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第75話 戦闘激化
しおりを挟む「あなたはいつもそうでしたわね!優秀なスキルを見つけると誰でもそうやって配下に加えようとする。断れば殺すと。あなたは何がしたいんですの?昔はそうではなかったのに!」
「あれから変わったんだよ。もう昔のままではいられない」
なんか2人だけが分かる会話が続いている。
これが蚊帳の外という事か……。
デュランは2人の高速の戦闘を興味津々に見ている。
やはり武人はこうした戦闘には惹かれて
しまうのだろう。
俺はそこまで興味がないからボケーっとしてしまう。
というか高速過ぎて動きを追い切れていない。
でも油断すれば先程の様に狙われてしまうかもしれないからスキルは使い続ける。
でも俺が見る限りではカリグラが圧倒している。
まさかここまで強いとは思わなかったから
なんか思っていた状況とは違うな店…。
上の戦況がどうなってるとかそっちの方が気になり出した。
その時だった。
バキ!!
カリグラの拳がヴィクトリアの顔を直撃した。
「グッウゥ……」
苦しみの声を上げ、ヴィクトリアはカリグラから距離を取る。
「今のは効いただろ?降伏してくれないかな?女性の顔を殴るのは気が引けてしまうからね」
結構、生き生きと殴っていた様に見えたけど?
「カリグラ……。お、覚えておきなさい!」
そう言うとヴィクトリアの姿が消えてしまった。
「あれ?逃げた?」
「うん。逃げたね。ヴィクトリアの事だから逃げるくらいなら死を選ぶと思ったんだけど見込みが甘かったかな。会わない間に性格は変わったみたいだ」
「昔からの知り合いなのか?」
「そうだね。昔、出会った頃はあの速度に自分でついて行けてなかったんだ。それでに壁にぶつかって怪我したりしててね。見かねて俺が戦い方、スキルの使い方を教えたんだ」
「え?じゃあ師匠みたいなもの?」
「そうなるね。あと一つ聞きたいんだけど。そこの……デュランは何か言いたい事でもあるのかな?」
振り向くとデュランが険しい顔でカリグラの事を見ていた。
「いえ。言いたい事という程ではありませんが……。この戦争が終わったら俺と手合わせしていただきたい。俺はもっと強くならなければならない」
「ああ、もちろんいいよ。さてヴィクトリアを逃してしまった以上、ここにいる理由はない。俺はこのまま通路を進んで帝都を目指すよ。君たちはどうする?」
そうだな。
ここでの戦闘で全力を出し切るつもりではあったからこの後の事なんて考えてなかった。
「俺はカイアス様と共に行動します」
デュランはそう言う。
こうした大規模な戦争の経験も当然ないからこうなった時はどうしたらいいかよく分からない。
「カイアスは苦戦している前線に行くべきだと思うな。さっきも言ったけど君のスキルは多数の敵を同時に相手できる殲滅系のものだ。敵味方を区別してスキルを行使できるならその方がいいだろうね」
敵と味方の区別はつく。
帝国兵に限定して〈服従〉を使えば問題ないだろう。
俺がこのまま考えたっていい案は多分思いつかないだろうからそれを採用しよう。
「分かった。俺は前線の状況を聞いて苦戦している所から順に援護しに行くよ」
「うん、それが良い。じゃあ頼んだよ?この戦争には勝てるだろうけど、その後国が疲弊してしまっては意味がない。被害を出さない事も考えないといけない。この戦争に参加している兵士は皆、優秀だ。兵士が1人戦死するという事はこの国の損失だと常に意識して行動してくれ」
こいつからこんな真面目な事を聞く日が来るなんてな。
勝っても皇国がボロボロなら他の国に侵攻されたら負けてしまうからな。
この皇国の未来とかはどうでもいいが、今後の為には考えないといけない所だろう。
カリグラはそう言うと地下通路の先へ消えていった。
「さて、俺たちは前線へ向かうとしよう。
ここでは完全に不完全燃焼だからな。この有り余った力は前線の帝国兵にぶつけてやろう」
「はい。俺は俺で強い冒険者と戦いたいものです。その時は許可を願います」
「もちろんだ。ただし死ぬ事は許さないぞ?」
「かしこまりました」
俺たちは来た階段を上がり外に出る。
進軍開始は明朝から始まった。
既に時間はかなり進んでいるがまだ夕暮れでもない。
日差しが眩しい。
やはり外の方がいいな。
地下や室内での戦闘は息が詰まる。
俺は前線の状況を確認する為に指揮所に戻って兵士に声をかける。
「これより前線へ援護に向かう。苦戦しているところはあるか?」
「現在は中央が押されています。ヴィクトリアとアイリーン誘導の為に被害が出た分押されている様です」
「分かった。そちらから順に援護して行こう」
「お願い致します。どうかご武運を」
そうか。あの2人を誘導するために多くの兵が犠牲になってしまった。
それなのに逃してしまうなんて。
必ず勝ってその兵士たちの死が無駄ではなかったと証明しなければならない。
俺はデュランを連れ、前線へ向けて出発する。
〈浮遊〉使えばすぐにたどり着けるはずだ。
デュランが俺の肩に触れる。
そして空から前線へ向かう。
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