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序章ー人生の分岐点
第12話 「ミシャの盾」
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―――――アイリ視点――――――
上級魔術「絶対零度」。
私は密かに魔術の本で見たこの上級魔術の習得にいそしんでいた。
けど成功したことは一回もなかった。
その理由はわかっていた。
その理由は上級魔術を使える人が私の周りにいないことである。
上級魔術ともなると、努力と才能、魔力量がかなり必要になるが、上級魔術の習得に失敗し続けて気づいた。
上級魔術にも具体的なイメージ力が必要なのだ。
魔術の本には魔術の名称自体は記されていたが、魔術の説明はあまり詳細に記されていなかった。
ただ
“いかなるものもこの魔術の前では熱を保てない。
発動してしまえば一秒もたたないうちに対象は死する。
絶対零度こそ人類最高の氷魔術”
とだけ。
きっとこの本は著者が使えない魔法も記しているのだろう。
だから曖昧な魔術の説明もあれば、やけに具体的に詳細が記されている魔術もある。
中級魔術はほとんど使えるのだろう。
それだけでもかなり優秀なのだ、何せ中級魔術のほとんどを使える人は上級魔術を一つ使える人ほどすごいことなのだと聞く。
上級魔術を使える人は世界でも100人にも満たない。
だからこそ、圧倒的に情報が足りない、イメージが完成しない。
けどもう模索している時間はない。
上級魔術「絶対零度」を今成功させなきゃオーデンスは死んでしまう。
そして私は連れてかれてしまう。だから絶対に…
「オーデンス?」
気が付いた時には遅かった。
オーデンスの魔力障壁はまだ解除されてはいなくて、あの男の黒い剣を現在進行形で防いでいた。
けれど、オーデンスの腕には力が籠っていなかった。
指をピクリとも動かしていない。
あの男の剣の能力なの…?
私は集中しなければいけないのに集中ができなかった。
「オーデンス、目を覚まして!」
反応はない。
魔力障壁が解除されていないということはまだ死んではいないはず。
どうするべきか?
オーデンスをひっぱたいてでも起こすべきか、それとも上級魔術を発動させることに集中するべきなのか。
悩んでいた。
きっとオーデンスは死の境をさまよっているに違いない。
けどさっきみたいに死んでまた生きがえることがあったら…?
いや、あんな奇跡はもう二度と起きないかもしれない。
じゃあ私はやっぱりオーデンスを呼び起こすべきなんじゃ…。
そこで私はオーデンスに言われたことを思い出した。
「頼りにしている」と。
「オーデンスに初めて頼られた…。その信頼に応えないでどうするのよ!」
オーデンスに信頼されている。
なら私もオーデンスを信頼しなければいけない。
「絶対戻ってきてよね…」
私は魔力制御に集中した。
―――――オーデンス視点―――――
白い世界に居る。先ほどの世界とは真逆だ。
けど今自分は現実に引き戻されているのだと直感でわかった。
はやく、はやく!間に合え!
「あ…」
目が覚めた。
あれ、僕今まで何していたんだっけ。
そういえば魔力障壁を発動して奴の攻撃を防いでたんだ…
「…、魔力障壁は!?」
「む。貴様本当に人間か?」
良かった。
少し気を失っていたみたいだ。
けれど、何か変な夢を見ていたような。
いやそんなことは今どうでもいい!耐えるんだ!
「諦めの悪さは人間様卒業かもな…」
ふつう自分で言うか。
僕は自分にツッコミを入れながらも今にも倒れそうな体が倒れないように踏ん張っていた。
というか、僕が発動した魔力障壁「ミシャの盾」って、気を失っていても解除されていなかったのか?
奴が攻撃をしても全く僕の魔力がとられている感じはない。
さっきは魔力を吸われているように感じたけど今は吸われてない。
そして僕はさらに大きな変化に気づいてしまった。
「魔力が全部戻っている!?」
けれど魔力が戻っても体の傷や疲れは戻らないらしい。
だが、好都合だ。
何が起きているのかわからないが、魔力が戻ったならしばらくは奴の攻撃を防げるはずだ。
後はアイリが上級魔術を完成させるのを待つだけだ。
「どうやら貴様は死んでも生きがえってしまうのだな…。それは呪いか?」
呪い…?なんだそれは。
というか俺やっぱり死んでいたのか。
「呪いってなんだよ!」
「知らずうちにかけられたか…」
こいつさっきから何一人で喋ってんだ?
僕も自分の体について知りたいのに…。
「いや呪いであっても魔力が戻るなんてことはあるはずがない」
「一人で喋ってないで僕にも教えろよ!」
僕は一人で勝手に考えているこいつに腹が立った。
まあ腹が立ったと言っても反撃するすべはないんだけど。
「死剣」
「!」
僕が少し油断をしたところを見て攻撃を仕掛けてきた。
くっ、またあの黒い剣だ。
さっきはこれに僕の魔力障壁が触れて死んでしまった。
また僕は死んでしまうのか…。
「え」
「む!今度は死なないか…」
僕は死んではいなかった。
さっきは魔力が吸われるのを感じて気を失ったけど、今度は大丈夫だ。
なんでだ、さっきとの違いはなんだ?
「あ…」
まさか僕の魔力障壁「ミシャの盾」はまだ完成されていなかったのか!?
さっきとの違いはおそらく僕の魔力が完全に戻っていること。
きっとさっきは魔力がすっからかんだったから魔力障壁がうまく発動していなかったのか。
この魔力障壁「ミシャの盾」はきっと物理攻撃だけでなく、間接的な攻撃も守ってくれているのだ!
だからあいつの死剣も効かない。
すごい、これが初級魔術。
これならいける。
けど、まだこの魔力障壁についてはまだ完全に把握しきれてない!
もう何分経った?
はやくしてくれアイリ!
上級魔術「絶対零度」。
私は密かに魔術の本で見たこの上級魔術の習得にいそしんでいた。
けど成功したことは一回もなかった。
その理由はわかっていた。
その理由は上級魔術を使える人が私の周りにいないことである。
上級魔術ともなると、努力と才能、魔力量がかなり必要になるが、上級魔術の習得に失敗し続けて気づいた。
上級魔術にも具体的なイメージ力が必要なのだ。
魔術の本には魔術の名称自体は記されていたが、魔術の説明はあまり詳細に記されていなかった。
ただ
“いかなるものもこの魔術の前では熱を保てない。
発動してしまえば一秒もたたないうちに対象は死する。
絶対零度こそ人類最高の氷魔術”
とだけ。
きっとこの本は著者が使えない魔法も記しているのだろう。
だから曖昧な魔術の説明もあれば、やけに具体的に詳細が記されている魔術もある。
中級魔術はほとんど使えるのだろう。
それだけでもかなり優秀なのだ、何せ中級魔術のほとんどを使える人は上級魔術を一つ使える人ほどすごいことなのだと聞く。
上級魔術を使える人は世界でも100人にも満たない。
だからこそ、圧倒的に情報が足りない、イメージが完成しない。
けどもう模索している時間はない。
上級魔術「絶対零度」を今成功させなきゃオーデンスは死んでしまう。
そして私は連れてかれてしまう。だから絶対に…
「オーデンス?」
気が付いた時には遅かった。
オーデンスの魔力障壁はまだ解除されてはいなくて、あの男の黒い剣を現在進行形で防いでいた。
けれど、オーデンスの腕には力が籠っていなかった。
指をピクリとも動かしていない。
あの男の剣の能力なの…?
私は集中しなければいけないのに集中ができなかった。
「オーデンス、目を覚まして!」
反応はない。
魔力障壁が解除されていないということはまだ死んではいないはず。
どうするべきか?
オーデンスをひっぱたいてでも起こすべきか、それとも上級魔術を発動させることに集中するべきなのか。
悩んでいた。
きっとオーデンスは死の境をさまよっているに違いない。
けどさっきみたいに死んでまた生きがえることがあったら…?
いや、あんな奇跡はもう二度と起きないかもしれない。
じゃあ私はやっぱりオーデンスを呼び起こすべきなんじゃ…。
そこで私はオーデンスに言われたことを思い出した。
「頼りにしている」と。
「オーデンスに初めて頼られた…。その信頼に応えないでどうするのよ!」
オーデンスに信頼されている。
なら私もオーデンスを信頼しなければいけない。
「絶対戻ってきてよね…」
私は魔力制御に集中した。
―――――オーデンス視点―――――
白い世界に居る。先ほどの世界とは真逆だ。
けど今自分は現実に引き戻されているのだと直感でわかった。
はやく、はやく!間に合え!
「あ…」
目が覚めた。
あれ、僕今まで何していたんだっけ。
そういえば魔力障壁を発動して奴の攻撃を防いでたんだ…
「…、魔力障壁は!?」
「む。貴様本当に人間か?」
良かった。
少し気を失っていたみたいだ。
けれど、何か変な夢を見ていたような。
いやそんなことは今どうでもいい!耐えるんだ!
「諦めの悪さは人間様卒業かもな…」
ふつう自分で言うか。
僕は自分にツッコミを入れながらも今にも倒れそうな体が倒れないように踏ん張っていた。
というか、僕が発動した魔力障壁「ミシャの盾」って、気を失っていても解除されていなかったのか?
奴が攻撃をしても全く僕の魔力がとられている感じはない。
さっきは魔力を吸われているように感じたけど今は吸われてない。
そして僕はさらに大きな変化に気づいてしまった。
「魔力が全部戻っている!?」
けれど魔力が戻っても体の傷や疲れは戻らないらしい。
だが、好都合だ。
何が起きているのかわからないが、魔力が戻ったならしばらくは奴の攻撃を防げるはずだ。
後はアイリが上級魔術を完成させるのを待つだけだ。
「どうやら貴様は死んでも生きがえってしまうのだな…。それは呪いか?」
呪い…?なんだそれは。
というか俺やっぱり死んでいたのか。
「呪いってなんだよ!」
「知らずうちにかけられたか…」
こいつさっきから何一人で喋ってんだ?
僕も自分の体について知りたいのに…。
「いや呪いであっても魔力が戻るなんてことはあるはずがない」
「一人で喋ってないで僕にも教えろよ!」
僕は一人で勝手に考えているこいつに腹が立った。
まあ腹が立ったと言っても反撃するすべはないんだけど。
「死剣」
「!」
僕が少し油断をしたところを見て攻撃を仕掛けてきた。
くっ、またあの黒い剣だ。
さっきはこれに僕の魔力障壁が触れて死んでしまった。
また僕は死んでしまうのか…。
「え」
「む!今度は死なないか…」
僕は死んではいなかった。
さっきは魔力が吸われるのを感じて気を失ったけど、今度は大丈夫だ。
なんでだ、さっきとの違いはなんだ?
「あ…」
まさか僕の魔力障壁「ミシャの盾」はまだ完成されていなかったのか!?
さっきとの違いはおそらく僕の魔力が完全に戻っていること。
きっとさっきは魔力がすっからかんだったから魔力障壁がうまく発動していなかったのか。
この魔力障壁「ミシャの盾」はきっと物理攻撃だけでなく、間接的な攻撃も守ってくれているのだ!
だからあいつの死剣も効かない。
すごい、これが初級魔術。
これならいける。
けど、まだこの魔力障壁についてはまだ完全に把握しきれてない!
もう何分経った?
はやくしてくれアイリ!
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