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第十二章:それなりに幸福
第148話 書店にて
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エルザ嬢に出して貰った紅茶をわたしと千花が飲み干した頃、アルフォンソさんがソファから腰を浮かした。
「それではそろそろ、ハルカ様のご本を納入する本屋へ参りますか」
「あ、はい」
わたしと千花はソファから立ち上がると、アルフォンソさんの誘導に従って、倉庫にある魔法陣みたいな物の傍に行った。
「今から行く場所は、この国最大手のラシア書店の本店です。店舗数もそうですが、店舗の規模も大きく、国外にも支店を持っています。ここで売れれば、間違いなくその書籍は大当たりになります」
わたしは神妙な面もちで、アルフォンソさんに頷いた。
「それでは参りますよ」
「はい」
わたしと千花は頷いてアルフォンソさんに続いて魔法陣に乗った。……千花に言われてこの国の平均的な民の格好をしてきて本当によかった。じゃなきゃ、こんなふうにアルフォンソさんに案内してもらえなかったかもしれないからね。
「ラシアさん、見学に参りました。よろしくお願いします」
大きな本屋に着くと、アルフォンソさんはそこの店長をわたし達に紹介してくれた。
一応、今回はお忍びということになっているので、店長さんは気軽に挨拶してくれた。
「お待ちしていましたよ。今、本を置く場所を空けたところです。これから本が並びますよ。……あいにく二十冊ですが」
「これでもこちらに一番融通をきかせたつもりですが」
「分かっておりますよ。……ああ、並び終えたようです」
アルフォンソさんと店長さんのやりとりを見ていたわたしは、それでわたしの本が並んでいる場所を見た。
そこは、売場的にもいい所で、店員さんの手書きポップが付いていた。
『陛下溺愛の婚約者、ハルカ様のご本です! 内容は騎士と姫君の恋物語! 騎士は格好良く、姫君はとても可愛らしいです! 是非手に取ってご覧下さい!』
そのポップを見て、わたしはなんだか恥ずかしくなってきた。
本の内容を褒められたのもそうだけど、わたしがカレヴィ溺愛の婚約者とか……もしかして、そのことが国民にも浸透しているのかな。あとでアルフォンソさんにこっそり聞いてみよう。
わたしがそんなことを考えていたら、店長さんに売場からちょっと離れた場所に移動を促された。
その内に、十五、六くらいの若い女の子達が三人わたしの本の傍に寄ってきて、「あ、なんだか、すごく綺麗な色ー」と表紙を褒めてくれた。う、嬉しい! わたしは思わず赤くなる頬を手で押さえた。
「えっ、ハルカ様のご本だって……ホントに!?」
女の子の一人がポップを見て叫ぶと、それを聞きつけたのか、わらわらと人が寄ってきた。
それで、わたしは既にここでは結構な有名人らしいことを知った。
女の子達はそれぞれわたしの本を取ると、ぱらぱらとページをめくった。
「あ、すみませーん。これ、どうやって読むんですか?」
女の子の一人が近くに控えていた女性の書店員さんを捕まえて問うと、彼女は右から左に読んでいくんですよ、と説明した。
それで三人は納得したように頷くと、さっさと精算に向かってしまった。
それを見ていた人達がそれに続くように本を取って精算の所に並んだ。
……ちょっとちょっと、中身確認しなくていいの?
わたしがそう思う間もなく、二十冊あったわたしの本は売り切れてしまった。
「ええーっ、もうないの? 在庫は?」
「すみません、ハルカ様のご本は今出ていただけなんです。次の入荷はまだ決まっていません」
女性が不満そうに言うと、本当に申し訳なさそうに書店員さんが謝った。
「えー……、じゃあ、予約していくから。入ったら連絡して」
「はい。誠に申し訳ございません」
書店員さんが予約表と思わしき紙とペンを差し出すと、女性はそれに記入していく。すると、自然にその後ろにわたしの本を予約しようという人が行列を作った。
……あ~、申し訳ないなあ。まさかわたしの本がこんなに売れるとは思わなかったよ。
カレヴィの婚約者ってことがこんなに広まってるとは思わなかったし。
むしろ刷りすぎたと思っていたから、この事態には本当に驚いた。
わたしがそんなことを考えていると、ラシア書店の店長に男性の書店員が小声でなにかを伝えてきた。
「どうやら他の支店もこちらと同じ事態のようです。アルフォンソさん、次はもっと印刷してくださいよ」
「はい、分かりました。最初は二万部と見ていましたが、この様子ではその十倍は必要そうですね」
え、その十倍って、まさか二十万部ってこと!?
「そうですね。……それでも足りないかもしれませんよ。ハルカ様のご本はこの国だけではなく他の国にも需要がありそうですから」
え……、ザクトアリアは分かるけど、なんで他の国?
わたしがびっくりしていると、千花が耳打ちしてきた。
「……実は他の国にも、はるかがわたしの友達でカレヴィ王の婚約者だってことが結構知られてるんだよね。一国の王と異世界出身の女性が両想いで結婚する予定だって随分話題になってるし。ガルディアの知り合いに、はるかの本見せたら、かなり欲しがってたよ。……だから需要は結構あると思う」
「え……、そうなんだ?」
そう言われてもにわかには信じられない。
でも実際に目の前で売れ切れちゃったんだし、また印刷所に増刷の手配しなくちゃ。
……それにしても、納入してすぐに印刷してくれと頼むとか、印刷所になにかと思われてるだろうなあ。
それに今度は一気に増えて二十万部だし。
……まあ、向こうも商売だし、たぶん普通に対応してくれると思うけど。
書店の様子を確認したところで、わたし達は書店流通組合に戻ってきた。そこでアルフォンソさんに、二十万部でなく三十万部印刷して欲しいと頼まれた。
……うわあ。わたしには未知の刷数だよ。
でも彼の真面目な顔を見たら頷くしかなく、わたしは三十万部の印刷を約束して、組合からザクトリア王宮のわたしの部屋へ戻ってきた。
千花にお茶でもしていって、と言ったけれど、相変わらず彼女は忙しいらしく「ううん、悪いけど帰るね」と言った。
……世話になりっぱなしで悪いけど、それならしょうがない。
わたしは千花にザクトアリアのチョコを土産に持たせると、移動魔法を使うその後ろ姿を見送った。
それからわたしはイヴェンヌ達に着替えさせられてから、印刷所に電話を入れた。
ありがたいことに、千花がわたしの部屋の中では携帯の電波が来るようにしてくれたのでいちいち向こうの世界に行かなくてもいい。
「あ、すみません。只野と申しますが。いつもお世話になっております」
「あ、只野はるか様でいらっしゃいますか? こちらこそ、お世話になっております。書籍は無事届きましたでしょうか?」
元々そんなにある名字ではないのと、短い期間で発注を繰り返す客ということで、印刷所にはすっかり名前を覚えられたようだ。
「はい、確かに確認しました。それで悪いんですけど、追加で三十万部印刷して欲しいんですが」
「はい!?」
電話応対に出ていた女性が素っ頓狂な声を上げた。……まあ、彼女が驚くのも無理はない。わたしでさえ、未知の数値なのだから。
「あ……、申し訳ございません。さ、三十万部でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いありません。見積書と出来上がり時期は、いつものようにメールで送って下さい。確認しだい入金します」
ん? わたしの貯金で三十万部の印刷代が賄えるかなあ。
話しながらわたしはかかる費用のことが心配になってきた。
ま、いいや。その時はカレヴィに借りよう。彼なら気持ちよく貸してくれるだろう。
そんなことを思っていたら、当の本人が顔を出してきた。
「ハルカ、帰ったか。共同の間にケーキを用意してある。一緒に食べよう」
それでわたしは一も二もなく頷いて、隣の共同の間に行った。
そこにはおいしそうなケーキが何種類もあって、実質ケーキバイキングだった。
ドレスの仮縫いが終わってもう太れないというのに、カレヴィわたしを肥えさせるつもりか?
「なんだ、取らないのか? じゃあ、俺が適当に取るが」
それでわたしは慌てて、とりあえずチョコレートケーキと苺のショートケーキをケーキ皿にトングで取って、応接セットのソファに座った。
そしてカレヴィもケーキを三種類ほど取ってきてわたしの向かいに座る。
ああ、このザクトアリアのチョコを使ったケーキ、おいしすぎ。一個と言わず、三個ぐらい食べたい。
思わず頬が緩んだわたしをカレヴィが愛しそうに見てくる。
太るのは嫌だけど、カレヴィとこうしてケーキ食べるのは楽しいな。
でも、飲み物のコーヒーだけは、砂糖、ミルク無しのブラックで。
無駄な抵抗と言わないで。
……カレヴィも更に追い打ちをかけるように、わたし用のケーキを取ってくるな。
「それではそろそろ、ハルカ様のご本を納入する本屋へ参りますか」
「あ、はい」
わたしと千花はソファから立ち上がると、アルフォンソさんの誘導に従って、倉庫にある魔法陣みたいな物の傍に行った。
「今から行く場所は、この国最大手のラシア書店の本店です。店舗数もそうですが、店舗の規模も大きく、国外にも支店を持っています。ここで売れれば、間違いなくその書籍は大当たりになります」
わたしは神妙な面もちで、アルフォンソさんに頷いた。
「それでは参りますよ」
「はい」
わたしと千花は頷いてアルフォンソさんに続いて魔法陣に乗った。……千花に言われてこの国の平均的な民の格好をしてきて本当によかった。じゃなきゃ、こんなふうにアルフォンソさんに案内してもらえなかったかもしれないからね。
「ラシアさん、見学に参りました。よろしくお願いします」
大きな本屋に着くと、アルフォンソさんはそこの店長をわたし達に紹介してくれた。
一応、今回はお忍びということになっているので、店長さんは気軽に挨拶してくれた。
「お待ちしていましたよ。今、本を置く場所を空けたところです。これから本が並びますよ。……あいにく二十冊ですが」
「これでもこちらに一番融通をきかせたつもりですが」
「分かっておりますよ。……ああ、並び終えたようです」
アルフォンソさんと店長さんのやりとりを見ていたわたしは、それでわたしの本が並んでいる場所を見た。
そこは、売場的にもいい所で、店員さんの手書きポップが付いていた。
『陛下溺愛の婚約者、ハルカ様のご本です! 内容は騎士と姫君の恋物語! 騎士は格好良く、姫君はとても可愛らしいです! 是非手に取ってご覧下さい!』
そのポップを見て、わたしはなんだか恥ずかしくなってきた。
本の内容を褒められたのもそうだけど、わたしがカレヴィ溺愛の婚約者とか……もしかして、そのことが国民にも浸透しているのかな。あとでアルフォンソさんにこっそり聞いてみよう。
わたしがそんなことを考えていたら、店長さんに売場からちょっと離れた場所に移動を促された。
その内に、十五、六くらいの若い女の子達が三人わたしの本の傍に寄ってきて、「あ、なんだか、すごく綺麗な色ー」と表紙を褒めてくれた。う、嬉しい! わたしは思わず赤くなる頬を手で押さえた。
「えっ、ハルカ様のご本だって……ホントに!?」
女の子の一人がポップを見て叫ぶと、それを聞きつけたのか、わらわらと人が寄ってきた。
それで、わたしは既にここでは結構な有名人らしいことを知った。
女の子達はそれぞれわたしの本を取ると、ぱらぱらとページをめくった。
「あ、すみませーん。これ、どうやって読むんですか?」
女の子の一人が近くに控えていた女性の書店員さんを捕まえて問うと、彼女は右から左に読んでいくんですよ、と説明した。
それで三人は納得したように頷くと、さっさと精算に向かってしまった。
それを見ていた人達がそれに続くように本を取って精算の所に並んだ。
……ちょっとちょっと、中身確認しなくていいの?
わたしがそう思う間もなく、二十冊あったわたしの本は売り切れてしまった。
「ええーっ、もうないの? 在庫は?」
「すみません、ハルカ様のご本は今出ていただけなんです。次の入荷はまだ決まっていません」
女性が不満そうに言うと、本当に申し訳なさそうに書店員さんが謝った。
「えー……、じゃあ、予約していくから。入ったら連絡して」
「はい。誠に申し訳ございません」
書店員さんが予約表と思わしき紙とペンを差し出すと、女性はそれに記入していく。すると、自然にその後ろにわたしの本を予約しようという人が行列を作った。
……あ~、申し訳ないなあ。まさかわたしの本がこんなに売れるとは思わなかったよ。
カレヴィの婚約者ってことがこんなに広まってるとは思わなかったし。
むしろ刷りすぎたと思っていたから、この事態には本当に驚いた。
わたしがそんなことを考えていると、ラシア書店の店長に男性の書店員が小声でなにかを伝えてきた。
「どうやら他の支店もこちらと同じ事態のようです。アルフォンソさん、次はもっと印刷してくださいよ」
「はい、分かりました。最初は二万部と見ていましたが、この様子ではその十倍は必要そうですね」
え、その十倍って、まさか二十万部ってこと!?
「そうですね。……それでも足りないかもしれませんよ。ハルカ様のご本はこの国だけではなく他の国にも需要がありそうですから」
え……、ザクトアリアは分かるけど、なんで他の国?
わたしがびっくりしていると、千花が耳打ちしてきた。
「……実は他の国にも、はるかがわたしの友達でカレヴィ王の婚約者だってことが結構知られてるんだよね。一国の王と異世界出身の女性が両想いで結婚する予定だって随分話題になってるし。ガルディアの知り合いに、はるかの本見せたら、かなり欲しがってたよ。……だから需要は結構あると思う」
「え……、そうなんだ?」
そう言われてもにわかには信じられない。
でも実際に目の前で売れ切れちゃったんだし、また印刷所に増刷の手配しなくちゃ。
……それにしても、納入してすぐに印刷してくれと頼むとか、印刷所になにかと思われてるだろうなあ。
それに今度は一気に増えて二十万部だし。
……まあ、向こうも商売だし、たぶん普通に対応してくれると思うけど。
書店の様子を確認したところで、わたし達は書店流通組合に戻ってきた。そこでアルフォンソさんに、二十万部でなく三十万部印刷して欲しいと頼まれた。
……うわあ。わたしには未知の刷数だよ。
でも彼の真面目な顔を見たら頷くしかなく、わたしは三十万部の印刷を約束して、組合からザクトリア王宮のわたしの部屋へ戻ってきた。
千花にお茶でもしていって、と言ったけれど、相変わらず彼女は忙しいらしく「ううん、悪いけど帰るね」と言った。
……世話になりっぱなしで悪いけど、それならしょうがない。
わたしは千花にザクトアリアのチョコを土産に持たせると、移動魔法を使うその後ろ姿を見送った。
それからわたしはイヴェンヌ達に着替えさせられてから、印刷所に電話を入れた。
ありがたいことに、千花がわたしの部屋の中では携帯の電波が来るようにしてくれたのでいちいち向こうの世界に行かなくてもいい。
「あ、すみません。只野と申しますが。いつもお世話になっております」
「あ、只野はるか様でいらっしゃいますか? こちらこそ、お世話になっております。書籍は無事届きましたでしょうか?」
元々そんなにある名字ではないのと、短い期間で発注を繰り返す客ということで、印刷所にはすっかり名前を覚えられたようだ。
「はい、確かに確認しました。それで悪いんですけど、追加で三十万部印刷して欲しいんですが」
「はい!?」
電話応対に出ていた女性が素っ頓狂な声を上げた。……まあ、彼女が驚くのも無理はない。わたしでさえ、未知の数値なのだから。
「あ……、申し訳ございません。さ、三十万部でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いありません。見積書と出来上がり時期は、いつものようにメールで送って下さい。確認しだい入金します」
ん? わたしの貯金で三十万部の印刷代が賄えるかなあ。
話しながらわたしはかかる費用のことが心配になってきた。
ま、いいや。その時はカレヴィに借りよう。彼なら気持ちよく貸してくれるだろう。
そんなことを思っていたら、当の本人が顔を出してきた。
「ハルカ、帰ったか。共同の間にケーキを用意してある。一緒に食べよう」
それでわたしは一も二もなく頷いて、隣の共同の間に行った。
そこにはおいしそうなケーキが何種類もあって、実質ケーキバイキングだった。
ドレスの仮縫いが終わってもう太れないというのに、カレヴィわたしを肥えさせるつもりか?
「なんだ、取らないのか? じゃあ、俺が適当に取るが」
それでわたしは慌てて、とりあえずチョコレートケーキと苺のショートケーキをケーキ皿にトングで取って、応接セットのソファに座った。
そしてカレヴィもケーキを三種類ほど取ってきてわたしの向かいに座る。
ああ、このザクトアリアのチョコを使ったケーキ、おいしすぎ。一個と言わず、三個ぐらい食べたい。
思わず頬が緩んだわたしをカレヴィが愛しそうに見てくる。
太るのは嫌だけど、カレヴィとこうしてケーキ食べるのは楽しいな。
でも、飲み物のコーヒーだけは、砂糖、ミルク無しのブラックで。
無駄な抵抗と言わないで。
……カレヴィも更に追い打ちをかけるように、わたし用のケーキを取ってくるな。
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