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第81話 頭の中の平和

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残った7人の兵士に問いかける。



「お前たちは知らないのか?国王の居場所を」


「し、知らないんだ!本当に!助けてくれ」


6人がほぼ同時に答えた。
これにも虚偽はない。 


しかし1人だけ異なる事を言った。


「か、関係があるか分からないが…」


「それでもいい。言ってみろ」


記憶を覗いてもその人が歩んできた人生は長い。
その中から一つの答えを見つけるのは大変だ。
向こうから話してくれてそれが嘘か本当か判断できればその方が楽だ。
 

「帝都に皇国軍が攻めてくる前に王城にガージール様が来ました」


ガージールって誰?


「エングリーズっていう砦にいた宰相だよ。ちゃんと覚えとけバカ!」


セーレ……。
そこまで言わなくても……。


「ああ、エングリーズの宰相か…。そいつがなぜここに?」


「いえそこまでは分かりません。しかし国王様の居場所について何か知っているとしたらガージール様しかいないかと……」

「……そうか、もう行っていいぞ。その情報に免じて貴様らは解放しよう。しかし、次に敵として現れたら即座に殺す。いいな?」

「「「は、はいー!」」」

そう言って兵士たちは慌てて走って逃げていった。
もう彼らは戦線に復帰する事はないだろう。
兵士も続ける事は出来ないだろうな。
顔はよく覚えていないから次に会った時といっても俺が気付かないだろうけど。


さて次はガージールか。


どんな奴だったか全く覚えてない。


「カイアスさん!ほらあれだよ、悪魔憑きだよ!きっと低俗な悪魔がその宰相に入れ知恵したか、身体を乗っ取ったんだよ」


身体って乗っ取れるの?


「そうだよ!私たちみたいに宿主の契約だと、乗っ取るとかはないんだけど、憑かれる時は乗っ取れるよ!心につけ込まれるんだよ」

つけ込まれるか……。
どんな感じなんだろうか。


「まあそもそもカイアスさんに対してはやろうとも思わないけどねぇ。お姉様もいるから他の悪魔は近付く事さえしないと思うよ?」


そうなのか?

というかそいつはエングリーズの宰相だったけど、あそこは今こちらとの戦争で負けて今は皇国領になってるからな。


宰相の立場を追われて憔悴して出来た心の穴をつけ込まれ狙われたか?
じゃあ今のガージールは悪魔だ。
おそらく国王を移動させたのもそいつだ。


ちなみにだが、今のガージールのスキルはどうなってるんだ?


「そいつも悪魔のスキルと自分のスキルの2つを使えるだろうねぇ。そういう悪魔に憑かれた奴は存在自体が邪魔だ。発言も全て嘘しかつかないから見つけた瞬間に殺しても構わないよ」



いや、でもそいつしかいなかったら国王の居場所も分からないし情報を引き出した方がいいんじゃないか?


「それも駄目だね。低俗な悪魔は私たちの中でも害獣みたいなものだ。それに同じ悪魔同士だとベリスのスキルすらどれが本当かわからないんだ」


「そうなんだよー。あいつら嘘しかつかないから記憶を覗いてもこの言葉が嘘なのか本当なのか分からないんだよー」


だから何か言われたとしても逆に混乱するだけだから見つけ次第殺すという事か。
納得した。


とにかくそのガージールが何処にいるのか。

見た者はいないのか、それを知っている者をまた探すとしよう。


「……あんたさぁ。そのガージールがどんな顔だったか覚えてるのかい?」

…………………………。


「おい、コラ!無視するんじゃないよ。探すとしよう……とか言ってるけどどんな顔だったか覚えているのかい?!」


……………お、覚えてません。


「やっぱりかい!」


「カイアスさんってそういう所あるよねー。仕方ない!私が見せてあげるよ!」


見せるって?


そうベリスが言った途端、俺の視界に昔の記憶だろうか?
俺自身が見た物が流れてきた。
いつも他人の記憶を覗く時と同じようだが、
この視界は俺の視界だ。

これは一体…………。


「フフンッ!私のスキル〈秘密を暴く〉は何も相手だけに作用するものじゃないんだよ!自分がどうしても思い出せない事も時期さえ絞れたら覗けるんだよー。ねぇ凄いでしょ?」


ああーこんな顔だったな。
よしこれでもう覚えた。
ベリスありがとう。

「いいよいいよ、いいって事よ!今度、頭ヨシヨシしてね!」

それくらい何回でもしてあげるよ。


「ちょっと!ねぇ、私は?!」

え?

「え?」

……………え?

「…………………もう知らない!」

「ああ!お姉様が怒って部屋から出て行っちゃったよ!ほらベリト、ゲームに負けたからっていつまでも泣いてないで追いかけて!」

「は、はいーー」

さっきからやけに静かで話さないと思ったらまた姉にゲームで負かされて泣いてたのか。

世界は戦争をしているが、おれの中の悪魔たちは今日も平和だ。
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