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第二章:城での生活の始まり
第15話 不機嫌な朝
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「……そう怒るな、ハルカ」
少しばかり遅い朝食の席で、カレヴィはわたしにちょっと後ろめたそうに言ってきた。
昨夜は結局合意の上でそういう行為に至ったわけだけど、なぜか起き抜けにまでアレを無理矢理されて、わたしは機嫌が悪かった。……まあ、それ以外にも理由はあるけど。
「おまえが思いの外よかったので、つい我を忘れた。すまない」
うるさい、このエロ王。……いや、野獣。
わたしを結婚相手に選ぶくらいだから、アレの方も淡泊なのかと思ったら、実はとんでもなかった。
カレヴィは、恥ずかしがるわたしにさんざんエロいことや言葉責めをし、そしてあろうことか、わたしにまでそのエロいことをするように強要してきたのだ。
「……言っておくけど、わたしは初めてだったんだからね?」
初めてでさすがにあれはないだろう。
恥ずかしいから詳細は言わないけど、そういうのを商売にしているような人がするようなことをわたしはカレヴィにされたのだ。
カレヴィはさすがに最初はなるべく痛くしないように配慮してくれてたみたいだけど、でもやっぱり初めてだから痛かったし。……まあ、でもそれは仕方ない。けど問題はそれからだ。
カレヴィは途中でたがを外してしまったようで、わたしは何回もヤられてしまった。そしてわたしは、今腰が痛くてたまらない。
今朝も侍女二人に両脇を抱えられてやっとこの席に着いたぐらいだ。
……これが初めての人間にやることか? やりすぎにも程がある。
「それは悪かったと思っている。しばらくはあの手の無理強いはしない」
わたしの怒りの言葉に、カレヴィはばつが悪そうな顔で謝ってきた。
「……なら、いいけど。それにしてもいやに手慣れてたけど、過去にそういう人でもいたの?」
わたしがそう聞くと、カレヴィはちょっとうろたえてた。
……カレヴィは美形だし、王様だし、そういう人がいてもわたしは一向に気にしないけどね。むしろいない方が不自然だろう。
「いや、王宮付きの高級娼館からの娼婦としかそういうことはしていない」
「……へー……」
意外と言えば意外。
まあ、その方があとくされもないのかもしれないけど。
そうか、だからわたしに対しても高級娼婦相手にするような行動に走ったんだ。
「あれ、普通の姫だったら、びっくりしすぎて泣いてたんじゃない? いくらなんでも初めてであんなこと強要するとかないでしょ」
わたしの代わりに別の姫がカレヴィの結婚相手となった場合を想定して言ってみる。
うん、結婚に夢を持ってる姫ならあまりの扱いにショックを受けるかもね。
わたしは、夢も希望も持ってない歳いった女だからまだましだけど、それでも初めてであれは酷いと思う。
「……だから、すまないと……、そうだ、ハルカなにか欲しいものはないか」
それまで居心地悪そうな顔をしていたカレヴィが突然思いついたように言ってきた。
どうやら物で釣る作戦らしい。
ふーん、カレヴィがせっかくそう言うならねだってみようか。ちょうど、欲しかったものがあるんだ。
「それじゃ、腕カバーが欲しい」
わたしがそう言うと、なぜかカレヴィの目が点になった。
「……腕、カバー……?」
「漫画描くのに衣装の袖が汚れそうなんだよね。腕まくりしてもいいけど、腕が汚れるのは変わりないし」
わたしの描いている漫画はカレヴィには既に見せてある。
最初カレヴィは漫画特有のデフォルメした描き方に戸惑っていたけれど、すぐにそれに慣れて漫画の読み方について聞いてきた。
基本的には一頁の右から左に読んでいくんだよと言ったらすぐ理解したらしくて、わたしの描きかけの原稿にすいすい目を通していた。
……こんなことなら今まで描いた原稿も持ってくるんだったな。今度向こうに行ったときは全原稿を持ってこよう。
そういう訳でわたしの描いた漫画を読んだカレヴィだったけれど、女らしくないわたしにしては、中身がかなり少女趣味だったので結構驚いていたみたいだ。
人は見かけによらないものだな、とわたしの顔を見て彼はしみじみ呟いてた。……失礼な。
ちなみにわたしの描く漫画は、千花に魔法をかけてもらってあるから、こちらの世界の人にも理解できるようになっている。
……本当に千花の魔法は便利だなあ。
わたしがつくづく感心していると、カレヴィがちょっと困った顔をして聞いてきた。
「……そんなものでいいのか? 首飾りとか腕輪が欲しいとかないのか?」
「ううん、腕カバーがいい。それも木綿で黒くて汚れが目立たないやつ」
わたしがきっぱりはっきりそう言うと、カレヴィはどことなく不満そうな顔で大きく溜息をついていた。
……なんだ、腕カバーじゃいけなかったのかな? でも当面欲しいものもないし、もしあっても千花が持ってきてくれるし。
わたしが首を傾げながらそう思っていると、カレヴィがちょっと呆れたような顔で言ってきた。
「本当に、おまえの考えることは俺には分からん」
うーん、庶民と王様の考え方の違いは結構大きい、のかな……?
なんだか、それだけじゃないような気もするけど。
それからカレヴィは、イヴェンヌ達に腕カバーをすぐ持ってくるように言いつけると、ソフィアが代表してそれを持ってきてくれた。
──これだよ、これ。
構造は簡単だから、たぶんあるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱり異世界にもあったよ、黒い腕カバー。
ちょっと感動しながら装着したら、カレヴィに今着けるのはやめろと言われてしまった。
これくらいいいじゃん、けち。
仕方なく腕カバーを外してカレヴィと食後のコーヒーを飲んでたら、千花が律儀にわたしの様子を見にやってきた。
「千花~っ!」
昨夜のことを報告しようと千花に駆け寄ろうとしたら、途端に腰に痛みが走ってわたしはよろけた。
「危な……」
「ハルカッ」
バランスを崩したわたしに、千花とカレヴィが声を上げる。
その途端、見えないなにかがわたしの体を支えて、どうにかわたしは転ばずに済んだ。……もしかして、千花が魔法で受け止めてくれたのかなあ。
「はるか、どうしたの?」
瞬間的に千花がよろよろしてるわたしの傍に移動して尋ねた。
カレヴィも椅子から立ち上がって、わたしの傍に寄ってくる。
「あ……、うん。ちょっと、腰が痛くて」
「……腰?」
千花が首を傾げながらもわたしの肩に触れると、さっきまでわたしを苦しめていた腰の痛みが急になくなった。
「あ、あれ……?」
「治癒魔法を使ったの。それにしてもはるか、腰が痛いってもしかして……」
千花が眉を寄せて言いづらそうにした。
うん、まあこういうことは本人を前にして言いにくいよね。
「あ、うん。昨夜カレヴィとそういう事になったんだ」
わたしがそう言った途端、千花がきっとカレヴィを睨んだ。
「……どういうことです? まだはるかとは婚約期間中でしょう」
千花のその厳しい視線にも特に堪えた様子もなく、カレヴィはこともなげに言った。
「我が国では、王及び王太子に輿入れする花嫁は、婚礼一ヶ月前の婚約期間中に伽の習いをするしきたりがある。俺はそれに従ったまでだ」
「え……」
千花はザクトアリアのその風習を初めて知ったらしくて、愕然とした顔になった。
「は、はるか、ごめん。わたし、この国にそんな風習があるなんて知らなくて。……大変だったでしょう? ごめんね」
千花がうろたえながらわたしに縋りついて謝ってきたけれど、これは彼女が悪い訳じゃない。まあ、あえて言うとしたら悪いのは──
「ううん、千花が謝る事じゃないよ。結局王妃になるって決めたのはわたし自身だし。だから気にしないで」
「でも……」
わたしは笑って言ってみたけど、千花はまだ申し訳なさそうだ。
……仕方ない。千花は最強の魔術師で忙しいのは分かってるけど、その時間を少しもらってしまおう。
「じゃあ、午前中までわたしに付き合ってよ。久しぶりに千花に漫画のアシしてもらうから。それで今回の件は帳消し。ね?」
わたしがにっと笑って千花の肩を叩きながらそう言うと、彼女はちょっとだけ泣きそうになりながら、うん、と頷いた。
「……まあ、俺も事前に言っておかなくて悪かったが」
それまでわたし達の会話に入りづらそうにしていたカレヴィがわたしに謝ってきた。
そんなこと今更言われても遅いんだよ!
だからわたしは、ここぞとばかりに言ってやった。
「本当だよね!!」
「……おまえ、ティカ殿と夫になる俺との扱いが違いすぎるぞ」
「そりゃ、千花は幼なじみの友達だもん。昨日今日会ったばかりのカレヴィとは歴史が違うよ。……それよか、カレヴィ執務に取りかからなくていいの? わたしもいい加減漫画描きたいし、女同士の話もしたいから、もう自分の部屋に戻るね」
わたしはカレヴィの抗議を軽くあしらうと、千花を促して、共同の間から自分の居室へとさっさと移動する。
「おい、ハルカ」
カレヴィがなにか言いたそうにしたけど、無視。
腕カバーはもらったけど、やっぱりまだカレヴィにはアレのことでいろいろと怒ってるんだよね。
「……ねえ、はるか。カレヴィ王が呼んでるけど」
千花が気遣わしげに言ってくるけれど、いいのいいの、気にしないで。
「それよか、聞いてよ千花。カレヴィったら酷いんだよー!」
わたしは完全にカレヴィをしかとして千花に話しかける。
わたしのあからさまな無視にちょっと呆然としているカレヴィを気の毒そうに見ながらも、モニーカ達三人もわたし達の後についてきた。
──それから。
カレヴィはすごすごと自分の執務室に戻っていって、ちょっと拗ねていたとか。
まあ、これはゼシリアから聞いた情報なんだけどね。
でも彼がわたしにしたことを思えばそれでも生ぬるいと思う。
どっちにしろ拗ねたいのはこっちの方だよ! とカレヴィに声を大にして言いたいわたしだった。
少しばかり遅い朝食の席で、カレヴィはわたしにちょっと後ろめたそうに言ってきた。
昨夜は結局合意の上でそういう行為に至ったわけだけど、なぜか起き抜けにまでアレを無理矢理されて、わたしは機嫌が悪かった。……まあ、それ以外にも理由はあるけど。
「おまえが思いの外よかったので、つい我を忘れた。すまない」
うるさい、このエロ王。……いや、野獣。
わたしを結婚相手に選ぶくらいだから、アレの方も淡泊なのかと思ったら、実はとんでもなかった。
カレヴィは、恥ずかしがるわたしにさんざんエロいことや言葉責めをし、そしてあろうことか、わたしにまでそのエロいことをするように強要してきたのだ。
「……言っておくけど、わたしは初めてだったんだからね?」
初めてでさすがにあれはないだろう。
恥ずかしいから詳細は言わないけど、そういうのを商売にしているような人がするようなことをわたしはカレヴィにされたのだ。
カレヴィはさすがに最初はなるべく痛くしないように配慮してくれてたみたいだけど、でもやっぱり初めてだから痛かったし。……まあ、でもそれは仕方ない。けど問題はそれからだ。
カレヴィは途中でたがを外してしまったようで、わたしは何回もヤられてしまった。そしてわたしは、今腰が痛くてたまらない。
今朝も侍女二人に両脇を抱えられてやっとこの席に着いたぐらいだ。
……これが初めての人間にやることか? やりすぎにも程がある。
「それは悪かったと思っている。しばらくはあの手の無理強いはしない」
わたしの怒りの言葉に、カレヴィはばつが悪そうな顔で謝ってきた。
「……なら、いいけど。それにしてもいやに手慣れてたけど、過去にそういう人でもいたの?」
わたしがそう聞くと、カレヴィはちょっとうろたえてた。
……カレヴィは美形だし、王様だし、そういう人がいてもわたしは一向に気にしないけどね。むしろいない方が不自然だろう。
「いや、王宮付きの高級娼館からの娼婦としかそういうことはしていない」
「……へー……」
意外と言えば意外。
まあ、その方があとくされもないのかもしれないけど。
そうか、だからわたしに対しても高級娼婦相手にするような行動に走ったんだ。
「あれ、普通の姫だったら、びっくりしすぎて泣いてたんじゃない? いくらなんでも初めてであんなこと強要するとかないでしょ」
わたしの代わりに別の姫がカレヴィの結婚相手となった場合を想定して言ってみる。
うん、結婚に夢を持ってる姫ならあまりの扱いにショックを受けるかもね。
わたしは、夢も希望も持ってない歳いった女だからまだましだけど、それでも初めてであれは酷いと思う。
「……だから、すまないと……、そうだ、ハルカなにか欲しいものはないか」
それまで居心地悪そうな顔をしていたカレヴィが突然思いついたように言ってきた。
どうやら物で釣る作戦らしい。
ふーん、カレヴィがせっかくそう言うならねだってみようか。ちょうど、欲しかったものがあるんだ。
「それじゃ、腕カバーが欲しい」
わたしがそう言うと、なぜかカレヴィの目が点になった。
「……腕、カバー……?」
「漫画描くのに衣装の袖が汚れそうなんだよね。腕まくりしてもいいけど、腕が汚れるのは変わりないし」
わたしの描いている漫画はカレヴィには既に見せてある。
最初カレヴィは漫画特有のデフォルメした描き方に戸惑っていたけれど、すぐにそれに慣れて漫画の読み方について聞いてきた。
基本的には一頁の右から左に読んでいくんだよと言ったらすぐ理解したらしくて、わたしの描きかけの原稿にすいすい目を通していた。
……こんなことなら今まで描いた原稿も持ってくるんだったな。今度向こうに行ったときは全原稿を持ってこよう。
そういう訳でわたしの描いた漫画を読んだカレヴィだったけれど、女らしくないわたしにしては、中身がかなり少女趣味だったので結構驚いていたみたいだ。
人は見かけによらないものだな、とわたしの顔を見て彼はしみじみ呟いてた。……失礼な。
ちなみにわたしの描く漫画は、千花に魔法をかけてもらってあるから、こちらの世界の人にも理解できるようになっている。
……本当に千花の魔法は便利だなあ。
わたしがつくづく感心していると、カレヴィがちょっと困った顔をして聞いてきた。
「……そんなものでいいのか? 首飾りとか腕輪が欲しいとかないのか?」
「ううん、腕カバーがいい。それも木綿で黒くて汚れが目立たないやつ」
わたしがきっぱりはっきりそう言うと、カレヴィはどことなく不満そうな顔で大きく溜息をついていた。
……なんだ、腕カバーじゃいけなかったのかな? でも当面欲しいものもないし、もしあっても千花が持ってきてくれるし。
わたしが首を傾げながらそう思っていると、カレヴィがちょっと呆れたような顔で言ってきた。
「本当に、おまえの考えることは俺には分からん」
うーん、庶民と王様の考え方の違いは結構大きい、のかな……?
なんだか、それだけじゃないような気もするけど。
それからカレヴィは、イヴェンヌ達に腕カバーをすぐ持ってくるように言いつけると、ソフィアが代表してそれを持ってきてくれた。
──これだよ、これ。
構造は簡単だから、たぶんあるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱり異世界にもあったよ、黒い腕カバー。
ちょっと感動しながら装着したら、カレヴィに今着けるのはやめろと言われてしまった。
これくらいいいじゃん、けち。
仕方なく腕カバーを外してカレヴィと食後のコーヒーを飲んでたら、千花が律儀にわたしの様子を見にやってきた。
「千花~っ!」
昨夜のことを報告しようと千花に駆け寄ろうとしたら、途端に腰に痛みが走ってわたしはよろけた。
「危な……」
「ハルカッ」
バランスを崩したわたしに、千花とカレヴィが声を上げる。
その途端、見えないなにかがわたしの体を支えて、どうにかわたしは転ばずに済んだ。……もしかして、千花が魔法で受け止めてくれたのかなあ。
「はるか、どうしたの?」
瞬間的に千花がよろよろしてるわたしの傍に移動して尋ねた。
カレヴィも椅子から立ち上がって、わたしの傍に寄ってくる。
「あ……、うん。ちょっと、腰が痛くて」
「……腰?」
千花が首を傾げながらもわたしの肩に触れると、さっきまでわたしを苦しめていた腰の痛みが急になくなった。
「あ、あれ……?」
「治癒魔法を使ったの。それにしてもはるか、腰が痛いってもしかして……」
千花が眉を寄せて言いづらそうにした。
うん、まあこういうことは本人を前にして言いにくいよね。
「あ、うん。昨夜カレヴィとそういう事になったんだ」
わたしがそう言った途端、千花がきっとカレヴィを睨んだ。
「……どういうことです? まだはるかとは婚約期間中でしょう」
千花のその厳しい視線にも特に堪えた様子もなく、カレヴィはこともなげに言った。
「我が国では、王及び王太子に輿入れする花嫁は、婚礼一ヶ月前の婚約期間中に伽の習いをするしきたりがある。俺はそれに従ったまでだ」
「え……」
千花はザクトアリアのその風習を初めて知ったらしくて、愕然とした顔になった。
「は、はるか、ごめん。わたし、この国にそんな風習があるなんて知らなくて。……大変だったでしょう? ごめんね」
千花がうろたえながらわたしに縋りついて謝ってきたけれど、これは彼女が悪い訳じゃない。まあ、あえて言うとしたら悪いのは──
「ううん、千花が謝る事じゃないよ。結局王妃になるって決めたのはわたし自身だし。だから気にしないで」
「でも……」
わたしは笑って言ってみたけど、千花はまだ申し訳なさそうだ。
……仕方ない。千花は最強の魔術師で忙しいのは分かってるけど、その時間を少しもらってしまおう。
「じゃあ、午前中までわたしに付き合ってよ。久しぶりに千花に漫画のアシしてもらうから。それで今回の件は帳消し。ね?」
わたしがにっと笑って千花の肩を叩きながらそう言うと、彼女はちょっとだけ泣きそうになりながら、うん、と頷いた。
「……まあ、俺も事前に言っておかなくて悪かったが」
それまでわたし達の会話に入りづらそうにしていたカレヴィがわたしに謝ってきた。
そんなこと今更言われても遅いんだよ!
だからわたしは、ここぞとばかりに言ってやった。
「本当だよね!!」
「……おまえ、ティカ殿と夫になる俺との扱いが違いすぎるぞ」
「そりゃ、千花は幼なじみの友達だもん。昨日今日会ったばかりのカレヴィとは歴史が違うよ。……それよか、カレヴィ執務に取りかからなくていいの? わたしもいい加減漫画描きたいし、女同士の話もしたいから、もう自分の部屋に戻るね」
わたしはカレヴィの抗議を軽くあしらうと、千花を促して、共同の間から自分の居室へとさっさと移動する。
「おい、ハルカ」
カレヴィがなにか言いたそうにしたけど、無視。
腕カバーはもらったけど、やっぱりまだカレヴィにはアレのことでいろいろと怒ってるんだよね。
「……ねえ、はるか。カレヴィ王が呼んでるけど」
千花が気遣わしげに言ってくるけれど、いいのいいの、気にしないで。
「それよか、聞いてよ千花。カレヴィったら酷いんだよー!」
わたしは完全にカレヴィをしかとして千花に話しかける。
わたしのあからさまな無視にちょっと呆然としているカレヴィを気の毒そうに見ながらも、モニーカ達三人もわたし達の後についてきた。
──それから。
カレヴィはすごすごと自分の執務室に戻っていって、ちょっと拗ねていたとか。
まあ、これはゼシリアから聞いた情報なんだけどね。
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