上 下
81 / 95

第77話 スキルの名前の秘密

しおりを挟む

いやこれは俺が強くなったんだろうな


すでに謎の同士討ちで戦場には混乱が広がっている。


あとは指揮系統を潰せば終わりだ。
大規模な戦闘において最も重要なのは情報の伝達だ。


どこに何人で攻めるのか、敵はどこにいるのか、装備は?規模は?などを素早く全兵士に伝達して行動に規律をもたらす事ができれば相手の人数が多くてもうまく戦えるだろう。


しかし兵士内に混乱を起こさせ、その混乱を抑える役割の指揮官を潰せば、情報の共有は止まる。


そして混乱に歯止めが効かなくなりパニックを起こすし、士気も低下する。
敵前逃亡する者も現れるだろう。

そうなったら敵兵士が何人いようと負けるはずがない。


「カイアスさん!すごいすごい!指揮官みたい~」


………だろ?


「なぁーにが……だろ?だよ!この前私が直々に教えてあげたんじゃないか!バカ!」


はい、ごめんなさい!


「カイアスさん……。謝る速度上がったねー」


ベリスが哀れみの声を出す。
そういうのやめてほしい……。


確かにセーレが戦術やスキル名に関して教えてくれた事はこの戦争だけでなく今後においてもかなり役に立つ事だった。


ーーーー戦争が始まる前ーーーーー


少し早くエングリーズに到着していた俺は暇だった。


デュランは日課の鍛錬と言って槍を振り回したり、砦の周りを走り回ったりをしていたが、俺はそこまで乗り気ではなかった。


なのでセーレたちの世界によく行っていた。


戦争開始までの数日間、毎日そっちに行って、ベッドに連れ込まれる事を了承する条件に戦術やスキル名に関しての情報をもらった。


戦術に関しては先程の通りだ。

〈服従〉は俺の声を認識した者にしか発揮されない。


しかし、一部の兵士にさえ効果があればそこから同士討ちさせる事が出来る。
それが俺とセーレの作戦だ。


そして重要なのがスキルに関してだ。


これはこの世界の真理に近いものだと思った。

セーレが話す。


「スキルっていうのはねぇ、神から授かる物とされているんだ。という事は神というものが存在する。じゃあなぜ、人間に力を与える様な事をするのか、なぜスキルに名前がついているのか、そのスキル名をどうやって知ったのかというのはみんな知らないもんなんだよ」



どういう事だ?
学がない俺からすると既に意味が分からん。


「例えばあのカリグラって奴のスキルは〈戦神〉だ。それにあのヴィクトリアってのは〈神速〉だろ?その名前はどうやって知ったんだ?って事だよ」


確かにそうだな。
全員が多種多様なスキルを一つ持っている。

しかしそのスキル名はいつ知ったんだ?


同じ炎のスキルでも、俺のは〈炎帝〉だが〈火炎〉とか〈炎〉だけのもある。
この名前の違いはなんだろう。


「そうさね。常識すぎて誰も疑問に思わないだけで、スキルが開花した事は分かっても、いつスキル名を知ったのかは知らないもんなんだ。スキルが開花したばかりの子供に確認してもいつの間にか知っていたと言うだろうねぇ。その神という存在がすり込ませているのだろうねぇ」


神か……。
そもそもセーレという魔神がここにいる時点で神という存在がいる事は分かる。
それに魔界に行ったからなぁ。俺って。


この世界以外にも別の世界が存在する事は身をもって証明している。



「で、スキルにも序列っていうのがあるんだよ。まあ当然スキルは神が授けるんだから、その神が創るんだけどね。スキル名に〈神〉という文字が入るものはオリジナルなんだ」



オリジナル?


という事はその神っていうのが直接創ったものってこと?

「おっ!よく分かってるじゃないか!そういうことだ。あんたがよく使う〈炎帝〉や〈雷帝〉も上位のスキルではあるが、それでも派生したスキルだ。それであんたが使える〈水神〉は神が直接創ったものだ。相手がスキル名を言った時、神という単語が入っていたらかなり注意した方がいい!気をつけな!」


なるほどな。気をつけるよ。

でもそれって前に言ってた真理に近いものなんじゃないか?
それを今、俺に行って大丈夫なのか?
秘密にしたがってたじゃないか……。


「えーー?これから毎日、一緒に寝れるんだよ?それなら世界の真理の1つや2つ安いもんだよ!さあこっちにおいで?今夜も可愛がってあげるよ!」

あっはい………。

ーーーーーーーーーーー

そして現在に至る。

ここ数日は寝た気がしなかったが、
戦術、スキル名など色々教えてもらったんだ。
それを発揮しないとこの後が怖い。


一般の兵士はスキルをメインに戦わないから
俺のスキルで一掃できるだろう。
問題は兵士じゃなくて冒険者たちだ。



それに帝国にはSSランクがまだ8人いる。
ヴィクトリア以外は知らない。


この戦争にはほぼ確実に全員が参加する……だろう………から。


なんだろう………。異様に眠いんだが?


「カイアス!何かおかしいぞ?寝るな!」

へ?

「起きろー!起きろー!」


ドンッドンッドンッドンッ!


分かった、分かったから頭の中で太鼓叩かないでくれ。
もう目が覚めたよ。



気付くと周囲の兵士たちは倒れている。
俺がやった分も含めてもう立っている兵士は周辺にはいなくなった。
しかし、これは俺がやったんじゃない。
死んでいるのではなく寝ているみたいだ。


「あれ?……なんで君は寝ていないの?」


「誰だ?」


そこには男が立っていた。
クルクルとした黒髪に赤い大きな瞳の少年だ。


その瞳は真っ直ぐこっちを見ている。
そして赤色……。それはスキルを使っているという事を意味している。


「僕?僕はドルミーレ。これでも帝国のSSランクなんだぁー。凄いでしょ!」


「ああ、凄いな。で、これは君がやったのか?」


「これ?ああー兵士たちの事?そうだよー。みんなもこんな戦争なんてしないでゆっくり眠ればいいんだよ。さあ君も一緒に寝よう?」


「生憎だが眠くないからな。お前も俺の邪魔をするなら容赦しないぞ?」

さっきからベリスが太鼓を叩くのをやめないから嫌でも目が覚める。
…………うるさい。

「怖いなぁー。それに僕のスキルも効かないなんて……。君、一体何者?そっちの方に興味が出てきたよ。あっもう何となく分かってると思うけど、僕のスキルは……」

〈眠り神〉
スキル発動状態で話しかけた相手を眠られせる事ができる。
ある一定の衝撃で起きる。



神って単語が入ってるが、強いスキルなのか?
でもこれだけの兵士を眠らせて無力化するのはすごい事だ。
無力化した兵士はそっちの味方だけど……。


「なかなか強いスキルじゃないか。今まで何回も戦争があったのになぜ参加しなかったんだ?そのスキルなら血を流さずに敵を倒すことも出来るだろ?」


「うーん。あんまり戦争とか興味ないからなぁ。それに僕ってよく寝てるから起きたら戦争、終わっちゃってる事も沢山あるんだよねー。今回は頑張った!」


「そ、そうか」


なんか気が抜ける奴だ。
でもSSランクである事に変わりはないし、敵意もあまり感じない。


これはこっちに引き込めるか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜

ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】 【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。 異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ! そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる! 転移した先には絶世の美女ステラ! ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ! 勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと? いずれあさひが無双するお話です。 二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。 あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。 ざまぁはかなり後半になります。 小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...