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2章 病院編
33話
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それは数分後のことであった……
「……何か不自然なくらい静かじゃ無いですか?」
「え?」
お互い話す事もなくなりしばらく沈黙を保っていたが、数分経った後唐突に翼さんは沈黙を破る。
僕は考え事をしていて、周りの音に気を向けていなかったため翼さんが一瞬何を言っているか分からなかった。
そして耳を澄ませてみる。確かに静かだった。
いや……耳を澄ますまでも無いくらいに静かだ。そう、翼さんの言葉通り本当に不自然なくらいに。
「本当だ……!」
「おかしくないですか?」
「確かに……ドアの向こうにはゾンビが居るはずなのに」
(諦めてドアの前で待ち伏せするのをやめた?という事は元いた位置に戻ったか?)
「どうしますか?」
「……」
どうするか?それはドアを開けてゾンビがいるかどうかを確かめるかどうかという意味。
ゾンビが意図的に静かになる筈はないと考えているが、絶対に有り得ないとも言い切れない。
しかしこのまま助けが来るのをじっと待つわけにもいかないとは考えている。必ずしも彼が屋上に来てくれるとは限らないのだ。
少しでも足掻かなければならない。この世界で生き続けるという事は、そういった死のリスクを負い続ける事なのだ。
「僕が確かめる」
「わ、私はこの箒を持ちます!例えゾンビが襲って来ても私が十川さんを守るので安心してください!」
「ふっ……頼りにしてるよ」
「はい!」
決して一人にリスクを負わせようとしない。他人頼りじゃなくて自分の意志がある翼さんはとても優しくて……そして強い人だ。
僕は一人じゃない。
(恐れるな……信じるんだ、このドアの向こうにゾンビなんている訳がない)
僕は恐る恐る鍵のロックを解除してドアを開けようとする。
嫌でも想像してしまう。ドアを開けた瞬間に鳴りを潜めていた、顔の皮膚がボロボロなゾンビが僕の顔に襲い掛かろうとする姿を。
そうなってしまえば一瞬で僕の人生は終わってしまう。
ドアノブを掴む手が震えてしまう。
「十川さん、一緒に開けましょう」
僕の手に覆いかぶせるように翼さんもドアノブを掴む。それだけで心強さが増す。
(男だろっ……勇気を出せ!)
「ありがとう翼さん」
僕はゆっくりとドアノブを捻り、ドアを開けた。
「くっ!……ってあれ?いない」
「いない……ですね」
襲い掛かる不安があったので開けた瞬間に身構えていたが、一匹たりともゾンビがいなくて拍子抜けてしまった。
「静かだ……まるで誰もいないみたいに」
この階の廊下にゾンビが戻って行ったと思っていたが、この静けさ的にこの階にもゾンビが居ないように感じる。
「行ってくる」
「気を付けてください」
そう言いながら翼さんも箒を握り締めながら後ろをついてくる。ゆっくりと階段を降りながら廊下に出た。
「いない……本当に一匹もいない」
「さっき通りかかった時は奥に結構いましたよね?」
「ああ……少なくとも10匹以上はこの廊下にいた。一体どうなっているんだ?」
こんな急にゾンビが全匹居なくなることがあるのか?
居なくなっとしたらどこへ?下の階か?
「下の階も確認してみよう」
「はい」
しかし予想はことごとく外れる。9階や8階にも、そして目的地点である7階にもゾンビは1匹たりとも居なかった。
「こんな事有り得るのか!?」
7階~10階のゾンビが1匹残らず下に向かったというのか?一体何のために!?
……まさかあの地下にいた化物に吸い寄せられて?
エレベーターを使わなければゾンビは地下には行けない。そしてゾンビにそんな思考なんて出来ない。
ゾンビがあの化物に吸い寄せられているとしたら……つまり1階に2階~10階のゾンビが集中している事になる。
「そんなバカな……どうやって吸い寄せられたというんだ。吸い寄せることが出来るだけの大きな音も聞こえなったのに……」
10階にいるゾンビに音が聞こえたなら僕達にも聞こえる筈。ただでさえ僕達は静かにしていたんだ……聞こえないはずが無い。
「黒藤君……!」
もう地下付近は地獄と化しているだろう。あの化物がいて、全てのゾンビが地下に集まろうと下に集中している。
想像するだけで怖気が止まらない。きっと1階は腐敗臭で一杯になっているだろう。
果たして彼は無事に帰ってくることが出来るのか?いくらゾンビを恐れないからと言っても、限度があるだろう。
僕は下の階に行こうか迷っていたそんな時だった。彼の帰還の報せが届いたのは……。
「……何か不自然なくらい静かじゃ無いですか?」
「え?」
お互い話す事もなくなりしばらく沈黙を保っていたが、数分経った後唐突に翼さんは沈黙を破る。
僕は考え事をしていて、周りの音に気を向けていなかったため翼さんが一瞬何を言っているか分からなかった。
そして耳を澄ませてみる。確かに静かだった。
いや……耳を澄ますまでも無いくらいに静かだ。そう、翼さんの言葉通り本当に不自然なくらいに。
「本当だ……!」
「おかしくないですか?」
「確かに……ドアの向こうにはゾンビが居るはずなのに」
(諦めてドアの前で待ち伏せするのをやめた?という事は元いた位置に戻ったか?)
「どうしますか?」
「……」
どうするか?それはドアを開けてゾンビがいるかどうかを確かめるかどうかという意味。
ゾンビが意図的に静かになる筈はないと考えているが、絶対に有り得ないとも言い切れない。
しかしこのまま助けが来るのをじっと待つわけにもいかないとは考えている。必ずしも彼が屋上に来てくれるとは限らないのだ。
少しでも足掻かなければならない。この世界で生き続けるという事は、そういった死のリスクを負い続ける事なのだ。
「僕が確かめる」
「わ、私はこの箒を持ちます!例えゾンビが襲って来ても私が十川さんを守るので安心してください!」
「ふっ……頼りにしてるよ」
「はい!」
決して一人にリスクを負わせようとしない。他人頼りじゃなくて自分の意志がある翼さんはとても優しくて……そして強い人だ。
僕は一人じゃない。
(恐れるな……信じるんだ、このドアの向こうにゾンビなんている訳がない)
僕は恐る恐る鍵のロックを解除してドアを開けようとする。
嫌でも想像してしまう。ドアを開けた瞬間に鳴りを潜めていた、顔の皮膚がボロボロなゾンビが僕の顔に襲い掛かろうとする姿を。
そうなってしまえば一瞬で僕の人生は終わってしまう。
ドアノブを掴む手が震えてしまう。
「十川さん、一緒に開けましょう」
僕の手に覆いかぶせるように翼さんもドアノブを掴む。それだけで心強さが増す。
(男だろっ……勇気を出せ!)
「ありがとう翼さん」
僕はゆっくりとドアノブを捻り、ドアを開けた。
「くっ!……ってあれ?いない」
「いない……ですね」
襲い掛かる不安があったので開けた瞬間に身構えていたが、一匹たりともゾンビがいなくて拍子抜けてしまった。
「静かだ……まるで誰もいないみたいに」
この階の廊下にゾンビが戻って行ったと思っていたが、この静けさ的にこの階にもゾンビが居ないように感じる。
「行ってくる」
「気を付けてください」
そう言いながら翼さんも箒を握り締めながら後ろをついてくる。ゆっくりと階段を降りながら廊下に出た。
「いない……本当に一匹もいない」
「さっき通りかかった時は奥に結構いましたよね?」
「ああ……少なくとも10匹以上はこの廊下にいた。一体どうなっているんだ?」
こんな急にゾンビが全匹居なくなることがあるのか?
居なくなっとしたらどこへ?下の階か?
「下の階も確認してみよう」
「はい」
しかし予想はことごとく外れる。9階や8階にも、そして目的地点である7階にもゾンビは1匹たりとも居なかった。
「こんな事有り得るのか!?」
7階~10階のゾンビが1匹残らず下に向かったというのか?一体何のために!?
……まさかあの地下にいた化物に吸い寄せられて?
エレベーターを使わなければゾンビは地下には行けない。そしてゾンビにそんな思考なんて出来ない。
ゾンビがあの化物に吸い寄せられているとしたら……つまり1階に2階~10階のゾンビが集中している事になる。
「そんなバカな……どうやって吸い寄せられたというんだ。吸い寄せることが出来るだけの大きな音も聞こえなったのに……」
10階にいるゾンビに音が聞こえたなら僕達にも聞こえる筈。ただでさえ僕達は静かにしていたんだ……聞こえないはずが無い。
「黒藤君……!」
もう地下付近は地獄と化しているだろう。あの化物がいて、全てのゾンビが地下に集まろうと下に集中している。
想像するだけで怖気が止まらない。きっと1階は腐敗臭で一杯になっているだろう。
果たして彼は無事に帰ってくることが出来るのか?いくらゾンビを恐れないからと言っても、限度があるだろう。
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