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第三章:王の婚約者として
第33話 急募!安穏生活
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わたしはその日一日、カレヴィに例の薬を飲ませることを了承させたので上機嫌だった。
それに、昨夜カレヴィが無茶したことによって痛かった腰も、千花が調合してくれた痛み止めでしっかり回復して絶好調だ。
シレネ先生に既に教えて貰った正式の礼はもう太鼓判をもらったし、今日は細々した王妃の話し方とか上品に見える仕草とか教えて貰った。
わたしがそれをノートに真剣に書き写していると、シレネ先生が微笑んで言った。
「本当にハルカ様は優秀な生徒ですわ。それに熱心に授業に取り組まれておられるようで、わたくしも教えがいがあるというものですわ」
「いえ、シレネ先生の教え方が素晴らしいんですよ。おかげで、王宮でなんとかやっていけそうで本当に感謝しています」
そう言ってわたしが先生に頭を下げると、落ち着いた彼女にしては珍しく慌てたようだった。
「まあ、いずれ王妃になられるハルカ様がわたくしなどに頭を下げられては困りますわ。……お気持ちはとてもありがたく思いますけれど、ハルカ様は下々の者に軽々しくそうされてはいけません」
う、感謝の気持ちを表したかっただけなんだけど、逆に怒られちゃった。
まあ、確かにシレネ先生の言うとおりなんだけどね。
「はい、気をつけます」
わたしがまじめな顔でそう言うと、シレネ先生は優しく笑って言ってくれた。
「けれど、ハルカ様のそういうところは美点でもありますわ。どうか、王妃になられても、下々の者へのその感謝の意だけはお忘れにならないでください」
「はい」
王や王妃は、国民や貴族、王宮で働く人々に支えられて、その地位にいるんだ。
わたしも趣味だけに没頭せずに、出来るだけ王妃として頑張ろうと思う。
……それにしても、礼儀作法の先生がシレネ先生みたいな優しい人で良かったな。
千花の時はかなり厳しい人だったみたいでビシビシやられたらしいけど、わたしがその立場だったら確実に萎縮していると思う。
この点はカレヴィの人選(というかゼシリアがかなり助言しているらしいけど)は間違っていなかったみたいだ。
それから異世界のお菓子をお茶請けにして、それを話題にほっこりお茶しながら、わたしはシレネ先生と礼儀作法以外の話もたくさんした。
うん、最初は緊張したけど、シレネ先生とも個人的にどんどん仲良くなっていってる気がする。
それに、少しずつだけどわたしもなんだか社交的になってきているみたいだ。
うん、これは王妃になる身としては凄く良い傾向だよね。
そんなことをしているうちに、礼儀作法の終わりの時間が来た。
わたしはシレネ先生とまだまだ話したいことはあったけれど、また明日話せばいいか。
それで、彼女となんでも話せて、相談できる友人になれればな、とわたしは思っている。
そう言ったら彼女は遠慮するかもしれないけれど、シレネ先生はきちんと自分の意見を持ってるし、まだ若くてわたしにはかなり馬の合う人なんだもの。それでいつかわたしの相談役にでもなってもらえたらいいな。
千花に今その役をしてもらっているけれど、彼女は忙しい身だし、王宮付きの人でそういう人を見つけていくのも悪くはないと思う。
もちろん、ゼシリアやイヴェンヌ達も信頼はしているけどね。
楽しい礼儀作法の授業が終わったら、ゼシリア経由でまたカレヴィから謁見の間に来いとお達しがあった。
……また例の貴族の人達が来ているのかなと思って謁見の間に行ってみたら本当にその通りだった。
わたしはゼシリアに手を取られてカレヴィの隣に座るべく移動してたんだけど、今度はそれぞれ姫を連れてきていた貴族達はわたしの顔をみてポカーン。
わたしの印象が以前とあまりにも変わっているので驚いているのだろう。
それに加えて、同伴の姫君達はわたしを見て騒ぎ出した。
「……お父様、お話と違いますわ」
「この方のどこが醜女なのです。今度、目をお医者様に見ていただいた方がよろしいです」
「とてもお美しい方ではありませんか、これではわたくし、とても勝ち目はありません」
「それに、最強の魔女様が後見というではありませんか」
「これでは、わたくし達恥をかきに来たようなものですわ」
掴みかかりそうな勢いで、令嬢達がそれぞれの父親に食ってかかる。
……うーん、フレイヤにお化粧の仕方を教えて貰って本当に良かった。
それに千花がわたしの後見になっているのも大きいみたいだし、千花の偉大さをつくづく思い知らされる。
「い、いや……、以前はこんなではなかったのだ。あの時は、本当にこの娘は醜女で……」
貴族達はしどろもどろになりながら、汗をかいている。
わたしがこんなに急激に変わると思ってなかったんだろうから大変だなあ。
などど、まるで他人事のようにわたしは思う。実際他人事だけど。
でも、ここにいる姫君達もかなり美人で、この間貴族達が言っていたことは嘘じゃないと分かった。
でも、こんな綺麗な姫達に勝ち目がないなんて言われるほど、わたしは変わったんだろうか?
「……これでまだ、ハルカとの婚礼を反対するのか?」
カレヴィが玉座に肘をつき、手の甲に顎を乗せて楽しそうに言う。
……あんなにわたしの化粧に反対したくせに現金だなあ。
「そ、それはっ。 し、しかし、この娘は異世界の卑しき者で……」
「その言葉、最強の女魔術師であるティカ殿をも愚弄することになるが、そのままかの者に伝えても良いか、リシィズ伯爵」
千花の名前を出されて、カレヴィにリシィズ伯爵と呼ばれたおじさんはひっと息を呑む。
……うーん、千花は最強の魔術師として尊敬もされてるけど、同時に恐れられているんだな。
思えば国王であるカレヴィにも気安く意見を言えるし、他の国でもそうなのかもしれない。
そんなふうに各国が千花を持ち上げるのは、彼女がその気になればこの大陸を制圧することも可能だかららしい。
なんでも千花の魔力は無尽蔵で、魔術に関してはこの大陸が今まで輩出した偉大な魔術師でも右に出る者はいないと聞いたことがある。
今まで単純に最強なんて言われて、千花凄いなと思ってたけど、千花は千花でそんな立場に立たされ恐れられて、孤独に思うことはないんだろうか。
そう考えると、千花がなんだか気の毒になってきちゃった。
せめて友達であるわたしは今までと変わらず彼女と接しよう。
その前に千花に愛想尽かされないようにすることも必要だけどね。
そのために、千花がお膳立てしてくれたザクトアリアの王妃業をとりあえず頑張ろう。
まだ婚約期間中で問題は山積みだけど、一つずつ解決していけばいいよね。
とりあえず、野獣なカレヴィ対策はなんとかなりそうだし。
「し、しかし、その娘は相当な化粧を重ねているのでは。冴えなかった以前とは印象が違い過ぎます」
「この化粧は月華の館の主フレイヤが指図した。あの者は決して女に厚化粧などさせない。品が悪くなるからな」
カレヴィがそう言ったら、その貴族の人は黙っちゃった。
ひょっとしてフレイヤって相当な有名人?
「……それに、フレイヤはハルカのことを磨けば光る宝玉と称していたぞ。ハルカはまだまだ美しくなる余地がある」
あれ、その時カレヴィはその場にいなかったはずだけど、モニーカ達の誰かに聞いたんだろうか。
それはともかくとして、それを聞いた貴族達も一言も口を開かない。
フレイヤがそうまで言うってことは、かなり凄いことなんだろうか。
「……お父様、もうおいとまさせて頂きましょう。なんだかいたたまれませんわ」
「そうです。そうさせて頂きましょう」
集まった令嬢達が口々にそう言う。
この姫達は父親とは違って随分慎ましやかなんだな。
……中には醜女云々って言った姫もいたけど、父親の言葉を鵜呑みにしてここまで連れられて来たんだろうから仕方ないと言えば仕方ない。
「そういうことなら、もうこの場は必要ないな。謁見はこれにて終了とする」
楽しそうなカレヴィの宣言で、貴族達が悔しそうな顔をしてわたしを睨み付ける。
……なんだか、まだ諦めてないみたいだよ、このおじさん達。
思わず溜息を付きたくなったわたしの手を取ってカレヴィがわたしを立たせた。
そして大事そうに肩を抱いて控えの間まで連れて行こうとしてくれる。
けど、わたしの背に貴族達の視線がちくちく刺さってなんだか痛い。
「しかし、これだけ言ってもまだ分からないとは。俺はああいう舅だけはごめんだぞ」
控えの間でカレヴィがうんざりしたように言う。
「う、うん……」
姫達は納得してくれたみたいだけど、肝心の親があれじゃあねえ。
「ともかく、おまえの警護は今まで以上にしっかりとさせる。不快だろうが、ハルカそれで納得してくれ」
「うん、分かった」
心配そうな様子のカレヴィにわたしは頷いた。
でも別に不快とかじゃないけどね。ただ、しつこいなあと思うだけで。
でも、他の方法であの貴族達が攻撃してくる可能性はあるな。
まさか暗殺なんてハイリスクなことはするとは思えないけど、用心に越したことはないよね。
うーん、そう考えたら急に殺伐としてきたぞ。わたしはただのんびりと趣味に没頭したいだけなのに。
まあ、ここの警護はしっかりしているから大丈夫だと思うけどね。
それに、わたしになにかあったら千花が黙っていないだろうし。
「そういえば、おまえに言い寄る男にも充分注意しておけよ。そういう方面から攻撃してくる可能性もあるからな。……それでなくてもおまえは美しくなりすぎたんだからな」
カレヴィに痛いほど両肩を掴まれて、わたしは言い含められた。
うん、分かった、分かったよ。
こうなると、いきなり綺麗になるのも考えものだ。
でも、元の地味なわたしじゃ、あの様子だともっと大騒ぎになるのは目に見えてたし。
……まあ、とにかく。
わたしの安穏生活はまだまだ遠そうなことだけは身にしみて分かったよ。
それに、昨夜カレヴィが無茶したことによって痛かった腰も、千花が調合してくれた痛み止めでしっかり回復して絶好調だ。
シレネ先生に既に教えて貰った正式の礼はもう太鼓判をもらったし、今日は細々した王妃の話し方とか上品に見える仕草とか教えて貰った。
わたしがそれをノートに真剣に書き写していると、シレネ先生が微笑んで言った。
「本当にハルカ様は優秀な生徒ですわ。それに熱心に授業に取り組まれておられるようで、わたくしも教えがいがあるというものですわ」
「いえ、シレネ先生の教え方が素晴らしいんですよ。おかげで、王宮でなんとかやっていけそうで本当に感謝しています」
そう言ってわたしが先生に頭を下げると、落ち着いた彼女にしては珍しく慌てたようだった。
「まあ、いずれ王妃になられるハルカ様がわたくしなどに頭を下げられては困りますわ。……お気持ちはとてもありがたく思いますけれど、ハルカ様は下々の者に軽々しくそうされてはいけません」
う、感謝の気持ちを表したかっただけなんだけど、逆に怒られちゃった。
まあ、確かにシレネ先生の言うとおりなんだけどね。
「はい、気をつけます」
わたしがまじめな顔でそう言うと、シレネ先生は優しく笑って言ってくれた。
「けれど、ハルカ様のそういうところは美点でもありますわ。どうか、王妃になられても、下々の者へのその感謝の意だけはお忘れにならないでください」
「はい」
王や王妃は、国民や貴族、王宮で働く人々に支えられて、その地位にいるんだ。
わたしも趣味だけに没頭せずに、出来るだけ王妃として頑張ろうと思う。
……それにしても、礼儀作法の先生がシレネ先生みたいな優しい人で良かったな。
千花の時はかなり厳しい人だったみたいでビシビシやられたらしいけど、わたしがその立場だったら確実に萎縮していると思う。
この点はカレヴィの人選(というかゼシリアがかなり助言しているらしいけど)は間違っていなかったみたいだ。
それから異世界のお菓子をお茶請けにして、それを話題にほっこりお茶しながら、わたしはシレネ先生と礼儀作法以外の話もたくさんした。
うん、最初は緊張したけど、シレネ先生とも個人的にどんどん仲良くなっていってる気がする。
それに、少しずつだけどわたしもなんだか社交的になってきているみたいだ。
うん、これは王妃になる身としては凄く良い傾向だよね。
そんなことをしているうちに、礼儀作法の終わりの時間が来た。
わたしはシレネ先生とまだまだ話したいことはあったけれど、また明日話せばいいか。
それで、彼女となんでも話せて、相談できる友人になれればな、とわたしは思っている。
そう言ったら彼女は遠慮するかもしれないけれど、シレネ先生はきちんと自分の意見を持ってるし、まだ若くてわたしにはかなり馬の合う人なんだもの。それでいつかわたしの相談役にでもなってもらえたらいいな。
千花に今その役をしてもらっているけれど、彼女は忙しい身だし、王宮付きの人でそういう人を見つけていくのも悪くはないと思う。
もちろん、ゼシリアやイヴェンヌ達も信頼はしているけどね。
楽しい礼儀作法の授業が終わったら、ゼシリア経由でまたカレヴィから謁見の間に来いとお達しがあった。
……また例の貴族の人達が来ているのかなと思って謁見の間に行ってみたら本当にその通りだった。
わたしはゼシリアに手を取られてカレヴィの隣に座るべく移動してたんだけど、今度はそれぞれ姫を連れてきていた貴族達はわたしの顔をみてポカーン。
わたしの印象が以前とあまりにも変わっているので驚いているのだろう。
それに加えて、同伴の姫君達はわたしを見て騒ぎ出した。
「……お父様、お話と違いますわ」
「この方のどこが醜女なのです。今度、目をお医者様に見ていただいた方がよろしいです」
「とてもお美しい方ではありませんか、これではわたくし、とても勝ち目はありません」
「それに、最強の魔女様が後見というではありませんか」
「これでは、わたくし達恥をかきに来たようなものですわ」
掴みかかりそうな勢いで、令嬢達がそれぞれの父親に食ってかかる。
……うーん、フレイヤにお化粧の仕方を教えて貰って本当に良かった。
それに千花がわたしの後見になっているのも大きいみたいだし、千花の偉大さをつくづく思い知らされる。
「い、いや……、以前はこんなではなかったのだ。あの時は、本当にこの娘は醜女で……」
貴族達はしどろもどろになりながら、汗をかいている。
わたしがこんなに急激に変わると思ってなかったんだろうから大変だなあ。
などど、まるで他人事のようにわたしは思う。実際他人事だけど。
でも、ここにいる姫君達もかなり美人で、この間貴族達が言っていたことは嘘じゃないと分かった。
でも、こんな綺麗な姫達に勝ち目がないなんて言われるほど、わたしは変わったんだろうか?
「……これでまだ、ハルカとの婚礼を反対するのか?」
カレヴィが玉座に肘をつき、手の甲に顎を乗せて楽しそうに言う。
……あんなにわたしの化粧に反対したくせに現金だなあ。
「そ、それはっ。 し、しかし、この娘は異世界の卑しき者で……」
「その言葉、最強の女魔術師であるティカ殿をも愚弄することになるが、そのままかの者に伝えても良いか、リシィズ伯爵」
千花の名前を出されて、カレヴィにリシィズ伯爵と呼ばれたおじさんはひっと息を呑む。
……うーん、千花は最強の魔術師として尊敬もされてるけど、同時に恐れられているんだな。
思えば国王であるカレヴィにも気安く意見を言えるし、他の国でもそうなのかもしれない。
そんなふうに各国が千花を持ち上げるのは、彼女がその気になればこの大陸を制圧することも可能だかららしい。
なんでも千花の魔力は無尽蔵で、魔術に関してはこの大陸が今まで輩出した偉大な魔術師でも右に出る者はいないと聞いたことがある。
今まで単純に最強なんて言われて、千花凄いなと思ってたけど、千花は千花でそんな立場に立たされ恐れられて、孤独に思うことはないんだろうか。
そう考えると、千花がなんだか気の毒になってきちゃった。
せめて友達であるわたしは今までと変わらず彼女と接しよう。
その前に千花に愛想尽かされないようにすることも必要だけどね。
そのために、千花がお膳立てしてくれたザクトアリアの王妃業をとりあえず頑張ろう。
まだ婚約期間中で問題は山積みだけど、一つずつ解決していけばいいよね。
とりあえず、野獣なカレヴィ対策はなんとかなりそうだし。
「し、しかし、その娘は相当な化粧を重ねているのでは。冴えなかった以前とは印象が違い過ぎます」
「この化粧は月華の館の主フレイヤが指図した。あの者は決して女に厚化粧などさせない。品が悪くなるからな」
カレヴィがそう言ったら、その貴族の人は黙っちゃった。
ひょっとしてフレイヤって相当な有名人?
「……それに、フレイヤはハルカのことを磨けば光る宝玉と称していたぞ。ハルカはまだまだ美しくなる余地がある」
あれ、その時カレヴィはその場にいなかったはずだけど、モニーカ達の誰かに聞いたんだろうか。
それはともかくとして、それを聞いた貴族達も一言も口を開かない。
フレイヤがそうまで言うってことは、かなり凄いことなんだろうか。
「……お父様、もうおいとまさせて頂きましょう。なんだかいたたまれませんわ」
「そうです。そうさせて頂きましょう」
集まった令嬢達が口々にそう言う。
この姫達は父親とは違って随分慎ましやかなんだな。
……中には醜女云々って言った姫もいたけど、父親の言葉を鵜呑みにしてここまで連れられて来たんだろうから仕方ないと言えば仕方ない。
「そういうことなら、もうこの場は必要ないな。謁見はこれにて終了とする」
楽しそうなカレヴィの宣言で、貴族達が悔しそうな顔をしてわたしを睨み付ける。
……なんだか、まだ諦めてないみたいだよ、このおじさん達。
思わず溜息を付きたくなったわたしの手を取ってカレヴィがわたしを立たせた。
そして大事そうに肩を抱いて控えの間まで連れて行こうとしてくれる。
けど、わたしの背に貴族達の視線がちくちく刺さってなんだか痛い。
「しかし、これだけ言ってもまだ分からないとは。俺はああいう舅だけはごめんだぞ」
控えの間でカレヴィがうんざりしたように言う。
「う、うん……」
姫達は納得してくれたみたいだけど、肝心の親があれじゃあねえ。
「ともかく、おまえの警護は今まで以上にしっかりとさせる。不快だろうが、ハルカそれで納得してくれ」
「うん、分かった」
心配そうな様子のカレヴィにわたしは頷いた。
でも別に不快とかじゃないけどね。ただ、しつこいなあと思うだけで。
でも、他の方法であの貴族達が攻撃してくる可能性はあるな。
まさか暗殺なんてハイリスクなことはするとは思えないけど、用心に越したことはないよね。
うーん、そう考えたら急に殺伐としてきたぞ。わたしはただのんびりと趣味に没頭したいだけなのに。
まあ、ここの警護はしっかりしているから大丈夫だと思うけどね。
それに、わたしになにかあったら千花が黙っていないだろうし。
「そういえば、おまえに言い寄る男にも充分注意しておけよ。そういう方面から攻撃してくる可能性もあるからな。……それでなくてもおまえは美しくなりすぎたんだからな」
カレヴィに痛いほど両肩を掴まれて、わたしは言い含められた。
うん、分かった、分かったよ。
こうなると、いきなり綺麗になるのも考えものだ。
でも、元の地味なわたしじゃ、あの様子だともっと大騒ぎになるのは目に見えてたし。
……まあ、とにかく。
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