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第一章:喪女ですが異世界で結婚する予定です
第4話 超非凡な友人
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着替えさせられたわたしは、さっきカレヴィ王がいた部屋へ戻らされた。侍女が言うにはそこは王の執務室らしい。
入室すると、そこに見知った人物がいたのでわたしはびっくりした。
だって彼女がここにいるはずない。思わずわたしは自分の目を疑った。
着ているのはドレスだし、ものすごく綺麗になっているけど、でもやっぱり間違いない。
「ち、千花~っ!?」
「はるか、ひさしぶりー。元気だったー?」
幼なじみの千花に抱きつかれてわたしはちょっと呆然とする。
千花とは小さい頃からの友達だけど、こんなことは聞いてない。まさに青天の霹靂だ。
「げ、元気、元気だけどー……なんで、ここに千花がいるの?」
今は確か、結婚して外国にいるって聞いてたんだけど。
「あれ、最強の女魔術師が日本人だって聞いてなかった?」
「聞いてたけど……まさか、それが千花だっていうの?」
友達が異世界で魔術師なんて、そんな馬鹿なことがあるの?
「うん、そのまさか」
「うっそ、そんなことありなの?」
千花、いつの間にそんなことになったんだ。
「うん、まあ……。驚くのも無理はないと思うけどー……」
千花はそう言うと、困ったように頬に手をやった。なんというか、どことなく気品のある仕草だ。
「……なんだ、知り合いだったのか?」
久しぶりのわたし達の再会を遠巻きにして見ていた王様が声をかけてきた。
「知り合いっていうか……友達です」
「久しぶりにはるかに会いたいなと思ったら、召喚の座標指定を少し失敗してしまいまして。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
千花はわたしから離れると、カレヴィ王とおじさんに頭を下げる。
「いやいや、ティカ様が頭など下げないでください。あなた様にそんなことをされたら我々がガルディアに睨まれてしまいます」
おじさんがどことなくにやけた顔で、それでも慌てて言う。……まあ、千花は友達の贔屓目を引いてもとっても美人なんだけどね。
「……それにしてもなんでティカって呼ばれてるの? 千花でしょ?」
綺麗な響きだけど、やっぱり聞き慣れないせいか違和感がある。
「うん、この大陸の人には千花って発音しにくいらしいんだよね。だからティカって呼ばれてるの」
そうなんだ。それなら納得。
それにしても友達が最強の女魔術師って呼ばれてるってすごくない?
「それにしても、千花、魔法使えるなんてすごいね。わたしにも使えるかな?」
わたしがわくわくしながら聞くと、千花はちょっと困った顔をした。
「うーん、はるかはあまり魔力がないから、あかりを灯す魔法ぐらいしか使えないと思う」
「えー、そうなんだ。残念」
最強と言われる千花がそう言うんだから、事実なんだろう。
でもあかりくらいは灯せるんなら、それを教わってもいいよね。向こうの世界ではそれでも珍しいことだもの。
「……話に割り込むが少しいいか?」
カレヴィ王が遠慮がちにわたし達の話の腰を折った。
「はい、どうぞ」
千花は相手が王様だっていうのに堂々としている。
ひょっとして、最強と言われるほどの魔術師だと、いろいろな国の王族と対等に渡りあえるんだろうか。
さっきのおじさんもいやに腰を低くして『ティカ様』って呼んでたし。
──すごい。すごいよ、千花。
わたしなんか、王様と向き合うのでさえ、命の危険まで感じて内心冷や汗ものだったのに。
千花のこの肝の据わり方はマジでただ者じゃないよ。
「ハルカが突然現れたことで、隣国のディアルスタン王国の王女との婚約誓約書が滅茶苦茶になった。最強の魔術師の力でどうにかならないか」
あ、そうだった。
千花がどうにか出来るならわたしのしたことは不問になるよね。
そしたら、王様と結婚しなくてもいいし。
「そうですね、婚約誓約書はどうにもなりませんが、ディアルスタンと話を付けることは出来ますよ。この場合、この婚礼はなしということになりますが」
「ああ、それでもいい。だが、国内に相手の名までは伏せてあるが、近々婚礼を挙げることは知らせてしまってある。どうしたらいい」
ええ、そんなにせっぱ詰まってるの?
だから、王様はわたしを代役にしようとしたんだ。
「そうですね……」
千花は顎に指を当てて難しい顔をして考え込む。
その次に、千花の爆弾発言が投下された。
「はるかには申し訳ないですけど、このままあなたの花嫁になってもらうことになりますね」
「ああ、それでいい」
えええええっ!?
カレヴィ王は簡単に頷いてるけど、ちょっと待ってよ、わたしはそんなこと納得してない!
わたしは驚いて思わず飛び上がってしまった。
「えええ、千花ちょっと、それはひどいよ」
元々は千花がわたしを喚びだしたからこうなったんじゃない。
わたしは千花に縋りついて抗議する。
「うん、本当にごめんね。でも、カレヴィ王に酷いことはさせないって約束する」
それって、結婚しても手は出させないってことだよね?
「いや、それより家に帰れないことの方が問題なんだけど。趣味だけど、サイトもやってるし」
「それは異世界召喚でどうにかなるけど。問題は会社だよね。それは残念ながらやめることになりそうだけど……」
それを聞いて、わたしは少なからずショックを受ける。
あああ、わたしの楽しい貯蓄生活が遠くなっていく……。
「そんなあ……。わたし、せっせと貯めた預金を確認するのが楽しみなのに」
わたしがしょんぼりしていると、千花が慰めるようにわたしの肩に手を置いた。
「それなら、わたし向こうに架空の会社作るけど。はるかはそこの事務員ってことにするよ。給料も今よりはずむし」
「ええっ、本当!?」
思ってもいない千花の言葉に、わたしは色めきたってしまった。なんだ、そんなんだったら大歓迎だ。
それにしても、魔術師ってそんなことまで出来ちゃうの?
っていうか、会社設立って、千花いくら稼いでるんだ。
「カレヴィ王と結婚すれば、多少王妃の仕事はあるけど、それ以外は趣味に没頭できるよ。……はるか、どうする?」
千花にそう言われて、わたしは躊躇することもなく笑顔で頷いた。
「ええー、それなら結婚する!」
こんな素晴らしい機会を見逃すなんてこと、わたしには出来っこない。……ああ、この先には充実した生活が待っているんだね。
訪れるだろう近い未来を予想して、うっとりするわたしをカレヴィ王とおじさんが呆れた顔で見ていたけど、わたしはそんなことに構ってなかった。
……多少問題ありだけど、趣味に浸れるってすごく素敵じゃない?
入室すると、そこに見知った人物がいたのでわたしはびっくりした。
だって彼女がここにいるはずない。思わずわたしは自分の目を疑った。
着ているのはドレスだし、ものすごく綺麗になっているけど、でもやっぱり間違いない。
「ち、千花~っ!?」
「はるか、ひさしぶりー。元気だったー?」
幼なじみの千花に抱きつかれてわたしはちょっと呆然とする。
千花とは小さい頃からの友達だけど、こんなことは聞いてない。まさに青天の霹靂だ。
「げ、元気、元気だけどー……なんで、ここに千花がいるの?」
今は確か、結婚して外国にいるって聞いてたんだけど。
「あれ、最強の女魔術師が日本人だって聞いてなかった?」
「聞いてたけど……まさか、それが千花だっていうの?」
友達が異世界で魔術師なんて、そんな馬鹿なことがあるの?
「うん、そのまさか」
「うっそ、そんなことありなの?」
千花、いつの間にそんなことになったんだ。
「うん、まあ……。驚くのも無理はないと思うけどー……」
千花はそう言うと、困ったように頬に手をやった。なんというか、どことなく気品のある仕草だ。
「……なんだ、知り合いだったのか?」
久しぶりのわたし達の再会を遠巻きにして見ていた王様が声をかけてきた。
「知り合いっていうか……友達です」
「久しぶりにはるかに会いたいなと思ったら、召喚の座標指定を少し失敗してしまいまして。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
千花はわたしから離れると、カレヴィ王とおじさんに頭を下げる。
「いやいや、ティカ様が頭など下げないでください。あなた様にそんなことをされたら我々がガルディアに睨まれてしまいます」
おじさんがどことなくにやけた顔で、それでも慌てて言う。……まあ、千花は友達の贔屓目を引いてもとっても美人なんだけどね。
「……それにしてもなんでティカって呼ばれてるの? 千花でしょ?」
綺麗な響きだけど、やっぱり聞き慣れないせいか違和感がある。
「うん、この大陸の人には千花って発音しにくいらしいんだよね。だからティカって呼ばれてるの」
そうなんだ。それなら納得。
それにしても友達が最強の女魔術師って呼ばれてるってすごくない?
「それにしても、千花、魔法使えるなんてすごいね。わたしにも使えるかな?」
わたしがわくわくしながら聞くと、千花はちょっと困った顔をした。
「うーん、はるかはあまり魔力がないから、あかりを灯す魔法ぐらいしか使えないと思う」
「えー、そうなんだ。残念」
最強と言われる千花がそう言うんだから、事実なんだろう。
でもあかりくらいは灯せるんなら、それを教わってもいいよね。向こうの世界ではそれでも珍しいことだもの。
「……話に割り込むが少しいいか?」
カレヴィ王が遠慮がちにわたし達の話の腰を折った。
「はい、どうぞ」
千花は相手が王様だっていうのに堂々としている。
ひょっとして、最強と言われるほどの魔術師だと、いろいろな国の王族と対等に渡りあえるんだろうか。
さっきのおじさんもいやに腰を低くして『ティカ様』って呼んでたし。
──すごい。すごいよ、千花。
わたしなんか、王様と向き合うのでさえ、命の危険まで感じて内心冷や汗ものだったのに。
千花のこの肝の据わり方はマジでただ者じゃないよ。
「ハルカが突然現れたことで、隣国のディアルスタン王国の王女との婚約誓約書が滅茶苦茶になった。最強の魔術師の力でどうにかならないか」
あ、そうだった。
千花がどうにか出来るならわたしのしたことは不問になるよね。
そしたら、王様と結婚しなくてもいいし。
「そうですね、婚約誓約書はどうにもなりませんが、ディアルスタンと話を付けることは出来ますよ。この場合、この婚礼はなしということになりますが」
「ああ、それでもいい。だが、国内に相手の名までは伏せてあるが、近々婚礼を挙げることは知らせてしまってある。どうしたらいい」
ええ、そんなにせっぱ詰まってるの?
だから、王様はわたしを代役にしようとしたんだ。
「そうですね……」
千花は顎に指を当てて難しい顔をして考え込む。
その次に、千花の爆弾発言が投下された。
「はるかには申し訳ないですけど、このままあなたの花嫁になってもらうことになりますね」
「ああ、それでいい」
えええええっ!?
カレヴィ王は簡単に頷いてるけど、ちょっと待ってよ、わたしはそんなこと納得してない!
わたしは驚いて思わず飛び上がってしまった。
「えええ、千花ちょっと、それはひどいよ」
元々は千花がわたしを喚びだしたからこうなったんじゃない。
わたしは千花に縋りついて抗議する。
「うん、本当にごめんね。でも、カレヴィ王に酷いことはさせないって約束する」
それって、結婚しても手は出させないってことだよね?
「いや、それより家に帰れないことの方が問題なんだけど。趣味だけど、サイトもやってるし」
「それは異世界召喚でどうにかなるけど。問題は会社だよね。それは残念ながらやめることになりそうだけど……」
それを聞いて、わたしは少なからずショックを受ける。
あああ、わたしの楽しい貯蓄生活が遠くなっていく……。
「そんなあ……。わたし、せっせと貯めた預金を確認するのが楽しみなのに」
わたしがしょんぼりしていると、千花が慰めるようにわたしの肩に手を置いた。
「それなら、わたし向こうに架空の会社作るけど。はるかはそこの事務員ってことにするよ。給料も今よりはずむし」
「ええっ、本当!?」
思ってもいない千花の言葉に、わたしは色めきたってしまった。なんだ、そんなんだったら大歓迎だ。
それにしても、魔術師ってそんなことまで出来ちゃうの?
っていうか、会社設立って、千花いくら稼いでるんだ。
「カレヴィ王と結婚すれば、多少王妃の仕事はあるけど、それ以外は趣味に没頭できるよ。……はるか、どうする?」
千花にそう言われて、わたしは躊躇することもなく笑顔で頷いた。
「ええー、それなら結婚する!」
こんな素晴らしい機会を見逃すなんてこと、わたしには出来っこない。……ああ、この先には充実した生活が待っているんだね。
訪れるだろう近い未来を予想して、うっとりするわたしをカレヴィ王とおじさんが呆れた顔で見ていたけど、わたしはそんなことに構ってなかった。
……多少問題ありだけど、趣味に浸れるってすごく素敵じゃない?
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