王子の凱旋

小野あやか

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二人の思い

レニドールSide 俺は……死んだのか?

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「貴方をどうしようもない程愛しているんです!!」
「しゃ」
「社交辞令や気遣いじゃありません!!」
「……俺に意地悪したいって……」
「好きだから、可愛すぎてつい意地悪したくなる男心を分かって下さいっ」
「ふぇ……ふぇぇ…………」
ルーファスは真剣だ。真剣に俺を見据えていて、冗談ではない様子に顔が真っ赤になり、足が震えた。
ルーファスが……俺を好き……本当に? 
本当の本当に!? 疑いの目を向けた。
「えっと……いつから……?」
「出会った時から。一目惚れに近いです。貴方の澄んだ強い眼差しにまず胸を撃ち抜かれ、努力家で素直で謙虚な所に惚れました」
「えぇぇぇぇ………………」
どうしよう、ここは天界か? 
俺は死んだのか? 
なんだかとっても足元がふわふわするんだ……。
魔王討伐の褒美として、神が幸せな幻覚を見せてくれているのだろうか……。
ああ、じゃあ俺はやはり死んだのか。

「殿下! 戻って来て下さい! 夢とかじゃありませんっ現実です!!」
意識を飛ばしていたらルーファスが両肩を揺さぶってきた。
「……っは……ぇ……現実……だと?」
「私の想いは伝えました。……しかし殿下には……想いを寄せる方がいらっしゃるのですよね……」
ルーファスは哀しげに微笑む。
「あー、うん。ルーファスの事がずっと好きだったんだぁ」
「っっっっなっ……!! え、で、殿下も、私を……っ!?」
まだ頭がボーっとして、本音が口から出てしまった後に正気を取り戻した。
「……はっ! あっ……あぅっあぅぅ……言っちゃった…………」
「本当ですかっ!? 私を好きというのは本当の本当ですか!?」
「……ぅ……ほんとぅです……」
詰め寄るルーファスの告白に嬉しくて恥ずかしくて、真っ赤な顔を俯かせる。ルーファスは破顔してぎゅっと抱きしめてきた。

「殿下っ……あぁっ殿下、幸せですっ。こんな幸せがあったとはっ……ぁ……まさかここは天界……やはりあの時私は死んでいたんですね……。気づかなかった……」

ルーファスは空を見やり儚く微笑む。
「いや、死んでない死んでない! 現実だから!」
今度は俺がルーファスの両肩を掴み揺さぶった。

「………………」
「………………」
「えっと……俺達、もしかして、両想い……?」
「……この場合、そうなりますね……」
「………………」
「………………」

 二頭の馬に挟まれて、俺達は暫く無言で見つめ合った。
「あの……本当に……? ルーファスって、騎士団事務員と関係をもってたよな……?」
「ぐっ知っていらしたのですか……。彼は性欲処理です」
「っぅぐ! 分かりやすいけど……言い方っ」
あまりの潔さに、騎士団事務員に少し同情する時が来るとは……。
「エルンも同じ事思ってますよ。私のことは単なる性欲処理係と」
「……そ、そうか、大人の関係、というやつだな」
まったく、贅沢な性欲処理係だなっ!
「ええ、お互いに好みでも、想いあっているわけでも全くありませんし」
「…………じゃあ、前に言ってた好みのタイプって」
「貴方のことですよ」
「っ!」
ルーファスの目に俺は一体どう映っているのだろうか……。美化しすぎなのでは? 別に凛としてないし、魔王討伐嫌がったくらいだから、志が高いわけでもない……。まあ、心はともかく身は綺麗だったけどな。

「………………」
「………………」
 お互い何だか気恥ずかしくて、もじもじする。
「ルーファス……その……」
「…………何でしょう殿下……」
俺はルーファスの袖を掴み、両想いの記念? に渾身のお願いをしてみた。
「昨日、散々しておいて、なんだけど……あの……王宮に戻る前に、ルーファスと……その、またしたい……っんんぅっ」
お願いを言った途端きつく抱きしめられ、激しいキスをされた。一頻り絡めあった後名残惜しく唇を離す。
「ふ……ぁ……あっ……ルー……ここ、道端……」
「あ、つい……申し訳ありません……」
凄い……ルーファスの目がギラギラして情欲に満ちている……。俺相手に興奮していて、ヤル気が漲っている……! この男は本当に俺の事が好きなんだ……。嬉しくて胸がギュッと締め付けられた。
人の往来がある街道で、お互いに昂ぶってしまった!

「殿下、さっきの宿に戻りましょう!」

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