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1章 警察署編
13話
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「な、何言ってんだ?」
「冬夜の家なんだし冬夜がベッドで寝ないのはおかしいじゃない」
(ならそんな顔を赤くして照れた素振りを見せんなよ……)
明らかな瘦せ我慢であるのは丸わかりであった。まさか自分がかなり恥ずかしい姿を晒しているのだと分かっていないのだろうか?なら教えてやった方が良いと思ったが機嫌を悪くしそうなので寸前の所で止めておいた。
一緒のベッドに寝るか……俺にその気がないことは確かなのだが、一緒のベッドで寝るということは間違いがあってもおかしくは無い。というか緊張して寝れない気がした。
なので俺は一緒に寝なくてもいい理由を咄嗟に口にする。
「ありがたい申し出だがそのベッドはシングル用だ。二人で寝れるほどの広さは無い」
「そんなの……詰めればいいじゃない」
「お前って実はビッチなのか?」
「は、はぁ!?」
俺は奏の大胆な発言に思ったことを口にしてしまう。明らかに機嫌を悪くさせる言葉だと分かっていたのに言わずにはいられなかった。
(俺ら今日出会ったばっかだぞ?さすがに距離を縮めるの早すぎるだろ)
奏の顔を見る。その顔は驚くほど火照っとおり、プルプルと体を震わせていた。爆発寸前なことに気付き慌てて弁明をする。
「い、いやだってそうだろ?俺ら今日出会ったばっかだぞ?」
「そ、そうだけど……別に冬夜はそんな気起こさないでしょう?」
「まぁ起こさないけど……」
「な、ならいい……じゃない」
「いやしかしなぁ……」
俺が一人で布団を探しに行って奏はそれをここで一人で待つのが嫌だから、一緒のベッドで寝ることを提案しているんだろうけど……まぁ床で寝ろと言わないだけかなり弁えているのが伺える。奏も奏でそれは横暴すぎると感じたのかもしれない。
俺はどうするか迷っていると一つの方法を思いつく。
「他の部屋から掛け布団取ってきてそれを敷布団代わりに使う。それなら別に背中も痛くなんない無いだろ……」
「……」
俺は血が付いていない割と綺麗な掛け布団に目星がついていたのでそれを使おうと考えた。
これなら嫌々一緒に寝る必要もないので良案だと思い、奏の顔を見て見ると何故か膨れっ面をして不満を露わにしていた。
(こいつは一体何を考えているんだ……?)
プライドが高くてガードが堅い女かと思えば、嫌いそうなのに妙にあっち系の思考をしたり距離を縮めるのが異常に早かったりする。極端すぎて益々わかんねぇ……。
「じゃあ布団取って来るわ」
「分かった……」
「外が暗くなっているが電気はつけるなよ……暗かったらテレビ使え」
俺は部屋を出て布団を取りに行った。俺はいつも部屋の電気はつけないようにしている。それはこのゾンビがいる世界では非常に目立つ行為であり、俺の存在を隠すためだった。
だからいつもテレビの電気だけつけて、それで映画を見たりしている。
そういえば最近何を見てたんだっけな……ゾンビ映画は飽きていたし。
(ん?そういえば今日そのビデオを途中で見るのやめてた気がする……)
確かタイトルは……クール系清純派美女は俺の前だと従順ペット……。
俺は即座に自分の部屋に引き返す。あれを見られては確実にゴミを見るような眼で見られる事は確かだ。
俺だって男だ。そういうのに興味はある。しかし女を部屋に連れるなどまったく想定していなかったので、そのままにしたのだった。
俺は部屋に戻りドアを開けて中に入ると奏がテレビのリモコンを持っていた。
「おい少し待て」
「ど、どうしたの……?」
いきなり戻ってきた事にとても驚いた顔をしていた。
「一回リモコンを寄越せ。そしてベッドの上に座れ」
「え、何よ急に……」
「いいからいいから」
「あっ……」
そして腕を掴み立ち上がらせてベッドの上に座らせとく。特に抵抗をする事なくすんなりと座ってくれた。
そして俺はDVDプレーヤーから一枚のディスクを抜き取る。俺はそのディスクの表面を見られないように体で隠し、パッケージも見つけてはこれも隠すようにして部屋を出る。
俺は外の暗闇に向かってフリスビーを投げるように出来るだけ遠くへそれを投げ捨てた。
(結構良い作品だったんだけどな……さよなら俺の青春……)
「な、何だったのよ……」
「気にするな」
「え、何でそんな澄んだ顔?」
お前は知らなくて良い……。
「よし、ちょっと柔らかいけど寝るのにそこまで困らないだろ」
俺は自分の部屋に掛け布団二枚を他の部屋から運び出し、それをベッドとテレビの間の床に敷く。
「ぐぅ~~~」
「あ……」
「……」
咄嗟にお腹を抑えながらこちらを睨み出す。その睨む顔はみるみると赤く染まる。
「まぁそりゃお腹空くわな……」
男子トイレに篭ってどれくらい経っていたのかは分からないが、あのレンタルショップで食糧なんて期待はできないためお腹は空かしていることは確実だった。
今までその前兆を感じさせなかったのは恐怖で空腹を紛らわせたからか……。
奏は俺なりの気遣いに怪訝そうな顔を見せる。
「そこはスルーしなさいよ」
「俺にそんなこと上手い気遣い求めんな」
睨む奏の顔の前に俺は冷蔵庫から缶詰を差し出す。そうするとその睨む顔は緩和され、物欲しそうに缶詰を眺める。
「受け取れって」
「あ、ありがとう……」
「ん。それで足りるか?後カップ麺もあるぞ?」
「……もらうわ」
「ほい」
俺はキッチンへ行き電気ケトルに水を入れてお湯を沸かす。
「食ってろ、これ箸」
「悪いわね何から何まで……」
「別になんて事ねーよ」
「そう」
そして奏は手に持っている缶詰を大事そうにゆっくりと開ける。渡したのは焼き鳥の缶詰だった。
その焼き鳥を箸で掴み口に運ぶ。味わうように咀嚼をする。すると奏での眼から一筋の涙が流れていくのが見えた。
「……美味しい」
俺はさすがにこれは見て欲しくないだろうと察して、咄嗟に顔から眼を逸らす。
「美味しいよぉ……うぅ……ひくっ……」
少ない缶詰の焼き鳥を一気に平らげる。余程お腹が空いていたのだと分かる。
「ゆっくり食えよ……ほら水だ」
「あ、ありがとう」
俺から顔を隠すように水をグッと一飲みする。
(無くなった……ゆっくり飲めよ。また注ぐのだるいんだよ)
カチッ
電気ケトルのお湯が沸いた合図が聞こえる。俺はカップ麺を開けてお湯を注ぎそれを奏に渡す。
「熱いからこれはさすがにゆっくり食え」
「……ん」
しっかりとカップ麺を受け取り温もりを感じるように両手で持って出来上がるのを待つ。
俺はこれ以上食べてる姿を見るのは流石にキモいと自分でも思ったため、適当な映画をDVDプレーヤーに差し込んで床に座りながら見る。
部屋はカーテンを今閉めたので暗く、映画を見るには最良のシチュエーションだった。
(これなら顔はよく見えないしな……)
「ちょっと暗いけどちゃんと食えるか?」
「大丈夫……」
「そか、食ったらそこのゴミ箱に捨てろ。箸は適当にキッチンに置いとけ、そしたら疲れてるだろうし寝ろ。明日から拠点探し始めるぞ」
言いたいことを全部伝え、イヤホンを耳に繋げて俺は映画に没頭しようとする。
「ねぇ……」
「……何だよ?」
「私も見ていい?」
「疲れてるだろ、早く寝ろ」
「私も見たい」
「寝ろ」
「見る」
「「……」」
お互いに眼を逸らさず見つめ合う。随分と遠慮なくなったもんだ……まぁ別にそこはいいんだけど。
俺は奏のこちらを見る強さに負けを認め、顔から眼を逸らした。
(どうせ寝ろって言っても俺にバレずに後ろから見れるしな……)
「勝手にしろ。ただしそれで明日眠いなんて言ったらキレるからな」
「さすがにそんなこと言わないわよ」
「そうかよ」
今度こそイヤホンを耳につけて映画に没頭す……
「イヤホンないと私も聞こえないじゃない」
また遮られる。
「イヤホン一つしかねーよ」
「じゃ片耳の貸して」
「……無理、無音で聞け」
「……そんな寂しい事言わないでよ」
「!」
(何だこいつ……そんなしょんぼりした姿見せられると俺が悪いみたいじゃねーかよ。それにこの部屋の暗さも相まってめっちゃ色っぽく……)
「あ~分かったよ!ほら、片耳」
「ありがと」
「チッ」
奏と俺の距離はイヤホンが届く近さであった。肩が触れ合うことはない絶妙な距離感。
(映画に集中できねーよ……)
仮に生存拠点が見つからなかった場合、こんな生活が続くのか……俺は早くも根を上げそうになる。
そして俺は緊張感を感じながら目を閉じ、明日を迎えるのを待つ事にした。
しかしこの生活はあっさりと終わりを告げるのであった……。
「冬夜の家なんだし冬夜がベッドで寝ないのはおかしいじゃない」
(ならそんな顔を赤くして照れた素振りを見せんなよ……)
明らかな瘦せ我慢であるのは丸わかりであった。まさか自分がかなり恥ずかしい姿を晒しているのだと分かっていないのだろうか?なら教えてやった方が良いと思ったが機嫌を悪くしそうなので寸前の所で止めておいた。
一緒のベッドに寝るか……俺にその気がないことは確かなのだが、一緒のベッドで寝るということは間違いがあってもおかしくは無い。というか緊張して寝れない気がした。
なので俺は一緒に寝なくてもいい理由を咄嗟に口にする。
「ありがたい申し出だがそのベッドはシングル用だ。二人で寝れるほどの広さは無い」
「そんなの……詰めればいいじゃない」
「お前って実はビッチなのか?」
「は、はぁ!?」
俺は奏の大胆な発言に思ったことを口にしてしまう。明らかに機嫌を悪くさせる言葉だと分かっていたのに言わずにはいられなかった。
(俺ら今日出会ったばっかだぞ?さすがに距離を縮めるの早すぎるだろ)
奏の顔を見る。その顔は驚くほど火照っとおり、プルプルと体を震わせていた。爆発寸前なことに気付き慌てて弁明をする。
「い、いやだってそうだろ?俺ら今日出会ったばっかだぞ?」
「そ、そうだけど……別に冬夜はそんな気起こさないでしょう?」
「まぁ起こさないけど……」
「な、ならいい……じゃない」
「いやしかしなぁ……」
俺が一人で布団を探しに行って奏はそれをここで一人で待つのが嫌だから、一緒のベッドで寝ることを提案しているんだろうけど……まぁ床で寝ろと言わないだけかなり弁えているのが伺える。奏も奏でそれは横暴すぎると感じたのかもしれない。
俺はどうするか迷っていると一つの方法を思いつく。
「他の部屋から掛け布団取ってきてそれを敷布団代わりに使う。それなら別に背中も痛くなんない無いだろ……」
「……」
俺は血が付いていない割と綺麗な掛け布団に目星がついていたのでそれを使おうと考えた。
これなら嫌々一緒に寝る必要もないので良案だと思い、奏の顔を見て見ると何故か膨れっ面をして不満を露わにしていた。
(こいつは一体何を考えているんだ……?)
プライドが高くてガードが堅い女かと思えば、嫌いそうなのに妙にあっち系の思考をしたり距離を縮めるのが異常に早かったりする。極端すぎて益々わかんねぇ……。
「じゃあ布団取って来るわ」
「分かった……」
「外が暗くなっているが電気はつけるなよ……暗かったらテレビ使え」
俺は部屋を出て布団を取りに行った。俺はいつも部屋の電気はつけないようにしている。それはこのゾンビがいる世界では非常に目立つ行為であり、俺の存在を隠すためだった。
だからいつもテレビの電気だけつけて、それで映画を見たりしている。
そういえば最近何を見てたんだっけな……ゾンビ映画は飽きていたし。
(ん?そういえば今日そのビデオを途中で見るのやめてた気がする……)
確かタイトルは……クール系清純派美女は俺の前だと従順ペット……。
俺は即座に自分の部屋に引き返す。あれを見られては確実にゴミを見るような眼で見られる事は確かだ。
俺だって男だ。そういうのに興味はある。しかし女を部屋に連れるなどまったく想定していなかったので、そのままにしたのだった。
俺は部屋に戻りドアを開けて中に入ると奏がテレビのリモコンを持っていた。
「おい少し待て」
「ど、どうしたの……?」
いきなり戻ってきた事にとても驚いた顔をしていた。
「一回リモコンを寄越せ。そしてベッドの上に座れ」
「え、何よ急に……」
「いいからいいから」
「あっ……」
そして腕を掴み立ち上がらせてベッドの上に座らせとく。特に抵抗をする事なくすんなりと座ってくれた。
そして俺はDVDプレーヤーから一枚のディスクを抜き取る。俺はそのディスクの表面を見られないように体で隠し、パッケージも見つけてはこれも隠すようにして部屋を出る。
俺は外の暗闇に向かってフリスビーを投げるように出来るだけ遠くへそれを投げ捨てた。
(結構良い作品だったんだけどな……さよなら俺の青春……)
「な、何だったのよ……」
「気にするな」
「え、何でそんな澄んだ顔?」
お前は知らなくて良い……。
「よし、ちょっと柔らかいけど寝るのにそこまで困らないだろ」
俺は自分の部屋に掛け布団二枚を他の部屋から運び出し、それをベッドとテレビの間の床に敷く。
「ぐぅ~~~」
「あ……」
「……」
咄嗟にお腹を抑えながらこちらを睨み出す。その睨む顔はみるみると赤く染まる。
「まぁそりゃお腹空くわな……」
男子トイレに篭ってどれくらい経っていたのかは分からないが、あのレンタルショップで食糧なんて期待はできないためお腹は空かしていることは確実だった。
今までその前兆を感じさせなかったのは恐怖で空腹を紛らわせたからか……。
奏は俺なりの気遣いに怪訝そうな顔を見せる。
「そこはスルーしなさいよ」
「俺にそんなこと上手い気遣い求めんな」
睨む奏の顔の前に俺は冷蔵庫から缶詰を差し出す。そうするとその睨む顔は緩和され、物欲しそうに缶詰を眺める。
「受け取れって」
「あ、ありがとう……」
「ん。それで足りるか?後カップ麺もあるぞ?」
「……もらうわ」
「ほい」
俺はキッチンへ行き電気ケトルに水を入れてお湯を沸かす。
「食ってろ、これ箸」
「悪いわね何から何まで……」
「別になんて事ねーよ」
「そう」
そして奏は手に持っている缶詰を大事そうにゆっくりと開ける。渡したのは焼き鳥の缶詰だった。
その焼き鳥を箸で掴み口に運ぶ。味わうように咀嚼をする。すると奏での眼から一筋の涙が流れていくのが見えた。
「……美味しい」
俺はさすがにこれは見て欲しくないだろうと察して、咄嗟に顔から眼を逸らす。
「美味しいよぉ……うぅ……ひくっ……」
少ない缶詰の焼き鳥を一気に平らげる。余程お腹が空いていたのだと分かる。
「ゆっくり食えよ……ほら水だ」
「あ、ありがとう」
俺から顔を隠すように水をグッと一飲みする。
(無くなった……ゆっくり飲めよ。また注ぐのだるいんだよ)
カチッ
電気ケトルのお湯が沸いた合図が聞こえる。俺はカップ麺を開けてお湯を注ぎそれを奏に渡す。
「熱いからこれはさすがにゆっくり食え」
「……ん」
しっかりとカップ麺を受け取り温もりを感じるように両手で持って出来上がるのを待つ。
俺はこれ以上食べてる姿を見るのは流石にキモいと自分でも思ったため、適当な映画をDVDプレーヤーに差し込んで床に座りながら見る。
部屋はカーテンを今閉めたので暗く、映画を見るには最良のシチュエーションだった。
(これなら顔はよく見えないしな……)
「ちょっと暗いけどちゃんと食えるか?」
「大丈夫……」
「そか、食ったらそこのゴミ箱に捨てろ。箸は適当にキッチンに置いとけ、そしたら疲れてるだろうし寝ろ。明日から拠点探し始めるぞ」
言いたいことを全部伝え、イヤホンを耳に繋げて俺は映画に没頭しようとする。
「ねぇ……」
「……何だよ?」
「私も見ていい?」
「疲れてるだろ、早く寝ろ」
「私も見たい」
「寝ろ」
「見る」
「「……」」
お互いに眼を逸らさず見つめ合う。随分と遠慮なくなったもんだ……まぁ別にそこはいいんだけど。
俺は奏のこちらを見る強さに負けを認め、顔から眼を逸らした。
(どうせ寝ろって言っても俺にバレずに後ろから見れるしな……)
「勝手にしろ。ただしそれで明日眠いなんて言ったらキレるからな」
「さすがにそんなこと言わないわよ」
「そうかよ」
今度こそイヤホンを耳につけて映画に没頭す……
「イヤホンないと私も聞こえないじゃない」
また遮られる。
「イヤホン一つしかねーよ」
「じゃ片耳の貸して」
「……無理、無音で聞け」
「……そんな寂しい事言わないでよ」
「!」
(何だこいつ……そんなしょんぼりした姿見せられると俺が悪いみたいじゃねーかよ。それにこの部屋の暗さも相まってめっちゃ色っぽく……)
「あ~分かったよ!ほら、片耳」
「ありがと」
「チッ」
奏と俺の距離はイヤホンが届く近さであった。肩が触れ合うことはない絶妙な距離感。
(映画に集中できねーよ……)
仮に生存拠点が見つからなかった場合、こんな生活が続くのか……俺は早くも根を上げそうになる。
そして俺は緊張感を感じながら目を閉じ、明日を迎えるのを待つ事にした。
しかしこの生活はあっさりと終わりを告げるのであった……。
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