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第80話 悪人らしく
しおりを挟むでも不思議な男だった。
〈服従〉の効果が全く効いていなかった。
カリグラも同じだったが、あいつはまたそれとは違った気がした。
何が違うと言われたら答えられないが……。
セーレはどう思う?
「分からないねぇ。でも何か……普通の人間とは違う雰囲気だったね。覚えておいた方がいいと思うよ」
分かった。
とりあえず今はそれよりも国王の居場所を知っていそうな者を見つけないといけない。
俺はそのまま道を進む。
視界には入らないが、周辺で戦闘による爆発音や悲鳴が聞こえる。
するとそこに逃げてきたのだろうか。
一つの小隊、10人ほどの兵士と鉢合わせした。
こちらの兵士ではない。
帝国兵だ。
兵士の1人が話した。
「クソ!もうここまで皇国の冒険者が来てるのか?さっさと殺してしまえ!」
たった10人で何が出来るというんだ。
でもその小隊の中に興味深い奴がいる。
将校だろうか。明らかに鎧が他の兵士と違う。それに偉そうだし、1人だけ変な帽子を被っている。
あいつだけ捕らえて情報を引き出そう。
俺が攻撃もせず、動きもしないのを不思議と思ったのか弱い奴だと思われたのか10人いる兵士の中の2人が剣を抜きこちらに近付いてきた。
「俺も舐められたものだ。この姿でも黙ってたら雑魚だと思われるのか?」
「さっきから何をブツブツ話してる!気でも狂ったか?さっさと死ね!」
そう言うと2人の兵士が俺に斬りかかっていた。
「風よ」
ヒュオッ!
俺がそう呟くだけで風の刃がそんな音と共に2人の兵士の首を飛ばした。
以前のように何をどのように操るのかを口に出さなくてもコントロールが可能になった。
かなりの強者にもなると俺が口にした事に反応して対応してくるだろう。
確かにこれからどんな攻撃をするのかを話しながら攻撃している様なものだからな。
でも今は頭で考えたように動く。
あまりにも変な事は実現しないし、相手がどこにいるとか防御しているのかとか色々考えないといけないから口に出した方が楽ではある。
だから弱い奴を相手に練習しておく必要がある。
そして話を戻そう。
突然、2人の首が落ちて死んだんだ。
これで相手は混乱するだろうな。
するとその将校のような奴が叫ぶ。
「き、貴様ら、時間を稼げ!!俺が逃げる時間を稼ぐんだ!俺の盾になれ!そうすれば金貨をやるぞ!!」
うわぁ……。なんだこいつ……。
「うわぁ…。こいつヤバイね。そんなこと言う奴ってなかなか見ないよ?」
魔神のセーレの同じ感想を抱いた。
「た、隊長……」
「そんな………」
兵士たちにも動揺が広がっている。
これは作戦変更だな。
もっと面白い事を考えた。
〈空間転移〉
俺はそのクズ隊長の後ろに回り込む。
そして腕を取り関節を決める。
「いだだだだ!は、離せ!貴様らも何を見ている?!さっさと私を助けろ!」
しかし兵士たちは助けようとしない。
そりゃ斬りかかった兵士の首がいきなり落ちたら警戒するだろう。
それにこの隊長を助ける意義もないだろうしな。
「お前たちに問う。国王の居場所を知っている者、知っている者を知っている者はいないか?答えた者は助けてやろう」
「国王の居場所は誰も分からんのだ!」
隊長が叫ぶ。
いきなり大きい声を出さないでほしい。
うるさい。
うっかり殺しそうになる。
「なら知っていそうな人物は?たった1人で隠れるわけないよな?心当たりくらいあるだろう?答えられないなら殺す。嘘をついても殺す」
「………………ッ!!」
必死に考えているようだ。
でもこいつは本当に知らない。
〈秘密を暴く〉
こいつは今までも危険になると部下を犠牲にして生き延び、階級を上げていった。
スキル弱者を痛ぶり、虐げている典型的な奴だ。
こいつは国王の居場所を答えられない。
答えたとしても嘘なのは確定だ。
ただこいつの今までの行いを許せないだけだ。
これが手にもう少し力を込めたらこいつは確実に死ぬ。
さあ何を言うかな?
隊長が口を開く。
「そ、そうだ!お前!俺の部下にならないか?副官にしてやろう。そ、そうすれば酒も女も好きなだけっ………」
グシャッ!!
俺の風を纏った右手がこいつの心臓を後ろから貫く。
「はぁー。ようやく出した答えがそれか?面白くないな」
〈秘密を暴く〉
このスキルでは相手の記憶を覗く事は出来てもこれから話す事は分からない。
このクズが今回はどうやって生き延びようとするのか楽しみだったが、部下になれとか何か言われた事あるようなことを言うからつい殺してしまった。
俺も人を殺す事に抵抗なくなったな。
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