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第二章:城での生活の始まり
第17話 仲直り
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千花や侍女達と和気あいあいとしていた時は過ぎて、今はお昼。
千花をお昼に誘ったけど、ちょっと用があるからという理由で断られちゃった。……しょぼん。
「それより、はるかはカレヴィ王に早く謝ったほうがいいよ」という千花の言葉を受け、わたしは侍女経由でカレヴィに昼食の誘いをしてみた。
それに対して、カレヴィはすぐにお昼の用意してある共同の間までやってきた。
「先程は俺を無視していたのに、どういう了見だ」
わたしと向かい合って座ったカレヴィは幾分機嫌悪そうにしていた。
……ありゃ~……。やっぱりわたし、彼の機嫌損ねちゃったんだ。
カレヴィは王様だし、他人に無視されるということに慣れてないんだろうな。
そう考えれば、彼の機嫌が悪いのも分かる気がした。
「いや、それはやりすぎたよ。ごめんね」
慌ててわたしがカレヴィに頭を下げると、彼は不機嫌そうに言ってきた。
「おまえがそんなに簡単に自分の考えを翻すと言うことは、おおかたティカ殿に諫められでもしたのだろう」
うっ、カレヴィ鋭い。
思わずわたしが絶句してると、彼はふん、と皮肉げに笑った。
む、感じ悪いぞ。
思わずむっとしかけたけど、これじゃいけないと思い直して言った。
「……千花にカレヴィと仲良くやってほしいと言われたのは本当だよ」
「おまえはティカ殿の言うことなら聞くのか」
なんだ、やけにつっかかってくるなあ。
婚約者の自分が大事にされてないとでも思ってるのかな?
「だって、千花の言うことはいちいちもっともだし。これから嫌でもずっと顔を合わせることになるんだから、少しはわたしも譲歩しなきゃと思ったんだ」
「……譲歩か。まあ、いい。食事が冷める。早く食べろ」
わたしはカレヴィに大皿の料理を取り分けてもらったので、慌ててありがとうとお礼を言った。
「……ああ。そういえば、おまえは昨夜のことを侍女に言ったらしいじゃないか。なんでもおれは優しくなかったとな」
わたしはそれで、フォークにすくっていたポテトグラタンを皿にぼとっと落としてしまった。
これじゃ動揺しているのがバレバレだ。
ふと周りを見ると、わたし付きの侍女達は少々心配そうに、カレヴィ付きの侍女達は興味津々にわたし達の様子を窺っている。
「……ご、ごめん。そんなに気に障った?」
つい、興奮してその場にいたみんなにそれっぽいことを言っちゃったけど、カレヴィの耳に入ったのはやっぱりまずかったよね。
「当たり前だろう。そんなことくらい少しは我慢しろ。……おかげで俺は女心の分からない王というそしりを受ける羽目になったぞ」
そんなことくらいと言われて、わたしはかなりむっとしてしまった。
カレヴィのしたことは初夜じゃ考えられないし、わたしに無理させたことは本当のことじゃない。
それに、事実をみんなにぶちまけなかっただけでも自分を褒めてやりたいくらいだ。
「……事実じゃない」
わたしが小声で言うと、カレヴィにじろっと睨まれた。
「なにか言ったか」
「……カレヴィは酷いよ。そんな言いぐさないじゃない。カレヴィはわたしがそれで体を壊しても構わないって言うんだね」
言いながら、思わずわたしはぽろぽろと涙をこぼしてしまった。
慌ててわたしはハンカチでそれを拭い、ごまかすようにポテトグラタンを口にする。……熱い。
わたしはそれでまた涙目になる。
「そんなことは言ってないだろう。ハルカ、泣くな。……分かった。俺が全面的に悪かった、許せ! これでいいか!?」
最後の方はちょっとやけくそみたいに聞こえたけど、一応は謝ってるんだよね。……少しは反省しているならいいか。
「うん」
それでわたしはちょっとカレヴィに笑った。
すると、カレヴィはちょっと目元を赤くして、料理が冷めるから早く食べろと再度口にした。
それでわたしは、酸味の効いたソースがかかった鳥の唐揚げをナイフとフォークで切り分けて口にする。
「……恐れながら陛下、ハルカ様は慣れない環境におられるのですから、あまり不安を煽られないようにお願いいたします。護衛の者に伝え聞きましたが、ハルカ様はよく我慢なさったと思われますわ。陛下は詳細を侍女達に知らされなかっただけでも良しとされなければ、ばちが当たります。陛下、どうかハルカ様を大切にされてくださいませ」
侍女長のゼシリアがそう言ったので、わたしは思わずぎょっとしてしまった。見ると、カレヴィも心なし青ざめている。
ひょっとして、ゼシリアには全部バレバレってこと? 彼女の情報網はいったいどうなってるんだ。
「……まいったな。ハルカはこの短期間のうちに侍女達を掌握したのか。やりにくくてかなわん」
そう言いながら、カレヴィはソースのかかった茹で野菜をフォークに刺して溜息をつく。
う、うーん。掌握とかは違うと思うなあ。
いうなれば、女心の分からないカレヴィの相手のわたしに対する同情心からだと思うけど。
でもわたしは、あえてそれをカレヴィには伝えなかった。
それにしても、おまえに泣かれると調子が狂う、と言って目元を染めて不機嫌そうに食事を進める彼がちょっとおもしろかったからだ。
……うーん、こうしてみるとわたしって結構いい性格してるかもしれない。
千花をお昼に誘ったけど、ちょっと用があるからという理由で断られちゃった。……しょぼん。
「それより、はるかはカレヴィ王に早く謝ったほうがいいよ」という千花の言葉を受け、わたしは侍女経由でカレヴィに昼食の誘いをしてみた。
それに対して、カレヴィはすぐにお昼の用意してある共同の間までやってきた。
「先程は俺を無視していたのに、どういう了見だ」
わたしと向かい合って座ったカレヴィは幾分機嫌悪そうにしていた。
……ありゃ~……。やっぱりわたし、彼の機嫌損ねちゃったんだ。
カレヴィは王様だし、他人に無視されるということに慣れてないんだろうな。
そう考えれば、彼の機嫌が悪いのも分かる気がした。
「いや、それはやりすぎたよ。ごめんね」
慌ててわたしがカレヴィに頭を下げると、彼は不機嫌そうに言ってきた。
「おまえがそんなに簡単に自分の考えを翻すと言うことは、おおかたティカ殿に諫められでもしたのだろう」
うっ、カレヴィ鋭い。
思わずわたしが絶句してると、彼はふん、と皮肉げに笑った。
む、感じ悪いぞ。
思わずむっとしかけたけど、これじゃいけないと思い直して言った。
「……千花にカレヴィと仲良くやってほしいと言われたのは本当だよ」
「おまえはティカ殿の言うことなら聞くのか」
なんだ、やけにつっかかってくるなあ。
婚約者の自分が大事にされてないとでも思ってるのかな?
「だって、千花の言うことはいちいちもっともだし。これから嫌でもずっと顔を合わせることになるんだから、少しはわたしも譲歩しなきゃと思ったんだ」
「……譲歩か。まあ、いい。食事が冷める。早く食べろ」
わたしはカレヴィに大皿の料理を取り分けてもらったので、慌ててありがとうとお礼を言った。
「……ああ。そういえば、おまえは昨夜のことを侍女に言ったらしいじゃないか。なんでもおれは優しくなかったとな」
わたしはそれで、フォークにすくっていたポテトグラタンを皿にぼとっと落としてしまった。
これじゃ動揺しているのがバレバレだ。
ふと周りを見ると、わたし付きの侍女達は少々心配そうに、カレヴィ付きの侍女達は興味津々にわたし達の様子を窺っている。
「……ご、ごめん。そんなに気に障った?」
つい、興奮してその場にいたみんなにそれっぽいことを言っちゃったけど、カレヴィの耳に入ったのはやっぱりまずかったよね。
「当たり前だろう。そんなことくらい少しは我慢しろ。……おかげで俺は女心の分からない王というそしりを受ける羽目になったぞ」
そんなことくらいと言われて、わたしはかなりむっとしてしまった。
カレヴィのしたことは初夜じゃ考えられないし、わたしに無理させたことは本当のことじゃない。
それに、事実をみんなにぶちまけなかっただけでも自分を褒めてやりたいくらいだ。
「……事実じゃない」
わたしが小声で言うと、カレヴィにじろっと睨まれた。
「なにか言ったか」
「……カレヴィは酷いよ。そんな言いぐさないじゃない。カレヴィはわたしがそれで体を壊しても構わないって言うんだね」
言いながら、思わずわたしはぽろぽろと涙をこぼしてしまった。
慌ててわたしはハンカチでそれを拭い、ごまかすようにポテトグラタンを口にする。……熱い。
わたしはそれでまた涙目になる。
「そんなことは言ってないだろう。ハルカ、泣くな。……分かった。俺が全面的に悪かった、許せ! これでいいか!?」
最後の方はちょっとやけくそみたいに聞こえたけど、一応は謝ってるんだよね。……少しは反省しているならいいか。
「うん」
それでわたしはちょっとカレヴィに笑った。
すると、カレヴィはちょっと目元を赤くして、料理が冷めるから早く食べろと再度口にした。
それでわたしは、酸味の効いたソースがかかった鳥の唐揚げをナイフとフォークで切り分けて口にする。
「……恐れながら陛下、ハルカ様は慣れない環境におられるのですから、あまり不安を煽られないようにお願いいたします。護衛の者に伝え聞きましたが、ハルカ様はよく我慢なさったと思われますわ。陛下は詳細を侍女達に知らされなかっただけでも良しとされなければ、ばちが当たります。陛下、どうかハルカ様を大切にされてくださいませ」
侍女長のゼシリアがそう言ったので、わたしは思わずぎょっとしてしまった。見ると、カレヴィも心なし青ざめている。
ひょっとして、ゼシリアには全部バレバレってこと? 彼女の情報網はいったいどうなってるんだ。
「……まいったな。ハルカはこの短期間のうちに侍女達を掌握したのか。やりにくくてかなわん」
そう言いながら、カレヴィはソースのかかった茹で野菜をフォークに刺して溜息をつく。
う、うーん。掌握とかは違うと思うなあ。
いうなれば、女心の分からないカレヴィの相手のわたしに対する同情心からだと思うけど。
でもわたしは、あえてそれをカレヴィには伝えなかった。
それにしても、おまえに泣かれると調子が狂う、と言って目元を染めて不機嫌そうに食事を進める彼がちょっとおもしろかったからだ。
……うーん、こうしてみるとわたしって結構いい性格してるかもしれない。
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