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第83話 より冷酷に2

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暗いな。

それに息も上がってきた。
90%を維持するのはやはりまだ無理なようだ。


50%まで出力を下げる。
すると〈探知〉で見える反応も限定的なものになった。
しかし今はこれでも十分だ。


しばらく進むと大きな通路につながった。
〈探知〉で見た通りだ。


振り返ると俺が通ってきた通路の他に2つの通路がある。


ここで合流するのだろう。


「ここは壊しておいた方がいいか……」


………いや俺が外に出られなくなるかもしれないな。
やめとこ。

「この先に反応があるな……」

俺は立ち止まる。
目の前に鉄で出来た巨大な扉が現れた。

この奥に反応が複数ある。

しかしこの先にも反応が続いている。
その奥に反応の塊があった。
そこが目的地だな。

〈破砕〉

どんな素材で作成されていようと俺の前では無力だな。

俺は扉を破壊する。
ガラガラと大きな音を立てて扉は崩れ粉々になった。
破片が散らばると歩き辛くなるからかなり細かく破壊した。

扉の先には反応があった通り兵士たちがいた。
いきなり扉が崩れたから狼狽えている。

こいつらはただの護衛だろう。
この先にいる者たちの事を聞くまでもないか。


「風よ、切り裂け」


この地下通路に風なんか吹くわけないが俺の言葉で風が吹き兵士たちを切り裂く。
あいつらは俺の事を認識すら出来なかっただろう。

俺は兵士たちの亡骸を越えて歩みを進める。

反応はこの先にも複数ある。
何層かに分けて防衛しているようだ。
俺が扉を破壊した事はすでに伝わっているだろう。

それにこの暗さだ。〈探知〉を使っているとはいえ出力は抑えてある。だから平面にしか〈探知〉は機能しない。

範囲外からの攻撃、上や下にありそうな隠し通路からの不意打ちに即座に対応出来るようにしておこう。


少し進むとまた大きな扉が出てきた。


しかし兵士はいない。反応もなかった。


「何で誰もいないんだ?さっきは反応があったのに……。この先に多くの反応があるな。そこまで全員移動したのか……」


「なんだかねぇー。無駄な事をするもんだねぇ。人間って」


おお……。
長生きしてる魔神っぽい事を言うね。


「だってさぁ、もう地下ばかりで飽きてきたよ。この戦争もなんかダラダラしてるし……。もっとこう……なんだろう!なぁ?!なんだろう!」


なんだろうと言われても……。


「もうさ、私1つ考えたんだよ!私が!SSランクの人数とかさ国民とかさ。そんなの考えるの面倒じゃない?何処かの国の領土奪ってそこに気楽な国を作ろうよ!それならスキルがどうとか言われる心配もないぞ?」


うーん。
それだと皇国が中途半端になってしまう。

やはりカリグラに任せて離れてもいいんだが、カリグラはあの城に向かっていた。


消息不明だからどうしたらいいかも分からない。
それにレオノーラはどうする?
今は限定的に〈服従〉を使っているが、この戦争が終わったら無くなる。
あの人、1人では国の運営は出来ないだろう。


まあ俺がいた所でどうなるものでもないとは思うが……。


「そうかい……。いい案だと思ったんだがねぇ。カイアスがそう言うなら仕方ないね」


……そんな残念そうな声を出すなよ。
案出してくれたのは嬉しかったさ。


それにこれが終わったらまた魔界に行くんだろ?


新しい使い勝手のいいスキルが欲しいな。以前、奪った〈奪取〉なんて使ってないし、1度試しに使ったスキルもほとんど使ってないからな。


いつも同じスキルばかり使ってる。
それだけ〈服従〉が便利なスキルなんだけど、それが効かない相手が出て来たらそれ以外で対応しないといけない。


加護持ちやカリグラやさっき学校で会ったあの男の様に〈服従〉が効かない相手は意外と多いからな。


〈服従〉に頼らない戦い方も探していかないといかないし、課題は多い。

「それは〈服従〉を極めてからでもいいとは思うけどねぇ」

それもそうだが……。

しかしまずはこの戦争に勝利する為にこの先にいる者たちと話をしなければな。


「ハハッ!それは話で済むのかい?」


それは相手次第だな。

さてもう扉に着くぞ。
明らかにたくさんの反応がある。
出力も上げておこう。


するとやはり扉が出てきた。
扉の作りは同じだ。


違いがあるとすればその前に兵士たちが隊列を組み、武器を構えこちらを睨んでいるという事か。

俺が姿を見せると周囲に松明の火が付けられた。
周りがとても明るくなる。
俺の姿を捉える為に火を灯したのだろう。
しかしこれでこちらも相手がよく見える。


俺の姿を確認した敵兵士の隊長の様な人物が俺に背を向けて兵士たちに演説を始めた。


「見よ!あの禍々しき姿を!まるで魔王の遣いだ」


…………魔王の遣い??
俺ってそんな風に呼ばれてたのか……。
まあこんな姿なら無理もないだろうけど、せめて魔王本人にしてほしかったな…。
その隊長が続ける。


「我々、人類は魔王の攻撃で多くが死ぬだろう。横にいる友を見捨て逃げる事にもなるだろう。己が生きる為に敵に膝を折らなければならない時だって来るだろう。しかしそれは今日ではない!!」


おおっ
カッコいい事言うなぁ。


「そうかい?別に普通だと思うけどぉ?」


まだ隊長が演説してる。
数十名はいるだろう兵士の士気も高そうだ。


「我々はこの扉を死守せねばならない!今日ここで倒れたとしても我々の勇姿は必ず受け継がれこの帝国を守り抜いてくれるだろう!」


………眠たくなってきたな。


「隣を見ろ!今まで厳しい訓練を乗り越えてきた仲間が一緒にいる。私も一緒だ!恐るな!後退するな!神よ、我々に勝利をー!!突撃ーー!」


「「「うおーーー!!!」」」


「お前ら………いい加減長いよ」


〈破砕〉


俺は地面に触れる。
出力を上げた状態で使用する〈破砕〉は連鎖する。


通路の床はドンドンひび割れていく。
そして俺に向かって走ってくる兵士たちは到達する。


そして兵士たちは声も上げる事なくバラバラになった。
そのままひび割れは扉に到達し、倒壊した。


「呆気ないもんだ……」


「俺はまだ死んでいないぞ!!」


「なに?!」


俺は左腕で剣を受け止める。
この防具は白虎の素材だ。普通の剣くらいなら防ぐ事が出来るが、衝撃は受ける。
結構痛い……。


隊長が生きていた。戦闘を走っていたから真っ先に死んだと思ったが、なぜ生きている?

俺は剣を弾き飛ばし、即座に雷の槍を飛ばす。


あいつは今、空中だ。
絶対に避けられないぞ。


しかし、隊長は空中で留まり横に避けた。

「スキルか……。それも〈浮遊〉系の」


「そうだ!貴様の攻撃など簡単に回避できる。ここから先は行かせん!!」


久しぶりにしっかり使おう。


〈服従〉


「命ずる。地面に落下しろ」

すると隊長は地面に落下した。
どんなスキルを持っていても加護が無いなら俺の前では無力だ。
それは変わらない。


「な、なぜスキルが………」


〈炎帝〉


「燃えろ」

燃えるというより爆発に近い炎が隊長を包み込む。
叫び声ともならない様な声を上げて灰になった。

俺の初撃を避けたのは凄いけどそれまでだな。
所詮は加護もない兵士だ。


「……さてと行こうか」


崩れた扉を越えて先に進む。
その先は先程までと違った空間だった。
まるで豪華な城の通路になっていた。
やはりこの先にいるのは貴族かそれに近い身分の者だろう。

そして1枚の小さな扉が視界に入る。
その奥からはガヤガヤと盛り上がる話し声が聞こえる。


それに美味しそうな食事の匂いもする。
帝都がこんな状態でもこいつらは地下に隠れ自堕落な生活をしている。


俺には関係ない事だが、さっきの兵士たちはこんな奴らを守る為に死んだのか?
瞬殺してしまったのが少し申し訳なくなった。

「はあーーー」

「まあまあその気持ちも分かるが情報が必要なんだろ?」

それはそうだ。
その平和が突如して崩れる絶望を教えてやろう。
この中にいる奴はもしかしなくても俺が最も嫌悪する奴らだろう。


情報がないなら即座に殺してやる。

俺は扉の前まで移動する。

そして全力で扉を蹴破った。
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