせず陛下のお言葉をさえぎった。えええ、陛下がここまでおっしゃっているのに、ビッチちゃん、その返しはありえない。
そして、ビッチちゃんが持っていた書類入れから得意げに出してきた数冊の教科書らしきものを見れば……あ、あれ? あれって、ひょっとして……。
「わたしのなくした教科書がびりびりになって返ってきたんです! きっと、マグノリアがやったに違いないわ!!」
……ビッチちゃん、全然動かぬ証拠じゃないじゃん。ドヤ顔でこっちを見てるけど、言ってること推測でしかないからね?
あきれる会場中の視線がビッチちゃんにそそがれたにもかかわらず、サバス様は彼女の嘘に反応した。
「なんだとっ!? ビッチの教科書を隠すだけでは飽きたらず、陰険にも破り捨てたのか! マグノリア、貴様はなんという卑劣な女なのだ!」
サバス様がわたしを指さして怒鳴ってくるけれど、馬鹿馬鹿しくてそれに反応する気にもなれない。でも、サバス様がこうして言ってくるってことは、彼もビッチちゃんのいじめの証拠品とやらの存在を今知ったんだろうな。
「……陛下、発言してもよろしいでしょうか?」
「許可する」
陛下が首肯されるのを確認してから、少し息を吸い、わたしは言った。
「──スタイン嬢が手にしている破れた教科書、あれはわたしの教科書だと思うのですが」
その途端、それまで少しざわついていた会場がしんと静まりかえった。お花畑たちも「えっ、えっ?」と目を丸くしている。
「確認する。ビッチ・スタインの言う証拠の品とやらをこちらに持ってくるように」
わたしの言葉を受けて、陛下が近くにいた騎士に声をかけられる。するとその騎士は、ビッチちゃんの手から破れた教科書を取り上げた。
「えっ、ちょ、ちょっと……っ」
少しばかりあせった様子で、ビッチちゃんが教科書に手を伸ばしたけど、騎士は素知らぬ様子で陛下の元へと運んだ。
そして、陛下がそれをいろいろと角度を変えて観察される。
「……ふむ、確かにマグノリア嬢の魔力を感じられるな」
陛下がそうおっしゃった途端、ビッチちゃんがなぜか一転して「ざまぁ」というような顔でこっちを見てきた。
「やっぱり! マグノリアが触ったから、その教科書に魔力が移ったんですね!」
「なんと! それではやはりマグノリアのしわざだったのか! なんという恐ろしい女だ! 陛下、この女を極刑にしてください!!」
場所も考えず、そう怒鳴り散らすサバス様に、会場中から「アホなの?」というような視線が送られる。
わたしの魔力が感じられるって指摘されただけで、わたしが破ったとは陛下は一言もおっしゃってないからね。元がわたしのものなら、わたしの魔力がこもっているのは当然だし。
……それに、教科書破っただけで極刑ってなんだ? それでわたしが極刑なら、王家の方々のみならず、精霊王のシダースさんにまで不敬かましたサバス様たちはいったいどうなるんだ。
「いや、そうではない。ここまで強力な魔力を感じられるということは、これはもともとマグノリア嬢のものだったのだ」
わたしの思いを証明するかのように、陛下が確信を得たようなお顔でおっしゃる。
すると、それまでドヤァとばかりに主張していたお花畑たちは、虚を突かれたような顔をした。
「で、ですが、そのような曖昧なもの、どうやって証明するのです!」
「そうですよ! そんな変哲もない教科書、やろうとすれば誰のものとでも言えます! マグノリアのものだって、どうやって証明するんですか!?」
うっわ、ビッチちゃん、陛下に楯突くとか何様のつもりなんだろ。……そして、今なにげに自分のやったこと暴露したよね?
「──証明ならできる。この教科書がマグノリア嬢のものだという動かぬ証拠があるからな」
「え……っ!?」
威風堂々とした陛下のお言葉に、お花畑二人がびっくりした顔をして陛下のお顔を見返した。
冷ややかに目をすがめながら、当然のようにシダースさんが言った。
うっわ、ビッチちゃん、ここまで来て嘘ついちゃうのか。さっき陛下が偽証罪になるっておっしゃってたのに、強心臓だなあ。
「嘘じゃないです! ねっ、サバス様、そうですよね! 教科書はサバス様からもらったんですよね!?」
「え……っ、そ、そう言われてみれば、そうだったかも……?」
ビッチちゃんの迫力に押されたのか、サバス様がキョドりながらそう答える。
うっわー、サバス様チョロすぎ! いくら鳥頭だったとしても、裁判で適当なこと言っちゃだめだろ!
「……ビッチ・スタインの発言は虚言である」
「だから、虚言じゃないですってば! もー、なんど言ったら分かってくれるんですか!?」
これだけシダースさんが指摘しているのに、ビッチちゃんはぷんぷんというように頬をふくらませた。でもかわいくなーい。
……だから、精霊のシダース様に嘘は通じないんだって、いつになったら理解するのかな?
こうやって彼らが嘘をつくのが分かっていたから、シダースさんが審判の役目をしているんだって、いい加減気づいてほしい。
「ビッチ・スタイン、シダース様に嘘は通じぬ。そのような見苦しいまねは……」
「だから、嘘じゃないですって! そんなどうでもいいことよりも、マグノリアがわたしをいじめた動かぬ証拠がここにあります!」
とうてい陛下に対してとる態度でも言葉使いでもないビッチちゃんは、懲りもせず陛下のお言葉をさえぎった。えええ、陛下がここまでおっしゃっているのに、ビッチちゃん、その返しはありえない。
そして、ビッチちゃんが持っていた書類入れから得意げに出してきた数冊の教科書らしきものを見れば……あ、あれ? あれって、ひょっとして……。
「わたしのなくした教科書がびりびりになって返ってきたんです! きっと、マグノリアがやったに違いないわ!!」
……ビッチちゃん、全然動かぬ証拠じゃないじゃん。ドヤ顔でこっちを見てるけど、言ってること推測でしかないからね?
あきれる会場中の視線がビッチちゃんにそそがれたにもかかわらず、サバス様は彼女の嘘に反応した。
「なんだとっ!? ビッチの教科書を隠すだけでは飽きたらず、陰険にも破り捨てたのか! マグノリア、貴様はなんという卑劣な女なのだ!」
サバス様がわたしを指さして怒鳴ってくるけれど、馬鹿馬鹿しくてそれに反応する気にもなれない。でも、サバス様がこうして言ってくるってことは、彼もビッチちゃんのいじめの証拠品とやらの存在を今知ったんだろうな。
「……陛下、発言してもよろしいでしょうか?」
「許可する」
陛下が首肯されるのを確認してから、少し息を吸い、わたしは言った。
「──スタイン嬢が手にしている破れた教科書、あれはわたしの教科書だと思うのですが」
その途端、それまで少しざわついていた会場がしんと静まりかえった。お花畑たちも「えっ、えっ?」と目を丸くしている。
「確認する。ビッチ・スタインの言う証拠の品とやらをこちらに持ってくるように」
わたしの言葉を受けて、陛下が近くにいた騎士に声をかけられる。するとその騎士は、ビッチちゃんの手から破れた教科書を取り上げた。
「えっ、ちょ、ちょっと……っ」
少しばかりあせった様子で、ビッチちゃんが教科書に手を伸ばしたけど、騎士は素知らぬ様子で陛下の元へと運んだ。
そして、陛下がそれをいろいろと角度を変えて観察される。
「……ふむ、確かにマグノリア嬢の魔力を感じられるな」
陛下がそうおっしゃった途端、ビッチちゃんがなぜか一転して「ざまぁ」というような顔でこっちを見てきた。
「やっぱり! マグノリアが触ったから、その教科書に魔力が移ったんですね!」
「なんと! それではやはりマグノリアのしわざだったのか! なんという恐ろしい女だ! 陛下、この女を極刑にしてください!!」
場所も考えず、そう怒鳴り散らすサバス様に、会場中から「アホなの?」というような視線が送られる。
わたしの魔力が感じられるって指摘されただけで、わたしが破ったとは陛下は一言もおっしゃってないからね。元がわたしのものなら、わたしの魔力がこもっているのは当然だし。
……それに、教科書破っただけで極刑ってなんだ? それでわたしが極刑なら、王家の方々のみならず、精霊王のシダースさんにまで不敬かましたサバス様たちはいったいどうなるんだ。
「いや、そうではない。ここまで強力な魔力を感じられるということは、これはもともとマグノリア嬢のものだったのだ」
わたしの思いを証明するかのように、陛下が確信を得たようなお顔でおっしゃる。
すると、それまでドヤァとばかりに主張していたお花畑たちは、虚を突かれたような顔をした。
「で、ですが、そのような曖昧なもの、どうやって証明するのです!」
「そうですよ! そんな変哲もない教科書、やろうとすれば誰のものとでも言えます! マグノリアのものだって、どうやって証明するんですか!?」
うっわ、ビッチちゃん、陛下に楯突くとか何様のつもりなんだろ。……そして、今なにげに自分のやったこと暴露したよね?
「──証明ならできる。この教科書がマグノリア嬢のものだという動かぬ証拠があるからな」
「え……っ!?」
威風堂々とした陛下のお言葉に、お花畑二人がびっくりした顔をして陛下のお顔を見返した。
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