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第四章:華燭の姫君
第51話 蜜月の前に(3)
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「アーク、会いたかった!」
焦がれる想いを抑えながらアークを待っていたわたしは、彼が姿を現すと傍に駆け寄った。
「イルーシャ」
そんなわたしをアークは抱きしめてくれる。わたしも彼の背に手を回した。
アークはわたしの頤に手をかけると、唇にそっと口づけた。それを何度も繰り返されて、わたしは更にアークにしがみついた。
しばらくしてアークの唇が離されて、わたしは彼の腕に抱き寄せられたままでいた。
「……おまえの花嫁姿は美しかったな。他の者に見せるのが惜しいくらいだ」
「ありがとう。アークにそう言ってもらえるだけで嬉しい」
わたしは彼の言葉に頬を染めながらも微笑んだ。
「あの……、陛下、イルーシャ様お食事が冷めますわ。どうぞ着席なさってくださいませ」
エレーンとシンシアがわたし達に遠慮がちに声をかけてくる。
普段はどちらか一人が控えてるんだけど、今日は衣装合わせがあったので、二人一緒だ。
「あ、そうね。早くいただきましょう」
「ああ。そうだな」
わたし達は彼女達に促され向かい合って着席すると、アークが大皿からわたしの皿に料理を取ってくれた。
「ありがとう」
「ああ」
アークが自分の皿に料理を取り終えるまで待ってから、わたしは今日の衣装合わせのことをにこにこして話し出す。
話題は持ち込まれた数十着のドレスのこと。
「あの量のドレスを選別するのは結構大変だったわ。最後にはメルアリータさんが侍女さん達に指令を出して、入れ替わり立ち替わりでドレスを見て選んで貰ったけれど」
わたしが報告すると、アークはおかしそうに笑った。
「そうか、結構大仰なことになっていたんだな」
「そうよ、メルアリータさんと侍女さんの意気込みは並大抵のものじゃなかったわ」
「……そういえば、イルーシャは役職に敬称を付けるのが癖なのか? メルアリータも別に呼び捨てで構わないぞ。おまえは王妃になるのだからな」
「あ、そうね」
アークのもっともな意見にわたしは頷いた。
王妃になったら、侍女や騎士をさん付けで呼ぶのはまずいわよね。
ちょっと抵抗はあるけれど、これも慣れなきゃ。
「これからそう呼ぶことにするわね」
「ああ、そうしてくれ。……それにしても、ここ二日の間に料理の味が格段に上がったな。昨日のうちにおまえが料理長に指示したのか?」
ステーキ肉を切り分けながらアークが言う。
「ええ、まあ。塩胡椒の加減とか、ハーブや香辛料の使い方とかが主だったけれど。あの料理長は下処理とかは完璧だったから、かなり楽だったわよ?」
それに、彼が変なプライドみたいなのを持っていなくて助かった。
そのおかげで、味気なかった料理が格段においしくなったのだ。
その時には、わたしは料理長と二人して手を取り合って喜んでしまった。……その後、彼は真っ赤になって恐縮していたけれど。
「アーク、婚礼がすんで落ち着いたら、また厨房に行ってもいいかしら? いくつかレシピを料理長に教えたいし」
王妃らしくないって、怒られるかしらと内心ヒヤヒヤしながらの提案だったけれど、アークは快諾してくれた。
「ああ、いいぞ。王宮の料理の味が上がるのはいいことだ。味気ない料理で客人をもてなす非礼もなくなるだろうしな」
わたしはアークの言葉にほっとしながらも、彼に尋ねた。
「よかった。……それはそうと、アーク、甘いものは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だが」
「あまり得意じゃないんだけど、今度焼き菓子作るわね。あなたの口に合えばいいのだけれど」
お菓子のレパートリーはほとんどないけど、クッキーとかマドレーヌあたりなら作れるし、彼にも是非食べて貰いたい。
……それで、おいしいってアークが言ってくれたら、すごく幸せかもしれない。
「イルーシャが作ったのなら、うまいだろう。そう謙遜するな、楽しみに待っている」
「ええ」
アークが大らかな王で本当に良かった。
普通だったら厨房に出入りするだけで大目玉だろうから。
わたしもそれ以外はなるべくおとなしくしていよう。余計なことでわたしの評判が悪くなって、アークの立場が脅かされたら嫌だもの。
食事を終えたわたし達は、長椅子に隣り合って座り談笑していた。
その間、シンシアが遠慮しながら食後のお茶を出しに来たけど、そんなに入りづらい雰囲気だったのかしら。
まあ、確かにアークに肩を抱かれて、もたれ掛かってはいたけれど。
「……そうか、それでは明日式の段取りを確認するんだな?」
「ええ、それで最終的にアークと合わせていけばいいでしょうってメルアリータ、が言っていたわ」
「そうか。各国に親書や国内のふれも出し終えたことだし、わたしも早急に段取りを確認しなければな」
段取りの確認とアークが言ったけれど、わたしはまだ彼の婚礼衣装の話を聞いていないことに気がついた。
「……そういえば、アークは婚礼衣装、決めたの?」
「いや、まだだ。だが明日早々には決める。もちろんメルアリータの意見も聞くが」
まだ、アークの方はそこまでいってなかったんだわ。やっぱり執務やら婚礼の準備やらで忙しいのだろう。
「……なんだかアーク、大変そう」
わたしがアークを見上げてそう言うと、アークは優しく微笑んで抱き寄せてくれた。
「このくらいはなんでもない。気にするな」
「え、ええ……」
当のアークがそう言っているのだから、あまりこの話題を引っ張るのもなんだし、もうやめよう。
それよりも。
「……早くその日がくればいいのに」
わたしが小さく溜息をついて言った言葉に、アークは微笑みながら頷いた。
「そうすれば、おまえはわたしのものだ」
「ええ、わたしはあなたのもの」
アークの膝の上に抱き寄せられて、少しはしたないかもしれないけれど、わたしは彼の首に腕を回して幸福な気持ちでくすくすと笑いをこぼす。
そう、その日がくれば、身も心もわたしはアークのものなのだ。
不安が全くないって言ったら嘘だけれど、それ以上に彼と結ばれたいという気持ちの方が強かった。
わたしとアークが口づけを交わしているうちに宰相補佐のローラントがアークを呼びにきて、わたし達はまた離れ離れにされてしまったけれど、わたしは彼と結ばれる日がこうしている間にも着々と近づいてることに喜びを感じていた。
「イルーシャ様、お幸せそうですね」
「今はお忙しいですけれど、それもあと少しの辛抱ですわ。イルーシャ様は間違いなく陛下のお妃になられますもの」
「……ありがとう」
エレーンとシンシアが心底嬉しそうな顔で言ってきてくれるのを、わたしは幸福な気分で受け止めていた。
──もうじきわたしはアークリッドの妃になる。
この先どんな困難が待ち受けていようとも、彼と二人でいられるなら、それも乗り越えられるような気がした。
そのくらい、わたしは幸せだった。
焦がれる想いを抑えながらアークを待っていたわたしは、彼が姿を現すと傍に駆け寄った。
「イルーシャ」
そんなわたしをアークは抱きしめてくれる。わたしも彼の背に手を回した。
アークはわたしの頤に手をかけると、唇にそっと口づけた。それを何度も繰り返されて、わたしは更にアークにしがみついた。
しばらくしてアークの唇が離されて、わたしは彼の腕に抱き寄せられたままでいた。
「……おまえの花嫁姿は美しかったな。他の者に見せるのが惜しいくらいだ」
「ありがとう。アークにそう言ってもらえるだけで嬉しい」
わたしは彼の言葉に頬を染めながらも微笑んだ。
「あの……、陛下、イルーシャ様お食事が冷めますわ。どうぞ着席なさってくださいませ」
エレーンとシンシアがわたし達に遠慮がちに声をかけてくる。
普段はどちらか一人が控えてるんだけど、今日は衣装合わせがあったので、二人一緒だ。
「あ、そうね。早くいただきましょう」
「ああ。そうだな」
わたし達は彼女達に促され向かい合って着席すると、アークが大皿からわたしの皿に料理を取ってくれた。
「ありがとう」
「ああ」
アークが自分の皿に料理を取り終えるまで待ってから、わたしは今日の衣装合わせのことをにこにこして話し出す。
話題は持ち込まれた数十着のドレスのこと。
「あの量のドレスを選別するのは結構大変だったわ。最後にはメルアリータさんが侍女さん達に指令を出して、入れ替わり立ち替わりでドレスを見て選んで貰ったけれど」
わたしが報告すると、アークはおかしそうに笑った。
「そうか、結構大仰なことになっていたんだな」
「そうよ、メルアリータさんと侍女さんの意気込みは並大抵のものじゃなかったわ」
「……そういえば、イルーシャは役職に敬称を付けるのが癖なのか? メルアリータも別に呼び捨てで構わないぞ。おまえは王妃になるのだからな」
「あ、そうね」
アークのもっともな意見にわたしは頷いた。
王妃になったら、侍女や騎士をさん付けで呼ぶのはまずいわよね。
ちょっと抵抗はあるけれど、これも慣れなきゃ。
「これからそう呼ぶことにするわね」
「ああ、そうしてくれ。……それにしても、ここ二日の間に料理の味が格段に上がったな。昨日のうちにおまえが料理長に指示したのか?」
ステーキ肉を切り分けながらアークが言う。
「ええ、まあ。塩胡椒の加減とか、ハーブや香辛料の使い方とかが主だったけれど。あの料理長は下処理とかは完璧だったから、かなり楽だったわよ?」
それに、彼が変なプライドみたいなのを持っていなくて助かった。
そのおかげで、味気なかった料理が格段においしくなったのだ。
その時には、わたしは料理長と二人して手を取り合って喜んでしまった。……その後、彼は真っ赤になって恐縮していたけれど。
「アーク、婚礼がすんで落ち着いたら、また厨房に行ってもいいかしら? いくつかレシピを料理長に教えたいし」
王妃らしくないって、怒られるかしらと内心ヒヤヒヤしながらの提案だったけれど、アークは快諾してくれた。
「ああ、いいぞ。王宮の料理の味が上がるのはいいことだ。味気ない料理で客人をもてなす非礼もなくなるだろうしな」
わたしはアークの言葉にほっとしながらも、彼に尋ねた。
「よかった。……それはそうと、アーク、甘いものは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だが」
「あまり得意じゃないんだけど、今度焼き菓子作るわね。あなたの口に合えばいいのだけれど」
お菓子のレパートリーはほとんどないけど、クッキーとかマドレーヌあたりなら作れるし、彼にも是非食べて貰いたい。
……それで、おいしいってアークが言ってくれたら、すごく幸せかもしれない。
「イルーシャが作ったのなら、うまいだろう。そう謙遜するな、楽しみに待っている」
「ええ」
アークが大らかな王で本当に良かった。
普通だったら厨房に出入りするだけで大目玉だろうから。
わたしもそれ以外はなるべくおとなしくしていよう。余計なことでわたしの評判が悪くなって、アークの立場が脅かされたら嫌だもの。
食事を終えたわたし達は、長椅子に隣り合って座り談笑していた。
その間、シンシアが遠慮しながら食後のお茶を出しに来たけど、そんなに入りづらい雰囲気だったのかしら。
まあ、確かにアークに肩を抱かれて、もたれ掛かってはいたけれど。
「……そうか、それでは明日式の段取りを確認するんだな?」
「ええ、それで最終的にアークと合わせていけばいいでしょうってメルアリータ、が言っていたわ」
「そうか。各国に親書や国内のふれも出し終えたことだし、わたしも早急に段取りを確認しなければな」
段取りの確認とアークが言ったけれど、わたしはまだ彼の婚礼衣装の話を聞いていないことに気がついた。
「……そういえば、アークは婚礼衣装、決めたの?」
「いや、まだだ。だが明日早々には決める。もちろんメルアリータの意見も聞くが」
まだ、アークの方はそこまでいってなかったんだわ。やっぱり執務やら婚礼の準備やらで忙しいのだろう。
「……なんだかアーク、大変そう」
わたしがアークを見上げてそう言うと、アークは優しく微笑んで抱き寄せてくれた。
「このくらいはなんでもない。気にするな」
「え、ええ……」
当のアークがそう言っているのだから、あまりこの話題を引っ張るのもなんだし、もうやめよう。
それよりも。
「……早くその日がくればいいのに」
わたしが小さく溜息をついて言った言葉に、アークは微笑みながら頷いた。
「そうすれば、おまえはわたしのものだ」
「ええ、わたしはあなたのもの」
アークの膝の上に抱き寄せられて、少しはしたないかもしれないけれど、わたしは彼の首に腕を回して幸福な気持ちでくすくすと笑いをこぼす。
そう、その日がくれば、身も心もわたしはアークのものなのだ。
不安が全くないって言ったら嘘だけれど、それ以上に彼と結ばれたいという気持ちの方が強かった。
わたしとアークが口づけを交わしているうちに宰相補佐のローラントがアークを呼びにきて、わたし達はまた離れ離れにされてしまったけれど、わたしは彼と結ばれる日がこうしている間にも着々と近づいてることに喜びを感じていた。
「イルーシャ様、お幸せそうですね」
「今はお忙しいですけれど、それもあと少しの辛抱ですわ。イルーシャ様は間違いなく陛下のお妃になられますもの」
「……ありがとう」
エレーンとシンシアが心底嬉しそうな顔で言ってきてくれるのを、わたしは幸福な気分で受け止めていた。
──もうじきわたしはアークリッドの妃になる。
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