ショートショートのお茶漬け

rara33

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第13話 トンネルの悲劇

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※外見のことで嫌な思いをされた方は、閲覧にご注意願います。

 今もひどいトラウマになっている思い出がある。

「夏休みで学校ないのはいいけど、毎日暑いよね~」
「肝試しで涼みません?」
「じゃあ、今夜あそこ行く?」

 そんな会話がきっかけで、当時中学2年生だった私は、女友達2人と連れだって、近所にある「出る」と噂のトンネルに行った。

 それは廃線の高架下にある、横幅が人2人分くらいの小さなトンネルだった。


 夜遅くに家を抜け出した私たちが集合したとき、あたりはもう真っ暗だった。

「出たらどうする?」
「絶対置いてかないでよ!」

 どこか弾むような口調で、友達2人は臆することなくトンネルの闇の中に入っていった。

 非モテ陰キャな私と違って、「モテる女」を自認する彼女たちは、どこへ行ってもグイグイ進むのだ。

 私はそんな2人の後を、気後れしながらついていった。

 3人の靴音が、ピチャピチャと暗いトンネル内に響く。

「ひやぁ!」
「どうしたの!? ……イヤァ!」

 友達2人が立て続けに悲鳴を上げた。

「首筋にペロッてされた!」
「腕つかまれた!」

 彼女たちは悲鳴を上げながら、元来た方へと疾走しっそうした。

 何にもされなかった私も、つられて一緒に走った。

 そのあとは、みんな入り口まで無事に戻ってこられた。

「さっきのヤバかったよね!」と青ざめた顔で手を取り合う2人をよそに、私は黙ってトンネルを振り返った。

「ねえ! 見てあれ!」

 私がトンネルの入り口の壁を指さすと、友達2人はまた悲鳴を上げた。


 ――楽しかった また来てね――

 その壁に書かれた文字は、真っ赤な血の色だった。

 彼女たちは、大きな叫び声を響かせて一目散に逃げ帰った。


 でも、一人残された私は、なんだか納得が出来なかった。

「よし、もう一回入ろう」

 私はさっきと同じように、一人でトンネルの中へと歩を進めた。

 真っ暗な中、濡れた地面に自分の靴音だけが響いた。

 ピチャピチャ
 ……

 ピチャピチャ
 ……

 歩き続けて、とうとうトンネルの一番奥まで来てしまった。

 そのまましばらく突っ立っていたけど、やっぱり何も起こらない。

 仕方がないので、私は入口へと引き返し始めた。

 ピチャピチャ
 ……

 結局、何かされることもなく、無事に入口にたどり着いてしまった。

「さっきのは、2人の芝居だったのかな?」

 私は一人でつぶやくと、さっき文字が書かれていた壁の場所に目をやった。
 
 するとそこには、また同じように真っ赤な文字が浮かんでいた。


 ――ブスは帰れ――

 私の心は血まみれになった。

 (了)

◎この話はフィクションです。
お読みくださり、誠にありがとうございます。
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