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あき

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気になる生徒

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「平方?」

そう。平方鳴の声だ。

「すみません、この教室誰も来ないので使ってたら誰か入ってきてつい隠れてしまいました。聞く気はなかったんですけど、このことは誰にも言わないんで安心してください。俺も帰ります。さようなら、センセー」

ドアから出ていく平方の腕を咄嗟に掴んでしまった。なんですかと、いつもの笑顔を浮かべて平方は笑った。

「どういう意味だ?」

「え?」

「さっき言ったろ?俺の事、人でなしって」

平方はその言葉にあぁと小さく呟いてドアにかけた手をそっとおろし、さっきまで松坂座っていた椅子にドカりと座った。

「センセーさ、否定ってされたことある?」

平方はいつもの笑顔1つ浮かべず、なんの感情も籠っていない声で聞いてきた。なんと答えたらいいか分からず、首を傾げるとふっと鼻で笑ってやっぱりと平方は笑った。それはいつもの完璧な笑顔ではなく何か自嘲のような、諦めのような切望のようなそんな笑みだった。

「僕はね、あるよ。別に言うつもりは無いけど。センセーはきっと今までたくさんの人を泣かせてきたんだろうなって思うよ。外れてないでしょ?」

泣かれた記憶は無いけど、鮫村からはよくお前と絡むやつは八割型裏で泣いてるぞと言ってきた。それはあながちハズレてはなく、裏で泣いてるやつがいるのも何度が聞いたことがあった。

「なんでだ?」

「ひとりよがりだからじゃないんですか?」

はぁと大きくため息を着いて平方はそういうと僕は帰りますと、教室から出ていった。ひとりよがりってどういう意味なのだろうか。頭を捻ってみるが答えは出ない。なんというか、どこが痛いのか分からないが痛いところをつかれたのだけはわかった。


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