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第二章:伝説の姫君と舞踏会
第10話 カディスからの求婚
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「いい香りー」
芳香を放っている花に顔を寄せてわたしはその香りを楽しむ。
最近のわたしのお気に入りは庭園。
散策しながら花を楽しむのが朝の日課になっている。
「イルーシャ」
「あれ、カディス、おはよう。執務はどうしたの?」
「……無粋なことを言うな。せっかくおまえに会いに来たのに」
「……イザトさんに怒られても知らないよ」
イザトさんの名前を出したら、カディスがちょっと動揺した。
そうか、カディスもイザトさんが苦手なのか。イザトさん、見るからに厳しそうだもんね。
「それはそうと、おまえに伝えたいことがあるんだが」
「なに?」
首を傾げる私の髪をカディスの大きな手が梳く。
「イルーシャ、俺はおまえが好きだ。俺の妃になってほしい」
「え……」
わたしは瞳を見開いてカディスの真剣な顔を見返す。
「俺にはおまえ以外の女を妃に据えるなど考えられない。……考えておいてくれ」
「そ、そんな……」
カディスの突然のプロポーズにわたしはうろたえるしかない。
「そんなこと突然言われても……、困る」
「困る? どうしてだ、おまえは俺が嫌いか?」
カディスの真摯な視線を受けて、わたしは顔に血が上るのを感じた。
「き、嫌いじゃないけど……」
そりゃ、出会った当初は大嫌いだったけど、今はなんだかんだ言ってお世話になってるし、カディスには感謝してる。でも好きかと聞かれたら、よく分からない。
わたしはどうしていいか分からなくて視線をあちこちにさまよわせる。すると、あるものに目が行った。
──あ、あれ、ひょっとしてっ。
「お、おいっ!?」
いきなりその場からダッシュしたわたしに驚いたらしいカディスが声をあげる。
目的のものの側に駆け寄ったわたしはあちこちそれを観察する。
幹の色や花の形、花の付き方といいこれは。
「……やっぱり桜だあ……」
感激して、思わず幹に抱きつく。
「エーメの樹じゃないか」
わたしを追ってきたカディスが樹を見上げて言う。
「こっちではエーメって言うの? 桜がこっちにあるなんて思わなかったから嬉しいな」
「……抱きつくほどその花が好きなのか? どうせ抱きつくなら俺にしてほしいが」
「うん、大好き!」
にっこり笑って言ったら、なぜかカディスが目元を赤く染めた。
いや、大好きなのは桜のことであって、カディスのことを言ったわけじゃないよ。
「そ、そうか。そんなにエーメが好きならもっと庭園に植えさせるが」
「うーん、庭園も悪くないけど、桜並木の方がいいなあ」
「並木道か。そう言えば、師団への道が殺風景だったな。早速植えさせるか」
「本当!? 楽しみー。日本ではね、夜になると照明付けて夜桜見物とかしたんだ。あれは綺麗だったなあ」
わたしはうっとりとその時の情景を思い返す。
「そうか、それはいいな。夜に花を観賞するか、なんとも趣がある催しだな」
「でしょう?」
実態は飲んで騒ぐのが目的な人も多いんだけどね。まあ、それを言ったら台無しなのでやめておく。
「……ところで俺の妃の件だがな」
わ、忘れてなかったんだね……。
内心冷や汗をかきながらカディスに向き合うと、わたしは彼に抱き寄せられた。
「カ、カディス……」
その腕から逃げ出したかったけど、思いのほか強い力で閉じ込められていて、それは叶わなかった。
「は、離して……」
わたしは真っ赤になって身を捩る。
「断る、と言ったらどうする」
「こ、困るよ。どうしてこんなことするの?」
「おまえは先程の俺の言葉を聞いていなかったのか? 俺はおまえが好きだと言っただろう」
き、聞いてたけど、でもっ。
カディスは右手を挙げてわたしの頬に触れた。親指でそっと唇をなぞられてわたしはびくりとする。
「イルーシャ、怖がるな」
カディスが苦笑したけど、わたしは首を横に振るしかできなかった。
「む、無理だから……っ」
正直、カディスに支えられてなかったらこのまま倒れそう。
「……仕方ないな」
そう言うと、カディスはわたしの額にキスをした。
「本当は唇に口づけたいところだがな」
その言葉に、わたしは耳まで赤くなって抗議する。
「駄目駄目、絶対駄目!」
「……キースには許したじゃないか」
「あ、あれは、不可抗力で……っ」
「なるほど、不可抗力か」
あれ、なんか微妙にカディスの目が据わってる。え、え、なんか顔が近づいて来てるような気がするんだけど!
「カディ……ッ」
仰け反ろうとしたら、頭の後ろに手を添えられてわたしは動けなくなる。
おもむろにカディスは顔を傾けると、わたしに口づけた。
「や……っ」
一度目は軽く、二度目は長い長いキス。
──もう駄目、酸欠になりそう。
くたっと力の抜けたわたしを支えながら、カディスが苦笑した。
「息をしないやつがあるか」
いや、頭では分かってるんだけどね……。
わたしは肩で息をしながら、カディスに寄りかかる。そんな状況の中でカディスは楽しそうにわたしの髪を撫でていた。
「おまえの言い分からしたら、これも不可抗力だな」
「……あのねえ……」
なんというか、どっと疲れた気分だ。
「恋人でもないのに、そんな簡単にキスしたりしないでよ」
「だから、俺の妃になれと言っている」
どこまで俺様なんだ、カディス。
「わたしは承諾してないでしょ。……とにかく離して」
そうは言ったものの、脚に力が入らなくてフラフラしていたら、カディスに抱き上げられた。
こ、これはいわゆるお姫様抱っこ!
「ちょっとカディス、わたし歩けるからっ。降ろして!」
「説得力がないぞ。まともに歩けないだろう」
う……っ、そうなんだけど、さっきから晒されている好奇の視線が気になって仕方ない。
「だって、恥ずかしい……」
わたしは赤くなった頬を両手で隠した。
「おまえは時々、すごく可愛いな」
「わ、わたしが可愛いとか、ありえないからっ」
カディスの言葉に本気でびっくりして言い返す。わたしはむしろ可愛くない性格だと自負している。
「褒めたんだ、素直に受け取れ」
「え、と。う、うん……」
なんとか頷いたものの、わたしは気恥ずかしさから真っ赤な顔で俯くしかなかった。
「そんな顔を他の男に見せるな。特にキースには」
「え、なんで?」
カディスがなんでそんなことを言ってくるのか分からなくて、顔を上げて聞く。
「それは、やつが獣だからだ」
……カディスってば、以前、キースに獣と一緒って言われたのを気にしてたんだ。
「……それはカディスもじゃない」
「俺はいいんだ」
「いや、良くないから!」
ここで強く言っておかないと、被害がまたわたしに及ぶ。
むうと睨むと、カディスは仕方なさそうに溜息をついた。
「……一応自重はする」
そんなやりとりがあったのが十日程前。わたしは再び庭園の散策に出ていた。
「イルーシャ様、おはようございます」
「おはよう」
ヒューとブラッドにばったり出会って、朝の挨拶を交わす。
「イルーシャ様、師団への並木道のこと、ありがとうございました」
「陛下がおっしゃってましたよ。エーメの樹を植えることを提案されたのは、イルーシャ様だと」
「え、あれ、もう完成したの? それを言ったのは、十日くらい前なんだけど」
ちょっと早くない? あまりの仕事の速さに驚いていると、ヒューが言った。
「ええ、我々騎士団も出ての急のことでしたが、おかげで素晴らしい出来映えで……」
「騎士団まで出張したの? なんか、悪いことしちゃったみたい」
わたしの一言でそんな大事になっていたとは知らなかった。今後は発言に気をつけなくちゃ。
「いえいえ、そんなことはたいしたことではないですよ。イルーシャ様のおかげで殺伐とした我々の宿舎にも潤いが出来たというものです」
反省するわたしに、ブラッドが微笑んだ。
「そう言ってくれるなら、嬉しいけど……」
わたしは二人に師団への並木道まで案内して貰った。そこでわたしが目にしたものは。
「な……っ、なにこれ」
「見事なものでしょう? ちょっとした名所になりますね、これは」
ヒューが感嘆したように溜息をついた。
確かに見事だ。でもわたしはカディスにここまでしてとは言わなかった。
満開の桜並木……、はまあいいとしてその樹の大きさ!
背の高いブラッドやヒューの身長を軽く超す樹の高さ。幹も何年も年月を重ねたらしく立派だ。
「こ、これ、どうやって運んだの?」
「それは魔術師団が移動魔法で運んだんです。ちょっと壮観でしたよ」
……この大きさの桜の樹を何百本と運ぶんだもの、それはそうだろうね。
思わず引きつった笑いを浮かべていると、二人が心配そうに声をかけてきた。
「イルーシャ様?」
「もしかして、お気に召さなかったのですか?」
いや、桜並木はとっても綺麗で気に入ったけど。
「……カディスがここまでやるとは思わなかったのよ。せいぜい、道沿いに桜の苗木を植える程度だと思ってたし。これ、いったいいくらかかってるのよ」
この桜の樹一本だって相当の値段のはずだ。
「イルーシャ様、陛下からの贈り物の値を聞くなんて野暮というものですよ」
「いや、だってこれ、国民の税金でしょ? わたし嫌だからね、『あの女のせいで国庫を圧迫した』なんて言われたら!」
わたしがそう捲し立てると、ブラッドは目を白黒させた。
「そ、そういうことですか……」
「イルーシャ様、しっかりされてますね……」
ヒューはぽかんと口を開けていたけど、しばらくしてから妙に感心したような口調で呟いた。
芳香を放っている花に顔を寄せてわたしはその香りを楽しむ。
最近のわたしのお気に入りは庭園。
散策しながら花を楽しむのが朝の日課になっている。
「イルーシャ」
「あれ、カディス、おはよう。執務はどうしたの?」
「……無粋なことを言うな。せっかくおまえに会いに来たのに」
「……イザトさんに怒られても知らないよ」
イザトさんの名前を出したら、カディスがちょっと動揺した。
そうか、カディスもイザトさんが苦手なのか。イザトさん、見るからに厳しそうだもんね。
「それはそうと、おまえに伝えたいことがあるんだが」
「なに?」
首を傾げる私の髪をカディスの大きな手が梳く。
「イルーシャ、俺はおまえが好きだ。俺の妃になってほしい」
「え……」
わたしは瞳を見開いてカディスの真剣な顔を見返す。
「俺にはおまえ以外の女を妃に据えるなど考えられない。……考えておいてくれ」
「そ、そんな……」
カディスの突然のプロポーズにわたしはうろたえるしかない。
「そんなこと突然言われても……、困る」
「困る? どうしてだ、おまえは俺が嫌いか?」
カディスの真摯な視線を受けて、わたしは顔に血が上るのを感じた。
「き、嫌いじゃないけど……」
そりゃ、出会った当初は大嫌いだったけど、今はなんだかんだ言ってお世話になってるし、カディスには感謝してる。でも好きかと聞かれたら、よく分からない。
わたしはどうしていいか分からなくて視線をあちこちにさまよわせる。すると、あるものに目が行った。
──あ、あれ、ひょっとしてっ。
「お、おいっ!?」
いきなりその場からダッシュしたわたしに驚いたらしいカディスが声をあげる。
目的のものの側に駆け寄ったわたしはあちこちそれを観察する。
幹の色や花の形、花の付き方といいこれは。
「……やっぱり桜だあ……」
感激して、思わず幹に抱きつく。
「エーメの樹じゃないか」
わたしを追ってきたカディスが樹を見上げて言う。
「こっちではエーメって言うの? 桜がこっちにあるなんて思わなかったから嬉しいな」
「……抱きつくほどその花が好きなのか? どうせ抱きつくなら俺にしてほしいが」
「うん、大好き!」
にっこり笑って言ったら、なぜかカディスが目元を赤く染めた。
いや、大好きなのは桜のことであって、カディスのことを言ったわけじゃないよ。
「そ、そうか。そんなにエーメが好きならもっと庭園に植えさせるが」
「うーん、庭園も悪くないけど、桜並木の方がいいなあ」
「並木道か。そう言えば、師団への道が殺風景だったな。早速植えさせるか」
「本当!? 楽しみー。日本ではね、夜になると照明付けて夜桜見物とかしたんだ。あれは綺麗だったなあ」
わたしはうっとりとその時の情景を思い返す。
「そうか、それはいいな。夜に花を観賞するか、なんとも趣がある催しだな」
「でしょう?」
実態は飲んで騒ぐのが目的な人も多いんだけどね。まあ、それを言ったら台無しなのでやめておく。
「……ところで俺の妃の件だがな」
わ、忘れてなかったんだね……。
内心冷や汗をかきながらカディスに向き合うと、わたしは彼に抱き寄せられた。
「カ、カディス……」
その腕から逃げ出したかったけど、思いのほか強い力で閉じ込められていて、それは叶わなかった。
「は、離して……」
わたしは真っ赤になって身を捩る。
「断る、と言ったらどうする」
「こ、困るよ。どうしてこんなことするの?」
「おまえは先程の俺の言葉を聞いていなかったのか? 俺はおまえが好きだと言っただろう」
き、聞いてたけど、でもっ。
カディスは右手を挙げてわたしの頬に触れた。親指でそっと唇をなぞられてわたしはびくりとする。
「イルーシャ、怖がるな」
カディスが苦笑したけど、わたしは首を横に振るしかできなかった。
「む、無理だから……っ」
正直、カディスに支えられてなかったらこのまま倒れそう。
「……仕方ないな」
そう言うと、カディスはわたしの額にキスをした。
「本当は唇に口づけたいところだがな」
その言葉に、わたしは耳まで赤くなって抗議する。
「駄目駄目、絶対駄目!」
「……キースには許したじゃないか」
「あ、あれは、不可抗力で……っ」
「なるほど、不可抗力か」
あれ、なんか微妙にカディスの目が据わってる。え、え、なんか顔が近づいて来てるような気がするんだけど!
「カディ……ッ」
仰け反ろうとしたら、頭の後ろに手を添えられてわたしは動けなくなる。
おもむろにカディスは顔を傾けると、わたしに口づけた。
「や……っ」
一度目は軽く、二度目は長い長いキス。
──もう駄目、酸欠になりそう。
くたっと力の抜けたわたしを支えながら、カディスが苦笑した。
「息をしないやつがあるか」
いや、頭では分かってるんだけどね……。
わたしは肩で息をしながら、カディスに寄りかかる。そんな状況の中でカディスは楽しそうにわたしの髪を撫でていた。
「おまえの言い分からしたら、これも不可抗力だな」
「……あのねえ……」
なんというか、どっと疲れた気分だ。
「恋人でもないのに、そんな簡単にキスしたりしないでよ」
「だから、俺の妃になれと言っている」
どこまで俺様なんだ、カディス。
「わたしは承諾してないでしょ。……とにかく離して」
そうは言ったものの、脚に力が入らなくてフラフラしていたら、カディスに抱き上げられた。
こ、これはいわゆるお姫様抱っこ!
「ちょっとカディス、わたし歩けるからっ。降ろして!」
「説得力がないぞ。まともに歩けないだろう」
う……っ、そうなんだけど、さっきから晒されている好奇の視線が気になって仕方ない。
「だって、恥ずかしい……」
わたしは赤くなった頬を両手で隠した。
「おまえは時々、すごく可愛いな」
「わ、わたしが可愛いとか、ありえないからっ」
カディスの言葉に本気でびっくりして言い返す。わたしはむしろ可愛くない性格だと自負している。
「褒めたんだ、素直に受け取れ」
「え、と。う、うん……」
なんとか頷いたものの、わたしは気恥ずかしさから真っ赤な顔で俯くしかなかった。
「そんな顔を他の男に見せるな。特にキースには」
「え、なんで?」
カディスがなんでそんなことを言ってくるのか分からなくて、顔を上げて聞く。
「それは、やつが獣だからだ」
……カディスってば、以前、キースに獣と一緒って言われたのを気にしてたんだ。
「……それはカディスもじゃない」
「俺はいいんだ」
「いや、良くないから!」
ここで強く言っておかないと、被害がまたわたしに及ぶ。
むうと睨むと、カディスは仕方なさそうに溜息をついた。
「……一応自重はする」
そんなやりとりがあったのが十日程前。わたしは再び庭園の散策に出ていた。
「イルーシャ様、おはようございます」
「おはよう」
ヒューとブラッドにばったり出会って、朝の挨拶を交わす。
「イルーシャ様、師団への並木道のこと、ありがとうございました」
「陛下がおっしゃってましたよ。エーメの樹を植えることを提案されたのは、イルーシャ様だと」
「え、あれ、もう完成したの? それを言ったのは、十日くらい前なんだけど」
ちょっと早くない? あまりの仕事の速さに驚いていると、ヒューが言った。
「ええ、我々騎士団も出ての急のことでしたが、おかげで素晴らしい出来映えで……」
「騎士団まで出張したの? なんか、悪いことしちゃったみたい」
わたしの一言でそんな大事になっていたとは知らなかった。今後は発言に気をつけなくちゃ。
「いえいえ、そんなことはたいしたことではないですよ。イルーシャ様のおかげで殺伐とした我々の宿舎にも潤いが出来たというものです」
反省するわたしに、ブラッドが微笑んだ。
「そう言ってくれるなら、嬉しいけど……」
わたしは二人に師団への並木道まで案内して貰った。そこでわたしが目にしたものは。
「な……っ、なにこれ」
「見事なものでしょう? ちょっとした名所になりますね、これは」
ヒューが感嘆したように溜息をついた。
確かに見事だ。でもわたしはカディスにここまでしてとは言わなかった。
満開の桜並木……、はまあいいとしてその樹の大きさ!
背の高いブラッドやヒューの身長を軽く超す樹の高さ。幹も何年も年月を重ねたらしく立派だ。
「こ、これ、どうやって運んだの?」
「それは魔術師団が移動魔法で運んだんです。ちょっと壮観でしたよ」
……この大きさの桜の樹を何百本と運ぶんだもの、それはそうだろうね。
思わず引きつった笑いを浮かべていると、二人が心配そうに声をかけてきた。
「イルーシャ様?」
「もしかして、お気に召さなかったのですか?」
いや、桜並木はとっても綺麗で気に入ったけど。
「……カディスがここまでやるとは思わなかったのよ。せいぜい、道沿いに桜の苗木を植える程度だと思ってたし。これ、いったいいくらかかってるのよ」
この桜の樹一本だって相当の値段のはずだ。
「イルーシャ様、陛下からの贈り物の値を聞くなんて野暮というものですよ」
「いや、だってこれ、国民の税金でしょ? わたし嫌だからね、『あの女のせいで国庫を圧迫した』なんて言われたら!」
わたしがそう捲し立てると、ブラッドは目を白黒させた。
「そ、そういうことですか……」
「イルーシャ様、しっかりされてますね……」
ヒューはぽかんと口を開けていたけど、しばらくしてから妙に感心したような口調で呟いた。
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