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2章 病院編
35話
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「冬夜さん……その傷は?」
「っ……」
言い逃れ……できそうに無いな。人に噛まれたなんて無理な言い訳をしても怪しさが増すだけだ。
何より……
「冬夜さん正直に言ってください」
今のこの女の前で誤魔化そうとしてもすぐに嘘がバレる気がした。嘘をついて今この女の協力を得られないかもしれないよりも、正直に答えて協力を得るべきだと考える。
(まぁ最初に騙していた事実は消えないがな……これで見放される可能性もある訳だ)
未だに俺を心配そうな目で見つめる。その目の奥には気のせいかもしれないが俺を信じようとする意志を感じた気がした。
俺はそれを見て正直に答えることを決断する。
「お前らが想像してる通り……俺はゾンビにここを噛まれた」
「……!」
「やはりそうだったか」
相田翼は俺の答えを聞いて、信じられないような表情を浮かべる。それと対照に十川はまるで最初から答えが分かっていたかのように落ち着いた表情を見せる。
「噛まれた後の反応は?」
「噛まれた直後は気を失ったが、起きた後にはもうゾンビに狙われなくなっていた」
「ほう……」
ここだけを切り取れば俺をカウンセリングしてくれる良い医者の様に見えるが……俺は内心いつ化け物と判定されるか分からず冷や汗をかいていた。
「本当にそんなことがあるんですか?」
「普通は有り得ないね。噛まれてしまえばその時点で感染してしまうから……そう普通は……」
やけに普通という言葉を強調するこの男。俺は既に普通の存在ではないという事。つまり人間とはかけ離れた存在と認識されている可能性がある。
「じゃあ君はその体質をどう利用してきたの?」
「別に……俺は俺のためにこの体質を利用してきた。誰かの為に利用しようと思った事はない」
「……」
全ての質問に正直に答える。
奏の例があるが、別に奏の為に100%慈善活動をした訳ではない。その行動の根幹にあるのは全て自分の為だ。
俺は誰かの為に行動出来るほどの聖人ではないと自分で分かっているから。
十川は顔を少し俯かせて考える素振りを見せる。
俺はその顔を見て、自分の心臓の音がいつもよりも耳に大きく響くのを感じる。
(お前は今何を考えている……?俺をどうしたいんだ……)
今この男に生殺与奪の権利を握られているのだ。緊張しない訳がない。
「じゃあ……」
「っ……」
口を開く。
その一言に俺の運命が左右される。
「僕はここでお暇するよ。最低1週間は安静にして置くようにね」
「……は?」
「何だい……もしかして僕が君に何かするとでも?」
「するだろ……信用できる要素が無い」
「ははっ、確かに」
「?」
何故このタイミングで笑う?俺はこの男のことがますます理解できなくなっていた。
最低1週間は安静……?じゃあその間に俺は何かされるのかもしれない……そう疑わずにはいられなかった。
「君は……自分を何だと思ってるんだい?」
「……そりゃ人間とは言い難いだろうな。ゾンビに狙われない体質なんて他の奴から見たら不気味でしか……」
「君は人間だよ……紛れもなくね」
「そんな訳……そう言って俺から信用を得ようとしてるのか?」
ここで俺を人間という人間を信じられる訳がない。誰しもが俺を化物と見るはずなのだ……そうじゃないとおかしい。
「別にそういう訳じゃないよ。君が人間だという証拠はあるんだ」
「証拠だと……?」
そんなものがあるのか疑う俺の前に用意されたのは液体が入った試験管の様なものだった。
「これは……?」
「下の研究所で使われていた血液型検査期だ」
「……P-tBの?」
「そう。P-tBが入った血液は何の反応も示さない……つまり血液型がどれにも当てはまらない。ここではP型と言っておこう」
俺はO型だから、検査器で俺の血液型がOの反応が出れば人間という証明になるということか?
「実はもう一度血液を抜き取って検査はしてある。結果は……」
「……」
先程俺に対して何もしていないと言っていたはずだが、やはり血液は抜き取っていたようだ。
しかしそれはやってもらう予定ではあったため、ここでは何も言わずに話を進めさせる。
「青色……つまりO型の反応だ。どうだい、合っているかな?」
「ああ……俺はO型だ」
血液型は誰にも言ったことがない。そして現に俺の血液は異物が混ざっている為別の反応が出るはずだ。
ここでO型の反応が出るという事は俺の血液を検査してしっかりとO型が出たという事。
つまり俺は特殊体とは違う……紛れもない人間ということ。
「そうか……俺は人間だったのか」
良かった……本当に。
証明されてんだ俺は人間だと。少なくともこの2人に対しては人間として振る舞える。
「良かったですね冬夜さん」
俺の反応見て喜んでいると伝わったのか、微笑ましそうな顔を浮かべて俺を見るこの女。
「別に」
「もうっ……それは流石に嘘だってわかりますよ?」
「ちっ……」
「し、舌打ち!?酷いですよ!」
普段照れるという状況があまり無いため、表情を隠そうとするがすぐにバレてしまう。
しかし別にそこに嫌悪感は無かった。
「じゃあ今度こそ僕はここで……」
「ああ……」
今度こそ病室を出た十川。
今のこの病室には俺とこの音の2人になる。
「冬夜さんこれからどうするつもりですか?」
「そうだな……とりあえず1週間は安静にして、そこからは退院して一度自分の家に戻ると思う」
「そうですか……私にそれを止める事はできません。ですから聞かしてください、ここまでに何があったか……私カウンセリングも得意なんですよ?」
そういって自信ありげに自分の胸をポンと叩く。その反動で大きな胸の膨らみが揺れる。
それを俺に見られたせいなのか、急激に顔を赤く染める。そして上目遣いで俺を見上げて恥ずかしそうに……
「あっ……冬夜さんのエッチ……」
「いや、理不尽だろそれは……」
しかし俺の耳も赤くなっていた事はこの女にはどうやら気付かれなかったらしい。
そして無事何事もなく1週間が経つのであった。
俺は無事退院して、現在自分の部屋にいるのであった。
「はぁ……家出る度に大変な思いして帰ってくるな俺」
奏がいた時は銃弾を胸に撃たれたり……相田翼の時はあの悪魔に遭遇したり。
もうしばらく外に出たくないと思ってしまう俺であった。
ベッドに飛び込んで横たわる。病室でもベッドでは寝ていたが、やはり自分がいつも寝ているベッドとは違った安心感がある。
その安心感のおかげで一気に睡魔が押し寄せて来る。人と話すことがまずあまり無いためその疲労感に解放されたのも一つの要因だろう。
「やばい……寝れ……る」
このまま目を閉じてしまえば寝てしまうと思ったその時だった。
「はっっっくしょん!」
「!?」
俺はそのくしゃみの様な音に咄嗟に飛び上がって起きてしまう。今ので完全に睡魔が吹き飛んでしまった様だ。
それもそのはず……その音はこの家の中きら聞こえてきたのだから。
「襖の中か?」
方向的には襖の中だった。
「嘘だろ?」
俺はゆっくりと襖の方に歩み寄る。
ここまで怖いことがあるだろうか?ゾンビならまだしも生きている人間がいつの間にか襖の中にいる。
幽霊よりも人間が怖いと思える点はこういう所なのだろう。俺は襖に向かって声を掛ける。
「おいっ……」
「っ……!」
襖の中から物音が聞こえる。
確実にいる。俺は警察署にいた時に警官に撃たれたことを思い出して細心の注意を払いながら開ける。
「開けるぞ……間違っても変な気は起こすなよ?」
「……」
ガラッ
俺は襖を開けた。そこには体育座りをしているセーラー服を着た黒髪で長髪の女子高生がいた。その姿はどこか見覚えがあった気がした。
「お前は……!」
「あっ……えと……」
それは俺を噛み、俺の人生を大きく変えたはずの特殊体であった。
「な、何でお前がここに!?」
「す、すいませんっ~!私佐藤未来と申します!よろしくお願いします!」
「……は?」
ここから俺とこの特殊体だったはずの女の物語が始まるのであった。
冬夜が総合病院を退院した直後の時まで遡る……
「冬夜さん行っちゃいましたね」
「そうだね……1週間だけの付き合いだけど寂しいものだね」
たった1週間だけだけど冬夜さんのことをよく知ることが出来たと思う。
冬夜さんはああ見えて意外と褒められると弱いという所が分かった。あと名前で呼ぶと時々嬉しそうな表情もする……そこが結構キュンと来たり……いやいや!別にそういう意味のキュンじゃ……
「翼さん……実は言いたいことがあってね」
「?……何ですか?」
十川さんは妙に真剣味を含んだ表情で私に何かを打ち明けようとしていた。
一体何の話だろう……それよりも何で冬夜さんが居なくなった直後に……。
「これは黒藤君が居ない時にが出来ない話だ」
「冬夜さんが居ない時にしか出来ない話?」
十川さんがまるで私の考えがお見通しとばかりに、質問をする前に疑問への答えを話す。
「……1週間前の黒藤君の血液型を検査器で検査した時のことを覚えてるかい?」
「はい……それがどうしたんですか?」
一件何も問題が無さそうだったが……私は衝撃的な事実を打ち明けられる。
「実はね……あれは嘘だったんだ」
「え……嘘?実はA型とかですか?」
「いやそんな軽い話じゃ無い」
そんな軽い話じゃ無い?じゃあ冬夜にとって深刻な話という事?
そもそも何で嘘なんか吐いたのだろう……私は胸騒ぎが止まなかった。
「彼の血液を検査した時に、検査器の反応に何の変化も無かったんだ」
「え……それって」
「ああ、つまりP型。彼は人間では無かったんだ……」
「!?」
そんな……そんな事って……。
冬夜さんはあんなに嬉しそうにしていたのに……何のメリットもない私を必死に守ろうとしてくれていた人間が実は人間じゃ無かったなんて……そんなの!
「十川さん見損ないましたよ私……」
「恨まれても仕方ない。あの状況ではああするしか無かったんだ」
「そんな事って……」
こんな真実を知ってしまっても私の冬夜さんに対する態度は変わったりしない。
けど……冬夜さんが自分の体の真実を知った時一体どうなるのだろうか?
「こんなの……冬夜さんに言えるわけないじゃないですかっ……」
2章完
「っ……」
言い逃れ……できそうに無いな。人に噛まれたなんて無理な言い訳をしても怪しさが増すだけだ。
何より……
「冬夜さん正直に言ってください」
今のこの女の前で誤魔化そうとしてもすぐに嘘がバレる気がした。嘘をついて今この女の協力を得られないかもしれないよりも、正直に答えて協力を得るべきだと考える。
(まぁ最初に騙していた事実は消えないがな……これで見放される可能性もある訳だ)
未だに俺を心配そうな目で見つめる。その目の奥には気のせいかもしれないが俺を信じようとする意志を感じた気がした。
俺はそれを見て正直に答えることを決断する。
「お前らが想像してる通り……俺はゾンビにここを噛まれた」
「……!」
「やはりそうだったか」
相田翼は俺の答えを聞いて、信じられないような表情を浮かべる。それと対照に十川はまるで最初から答えが分かっていたかのように落ち着いた表情を見せる。
「噛まれた後の反応は?」
「噛まれた直後は気を失ったが、起きた後にはもうゾンビに狙われなくなっていた」
「ほう……」
ここだけを切り取れば俺をカウンセリングしてくれる良い医者の様に見えるが……俺は内心いつ化け物と判定されるか分からず冷や汗をかいていた。
「本当にそんなことがあるんですか?」
「普通は有り得ないね。噛まれてしまえばその時点で感染してしまうから……そう普通は……」
やけに普通という言葉を強調するこの男。俺は既に普通の存在ではないという事。つまり人間とはかけ離れた存在と認識されている可能性がある。
「じゃあ君はその体質をどう利用してきたの?」
「別に……俺は俺のためにこの体質を利用してきた。誰かの為に利用しようと思った事はない」
「……」
全ての質問に正直に答える。
奏の例があるが、別に奏の為に100%慈善活動をした訳ではない。その行動の根幹にあるのは全て自分の為だ。
俺は誰かの為に行動出来るほどの聖人ではないと自分で分かっているから。
十川は顔を少し俯かせて考える素振りを見せる。
俺はその顔を見て、自分の心臓の音がいつもよりも耳に大きく響くのを感じる。
(お前は今何を考えている……?俺をどうしたいんだ……)
今この男に生殺与奪の権利を握られているのだ。緊張しない訳がない。
「じゃあ……」
「っ……」
口を開く。
その一言に俺の運命が左右される。
「僕はここでお暇するよ。最低1週間は安静にして置くようにね」
「……は?」
「何だい……もしかして僕が君に何かするとでも?」
「するだろ……信用できる要素が無い」
「ははっ、確かに」
「?」
何故このタイミングで笑う?俺はこの男のことがますます理解できなくなっていた。
最低1週間は安静……?じゃあその間に俺は何かされるのかもしれない……そう疑わずにはいられなかった。
「君は……自分を何だと思ってるんだい?」
「……そりゃ人間とは言い難いだろうな。ゾンビに狙われない体質なんて他の奴から見たら不気味でしか……」
「君は人間だよ……紛れもなくね」
「そんな訳……そう言って俺から信用を得ようとしてるのか?」
ここで俺を人間という人間を信じられる訳がない。誰しもが俺を化物と見るはずなのだ……そうじゃないとおかしい。
「別にそういう訳じゃないよ。君が人間だという証拠はあるんだ」
「証拠だと……?」
そんなものがあるのか疑う俺の前に用意されたのは液体が入った試験管の様なものだった。
「これは……?」
「下の研究所で使われていた血液型検査期だ」
「……P-tBの?」
「そう。P-tBが入った血液は何の反応も示さない……つまり血液型がどれにも当てはまらない。ここではP型と言っておこう」
俺はO型だから、検査器で俺の血液型がOの反応が出れば人間という証明になるということか?
「実はもう一度血液を抜き取って検査はしてある。結果は……」
「……」
先程俺に対して何もしていないと言っていたはずだが、やはり血液は抜き取っていたようだ。
しかしそれはやってもらう予定ではあったため、ここでは何も言わずに話を進めさせる。
「青色……つまりO型の反応だ。どうだい、合っているかな?」
「ああ……俺はO型だ」
血液型は誰にも言ったことがない。そして現に俺の血液は異物が混ざっている為別の反応が出るはずだ。
ここでO型の反応が出るという事は俺の血液を検査してしっかりとO型が出たという事。
つまり俺は特殊体とは違う……紛れもない人間ということ。
「そうか……俺は人間だったのか」
良かった……本当に。
証明されてんだ俺は人間だと。少なくともこの2人に対しては人間として振る舞える。
「良かったですね冬夜さん」
俺の反応見て喜んでいると伝わったのか、微笑ましそうな顔を浮かべて俺を見るこの女。
「別に」
「もうっ……それは流石に嘘だってわかりますよ?」
「ちっ……」
「し、舌打ち!?酷いですよ!」
普段照れるという状況があまり無いため、表情を隠そうとするがすぐにバレてしまう。
しかし別にそこに嫌悪感は無かった。
「じゃあ今度こそ僕はここで……」
「ああ……」
今度こそ病室を出た十川。
今のこの病室には俺とこの音の2人になる。
「冬夜さんこれからどうするつもりですか?」
「そうだな……とりあえず1週間は安静にして、そこからは退院して一度自分の家に戻ると思う」
「そうですか……私にそれを止める事はできません。ですから聞かしてください、ここまでに何があったか……私カウンセリングも得意なんですよ?」
そういって自信ありげに自分の胸をポンと叩く。その反動で大きな胸の膨らみが揺れる。
それを俺に見られたせいなのか、急激に顔を赤く染める。そして上目遣いで俺を見上げて恥ずかしそうに……
「あっ……冬夜さんのエッチ……」
「いや、理不尽だろそれは……」
しかし俺の耳も赤くなっていた事はこの女にはどうやら気付かれなかったらしい。
そして無事何事もなく1週間が経つのであった。
俺は無事退院して、現在自分の部屋にいるのであった。
「はぁ……家出る度に大変な思いして帰ってくるな俺」
奏がいた時は銃弾を胸に撃たれたり……相田翼の時はあの悪魔に遭遇したり。
もうしばらく外に出たくないと思ってしまう俺であった。
ベッドに飛び込んで横たわる。病室でもベッドでは寝ていたが、やはり自分がいつも寝ているベッドとは違った安心感がある。
その安心感のおかげで一気に睡魔が押し寄せて来る。人と話すことがまずあまり無いためその疲労感に解放されたのも一つの要因だろう。
「やばい……寝れ……る」
このまま目を閉じてしまえば寝てしまうと思ったその時だった。
「はっっっくしょん!」
「!?」
俺はそのくしゃみの様な音に咄嗟に飛び上がって起きてしまう。今ので完全に睡魔が吹き飛んでしまった様だ。
それもそのはず……その音はこの家の中きら聞こえてきたのだから。
「襖の中か?」
方向的には襖の中だった。
「嘘だろ?」
俺はゆっくりと襖の方に歩み寄る。
ここまで怖いことがあるだろうか?ゾンビならまだしも生きている人間がいつの間にか襖の中にいる。
幽霊よりも人間が怖いと思える点はこういう所なのだろう。俺は襖に向かって声を掛ける。
「おいっ……」
「っ……!」
襖の中から物音が聞こえる。
確実にいる。俺は警察署にいた時に警官に撃たれたことを思い出して細心の注意を払いながら開ける。
「開けるぞ……間違っても変な気は起こすなよ?」
「……」
ガラッ
俺は襖を開けた。そこには体育座りをしているセーラー服を着た黒髪で長髪の女子高生がいた。その姿はどこか見覚えがあった気がした。
「お前は……!」
「あっ……えと……」
それは俺を噛み、俺の人生を大きく変えたはずの特殊体であった。
「な、何でお前がここに!?」
「す、すいませんっ~!私佐藤未来と申します!よろしくお願いします!」
「……は?」
ここから俺とこの特殊体だったはずの女の物語が始まるのであった。
冬夜が総合病院を退院した直後の時まで遡る……
「冬夜さん行っちゃいましたね」
「そうだね……1週間だけの付き合いだけど寂しいものだね」
たった1週間だけだけど冬夜さんのことをよく知ることが出来たと思う。
冬夜さんはああ見えて意外と褒められると弱いという所が分かった。あと名前で呼ぶと時々嬉しそうな表情もする……そこが結構キュンと来たり……いやいや!別にそういう意味のキュンじゃ……
「翼さん……実は言いたいことがあってね」
「?……何ですか?」
十川さんは妙に真剣味を含んだ表情で私に何かを打ち明けようとしていた。
一体何の話だろう……それよりも何で冬夜さんが居なくなった直後に……。
「これは黒藤君が居ない時にが出来ない話だ」
「冬夜さんが居ない時にしか出来ない話?」
十川さんがまるで私の考えがお見通しとばかりに、質問をする前に疑問への答えを話す。
「……1週間前の黒藤君の血液型を検査器で検査した時のことを覚えてるかい?」
「はい……それがどうしたんですか?」
一件何も問題が無さそうだったが……私は衝撃的な事実を打ち明けられる。
「実はね……あれは嘘だったんだ」
「え……嘘?実はA型とかですか?」
「いやそんな軽い話じゃ無い」
そんな軽い話じゃ無い?じゃあ冬夜にとって深刻な話という事?
そもそも何で嘘なんか吐いたのだろう……私は胸騒ぎが止まなかった。
「彼の血液を検査した時に、検査器の反応に何の変化も無かったんだ」
「え……それって」
「ああ、つまりP型。彼は人間では無かったんだ……」
「!?」
そんな……そんな事って……。
冬夜さんはあんなに嬉しそうにしていたのに……何のメリットもない私を必死に守ろうとしてくれていた人間が実は人間じゃ無かったなんて……そんなの!
「十川さん見損ないましたよ私……」
「恨まれても仕方ない。あの状況ではああするしか無かったんだ」
「そんな事って……」
こんな真実を知ってしまっても私の冬夜さんに対する態度は変わったりしない。
けど……冬夜さんが自分の体の真実を知った時一体どうなるのだろうか?
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2章完
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