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第七章:試行錯誤
第73話 二人の客人
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「え、ええ……? シルヴィ、それはちょっと酷いよ」
わたしは当惑しながらも、彼に抗議してみる。
可愛い弟としか見れないシルヴィに、カレヴィからわたしを奪うなんて宣言されるなんて、わたしとしては困惑するしかない。
「酷いのは分かっています。けれど、こんな絶好の機会をみすみす逃がすなんて俺には出来ません」
そう言うシルヴィの表情は真摯で、鈍いわたしでも本当にそうするつもりなのが窺えた。
「そんなのわたし嫌だよ。そんなことしたら、わたしシルヴィを嫌いになっちゃうよ」
わたしがそう言ったことで、シルヴィの顔が苦悩に歪んだ。
それを目にして、わたしはちょっと心が痛む。
でも、シルヴィはわたしとカレヴィの仲を引き裂こうとしているから、ある意味自業自得だよね。
「……まあまあ、シルヴィ。ハルカさんは先程痴漢に襲われたばかりなのだから、あまり不安にさせることはやめてもらいたいね」
イアスがわたし達の間に立って、宥めてくれる。なんというか、年齢の割にイアスはこういうところは凄く大人だ。魔術師として王宮に務めているせいでもあるのかもしれない。
「あ、ああ、分かった」
……そうは言ったものの、シルヴィはきっと元老院に話を通しちゃうんだろうな。
そう考えると、わたしはとても気が重かった。
けれど、一応お客様が来てるのに、わたしもこのままここで休んでいるわけにもいかず、渋々起きあがることにした。
「……大丈夫ですか?」
イアスがいたわるように、わたしの背に手を当ててきた。
そこから、なにか温かいものが流れ込んでくる気がして、わたしは思わず彼を見た。
……これって、わたしが発作を起こしたときに千花がしてくれたやつだよね。
「うん、大丈夫。おかげでだいぶ良くなったよ。ありがとう、イアス」
わたしがにっこりと彼に笑いかけると、イアスも嬉しそうに微笑んだ。
「いえ、ハルカさんが良くなって嬉しいです」
わたしは自分の服装がウォーキングの格好なままなのを確認して、このままでいるのもなんだから、二人に一応断っておいた。
「……とりあえず、部屋まで戻ってちょっと着替えてくるね。これ、運動用の服だから」
わたしがそう言うと、別にそのままでもいいのにと二人に言われたけれど、ザクトアリアの未来の王妃としては、かなり気品にかけることは間違いない。
スポーツ用品としてはかなりお高いブランドものなんだけど、そんなことが異世界出身の二人に分かるわけもないし、彼らからしたら野暮ったいことこの上ないだろう。
もう少し暖かくなったら、ダイエット用のパーカーに鞍替えするかなあ。
そういうわけで、わたしは申し訳ないけど二人に事務所で待っててもらって、数あるブランド物からパンツスタイルのスーツを身につけた。
昨日アーネスにこの世界の衣装は煽情的だと言われたので、一応自衛のためでもある。
すると、事務所で待機していたシルヴィとイアスがわたしの姿を見て、一瞬がっかりしたような顔になった。
……あれ、この服装気に入らなかった?
わたしが不安げに彼らを見ていると、イアスが代表して褒めてくれた。
「なかなか凛々しくて、似合ってますよ」
「……しかし、ハルカのスカート姿を期待していただけに残念だな」
むっ。シルヴィ、純真な振りして心の中ではアーネスみたいなこと考えてたんだな。
でもイアスもなんかがっかりしてたよね。
いくら真面目そうに見えても彼も男性だってことかあ。
わたしが横目で二人を軽く睨むと、彼らはちょっとうろたえた。
どうやら、わたしに対して考えてることが筒抜けと分かって動揺したらしい。
「あ、ああ、そういえば、昨日は兄が大変失礼しました」
取り繕うようにイアスにそう言われて、わたしは思わずかっと赤くなってしまった。
まさか、このタイミングで言われるとは思わなかったよ。
「……アーネスがなにかしたのか?」
不思議そうにシルヴィがイアスに尋ねる。
う、うーん、これは彼に伝えていいものかどうか。
「ティカ様からお聞きしました。兄があなたを襲おうとしたこと。……それで、今朝のあの輩の不埒な行為が重なって発作が起きたのでしょう」
あ、そうか。
てっきりあの気持ちの悪いやつのせいで発作が起こったと思いこんでたけど、アーネスのせいでもあるかもしれないのか。
──アーネス、許すまじ。
わたしがぐっと拳を握ってアーネスへの怒りを新たにしていると、シルヴィが頬を怒りに染めて今度はわたしを追及した。
「それは本当なんですか、ハルカ。いったいアーネスにどこまでされたのです」
う、そこまで言わなくちゃならないの?
「……言いたくないって言ったら?」
「言えないようなことをされたと、俺は判断しますよ。……まさか、最後まではいってないでしょうね?」
「! そんなことあるわけないじゃない!」
あまりのことに、わたしはびっくりして叫んでしまった。
彼にそんなこと思いこまれたら、カレヴィの耳にまで入ってしまうかもしれない。
「……では、どこまでされたんですか」
うう、疑いを晴らすにはやっぱり言わなくちゃ駄目?
わたしは冷や汗を流しながらシルヴィを見た。
それに対して彼は難しい顔でこちらを見つめている。
「う、え、と。む、胸に……や、やっぱり言いたくない!」
第一こんな事聞くこと自体セクハラじゃないか。
わたしがダイニングに駆け込んで、恥ずかしさに身悶えていると、二人がその後に付いてきた。
「ハルカさん、そんなに恥ずかしがらないでください。シルヴィにはよく言って聞かせますから」
「しかし、おまえは気にならないのか、イアス」
不満そうなシルヴィに対して、イアスは反論する。
「気にならないわけではないけど、女性にこんな恥ずかしい思いをさせる方がどうかしているだろう?」
それを聞いて、シルヴィが苦虫を噛み潰したような顔になる。
そして、やがて仕方なさそうに言った。
「……分かりました。このことについては詳細は聞きません」
恥ずかしいことを言わなくて済んでわたしはほっとしたけれど、続いてシルヴィの鋭い突っ込みが入った。
「ただ、ハルカ。アーネスをどうして一人で招き入れたのです。それでは襲ってくれと言うようなものです」
「う、そ、それは、うっかり千花だと勘違いして……。これからはきちんと確認するようにするよ。ごめんね」
抱きしめられてキスされそうになったシルヴィになんで謝ってるのか分からないけど、わたしの求婚者とはいえ、カレヴィの弟だし、一応念のため彼の機嫌を取っておく。
「と、とりあえず、コーヒーでも淹れるから、二人は席に座ってて」
それで、シルヴィはイアスに促されてダイニングの席についた。
それを確認して、わたしはほっとしながら水を入れたやかんを火にかけた。
「……それにしても、どうやってここに来たの? 確か、こちら側の許可がないと来られないはずだよね?」
さっきから聞こうと思っていたことをわたしは聞いてみる。
それに対して、イアスはああ、と言って理由を説明してくれた。
「転移門を通して、ハルカさんの魔力の乱れ……今回の場合は身体機能の低下が認められたので、僕が門を無理矢理こじ開けました」
「こじ開けたって……」
イアスがあまりにも簡単に言ってくれたのでわたしは思わずぽかんとしてしまった。
「簡単に言ってるけど、それって難しいんでしょう?」
でも、そのおかげで助かったんだけどさ。
「確かに異世界の空間に穴を開けるのは難しいですよ。けれど、ここに繋がる門が固定してあるわけですし、新たに座標を開くよりは簡単です」
おお、なんとも頼もしいお言葉。
これほどの才能の持ち主なら、千花がイアスを目にかけるのも当然なのかもしれない。
「そうだったんだ。おかげで助かったよ。イアス、ありがとね」
「いえ」
わたしが満面の笑顔で言うと、イアスが照れたように笑った。
ああ、やっぱり可愛いなあ。
確かに見目麗しいんだけど、こんなふうに笑うとやっぱり年相応に見える。
わたしがにこにこしてイアスを見ていると、シルヴィが面白くなさそうな顔をして言った。
「……ハルカ、湯が沸いてますよ」
「あ、いけない」
シルヴィの指摘通りにやかんのお湯がぐらぐらと煮立っている。それでわたしは慌てて火を止めた。
「今、コーヒー淹れるからね」
それでしばしわたしは二人の客人のためにコーヒーを淹れることだけに専念したのだった。
わたしは当惑しながらも、彼に抗議してみる。
可愛い弟としか見れないシルヴィに、カレヴィからわたしを奪うなんて宣言されるなんて、わたしとしては困惑するしかない。
「酷いのは分かっています。けれど、こんな絶好の機会をみすみす逃がすなんて俺には出来ません」
そう言うシルヴィの表情は真摯で、鈍いわたしでも本当にそうするつもりなのが窺えた。
「そんなのわたし嫌だよ。そんなことしたら、わたしシルヴィを嫌いになっちゃうよ」
わたしがそう言ったことで、シルヴィの顔が苦悩に歪んだ。
それを目にして、わたしはちょっと心が痛む。
でも、シルヴィはわたしとカレヴィの仲を引き裂こうとしているから、ある意味自業自得だよね。
「……まあまあ、シルヴィ。ハルカさんは先程痴漢に襲われたばかりなのだから、あまり不安にさせることはやめてもらいたいね」
イアスがわたし達の間に立って、宥めてくれる。なんというか、年齢の割にイアスはこういうところは凄く大人だ。魔術師として王宮に務めているせいでもあるのかもしれない。
「あ、ああ、分かった」
……そうは言ったものの、シルヴィはきっと元老院に話を通しちゃうんだろうな。
そう考えると、わたしはとても気が重かった。
けれど、一応お客様が来てるのに、わたしもこのままここで休んでいるわけにもいかず、渋々起きあがることにした。
「……大丈夫ですか?」
イアスがいたわるように、わたしの背に手を当ててきた。
そこから、なにか温かいものが流れ込んでくる気がして、わたしは思わず彼を見た。
……これって、わたしが発作を起こしたときに千花がしてくれたやつだよね。
「うん、大丈夫。おかげでだいぶ良くなったよ。ありがとう、イアス」
わたしがにっこりと彼に笑いかけると、イアスも嬉しそうに微笑んだ。
「いえ、ハルカさんが良くなって嬉しいです」
わたしは自分の服装がウォーキングの格好なままなのを確認して、このままでいるのもなんだから、二人に一応断っておいた。
「……とりあえず、部屋まで戻ってちょっと着替えてくるね。これ、運動用の服だから」
わたしがそう言うと、別にそのままでもいいのにと二人に言われたけれど、ザクトアリアの未来の王妃としては、かなり気品にかけることは間違いない。
スポーツ用品としてはかなりお高いブランドものなんだけど、そんなことが異世界出身の二人に分かるわけもないし、彼らからしたら野暮ったいことこの上ないだろう。
もう少し暖かくなったら、ダイエット用のパーカーに鞍替えするかなあ。
そういうわけで、わたしは申し訳ないけど二人に事務所で待っててもらって、数あるブランド物からパンツスタイルのスーツを身につけた。
昨日アーネスにこの世界の衣装は煽情的だと言われたので、一応自衛のためでもある。
すると、事務所で待機していたシルヴィとイアスがわたしの姿を見て、一瞬がっかりしたような顔になった。
……あれ、この服装気に入らなかった?
わたしが不安げに彼らを見ていると、イアスが代表して褒めてくれた。
「なかなか凛々しくて、似合ってますよ」
「……しかし、ハルカのスカート姿を期待していただけに残念だな」
むっ。シルヴィ、純真な振りして心の中ではアーネスみたいなこと考えてたんだな。
でもイアスもなんかがっかりしてたよね。
いくら真面目そうに見えても彼も男性だってことかあ。
わたしが横目で二人を軽く睨むと、彼らはちょっとうろたえた。
どうやら、わたしに対して考えてることが筒抜けと分かって動揺したらしい。
「あ、ああ、そういえば、昨日は兄が大変失礼しました」
取り繕うようにイアスにそう言われて、わたしは思わずかっと赤くなってしまった。
まさか、このタイミングで言われるとは思わなかったよ。
「……アーネスがなにかしたのか?」
不思議そうにシルヴィがイアスに尋ねる。
う、うーん、これは彼に伝えていいものかどうか。
「ティカ様からお聞きしました。兄があなたを襲おうとしたこと。……それで、今朝のあの輩の不埒な行為が重なって発作が起きたのでしょう」
あ、そうか。
てっきりあの気持ちの悪いやつのせいで発作が起こったと思いこんでたけど、アーネスのせいでもあるかもしれないのか。
──アーネス、許すまじ。
わたしがぐっと拳を握ってアーネスへの怒りを新たにしていると、シルヴィが頬を怒りに染めて今度はわたしを追及した。
「それは本当なんですか、ハルカ。いったいアーネスにどこまでされたのです」
う、そこまで言わなくちゃならないの?
「……言いたくないって言ったら?」
「言えないようなことをされたと、俺は判断しますよ。……まさか、最後まではいってないでしょうね?」
「! そんなことあるわけないじゃない!」
あまりのことに、わたしはびっくりして叫んでしまった。
彼にそんなこと思いこまれたら、カレヴィの耳にまで入ってしまうかもしれない。
「……では、どこまでされたんですか」
うう、疑いを晴らすにはやっぱり言わなくちゃ駄目?
わたしは冷や汗を流しながらシルヴィを見た。
それに対して彼は難しい顔でこちらを見つめている。
「う、え、と。む、胸に……や、やっぱり言いたくない!」
第一こんな事聞くこと自体セクハラじゃないか。
わたしがダイニングに駆け込んで、恥ずかしさに身悶えていると、二人がその後に付いてきた。
「ハルカさん、そんなに恥ずかしがらないでください。シルヴィにはよく言って聞かせますから」
「しかし、おまえは気にならないのか、イアス」
不満そうなシルヴィに対して、イアスは反論する。
「気にならないわけではないけど、女性にこんな恥ずかしい思いをさせる方がどうかしているだろう?」
それを聞いて、シルヴィが苦虫を噛み潰したような顔になる。
そして、やがて仕方なさそうに言った。
「……分かりました。このことについては詳細は聞きません」
恥ずかしいことを言わなくて済んでわたしはほっとしたけれど、続いてシルヴィの鋭い突っ込みが入った。
「ただ、ハルカ。アーネスをどうして一人で招き入れたのです。それでは襲ってくれと言うようなものです」
「う、そ、それは、うっかり千花だと勘違いして……。これからはきちんと確認するようにするよ。ごめんね」
抱きしめられてキスされそうになったシルヴィになんで謝ってるのか分からないけど、わたしの求婚者とはいえ、カレヴィの弟だし、一応念のため彼の機嫌を取っておく。
「と、とりあえず、コーヒーでも淹れるから、二人は席に座ってて」
それで、シルヴィはイアスに促されてダイニングの席についた。
それを確認して、わたしはほっとしながら水を入れたやかんを火にかけた。
「……それにしても、どうやってここに来たの? 確か、こちら側の許可がないと来られないはずだよね?」
さっきから聞こうと思っていたことをわたしは聞いてみる。
それに対して、イアスはああ、と言って理由を説明してくれた。
「転移門を通して、ハルカさんの魔力の乱れ……今回の場合は身体機能の低下が認められたので、僕が門を無理矢理こじ開けました」
「こじ開けたって……」
イアスがあまりにも簡単に言ってくれたのでわたしは思わずぽかんとしてしまった。
「簡単に言ってるけど、それって難しいんでしょう?」
でも、そのおかげで助かったんだけどさ。
「確かに異世界の空間に穴を開けるのは難しいですよ。けれど、ここに繋がる門が固定してあるわけですし、新たに座標を開くよりは簡単です」
おお、なんとも頼もしいお言葉。
これほどの才能の持ち主なら、千花がイアスを目にかけるのも当然なのかもしれない。
「そうだったんだ。おかげで助かったよ。イアス、ありがとね」
「いえ」
わたしが満面の笑顔で言うと、イアスが照れたように笑った。
ああ、やっぱり可愛いなあ。
確かに見目麗しいんだけど、こんなふうに笑うとやっぱり年相応に見える。
わたしがにこにこしてイアスを見ていると、シルヴィが面白くなさそうな顔をして言った。
「……ハルカ、湯が沸いてますよ」
「あ、いけない」
シルヴィの指摘通りにやかんのお湯がぐらぐらと煮立っている。それでわたしは慌てて火を止めた。
「今、コーヒー淹れるからね」
それでしばしわたしは二人の客人のためにコーヒーを淹れることだけに専念したのだった。
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