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19.決定しました!
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「そういえば大審議のことなのだが、日程が決まった」
楊枝に刺したたこ焼きにふーふー息を吹きかけながらアーヴィン様が言った。……今は地を出してるからしかたないんだろうけど、王太子様としてはいまいち決まらないなあ。
わたしがそんなことを思っていると、お兄様はたこ焼きを魔法で適温に冷ましながら返事をした。
「ああ、決まったんですか。いつですか?」
「三日後だ。陛下がおっしゃるには、あの者たちの停学期間中にことを決してしまおうとのことだ」
「ああ、それはいいですね。それ以外だとあの二人がなにをしでかすか分かりませんし」
陛下のその決定にわたしはほっとした。
はっきり言って周りに迷惑しかかけてないし、彼らには早く裁かれてくださいとしか言えないな。
「予定外ではあったが、大審議の場でわたしの生誕パーティ以外の王族への不敬も問うことになると思う」
「……まあ、そうですよね。それに付随した不敬なわけですし」
お兄様もアーヴィン様の言葉にうなずいている。
「あの二人、予想以上の大馬鹿者らしいな。確かにあれをこれ以上野に放っておくのはわたしも勧めない」
思い出すのも不快なのか、シダースさんが綺麗な顔をしかめている。あの二人の性格、シダースさんからしたら忌むべきものだろうしなあ。
わたし達が微妙な顔で見合わせてたら、そこに思いもかけない来客が訪れた。
「ごきげんよう。突然お邪魔してしまったけど、よろしかったかしら?」
「ディアナ!」
彼女特有の華やかな空気を醸し出しながら、ディアナが生徒会室に入ってきた。
ディアナ命のお兄様が、椅子を蹴倒しそうな勢いで彼女に近寄る。
「あら……、たこ焼き焼いてたの?」
意外そうにディアナが言った。……確かに普通は生徒会室でたこ焼きパーティしてるとは思わないよね。
「うん、ディアナもどう? たこ焼き好きでしょ?」
かわいい女の子は大歓迎ですよ! ビッチちゃんみたいな邪悪な子はノーサンキューだけど。
「そう? あ……でも、ドレスに匂いがついてしまうのは……」
ディアナは一瞬目を輝かせたけど、すぐにちょっとしょんぼりした顔になる。
お兄様に会うのにおしゃれしてきたらしく、今日のディアナの装いは素材もデザインも洗練されたドレスだった。
「大丈夫! あまり匂いがつかないように魔法で遮断するようにしてたから。外に匂いは漏れてなかったでしょ?」
「ええ……」
確かに、という感じでディアナがうなずく。
「万が一匂いが移っても、わたしがちゃんと消してあげるから大丈夫だよ。ディアナ、こちらへおいで」
「ええ、エディル」
すかさずお兄様がディアナの腰に手を当てて、彼女を隣の席に誘導する。
ちっ、これ見よがしに独り者の前でいちゃいちゃしおって。この場で熱くなるのは、たこ焼きプレートだけで十分だぞ!
「……マギー、今舌打ちした?」
「いいええ?」
お兄様の問いにわたしはわざとらしい返しをする。
心の中では盛大にしたけどな。チイイイィッ!!
「姫、いつものことじゃないか。なにもそんなにやさぐれなくても」
「だってディアナ、わたしに会いに来ないのに、お兄様には会いに来るし」
「婚約者なんだから当たり前だろう。……でもこの学園まで会いに来てくれるなんて思わなかったけど」
「愛されてるなあ」
アーヴィン様がお兄様をからかうように言うと、お兄様の隣でディアナが「ま……」と赤くなった頬を両手で覆った。
くっ、かわいい! わたしが男だったら、ディアナをお嫁にもらうのに!
「そういえば、ここまでどうやって来たの? よく許可出たね」
わたしはふと思いついた疑問を口にした。
筆頭侯爵家の令嬢とはいえ、ここの学生じゃないディアナが生徒会室まで来るのってさすがに難しくない?
「あら、案外簡単に許可は出たわよ? 皆さん、親切にここまで案内してくださって」
するとそこで、お兄様がぴくっと反応した。
「ディアナ……、それ、男?」
「え……、ええ、皆さん男性だったわね」
ディアナがそう答えると、途端にお兄様の周りの空気が凍り出す。こっ、これは、いつぞやの再現か!?
「あっ、ねえディアナ! たこ焼き冷めないうちに食べてよ!」
「そうそう、冷めないうちに!」
生徒会室がブリザードになる前に、わたしとアーヴィン様とで言い募る。
「え、ええ……」
わたしたちの勢いに押されたディアナは、言われるままに取り皿に盛られたたこ焼きをかわいらしく口にした。その途端、ディアナが「おいしい!」と頬を緩ませる。
思わずガッツポーズしかけたわたしだけど、ディアナの次のセリフで固まった。
「でもこれもおいしいけど、ごまドレッシングはないの?」
──ありません。
楊枝に刺したたこ焼きにふーふー息を吹きかけながらアーヴィン様が言った。……今は地を出してるからしかたないんだろうけど、王太子様としてはいまいち決まらないなあ。
わたしがそんなことを思っていると、お兄様はたこ焼きを魔法で適温に冷ましながら返事をした。
「ああ、決まったんですか。いつですか?」
「三日後だ。陛下がおっしゃるには、あの者たちの停学期間中にことを決してしまおうとのことだ」
「ああ、それはいいですね。それ以外だとあの二人がなにをしでかすか分かりませんし」
陛下のその決定にわたしはほっとした。
はっきり言って周りに迷惑しかかけてないし、彼らには早く裁かれてくださいとしか言えないな。
「予定外ではあったが、大審議の場でわたしの生誕パーティ以外の王族への不敬も問うことになると思う」
「……まあ、そうですよね。それに付随した不敬なわけですし」
お兄様もアーヴィン様の言葉にうなずいている。
「あの二人、予想以上の大馬鹿者らしいな。確かにあれをこれ以上野に放っておくのはわたしも勧めない」
思い出すのも不快なのか、シダースさんが綺麗な顔をしかめている。あの二人の性格、シダースさんからしたら忌むべきものだろうしなあ。
わたし達が微妙な顔で見合わせてたら、そこに思いもかけない来客が訪れた。
「ごきげんよう。突然お邪魔してしまったけど、よろしかったかしら?」
「ディアナ!」
彼女特有の華やかな空気を醸し出しながら、ディアナが生徒会室に入ってきた。
ディアナ命のお兄様が、椅子を蹴倒しそうな勢いで彼女に近寄る。
「あら……、たこ焼き焼いてたの?」
意外そうにディアナが言った。……確かに普通は生徒会室でたこ焼きパーティしてるとは思わないよね。
「うん、ディアナもどう? たこ焼き好きでしょ?」
かわいい女の子は大歓迎ですよ! ビッチちゃんみたいな邪悪な子はノーサンキューだけど。
「そう? あ……でも、ドレスに匂いがついてしまうのは……」
ディアナは一瞬目を輝かせたけど、すぐにちょっとしょんぼりした顔になる。
お兄様に会うのにおしゃれしてきたらしく、今日のディアナの装いは素材もデザインも洗練されたドレスだった。
「大丈夫! あまり匂いがつかないように魔法で遮断するようにしてたから。外に匂いは漏れてなかったでしょ?」
「ええ……」
確かに、という感じでディアナがうなずく。
「万が一匂いが移っても、わたしがちゃんと消してあげるから大丈夫だよ。ディアナ、こちらへおいで」
「ええ、エディル」
すかさずお兄様がディアナの腰に手を当てて、彼女を隣の席に誘導する。
ちっ、これ見よがしに独り者の前でいちゃいちゃしおって。この場で熱くなるのは、たこ焼きプレートだけで十分だぞ!
「……マギー、今舌打ちした?」
「いいええ?」
お兄様の問いにわたしはわざとらしい返しをする。
心の中では盛大にしたけどな。チイイイィッ!!
「姫、いつものことじゃないか。なにもそんなにやさぐれなくても」
「だってディアナ、わたしに会いに来ないのに、お兄様には会いに来るし」
「婚約者なんだから当たり前だろう。……でもこの学園まで会いに来てくれるなんて思わなかったけど」
「愛されてるなあ」
アーヴィン様がお兄様をからかうように言うと、お兄様の隣でディアナが「ま……」と赤くなった頬を両手で覆った。
くっ、かわいい! わたしが男だったら、ディアナをお嫁にもらうのに!
「そういえば、ここまでどうやって来たの? よく許可出たね」
わたしはふと思いついた疑問を口にした。
筆頭侯爵家の令嬢とはいえ、ここの学生じゃないディアナが生徒会室まで来るのってさすがに難しくない?
「あら、案外簡単に許可は出たわよ? 皆さん、親切にここまで案内してくださって」
するとそこで、お兄様がぴくっと反応した。
「ディアナ……、それ、男?」
「え……、ええ、皆さん男性だったわね」
ディアナがそう答えると、途端にお兄様の周りの空気が凍り出す。こっ、これは、いつぞやの再現か!?
「あっ、ねえディアナ! たこ焼き冷めないうちに食べてよ!」
「そうそう、冷めないうちに!」
生徒会室がブリザードになる前に、わたしとアーヴィン様とで言い募る。
「え、ええ……」
わたしたちの勢いに押されたディアナは、言われるままに取り皿に盛られたたこ焼きをかわいらしく口にした。その途端、ディアナが「おいしい!」と頬を緩ませる。
思わずガッツポーズしかけたわたしだけど、ディアナの次のセリフで固まった。
「でもこれもおいしいけど、ごまドレッシングはないの?」
──ありません。
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