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第79話 変な知識を与える

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兵士たちとオルフィナが出迎えてくれる。
オルフィナいたんだ。

「カイアス様!お帰りなさいませ。どうかされましたか?」

「えーと。帝国のSSランクを1人こちら側に引き入れたから連れてきたんだ」

「な、なんと?!素晴らしいです!早速敵の情報を引き出しましょう!」

「ドルミーレって敵の情報とか知ってるのか?」

「いやー知らなーい。寝てたのをいきなり起こされたんだ。それで頑張って起きて着いたら戦えなんて言われても無理だよねー」

「お前も大変なんだな……」

「でもこっちはそんな事しないよね?」

「ああ、しないよ。それは約束しよう。でも本当に帝国の情報とかないのか?何でもいいんだが……」

「うーん……。ああ!そうだ!今は帝都には行かない方がいいよ?特に王城は駄目だね」

「え?なんでだ?既に俺たちの精鋭が向かっているが?」

「聞いた話だから本当か分からないけど、王様は今、城にはいなくてそこに敵が突入した時に城ごと吹き飛ばす爆弾を設置してる………みたいな。それに帝国内には大きな城が沢山あるし帝国の王様って結構クズだから兵士たちも巻き添えになっても関係ないって奴なんだよねー」


それってかなり危ない状況じゃないか?
その城にはこちらのSSランクが5人と多くの兵士の中でも精鋭を向かわせている。


その者達が全員やられたらこの戦争は確実に負ける。

今はこちらが押しているが、SSランク1人が前線に出るだけでも逆転されてしまう可能性があるからな。
それにヴィクトリアもまだ倒せていない。


カリグラは帝都に向かったが、到着しているのかどこにいるのかもよく分からない。

「そうか。有益な情報をありがとう。それは助けないとマズいな……。オルフィナ!俺も今から帝都に向かう!こちらの指揮と情報の共有は任せだぞ!」

「承知しました。御武運を!」

〈浮遊〉

この〈浮遊〉もかなり速く動けるようになった。
ドラゴンクラスにも劣らない速度だろうな。


帝国の帝都ドーラか…

行くのは初めてだな。

この場所には帝国の王がいない事は既に分かっている。
確定していないが、ドルミーレの話は嘘ではないだろう。

あーベリスのスキル使えばよかった。
忘れてた。

「ひ、ひどい!私の事を忘れるなんて!もうあなたなんか知らない!」

なんか口調違ってないか?
セーレお前また何か変な知識教えたな?

「え?べ、別にぃー?何も言ってないよ?」

これは言ってる言い方だ。
変なこと教えるなよな。変な風に育ったらどうする。

「どうするも何もこの子達の年齢って何万歳だと思ってんの?」

あーそういえば悪魔だったな。

とりあえずこの〈浮遊〉の速度なら程度までそこまで時間はかからないだろう。
最初からこうすれば良かったんだろうな。

この戦争が終わったら何をしようかと思う。
ここまで色々やって来たけど、ようやく目的まで近付いてその後が分からなくなってきた。

考えないようにしていたけどな。

なあ、俺ってこの後どうしたらいいと思う?

「じゃあさ、私の手伝いをしてくれよ。また魔界に行かないといけないけどね」

?分かった。
やる事もなくなりそうだったし。

そんな話をしていると帝都が見えてきた。

この街も広い。
奥に城があり、そこから下にかけて建物がたくさん並んでいる。
既に帝都に突入したようだ。あちこちで火が上がっている。


あれが王様が居るという城だろう。
まだ存在している。
間に合った。でも、味方の姿が見えない。

俺はさらに加速して城に近付く。

もう目の前まで迫った時だった。

ドカーーーン!!!!!!

城の中心から大爆発が起こった。
その熱風で近くまでいた俺は吹き飛ばされてしまう。

「あっつ!」

なんとか空中で身を翻して体勢を整える。

「そんな……。間に合わなかったか……。リグド達は……」

今も城のあちこちから小さな爆発が続き、白ガラガラと音を立てて崩れていった。

俺はその目の前に着地する。
こちらの仲間を失ってしまった。SSランクを一度に5人も失った。


これでは帝国との戦力差が一気に開きこちら側の敗北となってしまう。
俺1人ではまだ複数いるSSランクをまとめて倒す事は出来ない。
敗北という2文字が脳裏に浮かぶ。
帝国を滅ぼすという目的を達成できない?


それを考えた時、鳩尾、心臓が締め付けられるような焦りと焦燥感に襲われた。
鼓動が早くなり、息も乱れる。


城の周囲には敵兵士が大勢いた。
そして俺を取り囲む。

「貴様ー!よくも王城を!殺せー」

そう言って兵士たちが一気にこちらに向けて走ってくる。


「…黙れ……動くな」


俺はボソッと言っただけだ。
なのに、周囲の兵士たちはピタリと止まった。
〈服従〉のスキルの効果が発揮されている。
しかし、なぜ?という疑問は出なかった。

「……そのまま死ね」

その言葉を言った途端、兵士たちは一斉に苦しみだした。
呼吸が出来ないようだ。
全員がバタバタと倒れていく。

「どうするんだい?こうなってしまっては作戦は続けられないだろう?一旦、戻るのかい?」

……………………。

「まあよく考えるんだね。私はアンタさえ生きているならそれでいいからね」

…………このまま国王を探す。
こうなったら国王を殺し、その首を掲げて皇国の勝利とするしかないだろう。
SSランクを倒す事も重要だと思ってはいるが
もうそうするしかないだろう。

それにだ。
この帝国には皇国が大規模な戦争を仕掛けている事も皇帝が変わった事も伝わっているだろうが、俺が皇帝だと言うことは伝わっていないだろう。

最初から俺の名前を知っている者はウェグリアにいる人だけだ。
Sランクになった時、かなり歓声を浴びたからな。

でもそこは帝国領の中では奥の方だ。

そこはあまり戦場にはしたくないが、そこに国王がいるなら行かなければならないだろう。

アルフたちの顔が浮かぶ。
元気だろうか。
思い返せば一緒に冒険していた時は楽しかったな。

あのまま冒険者らしく過ごしていたら良かったのかもしれないな。
今更だけど。

俺は帝都ドーラ内を歩く。
誰か国王の居場所を知っている者がいるかもしれない。
将校や貴族がいればいいのだが……。

もう俺には余裕がない。
平民だからだとか、兵士じゃないとかそんなのはもう構っていられない。

「ここから出るぞ?!早くこっちへ!」

誰かいるようだ。
そこは学校か?そういや帝都には学校も多くあったな。
スキルを強化するための訓練場や兵士を育てる為の施設みたいなもんだ。

そこの生徒だろうか。
その建物の影から4人ほどの人間が飛び出してきた。
1人は大人の男だ。教師か?でも腰に刀を装着している。
でも何か雰囲気が違うような。

ズキッ

なんだ?頭が少し痛み出した。

あの男、何かおかしい。

連れている他の3人の者はみんな子供だ。
あいつに聞こうか。

「そこの男。止まれ」

「すまない!俺はこの子達を連れてここからすぐに出ないといけないんだ。君も逃げた方がいい!」

「は?」

俺は今、〈服従〉を使っていたぞ?
あの男が加護を持っていたとしても弾かれるような感覚もなく通じなかった。
カリグラ以外に初めてだ。
こいつはもしかすると危険かもしれない。

「……お前。まさか……」
その男は何か気付いたようだ。

「黙れ!」

そう言って俺はスキルを使う。
〈雷帝〉

右手に雷を纏わせその男を狙って放つ。

その雷が命中する前にその男と周りにいた子供たちは消えてしまった。

「移動のスキルか……。もう放っておくか。他を探そう」
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