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序章ー人生の分岐点
第21話 「見えた活路」
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そこまで治すことができるのか!?
僕が使うと、その回復力は何倍にも増すということなのか…!
ずっと攻撃のことばかり悩んでいたけど、サポート魔術の効果を何倍にもすればきっと多くの命を救える…。
「あくまで理論上だがな。これでわかったか?お前は多くの可能性を秘めているのだ」
「すごい…」
僕は改めて自分のこの力のすごさを知った。
魔力濃度が高いってとんでもないことだな。
「まあしかし、魔力量が少ないとなると、初級魔術でも回数はかなり限られてくるな…」
やっぱりそこの問題は解決できないか。
僕は初級魔術しか使えないが、その初級魔術を通常の何倍もの効果で発揮できる力を持っているということか。
回数は限られるため、使いどころを考えないといけないな…。
「でもありがとうございます。おかげで自分のことがよくわかり、進むべき道がわかった気がします」
話せてよかった。
これで僕はアイリを死なせずに済む。
攻撃では役に立たなくても、守りや回復などで役に立つことができるんだ!
アイリを守るために進むべき道、それは英雄養成学校に…。
いやそうだ、それは無理なんだ。
確かに魔術を学ぶなら英雄養成学校に行けることが1番いいが、特待生でない以上お金が必要なのだ。
最初にあったまだ解決できていない問題に行き当たった。
僕はアイリについていくことはできないんだ…。
「そうか。なら良かったな」
「は、はい…」
僕は見えかけた希望の光が消えていくのを感じた。
「もちろん英雄養成学校に進むのだろう?」
「いえ、それはきっと無理です…」
「え、どうして!?」
ずっと話を聞いていたアイリが驚いたように質問をした。
アイリは僕が英雄養成学校についてきてくれると思っていたのだろうか。
「お金がないからね」
僕は悔しそうにアイリに言った。
アイリはその言葉を聞いて、落胆したようだった。
お金の問題は当然アイリもわかっていたはずなのにな…。
わかってても、本人から言われると違うのかな…。
「え、英雄騎士団長様!お金がなくても入学できる方法はないんですか?」
アイリは初めてギルフォードさんに質問をした。
アイリにとっては相当な勇気が必要なことだろうに…。
僕はわずかな期待を抱いて、ギルフォードさんの返事を待った。
「ない。特待生ならともかく、それ以外はありえないだろう」
僕の期待はあっさりとうち砕かれた。
「そうですか…」
「…」
アイリは露骨に悔しそうにしていた。
僕のためにそんな顔をするのか、少しだけ嬉しかった。
でもやっぱりそんな方法はないか。
でも、いいんだ。
これで諦めがつくんだから…
「だが、お金がある程度免除される制度はある」
「そ、それは?」
僕とアイリは同時に顔を見上げた。
「英雄養成学校の入学試験で上位30人に入ることができれば、学費全体の6割は免除されるだろう」
「6割も!?」
6割も免除されるならいけるかもしれない!
お金の心配もあまりしなくて済む。
そして王都で仕事をしてコツコツ稼げば大丈夫なはずだ!
「ちなみに毎年何人くらいその入学試験を受けるんですか?」
「毎年1,000人以上はいた気がするな…」
「い、1,000人!? その中の30人に選ばれないといけないんですか?」
「そういうことだ」
嘘だろ?その中の30人ってとんでもない倍率じゃないか!
この村全員でもそんなにいないのに、その中の30人って…。
30人に選ばれる自信がないよぼく!
もし1000人で競走とかだったら間違いなくビリになる自信がある。
「ちなみに試験科目とかはさすがに明かされてないですよね?」
これは試験内容に大きく左右される…!
僕はダメもとで聞いてみた。
「明かされてるぞ? 毎年同じ試験だからな」
なんと明かされていた…。じゃあその試験の対策をすれば可能性はありそうだな。
身体能力に自信は全くない。
まだ総当たりの方が僕に向いている。
なんたってゲイトを展開しとけばいいだけだからな!
まあ長時間展開しているとバテるけど…。
「ちなみに1000人で競走みたいな試験ではないですよね…?」
僕はさすがに無いと思いつつも、否定をしてほしくて聞いてみた。
「そんな感じだ」
「で、ですよね!よかったよか…、え?」
僕はギルフォードさんが何を言ったのか聞き逃してしまったようだ。
やれやれ、ギルフォードさんの話はちゃんと聞かないといけないじゃないか!
「複数の教員が作った結界の中にお前らは入り、そこをステージとして1000人が同時にゴールに…」
「ちょちょちょっと待ってください!ほんとに1000人で競争するんですか!」
「そういったはずだ」
どうやら本当に1000人で競走をするらしい。
ああ、終わった、想定していた通りの最悪の試験だった。
僕の挑戦は始まる前から終わってしまったのだ。
「話を最後まで聞け。確かに1000人で競争をするが、直線を走るわけではない。これは短期戦ではなく、長期戦となる」
「競走で長期戦ですか?」
競走で長期戦って…。
どんだけ走らせるつもりなんだ?
長期戦の方が逆に僕は苦手だぞ…。
「ああ、その結界はスキュラの大森林を仮想した世界となっている。お前らはそこで生き延び、誰よりも早くゴールしなくてはならない」
「す、スキュラの大森林…」
あの外にあるバカでかい大森林を想定した試験なのか…。
確かあそこには魔物がたくさん潜んでいるんじゃなかったか?
「魔物とも戦いつつ、ゴールを目指すってことですか?」
「そうだ、もちろん毎年死亡者も多くいる。生き残るだけでも難しいだろう」
生き残るねえ…、まあ多分僕は死なないんだろうけど…。
でもさすがはスキュラの大森林を想定しているだけはあるな。
生半可な覚悟じゃ土俵にすら上がれないってことか。
それなのに毎年1000人以上来ているということは、それだけ英雄は憧れの的なのだろう。
僕にはまだ英雄の良さがわからないけど。
「どうだ?怖気付いたか?」
怖気付く?
昨日あんな恐ろしいものを見て今さら魔物なんかに怖気付くわけがない。
しかも意外と僕に有利かもしれない…。
「いや、この僕にも勝機はあるなと思ったところです」
やってやる!
絶対に30人以内を目指してゴールをして、アイリと英雄養成学校に入学するんだ!
序章―人生の分岐点―完
第2章―ヘラクレス王国英雄養成学校
入学試験編
僕が使うと、その回復力は何倍にも増すということなのか…!
ずっと攻撃のことばかり悩んでいたけど、サポート魔術の効果を何倍にもすればきっと多くの命を救える…。
「あくまで理論上だがな。これでわかったか?お前は多くの可能性を秘めているのだ」
「すごい…」
僕は改めて自分のこの力のすごさを知った。
魔力濃度が高いってとんでもないことだな。
「まあしかし、魔力量が少ないとなると、初級魔術でも回数はかなり限られてくるな…」
やっぱりそこの問題は解決できないか。
僕は初級魔術しか使えないが、その初級魔術を通常の何倍もの効果で発揮できる力を持っているということか。
回数は限られるため、使いどころを考えないといけないな…。
「でもありがとうございます。おかげで自分のことがよくわかり、進むべき道がわかった気がします」
話せてよかった。
これで僕はアイリを死なせずに済む。
攻撃では役に立たなくても、守りや回復などで役に立つことができるんだ!
アイリを守るために進むべき道、それは英雄養成学校に…。
いやそうだ、それは無理なんだ。
確かに魔術を学ぶなら英雄養成学校に行けることが1番いいが、特待生でない以上お金が必要なのだ。
最初にあったまだ解決できていない問題に行き当たった。
僕はアイリについていくことはできないんだ…。
「そうか。なら良かったな」
「は、はい…」
僕は見えかけた希望の光が消えていくのを感じた。
「もちろん英雄養成学校に進むのだろう?」
「いえ、それはきっと無理です…」
「え、どうして!?」
ずっと話を聞いていたアイリが驚いたように質問をした。
アイリは僕が英雄養成学校についてきてくれると思っていたのだろうか。
「お金がないからね」
僕は悔しそうにアイリに言った。
アイリはその言葉を聞いて、落胆したようだった。
お金の問題は当然アイリもわかっていたはずなのにな…。
わかってても、本人から言われると違うのかな…。
「え、英雄騎士団長様!お金がなくても入学できる方法はないんですか?」
アイリは初めてギルフォードさんに質問をした。
アイリにとっては相当な勇気が必要なことだろうに…。
僕はわずかな期待を抱いて、ギルフォードさんの返事を待った。
「ない。特待生ならともかく、それ以外はありえないだろう」
僕の期待はあっさりとうち砕かれた。
「そうですか…」
「…」
アイリは露骨に悔しそうにしていた。
僕のためにそんな顔をするのか、少しだけ嬉しかった。
でもやっぱりそんな方法はないか。
でも、いいんだ。
これで諦めがつくんだから…
「だが、お金がある程度免除される制度はある」
「そ、それは?」
僕とアイリは同時に顔を見上げた。
「英雄養成学校の入学試験で上位30人に入ることができれば、学費全体の6割は免除されるだろう」
「6割も!?」
6割も免除されるならいけるかもしれない!
お金の心配もあまりしなくて済む。
そして王都で仕事をしてコツコツ稼げば大丈夫なはずだ!
「ちなみに毎年何人くらいその入学試験を受けるんですか?」
「毎年1,000人以上はいた気がするな…」
「い、1,000人!? その中の30人に選ばれないといけないんですか?」
「そういうことだ」
嘘だろ?その中の30人ってとんでもない倍率じゃないか!
この村全員でもそんなにいないのに、その中の30人って…。
30人に選ばれる自信がないよぼく!
もし1000人で競走とかだったら間違いなくビリになる自信がある。
「ちなみに試験科目とかはさすがに明かされてないですよね?」
これは試験内容に大きく左右される…!
僕はダメもとで聞いてみた。
「明かされてるぞ? 毎年同じ試験だからな」
なんと明かされていた…。じゃあその試験の対策をすれば可能性はありそうだな。
身体能力に自信は全くない。
まだ総当たりの方が僕に向いている。
なんたってゲイトを展開しとけばいいだけだからな!
まあ長時間展開しているとバテるけど…。
「ちなみに1000人で競走みたいな試験ではないですよね…?」
僕はさすがに無いと思いつつも、否定をしてほしくて聞いてみた。
「そんな感じだ」
「で、ですよね!よかったよか…、え?」
僕はギルフォードさんが何を言ったのか聞き逃してしまったようだ。
やれやれ、ギルフォードさんの話はちゃんと聞かないといけないじゃないか!
「複数の教員が作った結界の中にお前らは入り、そこをステージとして1000人が同時にゴールに…」
「ちょちょちょっと待ってください!ほんとに1000人で競争するんですか!」
「そういったはずだ」
どうやら本当に1000人で競走をするらしい。
ああ、終わった、想定していた通りの最悪の試験だった。
僕の挑戦は始まる前から終わってしまったのだ。
「話を最後まで聞け。確かに1000人で競争をするが、直線を走るわけではない。これは短期戦ではなく、長期戦となる」
「競走で長期戦ですか?」
競走で長期戦って…。
どんだけ走らせるつもりなんだ?
長期戦の方が逆に僕は苦手だぞ…。
「ああ、その結界はスキュラの大森林を仮想した世界となっている。お前らはそこで生き延び、誰よりも早くゴールしなくてはならない」
「す、スキュラの大森林…」
あの外にあるバカでかい大森林を想定した試験なのか…。
確かあそこには魔物がたくさん潜んでいるんじゃなかったか?
「魔物とも戦いつつ、ゴールを目指すってことですか?」
「そうだ、もちろん毎年死亡者も多くいる。生き残るだけでも難しいだろう」
生き残るねえ…、まあ多分僕は死なないんだろうけど…。
でもさすがはスキュラの大森林を想定しているだけはあるな。
生半可な覚悟じゃ土俵にすら上がれないってことか。
それなのに毎年1000人以上来ているということは、それだけ英雄は憧れの的なのだろう。
僕にはまだ英雄の良さがわからないけど。
「どうだ?怖気付いたか?」
怖気付く?
昨日あんな恐ろしいものを見て今さら魔物なんかに怖気付くわけがない。
しかも意外と僕に有利かもしれない…。
「いや、この僕にも勝機はあるなと思ったところです」
やってやる!
絶対に30人以内を目指してゴールをして、アイリと英雄養成学校に入学するんだ!
序章―人生の分岐点―完
第2章―ヘラクレス王国英雄養成学校
入学試験編
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