天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志

文字の大きさ
61 / 102

第58話

しおりを挟む
 津久見と左近は大館の屋敷を後にすると、清正・喜内・平岡と合流した。







「お三方、お待たせしました。」







 笑顔で津久見は二人に言う。







 そこへ、平岡が馬を引いた。







 が、津久見は頭を横に振り言った。







「少し歩きましょう。堺の街をちょっと歩いてみたいんで。」







 と、スタスタと歩き始めてしまった。







 残された4人は慌てて後を追う。







 堺。







 そこはあまりにも津久見が今まで見て来た街並みと一線を画していた。







 活気に溢れている。一人一人の顔を見ると、喜々としている。







 時折現れる外国人に、平岡は驚いたりしている。







「凄い街だな…。」







 津久見は言う。幾度かの戦火にあったとはいえ、その都度復興し賑わいを維持している。







 高く積まれた商品の叩き売り、包丁の実践販売。何でも揃いそうだ。







(ここはまるで異世界だな)







 津久見は歩きながらそう思った。大阪を北東に抑え、貿易の主軸ともいえる港がある。







(そりゃあ発展するか…。)







 軒を連ねる店を見ながら







(そう言えば…)







 と、津久見は現実世界での堺の街を思い出した。







 今でこそ全国チェーン展開した企業に就職した友人が、転勤で堺に配転された話だが、そこでの商売の難しさを実感したという。







「お兄ちゃん。堺で商売するんやったら、もっと上手くやらなあかんで」







「堺でやるんは早かったんとちゃうか」







 今でこそこの企業は地域から愛される店舗として成功しているが、知名度もそこまでなかったこの企業は当初は相当難儀したとその友人が言っていた。







(それもそうだよな…こんな時代からこんな発展しているんだもんな…)







 堺の持つ特別な何かを津久見は感じ取っていた。







(ここから世界と繋がって行く…。か。)







 と、そこへある商人が平岡の持つ箱を見て、声をかけてきた。







「お、ちょっとそこのお侍はん。ちょいとよろしいか。」







「ん?」







 平岡が怪しみながら、津久見の前に立った。







「そんな怖い顔しなはんな~。ちょっと見せてほしいねん。それ。」







 と、平岡の持つ木箱を指さし言った。







「こ、これか?」







 と、平岡は戸惑いながら言った。







「それ以外にありまっか?お侍はんには興味ありまへん。」







「な!」







 平岡は少しむっとしたが、津久見が間に入り、その木箱をその商人に差し出した。







「これですね。」







「おおきに。おおきに。ちょっと見せてもらいます~」







 と、商人は受け取ると木箱を手際よく開けながら言った。







「ほ~これはまた綺麗な焼き物ですな~。唐津ですな?」







 と、商人は焼き物を掲げながら言った。







「お分かりですか?」







「ん?そんなん堺の商人に言うたらあきまへん。わしらは何でも目利きできますねん。」







 津久見の方を一切見ずに、焼き物を吟味しながら言う。







「まあ唐津の焼き物はそこまで珍しくは無いですがな~」







 と、ゆっくりと木箱の中に戻しながら言った。







「ん?これは…」







 と、木箱の底にある紙を取り出した。







「ん?『唐津焼 焼き手 雲流斎  慶長5年 9月 作』…。」







 商人はその紙を読み上げた。







「先月唐津で焼いた物でっか?」







「そうです。」







 津久見が言う。







「う~ん、なかなか鮮度のええもんでんな。ようこんな早く堺に持って来れましたな。」







「鮮度の良い物はやはり値打ちが出ますか?」







「物と買い手に寄りますな。季節の物が入れば値が付きますな。おおきに。」







 と、商人は木箱を戻しながら言った。







「どの時代でも、買い手がいるからこその商いでっせ。この堺には目利きの良い近江商人やらも買い付けに来るさかいに。」







「なるほど…。」







 商人は平岡に木箱を渡すと、また店に戻って行ってしまった。







「何だったんだ…。」







 平岡は不思議そうにその後姿を見ていた。







「皆さん、私の考えは通用しそうですね。村上さんと商業を発展できそうです。」







 津久見は笑顔でそう言うと、また歩みを進めた。







 50m進んだくらいでまた、声を掛けられた。







「お侍はん、その木箱見せてくれやんかい。」







 それから津久見達は何人もの商人に声を掛けられ、最終的には木箱に布をかけ隠すように堺の街を出た。







 大和川を超え、堺の街を後ろに見ると、5人はやっと一息つき皆顔を見合わせた。







 5人の視線が合うと同時に全員笑った。









 眩しい夕陽は4人の影を生みながら、4人は進む。







 久しぶりの大阪城が見えて来た。









 第58話 完
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

処理中です...