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第89話 無口なSSランクのスキル
しおりを挟むしかし効率よくこの邪魔な雪を排除するにはどうしたらいいだろうか。
〈服従〉を無駄に連発して消耗したら意味ないからな。
しばらく考えて答えを出す。
よし行くぞ?セーレ 90%だ。
「はいはーい、久しぶりだねぇ」
俺の姿が変わる。
しかし誰も特に反応しない。
もう慣れたようだ。
「命ずる!雪!降るな!やめ!!」
「……………………」
「……………………」
「……………………はぁー」
え?何?この感じ。
セーレまで呆れたため息を出す。
「あはははっ!雪降るの止めるのはいいけど……あははっ!今ある雪をどうにか!ゴホゴホ!しないと意味ないだろ!」
カリグラが今まで見た事ないくらい笑う。
〈炎帝〉
「え?あれ?」
俺は右手に巨大な炎の塊を出す。
「その向きだと僕にも当たるけど?」
「…………」
「何か言ってもらえる?」
「これで雪も溶けるからいいんだろ?」
「え?」
俺は炎の塊をラヴィーニ山頂上方向へ向けて放つ。
これで雪も一掃できるだろう。
もちろんカリグラごと……。
「もー危ないなぁ。火傷したらどうするだい?」
やはり避けられた。
まあ本気で狙ったわけではないけど、少しくらい当たって欲しかったのが本音だ。
「そうしたら雪で冷やせばいいんじゃないか?」
「まあいいや。これで歩きやすくもなった。国王がいるのかいう拠点もすぐに見つかるだろう。なあグラヴィカス?」
「…………ああ」
「気になったんだが、グラヴィカスのスキルってなんなんだ?」
「…………探知だ」
「え?なに?」
「………………探知だ」
なんで前より声がさらに小さくなるんだ?
普通聞き返されたら声を大きくするもんだよな?
「こいつ!何言ってるか分からん!ボソボソ話しやがって!イライラする!」
ほらぁ。セーレも怒ってるよ。
「はあー。相変わらずだな。僕が説明するよ。グラヴィカスは唯一戦闘が出来ないSSランクの冒険者なんだ」
「え?戦闘できないって……大丈夫なのか?」
「1人だと終わりだね!Fランクの魔獣どころかスキルが開花したばかりの子供にも勝てるか微妙な所だね。彼は相手を傷付ける事が出来ないんだ。……性格上」
「性格?!……性格か。本当に大丈夫か?」
「でもそのスキルは凄いんだよ?スキル名は〈神眼〉といって範囲内の全てを知覚するってやつだね」
〈神眼〉……。
神という文字が入っているからオリジナルのスキルだ。
「だから探知……か。その全てってどれくらいなんだ?」
「文字通り全てさ!本人曰くは知りたい事を見ようとしたら分かるんだって」
「じゃあ国王の場所ってもう分かるのか?」
「………………まだだ」
「え?!なんて?!」
「あ゛ー!もっとハキハキ話せないのかい?もうなんかーくすぐったい!カイアス!変われ!一回説教してやる!」
変われって。
それ100%使わないと駄目じゃないか。
「お姉様!落ち着いてー」
ベリスなんとか落ち着かせてくれ!
セーレさんもイライラが募ってしまっている。
「まだ分からないんだってさ!多分、範囲の外なんだろうね。もう少し進もうか。雪が無い分かなり進みやすくなっただろうし」
「そうだな。少し早足で行こう。そもそも一国の国王がなんでこんなところにいるのか疑問だったんだ。何か変な事を企んでそうで気色悪い」
「カイアス様の仰る通りです。ここは環境そのものが危険地帯にも指定されていますが、魔獣がいない訳ではありませ
ん」
「そうそう。というかこんな環境に適応できる魔獣は巨大な身体を持ち強くなる傾向にある。そんな魔獣に囲まれたら流石に僕らでも疲れるよ?」
「なら尚更急ごうか。グラヴィカス、国王の場所が分かったら教えてくれ」
「……………………」
「え?無視ですか?」
つい敬語を使ってしまう。
「じゃあ分かったら右手上げてもらえる?」
「…………分かった」
本気で本当に大丈夫か不安になってきた。
スキルで全てを知覚するなんて強力なスキルだけど、本人と意思疎通出来ないし、その本人は物凄く弱いしで……。
国王の場所が分かったら〈転移〉で拠点まで送り返した方が良さそうだ。
多分この男がいるとセーレが常にイライラして俺がスキルを使うのにも影響しそうだ。
とにかく先に進まなければ。
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