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第三章:王の婚約者として
第34話 修羅場
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翌日はとても気持ちのいい朝だった。
わたしは、ふわふわのオムレツとかカリカリに焼いたベーコンとか、香辛料の効いたハムやチーズ、焼きたてのパンを前にして、にこにこしながらカレヴィがそれを皿に取り分けてくれるのを待っていた。
「わあ、おいしそう。いただきまーす」
わたしは両手を重ねて挨拶した後、さっそく、おいしそうに湯気を立てるオムレツにナイフを入れる。
うん、思った通りふわふわでおいしい。
おいしい朝食ににっこりするわたしとは違って、カレヴィはやや不機嫌そうだ。
「……俺がこんなに落ち込んでいるのに、おまえは薄情だな」
「えー、そんなことないよ」
一応、そう言ってみたけれど、わたしの満面の笑顔がそれを裏切っている。
千花の作った精力減退の薬の威力は絶大だった。
だって、カレヴィのアレが馬並から人になったんだよ。
この場合、つい嬉しくて笑顔になっちゃったって仕方ないと思う。
カレヴィはなんか変なトラウマみたいになっちゃったみたいだけどさ。
でも、普通の人はあれぐらいらしいんだから、カレヴィもちょっとは我慢しないと。
「でも、カレヴィがあの薬飲んでくれて嬉しかった。ありがとう」
わたしがにこにこしてカレヴィに言うと、彼は立ち上がってわたしの隣の席まで移動してきた。
……なんだ? と思ってると、カレヴィはわたしの頬にキスをしてきた。
うーん、薬飲んでてもこういうことはするんだね。
人にさんざん見られて生活していたから、侍女達がいてもカレヴィは全然平気なんだよね。
でもシルヴィなんかは、赤くなってて可愛かったけど。
でも、あれは侍女達を気にして赤くなったわけじゃないから、王族関連の人はこういう傾向があるって覚悟しておいた方がいい気がする。
わたしもそのうちこれに慣れるのかなあ。
そういえば、お風呂とかも侍女達に入れて貰うの平気になったし。
だけど、夜は近衛兵とか控えの侍女とかがアレを聞いているらしい。
これは思い起こすたび、顔から火が出るほど恥ずかしい!
カレヴィなんかは、「ああ……」とか呟いて、わたしに警護上の問題もあるから、そういうものだと割り切れと言ってくる。
うう、王族にはプライベートってものはないって言うんだね。
まったくの庶民には、そういう部分が未だに慣れないよ。
そんなことを考えていたら、カレヴィのキスが段々激しくなってきた。
「ちょっと、カレヴィ……ッ」
まだ食べてる途中なんだし、ちょっとは遠慮してほしい。
そんなことを考えながら息を切らしていたらカレヴィは一応満足したらしく、またわたしの向かいの席へと移動していった。
「もう、朝食の途中なのに酷いよ」
「いや、おまえの笑顔が可愛くてついな」
……どうやらカレヴィは基本的な部分で、我慢ってことを知らないみたいだ。
これは、そのうち矯正する必要があるかもしれないな、とわたしはちょっと呆れながらも思う。
精力減退の薬を飲ませてても油断がならないなんて、さすが野獣。
侍女達に言わせれば、「愛されている」かららしいけど、でも、やっぱりご飯の時くらい落ち着いていて欲しいと思うのはわたしの贅沢なんだろうか?
平和だと油断していた朝食を終わらせて、カレヴィが執務室に入るのを見送ると、わたしは腹ごなしに庭園に行くことにした。
今回わたしが行ったのは、ガルディア式庭園のほう。
なんというか、桜がすごく見たかったんだよね。
周囲との違和感はまだあるけど、桜の花びらが舞い散る光景はやっぱり綺麗で、わたしは思わず日本のことを思い出してしまう。
あの朝食もおいしかったけど、そろそろ納豆とか、あじの干物とか日本的なものが恋しくなってきた。
うーん、わたしホームシックか?
あじの干物はともかく、納豆はきっとカレヴィは駄目だろうな。
それに炊き立ての白いご飯が食べたい。
キュウリのぬか漬けや、柴漬け、焼き海苔が恋しい。
……そういうところ、千花はどうしてるのかなあ。今度聞いてみよ。
そう思いながら桜の傍で溜息を付いていると、どこかで聞いたような美声が聞こえてきた。
「おや、美しい人が花の傍で、そんな切なげな溜息をついて。……なにか思い悩むことでもあるのかな?」
煌びやかな容姿のその人は、リットンモア公爵だった。
うーん、相変わらず目に眩しい人だ。
「いえ、たいしたことではないんです。ただ日本のことを少し思い出してしまって」
まさか、桜を見て納豆のことを思い出していたとは言えないから、わたしはちょっとだけごまかした。
「……ハルカ嬢はカレヴィとの婚約を少し後悔しているのかな?」
「え……」
この公爵様、冴えないわたししか知らないはずだけど、なぜかわたしだと分かったみたい。
あ……でも確か、公爵様はフレイヤに紹介状を渡したんだっけ。
「どうして、わたしだって分かったんですか?」
あれからわたしはかなり変わったはずだ。
それなのに、どうしてだろう。
「君がハルカ嬢だってことは付いている侍女や近衛兵で分かるよ。君の顔立ちに面影が残っているし」
あ、そうか。言われてみれば、納得。
今日はソフィアが付いてるからね。
私の顔のこともだけど、付いている侍女の顔まで覚えてしまうこの公爵様の記憶力はちょっと凄いよ。
「公爵様、記憶力いいんですね」
わたしが感心してちょっと息を付くと、公爵様は笑いながら人差し指を立てて、横に振った。
うわ、こんな気障な仕草まで似合うなんて、ちょっと凄い。さすが、並外れた美形だ。
「わたしのことはアーネスでいいよ。君にはかしこまった話し方をされたくないから、普段通りの話し方で頼みたいな」
「……じゃあ、アーネス」
柔らかいけれど、有無を言わせない話し方をされて、わたしはつい彼の言うとおりにしてしまう。
すると、アーネスはその麗しい顔で微笑んだ。
そうしたら、なぜか近くにいたソフィアが赤くなって両手で頬を覆ってしまう。
うーむ、さすがにタラシの異名を持つ人だ。意図してないのに侍女までたらしこむとは。
「それはそうと、先程の話だけれど。君はカレヴィとの婚約をどう思ってるんだい?」
「どうって……」
わたしはアーネスに突っ込まれて聞かれて、少し戸惑ってしまう。
……いけない。これじゃ、変に誤解されちゃうよ。
「自分で選んだことだから、後悔はしていないよ。ここのみんなはとても良くしてくれるし。これで文句なんて言ったらばちが当たるよ」
「けれど、君のことを反対している者達もいるね。それは、どう思うんだい?」
わたしはそれを聞いて、もしかしてアーネスがそっちの回し者かと思って思わず警戒してしまった。
だって、カレヴィも言い寄る男には注意しろって言ってたし。女性を落とすにはこのアーネスなんかはもの凄く最適なんじゃない?
「いや、そんなにわたしを警戒しないで欲しいね。別にわたしはあの者達とは関係ないよ」
そうなんだろうか?
でもそう言われて簡単に信じちゃうのも、まずいような気がするし。
それでわたしがちょっと困っていると、アーネスは「困ったね」と苦笑してきた。
うーん、一応カレヴィの従兄で友人なんだから、あまり疑うのも悪い気がする。
「……ごめんね。カレヴィに気をつけろって言われたばかりだから、ちょっと神経質になりすぎたよ。ごめんなさい」
わたしが反省して謝ると、アーネスは安心したようにちょっと息を付いた。
「それは良かった。確かに君はとても美しくなったし、警戒するに越したことはないけれど、わたしにまでそうされたら困るからね」
そう言ってちょっと笑うと、アーネスはわたしの右手を取って指先に口づけた。
そうすると、アーネスの豪奢な髪がさらりと肩から滑り落ちて、わたしはそれにちょっと見とれてしまった。
綺麗な人はこんな普通の淑女への礼でも様になって得だよね。
ああ、この場でアーネスと会うと分かっていたら、スケッチブックとか持って来るんだった。
これからは臨機応変に対応できるように出かけるときは待ち歩くようにしよう。
それに、庭園で風景画とか描くのもいいしね。
「……それで君はカレヴィ自身のことをどう思ってるんだい?」
「どうって……、わたしのことをこれ以上ない待遇で迎えてくれたし、とても感謝しているよ」
わたしはアーネスの更に突っ込んだ質問に戸惑いを隠せない。
いったい、なにが言いたいの?
「けれど、カレヴィは政略ではなく、君をとても愛しているよ。……でも君自身はどうなのかな?」
ああ、一番聞かれたくないことを聞かれてしまった。
カレヴィがわたしを好きって言ってくれるのは、嬉しいよ。嬉しいけど……。
「彼には申し訳ないけど、わたし、カレヴィのことは利害関係としか思えない。……あんなにわたしを愛してるっていうのも、正直ちょっと重いよ」
わたしが常々思っていたことを吐露してしまったその時だった。
「……ハルカッ」
ここにいないはずのカレヴィがなぜか現れて、わたしは思わず身を竦ませる。
あの発言、もしかして聞かれちゃったかな。
いや、カレヴィ、怒った顔してるし間違いなく聞かれたよ。どうしよう。
「おやまあ、カレヴィ。なにもこんな時に来なくてもいいのに」
緊迫する空気の中で、ことの発端のアーネスはのんびりと笑って言う。
その顔を見ていたら、なんだかちょっと一発くらい殴りたくなってきた。
そういえば、わたしカレヴィにアーネスに気をつけろって言われてたんだよね。
それより、今のわたしの発言、巻き戻らないかな。……無理だろうけど。
あああ、この後のカレヴィの言動が怖すぎる!
もしかしなくても、これは修羅場ってやつですか!?
わたしは、ふわふわのオムレツとかカリカリに焼いたベーコンとか、香辛料の効いたハムやチーズ、焼きたてのパンを前にして、にこにこしながらカレヴィがそれを皿に取り分けてくれるのを待っていた。
「わあ、おいしそう。いただきまーす」
わたしは両手を重ねて挨拶した後、さっそく、おいしそうに湯気を立てるオムレツにナイフを入れる。
うん、思った通りふわふわでおいしい。
おいしい朝食ににっこりするわたしとは違って、カレヴィはやや不機嫌そうだ。
「……俺がこんなに落ち込んでいるのに、おまえは薄情だな」
「えー、そんなことないよ」
一応、そう言ってみたけれど、わたしの満面の笑顔がそれを裏切っている。
千花の作った精力減退の薬の威力は絶大だった。
だって、カレヴィのアレが馬並から人になったんだよ。
この場合、つい嬉しくて笑顔になっちゃったって仕方ないと思う。
カレヴィはなんか変なトラウマみたいになっちゃったみたいだけどさ。
でも、普通の人はあれぐらいらしいんだから、カレヴィもちょっとは我慢しないと。
「でも、カレヴィがあの薬飲んでくれて嬉しかった。ありがとう」
わたしがにこにこしてカレヴィに言うと、彼は立ち上がってわたしの隣の席まで移動してきた。
……なんだ? と思ってると、カレヴィはわたしの頬にキスをしてきた。
うーん、薬飲んでてもこういうことはするんだね。
人にさんざん見られて生活していたから、侍女達がいてもカレヴィは全然平気なんだよね。
でもシルヴィなんかは、赤くなってて可愛かったけど。
でも、あれは侍女達を気にして赤くなったわけじゃないから、王族関連の人はこういう傾向があるって覚悟しておいた方がいい気がする。
わたしもそのうちこれに慣れるのかなあ。
そういえば、お風呂とかも侍女達に入れて貰うの平気になったし。
だけど、夜は近衛兵とか控えの侍女とかがアレを聞いているらしい。
これは思い起こすたび、顔から火が出るほど恥ずかしい!
カレヴィなんかは、「ああ……」とか呟いて、わたしに警護上の問題もあるから、そういうものだと割り切れと言ってくる。
うう、王族にはプライベートってものはないって言うんだね。
まったくの庶民には、そういう部分が未だに慣れないよ。
そんなことを考えていたら、カレヴィのキスが段々激しくなってきた。
「ちょっと、カレヴィ……ッ」
まだ食べてる途中なんだし、ちょっとは遠慮してほしい。
そんなことを考えながら息を切らしていたらカレヴィは一応満足したらしく、またわたしの向かいの席へと移動していった。
「もう、朝食の途中なのに酷いよ」
「いや、おまえの笑顔が可愛くてついな」
……どうやらカレヴィは基本的な部分で、我慢ってことを知らないみたいだ。
これは、そのうち矯正する必要があるかもしれないな、とわたしはちょっと呆れながらも思う。
精力減退の薬を飲ませてても油断がならないなんて、さすが野獣。
侍女達に言わせれば、「愛されている」かららしいけど、でも、やっぱりご飯の時くらい落ち着いていて欲しいと思うのはわたしの贅沢なんだろうか?
平和だと油断していた朝食を終わらせて、カレヴィが執務室に入るのを見送ると、わたしは腹ごなしに庭園に行くことにした。
今回わたしが行ったのは、ガルディア式庭園のほう。
なんというか、桜がすごく見たかったんだよね。
周囲との違和感はまだあるけど、桜の花びらが舞い散る光景はやっぱり綺麗で、わたしは思わず日本のことを思い出してしまう。
あの朝食もおいしかったけど、そろそろ納豆とか、あじの干物とか日本的なものが恋しくなってきた。
うーん、わたしホームシックか?
あじの干物はともかく、納豆はきっとカレヴィは駄目だろうな。
それに炊き立ての白いご飯が食べたい。
キュウリのぬか漬けや、柴漬け、焼き海苔が恋しい。
……そういうところ、千花はどうしてるのかなあ。今度聞いてみよ。
そう思いながら桜の傍で溜息を付いていると、どこかで聞いたような美声が聞こえてきた。
「おや、美しい人が花の傍で、そんな切なげな溜息をついて。……なにか思い悩むことでもあるのかな?」
煌びやかな容姿のその人は、リットンモア公爵だった。
うーん、相変わらず目に眩しい人だ。
「いえ、たいしたことではないんです。ただ日本のことを少し思い出してしまって」
まさか、桜を見て納豆のことを思い出していたとは言えないから、わたしはちょっとだけごまかした。
「……ハルカ嬢はカレヴィとの婚約を少し後悔しているのかな?」
「え……」
この公爵様、冴えないわたししか知らないはずだけど、なぜかわたしだと分かったみたい。
あ……でも確か、公爵様はフレイヤに紹介状を渡したんだっけ。
「どうして、わたしだって分かったんですか?」
あれからわたしはかなり変わったはずだ。
それなのに、どうしてだろう。
「君がハルカ嬢だってことは付いている侍女や近衛兵で分かるよ。君の顔立ちに面影が残っているし」
あ、そうか。言われてみれば、納得。
今日はソフィアが付いてるからね。
私の顔のこともだけど、付いている侍女の顔まで覚えてしまうこの公爵様の記憶力はちょっと凄いよ。
「公爵様、記憶力いいんですね」
わたしが感心してちょっと息を付くと、公爵様は笑いながら人差し指を立てて、横に振った。
うわ、こんな気障な仕草まで似合うなんて、ちょっと凄い。さすが、並外れた美形だ。
「わたしのことはアーネスでいいよ。君にはかしこまった話し方をされたくないから、普段通りの話し方で頼みたいな」
「……じゃあ、アーネス」
柔らかいけれど、有無を言わせない話し方をされて、わたしはつい彼の言うとおりにしてしまう。
すると、アーネスはその麗しい顔で微笑んだ。
そうしたら、なぜか近くにいたソフィアが赤くなって両手で頬を覆ってしまう。
うーむ、さすがにタラシの異名を持つ人だ。意図してないのに侍女までたらしこむとは。
「それはそうと、先程の話だけれど。君はカレヴィとの婚約をどう思ってるんだい?」
「どうって……」
わたしはアーネスに突っ込まれて聞かれて、少し戸惑ってしまう。
……いけない。これじゃ、変に誤解されちゃうよ。
「自分で選んだことだから、後悔はしていないよ。ここのみんなはとても良くしてくれるし。これで文句なんて言ったらばちが当たるよ」
「けれど、君のことを反対している者達もいるね。それは、どう思うんだい?」
わたしはそれを聞いて、もしかしてアーネスがそっちの回し者かと思って思わず警戒してしまった。
だって、カレヴィも言い寄る男には注意しろって言ってたし。女性を落とすにはこのアーネスなんかはもの凄く最適なんじゃない?
「いや、そんなにわたしを警戒しないで欲しいね。別にわたしはあの者達とは関係ないよ」
そうなんだろうか?
でもそう言われて簡単に信じちゃうのも、まずいような気がするし。
それでわたしがちょっと困っていると、アーネスは「困ったね」と苦笑してきた。
うーん、一応カレヴィの従兄で友人なんだから、あまり疑うのも悪い気がする。
「……ごめんね。カレヴィに気をつけろって言われたばかりだから、ちょっと神経質になりすぎたよ。ごめんなさい」
わたしが反省して謝ると、アーネスは安心したようにちょっと息を付いた。
「それは良かった。確かに君はとても美しくなったし、警戒するに越したことはないけれど、わたしにまでそうされたら困るからね」
そう言ってちょっと笑うと、アーネスはわたしの右手を取って指先に口づけた。
そうすると、アーネスの豪奢な髪がさらりと肩から滑り落ちて、わたしはそれにちょっと見とれてしまった。
綺麗な人はこんな普通の淑女への礼でも様になって得だよね。
ああ、この場でアーネスと会うと分かっていたら、スケッチブックとか持って来るんだった。
これからは臨機応変に対応できるように出かけるときは待ち歩くようにしよう。
それに、庭園で風景画とか描くのもいいしね。
「……それで君はカレヴィ自身のことをどう思ってるんだい?」
「どうって……、わたしのことをこれ以上ない待遇で迎えてくれたし、とても感謝しているよ」
わたしはアーネスの更に突っ込んだ質問に戸惑いを隠せない。
いったい、なにが言いたいの?
「けれど、カレヴィは政略ではなく、君をとても愛しているよ。……でも君自身はどうなのかな?」
ああ、一番聞かれたくないことを聞かれてしまった。
カレヴィがわたしを好きって言ってくれるのは、嬉しいよ。嬉しいけど……。
「彼には申し訳ないけど、わたし、カレヴィのことは利害関係としか思えない。……あんなにわたしを愛してるっていうのも、正直ちょっと重いよ」
わたしが常々思っていたことを吐露してしまったその時だった。
「……ハルカッ」
ここにいないはずのカレヴィがなぜか現れて、わたしは思わず身を竦ませる。
あの発言、もしかして聞かれちゃったかな。
いや、カレヴィ、怒った顔してるし間違いなく聞かれたよ。どうしよう。
「おやまあ、カレヴィ。なにもこんな時に来なくてもいいのに」
緊迫する空気の中で、ことの発端のアーネスはのんびりと笑って言う。
その顔を見ていたら、なんだかちょっと一発くらい殴りたくなってきた。
そういえば、わたしカレヴィにアーネスに気をつけろって言われてたんだよね。
それより、今のわたしの発言、巻き戻らないかな。……無理だろうけど。
あああ、この後のカレヴィの言動が怖すぎる!
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