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第68話 宣戦布告2
しおりを挟む「今ここに残っているのは我がジ=ザグナス皇国を支える中心人物たちだ。
俺が帝国に対して宣戦布告する事に異議があるものはいるか?異議に対しては処罰しない」
「では……よろしいですかな?」
鎧を着た大柄な兵士が手を挙げる。
兵士だろうな。歳は取っているように見える。白い無精髭がよく似合っている。
片目の傷が歴戦の戦士という風貌を呈している。
「いいだろう。お前は?」
「私はヴォルフリードと申します。皇国軍最高司令官を任されております。まず帝国との戦争ですが、私は大いに賛成です!先王様は戦争を好まれませんでしたからなぁ」
「そうか。賛成してくれるのはありがたいが、異議があるから手を挙げたのではないのか?」
「ええ、そうです。帝国との戦争は我々が待ち望んだ事ではありますがこちらの被害も大きくなるでしょう。もっと周到に準備しなければなりませんなぁ。兵士の損失は最高司令官としての恥ですわい」
ほぉ…。
こいつは良い司令官だ。
兵士を使い捨てだと考えている帝国とは違うようだ。
「なるほど。その考えは大事にしたい。ではヴォルフリード。お前は帝国をどうやって滅ぼす?俺、自身の力も使ってもらって構わない」
「うむ……。それは実に難しい。選定戦を見ていたがカイアス様は単騎では最強格だが、集団での戦闘に不慣れとお見受けする。
それに戦争で勝つにはSSランク冒険者が絶対に必要です。しかしその数も帝国の方が我々より多い。そこをどう攻略するかですなぁ」
「今こちらにいるSSランクたちは全員、協力してくれるだろうか?」
これが不安なんだ。
皇帝が変わる事で離反してしまったりしないだろうか。
SSランクは1人でも多く味方である方が助かる。
「それは心配ご無用。皇国のSSランクは8人いますが、その者たち全員、帝国を心底嫌っていますからなぁ。全面戦争となれば必ず協力してくれるでしょう。
あとはフリーで活動している4人のSSランクパーティーがおるのですが、その者たちをこちらに勧誘できれば戦争となっても勝てるでしょうな」
SSランクが8人か。
今はデュランがこちらにいるから帝国は9人、皇国も9人か。
「SSランクの人数では心配いらないだろう。このデュランはSSランクだ。帝国から皇国側に来てもらった」
俺のその発言で会場がどよめく。
「な、なんと?その者もSSランクなのですか?これでSSランクの数は並びました。これはSSランクパーティーを絶対にこちらの陣営に入れたい所ですなぁ。さっそく掛け合ってみても?」
「ああ、頼む。既に宣戦布告しているからなぁ。いつ帝国側から攻めてくるかも分からない。国境線に兵士を配置してくれ。敵の進軍にいつでも反応できるように」
「かしこまりました。これは腕がなりますなぁ!これほど大きな戦争はこれまで経験した事がありません!まさか生きている間にそれが訪れるとは!兵士たちの士気も上がる事でしょう。では私は計画があります故、失礼します」
「分かった。何か必要な物があれば言ってくれ」
ヴォルフリードは頭を下げて玉座の間から出て行った。
「他に何か意見のある者はいるか?」
「「「……………………」」」
誰も何も言わない。
目も合わせようとしない。
もともと皇帝とその皇帝が任命した宰相が全てを取り決めるそうだから関心がないのだろうか。
まあいい。
「何もないようなら俺は自分の方針をこのまま続ける。今の時点で異議を唱える事は許すが今後は許さん。では解散せよ!」
玉座の間にいた者たちは順番に出て行った。
残ったのは玉座の間を警護する兵士が数名、俺とデュランとレオノーラのみだ。
「どうしてですの?なぜいきなり戦争を?」
レオノーラが口を開いた。
「なぜ?レオノーラ、君は俺がスキルを複数形使える事を知っているだろう?俺に対して嘘をつけない事も、記憶を覗ける事も。
選定戦が終わった後、帝国を滅ぼすという目的をお前が本当に支持しているのかを念の為調べた」
ベリスとベリトのスキルでレオノーラの記憶を見た。
「はーい!私が覗きましたー!!」
「ちょっとお姉ちゃん今は静かにした方が………」
レオノーラはスキルによって左右されない国を作る事を目的にしている。
それは嘘ではなかった。
俺が帝国と戦争する事を何とか遅らせて諦めさせようとしていた。
皇国の民を死なせない為との事だ。
それは実に良い事だとは思うが、俺に対しての裏切りである事に変わりない。
だから俺は戦争をしなければならない方向に無理やり進めた。
「私は……ただ国の民の為に……」
「それは帝国を滅ぼしてから考えてくれ。本当はこうしたくなかったが、仕方ない。帝国を滅ぼすまでだ」
行くぞ?セーレ
「な、何をするつもりですの?」
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