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第六章:虎視眈々
第67話 寂しさを乗り越えるために
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「……報告が遅れたが、元老院に妃はハルカしか娶らないと宣言しておいたぞ」
のんびりとハーブティーを飲んでたら、カレヴィにおもむろにそう言われて、わたしはその場で動きを止めた。
それって、妾妃も娶らないってことだよね?
そう考えると、嬉しいのと、彼を受け入れられないもどかしさが一緒になって押し寄せてきた。
「ありがとう……」
でも気持ちは複雑だけど、彼が実際に元老院にそう言ってくれたのはとても嬉しい。
カレヴィに対するトラウマがなければ、抱きついているところだ。
そう思うと、返す返す意のままにならないこの体が恨めしい。
「それなら、わたしは少しでも早く良くならないとね」
「はるか、こういうことは焦っちゃ駄目だよ。本当に長期戦で臨むつもりでいなきゃ」
千花がわたしを心配してそう言ってくれているのは、本当にありがたいと思う。でも、そうすると三ヶ月後の婚礼に間に合わない。
それだと、いくらなんでもカレヴィが気の毒過ぎる。カレヴィはそれでも構わないって言ってくれたけどさ。
わたしがちらりとカレヴィを窺うと、彼はわたしを安心させるように言ってきた。
「ハルカは本当にこのことで気に病むな。いわば、これはすべて俺の自業自得だ。先程言った通り、俺はおまえが俺を受け入れないままでも妃として迎えるつもりでいるから、ハルカは気を楽にしていろ」
「うん……」
本当にこればかりはこの先どうなるか分からないし、わたしはなんと返していいものかも迷ったので、とりあえずカレヴィに頷いた。
「……それでは、俺はこれでザクトアリアに帰る。そろそろ戻らないとマウリスも煩いしな」
「え、もう?」
これでしばらくはまた彼と会えないと思うと、わたしは彼を無性に引き留めたくなってしまった。
だけど、カレヴィを受け入れられないわたしがそんなことしてなんになるんだと気がついて、わたしは結局は黙り込んでしまう。
「ハルカ、そう気を落とすな。──また来る」
「うん」
慰めるように言ってくるカレヴィにわたしは思わず涙ぐんで頷いた。
……本当だったら彼に抱きついているところなのに、触れられなくて寂しい。
わたしはカレヴィを見送るために転移門のところまで来た。千花は気を遣ったらしく、付いてはこなかった。
「それではな、ハルカ。……愛している」
「うん、わたしも──」
カレヴィを好きだと自覚してから、わたしは少し弱くなった気がする。
──やっぱり離れたくないよ。
思わず涙ぐんでしまいながら、わたしはカレヴィの服の端を掴んだ。
すると、カレヴィが息を呑む気配がした。
「ハルカ、離せ。おまえにそんなことをされると、俺は自分の気持ちを抑えきれない」
「あっ、ごめんね!」
わたしは慌ててカレヴィの服を離す。
確かにわたしの今やったことは、わたしに触れられないカレヴィにとっては残酷極まりないだろう。
気持ちではそう分かっていても、体は相変わらずカレヴィを拒絶するのにわたし自分勝手すぎる。
わたしがちょっと落ち込んで俯いていると、カレヴィがわたしの髪をそっと撫でてきた。
今度は彼に対する拒絶反応は出なくて、わたしははっと顔を上げる。
目の前のカレヴィは愛しそうにわたしの髪を手櫛で梳いていた。
「俺も少しは我慢しなければな。愛しいおまえを手に入れるためだ。俺は出来るだけ自重するようにするぞ」
「……うん。本当にごめんね、カレヴィ」
「謝るな。おまえは悪くないんだから、ティカ殿の言う通り心を穏やかにして過ごすことだけ考えておけ。分かったな、ハルカ」
今までのカレヴィの言動から考えるに、これ、かなり無理して言ってくれてるんだろうなあと分かってしまえるのが辛い。
でもわたしとカレヴィはここが正念場だ。
これを乗り越えちゃえば、幸せな未来が待ってるよね……?
「うん、分かった。そうする」
わたしが神妙に頷いて言うと、カレヴィはよし、と頷いて、くしゃりとわたしの頭を撫でた。……それでもさっきみたいな発作は起きなかった。
拒絶反応、出るときと出ないときがあるんだからちょっとめんどくさいよなあ。潔くどっちかにしてほしい。
でもまあ、カレヴィに触れられるのは嬉しい。
わたしはらしくもなく頬を染めて、カレヴィを見ると、彼は得も言われぬ優しい表情で微笑んだ。
わたしは、柄もなくそれにきゅんとしてしまって胸を押さえる。
こんな帰り際になってそんな顔を見せるなんて反則だ。余計離れたくなくなっちゃうよ。
わたしがそう思っていたら、カレヴィの方もそうだったらしく溜息をついてきた。
「そんな可愛らしい顔で見るな。これでは戻りたくなくなってしまう」
そう言いながらもカレヴィはわたしの髪に触れられていた手もいつの間にか離していた。……寂しいな。
「そんな顔をするな。また会いに来る」
「うん。待ってる」
わたしは胸の前で指を組み合わせて、涙を浮かべながら何度も頷いた。
「泣くな。……ティカ殿、ハルカを頼む」
「分かりました」
いつの間にか来ていたらしい千花がわたしの肩をそっと抱きながら頷いた。
ああ、わたしがこんなふうに泣いてたらカレヴィも帰りづらいよね。それでなくても彼は執務が押しているんだから、わたしがこんなんじゃ駄目だ。
わたしは取り出したハンカチで涙を拭いて、なんとかこれ以上泣くのを堪えた。
──カランカラン。
わたしが決意して転移門の呼び鈴を鳴らすと、向こう側の景色が映る。
「じゃあね、カレヴィ」
彼に心配かけないでザクトアリアに帰ってもらうように、わたしはなんとか笑顔を浮かべて言った。
「──ああ。それではな。ハルカ、養生するんだぞ」
「うん」
わたしが頷くと、少しだけ安心したように笑って、今度こそカレヴィはあちらの世界へ帰っていく。
そして段々と閉じられていく空間をわたしは動けずにじっと見つめていた。
そんなわたしの肩を千花がぽんと叩いて言った。
「わたしも大急ぎで薬調合してくるから、はるかはちょっと待っててね」
「え……、そんなに急がなくてもいいよ。なんだか悪いし」
千花だって忙しい身なのに本当に申し訳なさ過ぎる。
「はるか、わたしに遠慮は無用だよ。それに、嫌だって言っても作ってくるからね」
ちょっとおどけてだけど、有無を言わさない口調にわたしは思わず笑ってしまいながら了承した。
「うん、分かったよ」
そして千花もいなくなった事務所でわたしはぽつんと残された。
……癒しかあー。
具体的にはどんなことをしたらいいんだろ。
せっぱ詰まっているわたしは、ネットでいろいろと検索してみる。
観葉植物やお花を部屋に置くのもいいらしいし、アロマとか、癒し系の音楽を聴くのもいいらしい。あとはローズクオーツみたいな癒し系の小石を部屋に飾ったりとか。
それをわたしはメモに書き出して、買い物リストに加えた。
あと、カフェインは癒しにはあまりよろしくないらしい。
コーヒーとか紅茶好きなわたしはちょっと残念だけど、これはハーブティーとかで代用すればいいかなあ。
でもまあ、コーヒーもたまに飲む分にはいいよね。あまり我慢するのも逆にストレスになったりするし。
それに趣味の漫画を書くのもかなりのストレス発散になっているだろうから、これも程々に頑張ろう。
そう決意してわたしが両手の拳を握っていると、転移門のベルがなった。
あれ、千花もう作ってきたのかな。いくらなんでも早すぎるような気がするけど。
でも、わたしはあまりそのことを気にせずに入室を許可した。
「あ、いいよ。入って」
「ハルカ嬢、久しぶりだね。お邪魔するよ」
そう言って部屋に入ってきたのは、なんとアーネスだった。
カレヴィにさんざん彼に気をつけろと言われていたのにしまったと思ったけど、もう後の祭りだった。
迎え入れてしまったものを帰れとは言えずにわたしはひきつった笑いをこぼす。
それに対して、アーネスは色気の溢れる微笑みで返してきた。
──ああ、実はイアスも付いてきたとかないよね。
そう思って彼の後ろを確認したけど、そこには誰もいなかった。
こ、これは、なんだかやばい気がする。
背中に変な汗をかきながら、わたしは自分の迂闊さを呪った。
そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、アーネスはわたしの両手を取って嬉しそうに笑った。
「ふふ、やっと二人きりになれたね。可愛い人」
のんびりとハーブティーを飲んでたら、カレヴィにおもむろにそう言われて、わたしはその場で動きを止めた。
それって、妾妃も娶らないってことだよね?
そう考えると、嬉しいのと、彼を受け入れられないもどかしさが一緒になって押し寄せてきた。
「ありがとう……」
でも気持ちは複雑だけど、彼が実際に元老院にそう言ってくれたのはとても嬉しい。
カレヴィに対するトラウマがなければ、抱きついているところだ。
そう思うと、返す返す意のままにならないこの体が恨めしい。
「それなら、わたしは少しでも早く良くならないとね」
「はるか、こういうことは焦っちゃ駄目だよ。本当に長期戦で臨むつもりでいなきゃ」
千花がわたしを心配してそう言ってくれているのは、本当にありがたいと思う。でも、そうすると三ヶ月後の婚礼に間に合わない。
それだと、いくらなんでもカレヴィが気の毒過ぎる。カレヴィはそれでも構わないって言ってくれたけどさ。
わたしがちらりとカレヴィを窺うと、彼はわたしを安心させるように言ってきた。
「ハルカは本当にこのことで気に病むな。いわば、これはすべて俺の自業自得だ。先程言った通り、俺はおまえが俺を受け入れないままでも妃として迎えるつもりでいるから、ハルカは気を楽にしていろ」
「うん……」
本当にこればかりはこの先どうなるか分からないし、わたしはなんと返していいものかも迷ったので、とりあえずカレヴィに頷いた。
「……それでは、俺はこれでザクトアリアに帰る。そろそろ戻らないとマウリスも煩いしな」
「え、もう?」
これでしばらくはまた彼と会えないと思うと、わたしは彼を無性に引き留めたくなってしまった。
だけど、カレヴィを受け入れられないわたしがそんなことしてなんになるんだと気がついて、わたしは結局は黙り込んでしまう。
「ハルカ、そう気を落とすな。──また来る」
「うん」
慰めるように言ってくるカレヴィにわたしは思わず涙ぐんで頷いた。
……本当だったら彼に抱きついているところなのに、触れられなくて寂しい。
わたしはカレヴィを見送るために転移門のところまで来た。千花は気を遣ったらしく、付いてはこなかった。
「それではな、ハルカ。……愛している」
「うん、わたしも──」
カレヴィを好きだと自覚してから、わたしは少し弱くなった気がする。
──やっぱり離れたくないよ。
思わず涙ぐんでしまいながら、わたしはカレヴィの服の端を掴んだ。
すると、カレヴィが息を呑む気配がした。
「ハルカ、離せ。おまえにそんなことをされると、俺は自分の気持ちを抑えきれない」
「あっ、ごめんね!」
わたしは慌ててカレヴィの服を離す。
確かにわたしの今やったことは、わたしに触れられないカレヴィにとっては残酷極まりないだろう。
気持ちではそう分かっていても、体は相変わらずカレヴィを拒絶するのにわたし自分勝手すぎる。
わたしがちょっと落ち込んで俯いていると、カレヴィがわたしの髪をそっと撫でてきた。
今度は彼に対する拒絶反応は出なくて、わたしははっと顔を上げる。
目の前のカレヴィは愛しそうにわたしの髪を手櫛で梳いていた。
「俺も少しは我慢しなければな。愛しいおまえを手に入れるためだ。俺は出来るだけ自重するようにするぞ」
「……うん。本当にごめんね、カレヴィ」
「謝るな。おまえは悪くないんだから、ティカ殿の言う通り心を穏やかにして過ごすことだけ考えておけ。分かったな、ハルカ」
今までのカレヴィの言動から考えるに、これ、かなり無理して言ってくれてるんだろうなあと分かってしまえるのが辛い。
でもわたしとカレヴィはここが正念場だ。
これを乗り越えちゃえば、幸せな未来が待ってるよね……?
「うん、分かった。そうする」
わたしが神妙に頷いて言うと、カレヴィはよし、と頷いて、くしゃりとわたしの頭を撫でた。……それでもさっきみたいな発作は起きなかった。
拒絶反応、出るときと出ないときがあるんだからちょっとめんどくさいよなあ。潔くどっちかにしてほしい。
でもまあ、カレヴィに触れられるのは嬉しい。
わたしはらしくもなく頬を染めて、カレヴィを見ると、彼は得も言われぬ優しい表情で微笑んだ。
わたしは、柄もなくそれにきゅんとしてしまって胸を押さえる。
こんな帰り際になってそんな顔を見せるなんて反則だ。余計離れたくなくなっちゃうよ。
わたしがそう思っていたら、カレヴィの方もそうだったらしく溜息をついてきた。
「そんな可愛らしい顔で見るな。これでは戻りたくなくなってしまう」
そう言いながらもカレヴィはわたしの髪に触れられていた手もいつの間にか離していた。……寂しいな。
「そんな顔をするな。また会いに来る」
「うん。待ってる」
わたしは胸の前で指を組み合わせて、涙を浮かべながら何度も頷いた。
「泣くな。……ティカ殿、ハルカを頼む」
「分かりました」
いつの間にか来ていたらしい千花がわたしの肩をそっと抱きながら頷いた。
ああ、わたしがこんなふうに泣いてたらカレヴィも帰りづらいよね。それでなくても彼は執務が押しているんだから、わたしがこんなんじゃ駄目だ。
わたしは取り出したハンカチで涙を拭いて、なんとかこれ以上泣くのを堪えた。
──カランカラン。
わたしが決意して転移門の呼び鈴を鳴らすと、向こう側の景色が映る。
「じゃあね、カレヴィ」
彼に心配かけないでザクトアリアに帰ってもらうように、わたしはなんとか笑顔を浮かべて言った。
「──ああ。それではな。ハルカ、養生するんだぞ」
「うん」
わたしが頷くと、少しだけ安心したように笑って、今度こそカレヴィはあちらの世界へ帰っていく。
そして段々と閉じられていく空間をわたしは動けずにじっと見つめていた。
そんなわたしの肩を千花がぽんと叩いて言った。
「わたしも大急ぎで薬調合してくるから、はるかはちょっと待っててね」
「え……、そんなに急がなくてもいいよ。なんだか悪いし」
千花だって忙しい身なのに本当に申し訳なさ過ぎる。
「はるか、わたしに遠慮は無用だよ。それに、嫌だって言っても作ってくるからね」
ちょっとおどけてだけど、有無を言わさない口調にわたしは思わず笑ってしまいながら了承した。
「うん、分かったよ」
そして千花もいなくなった事務所でわたしはぽつんと残された。
……癒しかあー。
具体的にはどんなことをしたらいいんだろ。
せっぱ詰まっているわたしは、ネットでいろいろと検索してみる。
観葉植物やお花を部屋に置くのもいいらしいし、アロマとか、癒し系の音楽を聴くのもいいらしい。あとはローズクオーツみたいな癒し系の小石を部屋に飾ったりとか。
それをわたしはメモに書き出して、買い物リストに加えた。
あと、カフェインは癒しにはあまりよろしくないらしい。
コーヒーとか紅茶好きなわたしはちょっと残念だけど、これはハーブティーとかで代用すればいいかなあ。
でもまあ、コーヒーもたまに飲む分にはいいよね。あまり我慢するのも逆にストレスになったりするし。
それに趣味の漫画を書くのもかなりのストレス発散になっているだろうから、これも程々に頑張ろう。
そう決意してわたしが両手の拳を握っていると、転移門のベルがなった。
あれ、千花もう作ってきたのかな。いくらなんでも早すぎるような気がするけど。
でも、わたしはあまりそのことを気にせずに入室を許可した。
「あ、いいよ。入って」
「ハルカ嬢、久しぶりだね。お邪魔するよ」
そう言って部屋に入ってきたのは、なんとアーネスだった。
カレヴィにさんざん彼に気をつけろと言われていたのにしまったと思ったけど、もう後の祭りだった。
迎え入れてしまったものを帰れとは言えずにわたしはひきつった笑いをこぼす。
それに対して、アーネスは色気の溢れる微笑みで返してきた。
──ああ、実はイアスも付いてきたとかないよね。
そう思って彼の後ろを確認したけど、そこには誰もいなかった。
こ、これは、なんだかやばい気がする。
背中に変な汗をかきながら、わたしは自分の迂闊さを呪った。
そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、アーネスはわたしの両手を取って嬉しそうに笑った。
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