9 / 24
第9話 3回変わっても終わらない話
しおりを挟む
【場面1】
ある朝、男は激しい喉の渇きを覚えて目を覚ました。
男の乗っていた船が難破して、命からがら無人島にたどり着いたのだ。
海辺に作った粗末な寝床から起き上がると、男は飲み水を求めて島の奥に広がる山へと入った。
【場面2】
その日の昼。
島の中央まで山の中を歩いて登ると、男は美しい川を見つけた。
太陽の光を反射して、水面がまぶしいばかりに輝いている。
「良かった!これでしばらくは安心だ!」
男は喜びのあまり、川に向かって飛び込んだ。
だが、川の深さは男の予想以上に深く、驚いた男は水の流れに足を取られた。
男は必死にもがいたが、水中の渦に巻き込まれて意識を失った。
男の体は川の上流から下流へと流され、つづく海へと押し出された。
【場面3】
この男の悲劇を、神は上空で見ていた。
生きている人間の前に神が姿を現すことはこの世界に混乱をもたらすため、男を川で救うことはできなかったのだ。
神は海から男の遺体を拾い上げ、無人島の海辺の寝床まで運んだ。
男の体を押して肺に溜まっていた海水を取り出し、神は新たに命を与えた。
男の死に顔が、あっという間に生気を取り戻した。
神は己が助けた証拠を消すため、男の今日に関する記憶を全て消し去った。
「愚かなる人間よ。何度同じことを繰り返すのか。
これは明日も様子を見に来た方が良さそうじゃな」
神は呆れ顔でつぶやくと、茜さす空へと帰って行った。
(了)
◎このあと【場面1】に変わっても(3回目)、お話は終わりません。
かの有名な「だまし絵」を参考にしました。
ある朝、男は激しい喉の渇きを覚えて目を覚ました。
男の乗っていた船が難破して、命からがら無人島にたどり着いたのだ。
海辺に作った粗末な寝床から起き上がると、男は飲み水を求めて島の奥に広がる山へと入った。
【場面2】
その日の昼。
島の中央まで山の中を歩いて登ると、男は美しい川を見つけた。
太陽の光を反射して、水面がまぶしいばかりに輝いている。
「良かった!これでしばらくは安心だ!」
男は喜びのあまり、川に向かって飛び込んだ。
だが、川の深さは男の予想以上に深く、驚いた男は水の流れに足を取られた。
男は必死にもがいたが、水中の渦に巻き込まれて意識を失った。
男の体は川の上流から下流へと流され、つづく海へと押し出された。
【場面3】
この男の悲劇を、神は上空で見ていた。
生きている人間の前に神が姿を現すことはこの世界に混乱をもたらすため、男を川で救うことはできなかったのだ。
神は海から男の遺体を拾い上げ、無人島の海辺の寝床まで運んだ。
男の体を押して肺に溜まっていた海水を取り出し、神は新たに命を与えた。
男の死に顔が、あっという間に生気を取り戻した。
神は己が助けた証拠を消すため、男の今日に関する記憶を全て消し去った。
「愚かなる人間よ。何度同じことを繰り返すのか。
これは明日も様子を見に来た方が良さそうじゃな」
神は呆れ顔でつぶやくと、茜さす空へと帰って行った。
(了)
◎このあと【場面1】に変わっても(3回目)、お話は終わりません。
かの有名な「だまし絵」を参考にしました。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる