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第四章
宵の明星・9
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◇◆◇
慈玄同様人目を気にしてか、やはり大して飛行していない。慈斎が降り立ったのは山中のいくぶん開けた……といっても、足の踏み場があるという程度で周囲は変わらず木立が迷路のように入り組んではいるが……場所だった。
「ただ待ってるだけじゃ、和宏君もつまらないでしょ?こんなところまで遊びに来てくれたんだから、楽しまなきゃ、ね?」
耳元で囁く言葉の内容は聞き取れるが、和宏の意識は依然として覚束ない。そのくせ血の巡りは速いようで、トクトクという脈拍に合わせて、爪先や指先がじん、と痺れ熱くなっていた。
「効力は大分弱めたつもりだけど、イイ感じに効いてるみたいだね。ふわふわして気持ちいいでしょ?」
慈斎は抱えた和宏を下ろすと太めの幹に凭れさせ、彼のシャツを捲った。高原のひんや
りとした空気が、少年の円やかな腹に触れる。
「……ぅ、あ……」
抵抗の声をあげようとしても、和宏の舌は上手く回らない。押し返す力も奪われ、されるがままになっている。
「寒くはないよね?もうだいぶ熱を持ってるみたいだし」
体温を確かめるように腰や腹部を撫で上げた手が、薄桃色に膨れた胸の突起を摘まんだ。
「っぃ、あ……あっっ!!」
ビクリと跳ねた脊を見て、慈斎は満足げに下唇を舐める。
「へぇ、敏感なんだねぇ。それとも、そう『仕込まれた』のかな?」
コリコリと痼る感触を楽しみつつ、ひとしきり指先で乳首を捏ねる。
「っひぅ、ぁあ……っっ!」
掠れて響く喘ぎ。必死で堪えようとしても漏れてしまう己の声に、和宏の羞恥はよけいに高まる。すっかり温度の上昇しきった身体を、慈斎は樹木に押しつけ、膝で股間を割った。震えて頽れそうな彼の両脚が、それで支えられる。
「ココ、窮屈?いいよ、解放してあげる」
ふるふると首を振る和宏を無視し、片手は胸先を弄り続け、空いた片手が器用にボタンを外し、ファスナーを下ろす。そして躊躇なく下着をずらすと、すでに屹立していた幼い陰茎が顔を覗かせた。
「胸を弄られただけでこんなにしちゃって。案外いやらしいコだねぇ、和宏君は」
喉の奥を鳴らすように笑い、慈斎は和宏の亀頭を軽く撫でる。
「……ぃ、や……やめ……っ!」
「あ、でも射精はしないでね?後処理大変だし、すぐばれちゃうから」
そう言うと、慈斎は懐から札のような紙切れを取りだした。口の中でぼそり何かを唱えてから、それで和宏自身を覆う。すると、札はきゅ、と収縮し、彼の精管を締め付けた。
「んう……ぅ……っ!!」
「しばらくしたら勝手に消えるからさ、ちょっと我慢してよね」
悪びれた様子もなく、慈斎が言う。
「ところで。ね、慈玄とは結構ヤッてるの?感度はいいみたいだけど」
「え……」
返事は待たず、彼は和宏の身体を反転させた。さっきまで背を預けさせていた幹に、今度は手を着かせる。下着はとっくに下ろされていたので、艶をたたえた双丘は惜しげもなく慈斎の前に晒されている。
「ごめんね?君のカラダのこと調べるのも、上の命令だからさぁ」
手早く軟膏状のものを指に取った慈斎は、尻肉をぐい、と押し開いてひくつく蕾からそ
れを埋めた。
「っぃ、ゃぁああああ……っっ!んぅ……っ!!」
背後での行為に我知らず上げた嬌声。その大きさに和宏は自ら狼狽え、即刻木に添えた手の甲に口を押し当てる。
「よく馴らされてるねぇ。潤滑剤なんていらないくらいすんなり飲み込まれたよ」
二本の長い指が、菊門から和宏の内部を掻き回す。腸壁を探られるたび尿道を閉ざされた陰茎が苦しげに打ち震える。
「ま、慈玄の巨根を突っ込まれるんじゃ、これくらいにはなるか。思いのほか無理はさせてない、みたいだけど」
指先を締める触感で、慈斎はそういった印象を受ける。体格の良い慈玄と細身のこの少年とでは、寸法の落差は明白である。和宏が単に慰み者扱いされていないことは、これでもわかる。
── それほどこの子にご執心、というわけか。
慈斎の口角が、にんまりと歪んだ。
「でも俺のくらいは簡単に挿入りそうだね。試してみたいけど、今日のところはここまでにしとくよ」
ゆっくり擦りつけるようにして、慈斎は和宏のナカから指を引き抜いた。
「……ひぐっ!ん、ふぁ、あ……はぁ……」
大きく息を吐いた和宏は、ずる、と崩れて膝を着く。
「最後までヤッちゃってもいいんだけど、慈玄に暴れられたら元も子もないし。言い逃れもできなくなっちゃうからね」
和宏の背中にぴたり身を寄せた慈斎は、前方に腕を回して、符で封じられた彼の肉棒を握った。
「っぅああっっ!!」
「苦しい?クスリもまだ少し効き目が残ってるみたいだから。続きは慈玄とゆっくり愉しんでよ」
睾丸からやわやわと揉み撫でると、膨れあがったままの性器に下着を被せる。そして、脱がせたのと逆の手順でパンツまで履かせた。
「心配しなくていいよ、宿の近くまでちゃんと送り届けてあげるから。どうせ碧のとこでしょ?あそこなら色々詮索されたりしないもんね」
ファスナーを上げながら、慈斎が言った。立ち上がって離れようとした彼の袴の裾を、ところが和宏が掴む。
「ど……して、こんなこと、を……?」
未だに耳や項は紅く染まり、呼吸は荒い。喘ぎながら、ようやく言葉を紡ぐ。
「言ったでしょ?上からの命令。それに」
慈海が感じ取った、奇異な気配を慈斎もこのとき不意に拾う。どういうわけかそれは、裾を握った、男にしては華奢な掌から沸き立つように伝わってくる。
── へぇ、慈玄がこの子と離れたがらない理由って、もしかして。
彼は屈んで、その手を取った。腕を引き、和宏を立ち上がらせる。
「興味があるんだよね、君に」
最初に和宏が見た時と同じく、慈斎は人懐こげにっこりと笑った。先程までの痴態など、なにも無かったように。
「ね、ここであったこと、慈玄には内緒にしてくれないかなぁ?あいつ見境なくなると、『なにしでかすかわからない』からさ」
勝手な言い分だが、和宏は素直に小さく頷いた。
「ふふ、ありがと」
一瞬の隙に、慈斎は和宏の頬に軽く触れるキスを落とすと、くったりした身体を抱き上げ再び空へ向かい翼を広げた。
◇◆◇
「なんだありゃあ!あんな手ぬるい封印じゃ、完全にだだ漏れじゃねぇか!!」
山寺の堂内へ戻った慈玄がぼやく。聞こえているのだろうが、後についた慈海は黙したまま。
「中峰もヤキが回ったのか?山を守護するが聞いて呆れ……」
「貴様にそのようなことが言えるのか?」
こぼれ続ける慈玄の愚痴を、慈海の諌言がぴしゃりと遮る。
「古い怨霊だ。あれらを封じ続けるのは、下の者の役目に変わっている。が、人が増え闇も増えた現代では、小僧共では手に負いきれていないのは確かだ。しかしあれは……」
慈海はここで再度口を噤んだ。その様子で慈玄も、彼が続けなかった言葉を察する。
「……またわざと、とでも言いてぇのか?」
「そうは言わん。だが、だらだらふらついてる貴様にも明らかな要因はある、ということだ」
「くっそ」
言いながら慈玄は、敷地内に視線を巡らせた。
「?! 和、和はどうした?!」
「和宏君なら、俺が碧の旅館まで送り届けたけど?」
ひときわ大きな羽音がして、茶髪の天狗が舞い降りた。
「だって可哀想じゃない。いつまでかかるかわからない仕事の間、ただ待たせておく、なんてさ」
白々しく言い放つ慈斎に、慈玄がずかずかと歩み寄る。真正面に対峙すると、有無を言わさず胸倉を掴んだ。
「慈斎!てめぇ……っ!!」
「え、なに?暴力反対」
「あいつに何かしてねぇだろうな?」
「別になにも。なんなら、あの子に聞いてみたら?まぁ聞き出さなくても、慈玄なら『何したか』なんて読み取れるでしょ?」
自信満々に言い切るところをみると、おそらく証拠になりそうなものは何もみつかるまい。だが、本当にこの天の邪鬼が何もしないはずがないことくらい、慈玄は良く知っている。
「……くっそ……っ!」
もう一度吐き捨てると、慈玄は慈斎を突き放した。
「取り敢えず、一旦宿に戻る。慈海、悪ぃが後で。それまでは頼む」
「仕方あるまい」
広い背に生やした翼を羽ばたかせ、大柄な天狗は飛び去ってゆく。残された対照的な見た目の二天狗は、片や何度目かの深い溜息を吐き、片やククッと喉の奥で笑った。
慈玄同様人目を気にしてか、やはり大して飛行していない。慈斎が降り立ったのは山中のいくぶん開けた……といっても、足の踏み場があるという程度で周囲は変わらず木立が迷路のように入り組んではいるが……場所だった。
「ただ待ってるだけじゃ、和宏君もつまらないでしょ?こんなところまで遊びに来てくれたんだから、楽しまなきゃ、ね?」
耳元で囁く言葉の内容は聞き取れるが、和宏の意識は依然として覚束ない。そのくせ血の巡りは速いようで、トクトクという脈拍に合わせて、爪先や指先がじん、と痺れ熱くなっていた。
「効力は大分弱めたつもりだけど、イイ感じに効いてるみたいだね。ふわふわして気持ちいいでしょ?」
慈斎は抱えた和宏を下ろすと太めの幹に凭れさせ、彼のシャツを捲った。高原のひんや
りとした空気が、少年の円やかな腹に触れる。
「……ぅ、あ……」
抵抗の声をあげようとしても、和宏の舌は上手く回らない。押し返す力も奪われ、されるがままになっている。
「寒くはないよね?もうだいぶ熱を持ってるみたいだし」
体温を確かめるように腰や腹部を撫で上げた手が、薄桃色に膨れた胸の突起を摘まんだ。
「っぃ、あ……あっっ!!」
ビクリと跳ねた脊を見て、慈斎は満足げに下唇を舐める。
「へぇ、敏感なんだねぇ。それとも、そう『仕込まれた』のかな?」
コリコリと痼る感触を楽しみつつ、ひとしきり指先で乳首を捏ねる。
「っひぅ、ぁあ……っっ!」
掠れて響く喘ぎ。必死で堪えようとしても漏れてしまう己の声に、和宏の羞恥はよけいに高まる。すっかり温度の上昇しきった身体を、慈斎は樹木に押しつけ、膝で股間を割った。震えて頽れそうな彼の両脚が、それで支えられる。
「ココ、窮屈?いいよ、解放してあげる」
ふるふると首を振る和宏を無視し、片手は胸先を弄り続け、空いた片手が器用にボタンを外し、ファスナーを下ろす。そして躊躇なく下着をずらすと、すでに屹立していた幼い陰茎が顔を覗かせた。
「胸を弄られただけでこんなにしちゃって。案外いやらしいコだねぇ、和宏君は」
喉の奥を鳴らすように笑い、慈斎は和宏の亀頭を軽く撫でる。
「……ぃ、や……やめ……っ!」
「あ、でも射精はしないでね?後処理大変だし、すぐばれちゃうから」
そう言うと、慈斎は懐から札のような紙切れを取りだした。口の中でぼそり何かを唱えてから、それで和宏自身を覆う。すると、札はきゅ、と収縮し、彼の精管を締め付けた。
「んう……ぅ……っ!!」
「しばらくしたら勝手に消えるからさ、ちょっと我慢してよね」
悪びれた様子もなく、慈斎が言う。
「ところで。ね、慈玄とは結構ヤッてるの?感度はいいみたいだけど」
「え……」
返事は待たず、彼は和宏の身体を反転させた。さっきまで背を預けさせていた幹に、今度は手を着かせる。下着はとっくに下ろされていたので、艶をたたえた双丘は惜しげもなく慈斎の前に晒されている。
「ごめんね?君のカラダのこと調べるのも、上の命令だからさぁ」
手早く軟膏状のものを指に取った慈斎は、尻肉をぐい、と押し開いてひくつく蕾からそ
れを埋めた。
「っぃ、ゃぁああああ……っっ!んぅ……っ!!」
背後での行為に我知らず上げた嬌声。その大きさに和宏は自ら狼狽え、即刻木に添えた手の甲に口を押し当てる。
「よく馴らされてるねぇ。潤滑剤なんていらないくらいすんなり飲み込まれたよ」
二本の長い指が、菊門から和宏の内部を掻き回す。腸壁を探られるたび尿道を閉ざされた陰茎が苦しげに打ち震える。
「ま、慈玄の巨根を突っ込まれるんじゃ、これくらいにはなるか。思いのほか無理はさせてない、みたいだけど」
指先を締める触感で、慈斎はそういった印象を受ける。体格の良い慈玄と細身のこの少年とでは、寸法の落差は明白である。和宏が単に慰み者扱いされていないことは、これでもわかる。
── それほどこの子にご執心、というわけか。
慈斎の口角が、にんまりと歪んだ。
「でも俺のくらいは簡単に挿入りそうだね。試してみたいけど、今日のところはここまでにしとくよ」
ゆっくり擦りつけるようにして、慈斎は和宏のナカから指を引き抜いた。
「……ひぐっ!ん、ふぁ、あ……はぁ……」
大きく息を吐いた和宏は、ずる、と崩れて膝を着く。
「最後までヤッちゃってもいいんだけど、慈玄に暴れられたら元も子もないし。言い逃れもできなくなっちゃうからね」
和宏の背中にぴたり身を寄せた慈斎は、前方に腕を回して、符で封じられた彼の肉棒を握った。
「っぅああっっ!!」
「苦しい?クスリもまだ少し効き目が残ってるみたいだから。続きは慈玄とゆっくり愉しんでよ」
睾丸からやわやわと揉み撫でると、膨れあがったままの性器に下着を被せる。そして、脱がせたのと逆の手順でパンツまで履かせた。
「心配しなくていいよ、宿の近くまでちゃんと送り届けてあげるから。どうせ碧のとこでしょ?あそこなら色々詮索されたりしないもんね」
ファスナーを上げながら、慈斎が言った。立ち上がって離れようとした彼の袴の裾を、ところが和宏が掴む。
「ど……して、こんなこと、を……?」
未だに耳や項は紅く染まり、呼吸は荒い。喘ぎながら、ようやく言葉を紡ぐ。
「言ったでしょ?上からの命令。それに」
慈海が感じ取った、奇異な気配を慈斎もこのとき不意に拾う。どういうわけかそれは、裾を握った、男にしては華奢な掌から沸き立つように伝わってくる。
── へぇ、慈玄がこの子と離れたがらない理由って、もしかして。
彼は屈んで、その手を取った。腕を引き、和宏を立ち上がらせる。
「興味があるんだよね、君に」
最初に和宏が見た時と同じく、慈斎は人懐こげにっこりと笑った。先程までの痴態など、なにも無かったように。
「ね、ここであったこと、慈玄には内緒にしてくれないかなぁ?あいつ見境なくなると、『なにしでかすかわからない』からさ」
勝手な言い分だが、和宏は素直に小さく頷いた。
「ふふ、ありがと」
一瞬の隙に、慈斎は和宏の頬に軽く触れるキスを落とすと、くったりした身体を抱き上げ再び空へ向かい翼を広げた。
◇◆◇
「なんだありゃあ!あんな手ぬるい封印じゃ、完全にだだ漏れじゃねぇか!!」
山寺の堂内へ戻った慈玄がぼやく。聞こえているのだろうが、後についた慈海は黙したまま。
「中峰もヤキが回ったのか?山を守護するが聞いて呆れ……」
「貴様にそのようなことが言えるのか?」
こぼれ続ける慈玄の愚痴を、慈海の諌言がぴしゃりと遮る。
「古い怨霊だ。あれらを封じ続けるのは、下の者の役目に変わっている。が、人が増え闇も増えた現代では、小僧共では手に負いきれていないのは確かだ。しかしあれは……」
慈海はここで再度口を噤んだ。その様子で慈玄も、彼が続けなかった言葉を察する。
「……またわざと、とでも言いてぇのか?」
「そうは言わん。だが、だらだらふらついてる貴様にも明らかな要因はある、ということだ」
「くっそ」
言いながら慈玄は、敷地内に視線を巡らせた。
「?! 和、和はどうした?!」
「和宏君なら、俺が碧の旅館まで送り届けたけど?」
ひときわ大きな羽音がして、茶髪の天狗が舞い降りた。
「だって可哀想じゃない。いつまでかかるかわからない仕事の間、ただ待たせておく、なんてさ」
白々しく言い放つ慈斎に、慈玄がずかずかと歩み寄る。真正面に対峙すると、有無を言わさず胸倉を掴んだ。
「慈斎!てめぇ……っ!!」
「え、なに?暴力反対」
「あいつに何かしてねぇだろうな?」
「別になにも。なんなら、あの子に聞いてみたら?まぁ聞き出さなくても、慈玄なら『何したか』なんて読み取れるでしょ?」
自信満々に言い切るところをみると、おそらく証拠になりそうなものは何もみつかるまい。だが、本当にこの天の邪鬼が何もしないはずがないことくらい、慈玄は良く知っている。
「……くっそ……っ!」
もう一度吐き捨てると、慈玄は慈斎を突き放した。
「取り敢えず、一旦宿に戻る。慈海、悪ぃが後で。それまでは頼む」
「仕方あるまい」
広い背に生やした翼を羽ばたかせ、大柄な天狗は飛び去ってゆく。残された対照的な見た目の二天狗は、片や何度目かの深い溜息を吐き、片やククッと喉の奥で笑った。
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