平凡以下な僕は幼馴染を守るために、初級魔術だけでも頑張っていきます。

気ままに

文字の大きさ
上 下
3 / 29
序章ー人生の分岐点

第2話「努力は才能には勝てない」

しおりを挟む
家に帰った後、僕も英雄養成学校に入学しようと考えた。
招待状がなくても入学試験を受けて合格をすれば入学が可能だからだ。
けれど、問題もあった。

「やっぱりお金と実力だよな…」

問題その1は入学料と授業料である。
特待生の場合は免除されるからいいものの、一般入学の場合はお金はそれなりにかかるのだ。

ここは田舎の村だ。
当然そんなお金は払える筈がない。

問題その2は実力。
こっちはもっと深刻だ。
なんたって僕は魔力と身体能力もこの田舎の村でも低いほうなのだ。
そんな僕がどうやって試験に合格ができるというのだ。

それに引き換えアイリはとてつもない才能があった。
8歳の時点で中級魔術を習得でき、魔力量もすごい多いと聞く。
身体能力も高く、僕が勝てる要素は1つもなかった。
僕は初級魔術の習得ですら手こずっている。

現在使えるのは初級魔術の魔力障壁ゲイトだけだ。
皆はそれを知らない。
僕が誰にも教えていないからだ。
初級魔術なんて習得できたと言っても当たり前だと言われて笑われるだけだしな。

魔術には初級、中級、上級、宝級、神宝級と合計5つのランクで分類されている。
習得難易度はランクが上がるにつれて当然難しくなっていくが、難易度にも大きな差がある。

初級魔術は一般国民でも習得できるものであり、中級魔術となると難易度が跳ね上がり、魔力量と才能がそれなりに必要になる。
つまり努力だけではどうにもならない領域ということだ。
上級魔術は中級魔術に必要な要素の何倍もなければいけない。

僕のお母さんは元魔術師で、中級魔術までは習得できていたようだ。
そして僕のお父さんも前までは剣士だったようで、魔術は初級くらいしか使えなかったが、剣術だけで魔物と戦ってきたらしい。
ちなみに剣術は上級クラスだったらしく、その強さは世界でも100人もいないようだ。

そういえば昔は剣士養成学校と魔術士養成学校があったのに今はもう英雄養成学校に統合されたってお母さんが言ってたな、今思い出してみればなんで統合なんてしたんだろう?まあ、そんなことはどうでもいいか、話を戻すけどやっぱり僕のお父さんはすごいと思う。

…僕の親はすごい力を持っているのに、息子である僕はなんでこんなにも才能がないんだろう。
まあ才能がないってわかるからこそ英雄養成学校なんて目指さないんだけどな。
最後に宝級魔術と神宝級魔術だけどお母さんとお父さんいわく、それはただの都市伝説らしい。
まあ…つまり何が言いたいかというとこの世は才能が8割で2割が努力といったところだ。だから中級魔術をもう習得できているアイリは才能の塊なのだ。

ちなみに僕が使える初級魔術のゲイトだけども、
どうやらこのゲイトというのは子供のパンチくらいは凌げても大人のパンチは凌げないほど弱いらしい。
つまり敵にとってはただの紙切れなのだ。
ただの紙切れのせいで誰もこの魔術を使おうとしない。
いわゆる欠陥魔術だ。
この魔術を作った人はなんでこんな魔術を作ったんだろう。
その代わり習得はあまり難しくないけど…。

「僕に才能があればアイリの隣を歩けて、アイリの盾になることもできたのに」

アイリを守るという使命は父さんから言われたものだ。
僕の親とアイリの親は昔からのなじみということもあって僕とアイリは生まれた年も同じで小さいころから一緒にいて遊んでいた。
そして僕が物心ついたときに父さんにこう言われた。

「オーデンス、俺はなこの村の守護者という役割を担っているんだ」

「しゅごしゃってな~に?」

「守護者っていうのはな、この村にやってくる魔物や悪い人からみんなを守る仕事さ」

「ええ?父さんって実は強いの?」

僕は目をキラキラと輝かせた。

「おうよ!だからこの村の守護者なんだ。でも守護者だからって必ず皆を守ることはできない、もちろん命に代えても守ろうとはするが」

「そうなの…?」

そう聞いてとても不安になった。

「もし、アイリが危ない時はオーデンス、お前が守ってやるんだ」

ぼ、ぼくがアイリを守る?そんなこと…

「できるわけないよ…僕なんかが」

「はは、今できなくても仕方ないさ。だけど今している修行はその時が来た時のためだろ?」

いや、僕はただ父さんに付き合わされているだけなんだけどな…。

「オーデンス、約束してくれ。母さんと俺のことは気にするな。俺はもちろん、母さんも実は強い。俺と母さんも当然お前たちを守ろうとするが何が起きるかわからない。その時はいつもアイリのそばにいるオーデンス、お前がアイリを守ってやってくれ」

「で、でも…」

「大丈夫だ!なんたってこの俺の息子だ!いざとなればできると俺は信じているからな」

「わ、わかったよ…そこまで言うなら」

そして僕は言われるがままにアイリを守るための修行をしてきた。
別に僕がやらなくてもいいじゃないかと思いつつも父さんからの期待を裏切ることができなかった。
そもそもアイリは僕なんかに守られるほど弱くない。
なんなら魔術の才能なんて僕よりも遥かにある。
僕が守らなくてもアイリは自分で自分の身を守れるじゃないか。
そう思いつつも修行を続けてきた。

そして今に至る。
考えてみればアイリがこの村からいなくなったらアイリを守るという使命はなくなる。
そうなれば僕は自由じゃないか。
それなのになんで僕はこんなにもやもやしているのだろう。
あのころとは違う。

嫌々使命を守って修行をしていたあのころとは…。
今と昔の僕は何が違うんだろうか、その答えがまったくわからなかった。
僕が寝転がりながら考え事をしていると一人の少女がここにやってきた。
僕を悩ませている元凶だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...