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2.5章 番外編
35話② ババ抜で息抜き <上>
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「あー2週間も安静にしてるのは流石に暇だな……」
俺は地下にいたあの悪魔のような存在の攻撃を喰らい重傷を負ったはずなのだが、奇跡的にまだ生き延びており今は病室のベッドの上で安静中だった。
俺が目覚めたその日、それが1日目であるが相川翼にカウンセリングをしてもらい、俺の今に至る過程を話した。
人に誇れるような話では無いため、かなり省略させてもらったが、何故か後半辺りに話が進むと機嫌が急激に悪くなった。
……というか部屋の温度が下がった。布団を被ってるのにそれでも寒気が止まなかった。普段おっとりしていて天然気質なのに機嫌を損ねるとあそこまで怖くなるのか?これからは少し言動に気をつけるようにしよう……未だに原因は分からないが。
てかあんな部屋を絶対零度にできる能力があるなら地下にいたあの悪魔に対してもそれをやって欲しかったものだ……、まぁアホらしい話はさておきだ。
1日目2日目はまだ身体が重い事もあってすぐに眠気が襲い寝て時間を潰す事もできたが、身体は順調に回復をしているおかげで起きている時間が増えてしまった。
喜ばしい事なのは間違い無いのだが、いくら何でも回復が早すぎる。骨が折れた感触がしたのは気のせいだったのだろうか?まぁあの十川という医者もそれについて特に言及していなかったから気のせいなんだろうけど……。
するとここでいつものようにある人間がこの病室にノックをして入ってくる。
「失礼します。おや?冬夜さん起きてましたか」
「あぁ、今何時だ?」
「今は……朝の9時前くらいですね。いつも12時くらいに起きるのに今日はえらく早起きですね、身体が順調に回復してる良い証拠ですよ」
先ほど俺が考えていた事と全く同じ事をここで口にする。確かに喜ばしい事なのだがやる事が無いのも俺にとっては問題だ。これならまだ回復していない方が嬉しかったと思う程に。
「せっかく朝早く起きた事ですし、朝食を食べましょう。と言っても……栄養を考えた病食ではなく冬夜さんの持って来た食糧しかないのですが……」
申し訳無さそうな顔でそう言う。しかしそれは致し方ない事だ、食材を別の階から取りに行くのにもリスクが掛かるし、調理するのもさらに危険が伴う。
俺が万全な状態で動ければ、別の階の移動も可能だが、まだその状態まで時間がかかるだろう。トイレくらいは自分1人で行けるくらいには動ける程度だ。
「別にそれで平気だ。食糧は確かに俺が持って来たがそれも他の店から盗ってきたものだしな。誰のものでもないだろ」
「それでも……冬夜さんが持って来てくれなければ私達は飢え死にしていました。だからありがとうございます」
「……あっそ」
正直面と向かって感謝されるのは得意ではない。だから俺は顔を逸らして素っ気なく返事した。
「そうだ冬夜さん!朝食を済ました後で構わないのですが……」
「何だ?」
急に目をキラキラと輝かせて何かを期待している様な雰囲気を醸し出す。
「ババ抜き!しませんか?」
「……ババ抜き?」
「はい、ババ抜きです。知りませんか?」
「アホか、知ってるに決まってるだろ」
「じゃあやりましょう」
淡々と話を進めようとする。突然の流れの変わりように戸惑い、数々の疑問点が浮かび上がってしまう。
「いやいや、何でババ抜き?しかも突然すぎるだろ……あと2人しかいないし」
咄嗟に浮かんできた疑問を全部投げかける。
「ちょっとした脳のリハビリも兼ねて暇つぶしにババ抜きです!3人目は十川さんを呼びます!」
俺の疑問に応えるように聞きたい事を全て答えてくれた。
ババ抜きか……良いな。時間を持て余すのも事実だしババ抜きくらいのゲームならそこまで負担にならなくて丁度いいかもな。
仕事中のあの男を急に呼び出すのはどうかと思うが、別に俺にとってはどうでも良い。むしろあの日の俺を見捨てた事を後悔させてやる。
あの日というのはこの女の地雷を間違って踏んでしまい殺伐とした空気になってしまった時の事で、その瞬間俺を見捨てて部屋を抜け出して件は今でも忘れない。
ここはいっそ罰ゲームを設けるのも悪くないな。
「仕方ねぇーな……付き合ってやるよ」
「わぁーい!ありがとうございます!」
本当はババ抜きをしたくて仕方ないのだが、それを表に出すのは子供っぽくて非常に恥ずかしいため控えめに「別にどっちでも良いけど?」と思わせるような態度をとる。
要するにくだらないプライドを守る為だ。我ながら本当にダサい事をしてる思う。でもこれくらい許してくれ、男は見栄を張る生き物だのだから。
「じゃあ十川さん読んできますねっ!」
「あぁ」
十川とかいうヤブ医者を呼ぶために部屋を出て行く。
「……ってかあいつ俺の飯忘れてね?」
ババ抜きの話題に夢中になってお互い飯の事について忘れていたようだ。まぁそんな事もあるだろう……いやあいつ看護師なんだからさすがにそれは駄目じゃね?
この後俺たちのババ抜きは熾烈な戦いを繰り広げる事になる。
俺は地下にいたあの悪魔のような存在の攻撃を喰らい重傷を負ったはずなのだが、奇跡的にまだ生き延びており今は病室のベッドの上で安静中だった。
俺が目覚めたその日、それが1日目であるが相川翼にカウンセリングをしてもらい、俺の今に至る過程を話した。
人に誇れるような話では無いため、かなり省略させてもらったが、何故か後半辺りに話が進むと機嫌が急激に悪くなった。
……というか部屋の温度が下がった。布団を被ってるのにそれでも寒気が止まなかった。普段おっとりしていて天然気質なのに機嫌を損ねるとあそこまで怖くなるのか?これからは少し言動に気をつけるようにしよう……未だに原因は分からないが。
てかあんな部屋を絶対零度にできる能力があるなら地下にいたあの悪魔に対してもそれをやって欲しかったものだ……、まぁアホらしい話はさておきだ。
1日目2日目はまだ身体が重い事もあってすぐに眠気が襲い寝て時間を潰す事もできたが、身体は順調に回復をしているおかげで起きている時間が増えてしまった。
喜ばしい事なのは間違い無いのだが、いくら何でも回復が早すぎる。骨が折れた感触がしたのは気のせいだったのだろうか?まぁあの十川という医者もそれについて特に言及していなかったから気のせいなんだろうけど……。
するとここでいつものようにある人間がこの病室にノックをして入ってくる。
「失礼します。おや?冬夜さん起きてましたか」
「あぁ、今何時だ?」
「今は……朝の9時前くらいですね。いつも12時くらいに起きるのに今日はえらく早起きですね、身体が順調に回復してる良い証拠ですよ」
先ほど俺が考えていた事と全く同じ事をここで口にする。確かに喜ばしい事なのだがやる事が無いのも俺にとっては問題だ。これならまだ回復していない方が嬉しかったと思う程に。
「せっかく朝早く起きた事ですし、朝食を食べましょう。と言っても……栄養を考えた病食ではなく冬夜さんの持って来た食糧しかないのですが……」
申し訳無さそうな顔でそう言う。しかしそれは致し方ない事だ、食材を別の階から取りに行くのにもリスクが掛かるし、調理するのもさらに危険が伴う。
俺が万全な状態で動ければ、別の階の移動も可能だが、まだその状態まで時間がかかるだろう。トイレくらいは自分1人で行けるくらいには動ける程度だ。
「別にそれで平気だ。食糧は確かに俺が持って来たがそれも他の店から盗ってきたものだしな。誰のものでもないだろ」
「それでも……冬夜さんが持って来てくれなければ私達は飢え死にしていました。だからありがとうございます」
「……あっそ」
正直面と向かって感謝されるのは得意ではない。だから俺は顔を逸らして素っ気なく返事した。
「そうだ冬夜さん!朝食を済ました後で構わないのですが……」
「何だ?」
急に目をキラキラと輝かせて何かを期待している様な雰囲気を醸し出す。
「ババ抜き!しませんか?」
「……ババ抜き?」
「はい、ババ抜きです。知りませんか?」
「アホか、知ってるに決まってるだろ」
「じゃあやりましょう」
淡々と話を進めようとする。突然の流れの変わりように戸惑い、数々の疑問点が浮かび上がってしまう。
「いやいや、何でババ抜き?しかも突然すぎるだろ……あと2人しかいないし」
咄嗟に浮かんできた疑問を全部投げかける。
「ちょっとした脳のリハビリも兼ねて暇つぶしにババ抜きです!3人目は十川さんを呼びます!」
俺の疑問に応えるように聞きたい事を全て答えてくれた。
ババ抜きか……良いな。時間を持て余すのも事実だしババ抜きくらいのゲームならそこまで負担にならなくて丁度いいかもな。
仕事中のあの男を急に呼び出すのはどうかと思うが、別に俺にとってはどうでも良い。むしろあの日の俺を見捨てた事を後悔させてやる。
あの日というのはこの女の地雷を間違って踏んでしまい殺伐とした空気になってしまった時の事で、その瞬間俺を見捨てて部屋を抜け出して件は今でも忘れない。
ここはいっそ罰ゲームを設けるのも悪くないな。
「仕方ねぇーな……付き合ってやるよ」
「わぁーい!ありがとうございます!」
本当はババ抜きをしたくて仕方ないのだが、それを表に出すのは子供っぽくて非常に恥ずかしいため控えめに「別にどっちでも良いけど?」と思わせるような態度をとる。
要するにくだらないプライドを守る為だ。我ながら本当にダサい事をしてる思う。でもこれくらい許してくれ、男は見栄を張る生き物だのだから。
「じゃあ十川さん読んできますねっ!」
「あぁ」
十川とかいうヤブ医者を呼ぶために部屋を出て行く。
「……ってかあいつ俺の飯忘れてね?」
ババ抜きの話題に夢中になってお互い飯の事について忘れていたようだ。まぁそんな事もあるだろう……いやあいつ看護師なんだからさすがにそれは駄目じゃね?
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