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第67話 宣戦布告

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「なっ!カイアス様はそれはまだ計画も出していません!今この場で言うなど……」



レオノーラはそう言った。
まあ打ち合わせなんてしてないけど。



会場はザワつき始める。



「アッハハ!さすがはカイアスだ!それでこそ私の宿主だ!」


セーレやベリス、ベリトたちはテンション上がっている。

こいつらは戦争が好きだな。


俺は好きという訳ではないが、ゴールドーラ帝国は必ず滅ぼす。

あんな帝国はあってはならない。



この注目を浴びているこの状況での宣戦布告。

宣伝にはうってつけだろう。



「そんな事、私が許すと思いまして?!」



「やはり出てきたな……」



会場に集まっていた群衆を押し分けて2人の女性が俺の前に立つ。



1人はヴィクトリアだ。
もう1人はアイリーン。
この2人は帝国の皇族であり、その弟子だ。


この宣戦布告に必ず反対してくるだろうと思っていた。


「カイアス!あなたはそんな人ではないはずでしょ?」

とヴィクトリアが言う。

「……カイアス。あなたはいい人。そんな事を言う人でも、する人でもない」

アイリーンも続けてそう言った。


2人揃って俺はそんな人じゃないって……。



アイリーンがこちらに歩いてくる。



その前にデュランが立つ。
そして白銀の槍をアイリーンに向ける。


「それ以上、近付く事は許さん。皇帝陛下の御前だぞ。下がれ!」


アイリーンもヴィクトリアも着ているのはドレスだ。


武器も所持していない。
そんな状態で戦闘に入ろうとは思わないだろう。


それに比べてデュランはフル装備だ。
俺もこんなジャラジャラした服を着ているがスキルを使えば姿が変わるからな。
今の服装はあまり関係ない。


俺も戦闘になれば即座に参加できる。



するとアイリーンが動いた。


群衆の中にいた皇国の貴族が持っていた杖を奪った。



そしてスキルを使う。


〈聖剣〉

その杖は光り輝き聖剣となる。


「……戦争なんてさせない。私がここで貴方を止める」


「お前たちは俺の何を知っているんだ?俺が良い人?ルーヴェルを襲ったのが誰か未だに分からないのか?」


この俺の言葉にはヴィクトリアも反応した。


「なぜ今ルーヴェルの話が出ますの?………まさか……あなたが………?」


本当に気付いてなかったのか?
純粋なのか馬鹿なのか……。


「そうだ。俺があの街を攻撃した。あそこから俺の復讐は始まったんだ」


〈魔神〉


出力を80%で使用する。
俺の姿が変わり、周囲からは悲鳴も上がる。


「な、なぜ貴方が?」


ヴィクトリアも驚いているようだ。


「なぜ?分からないか?俺はドロップアウトと呼ばれる者だった。毎日が地獄だった。誰も助けてくれず街にも住む事が出来ず森に住んでいたんだ。ようやく遅咲きでスキルが開花したと思ったら今度は英雄扱いで擦り寄って来る。スキル、スキルってどいつもこいつも気色が悪い。そんな奴がほとんどを占める帝国を俺が好きになると思ったのか?」


「………それは同情する。でも、それでも戦争をする事を肯定するなんて出来ない」


アイリーンは聖剣を振り上げ、ドレスの一部を破き動きやすくする。

そして俺に向かって飛び出す。


「デュラン!」


「御意!」


ガキンッ!!


デュランは槍でアイリーンの聖剣を止める。


そして俺は叫ぶ。

〈服従〉

「命ずる。俺の声を認識する全ての者よ!平伏せよ!!」



バチンッ!バチンッ!


やはりヴィクトリアとアイリーンには〈服従〉が効かない。

しかしそれ以外の玉座の間にいた、皇国や帝国の人間は跪いた。


「これが俺のスキルだ。このまま戦闘を続けるなら帝国の人間を1人ずつ自殺させる!よく考えてから行動しろ?ここにいる帝国の人間は、全員がそれなりの権力を持っているんだろう?」


「……カイアス。それが本当に貴方の本心なの?」


「……そうだ。俺が苦しんだ時、誰か1人でも手を差し伸べてくれたなら、こうはならなかったかもしれない。だが、もう全てが遅い!遅すぎるんだよ!帝国は滅ぼす。これが俺の目的だ!」


「…………カイアス」


初めてアイリーンの表情が変わった。

いつも無表情で何を考えているか分からない人だった。

しかし、初めて見たアイリーンの表情は悲しそうな顔をしている。


後悔はしない。悲しくもない。

いつかは殺し合わないといけないと冒険者の試験の時から分かっていたはずだ。


「アイリーン!今はやめなさい!ここは退きましょう。カイアス!次にあった時はあの時のようにはいかないわよ?覚悟なさい!」


「ああ。最初から出来ているさ」


俺は帝国の人間に対してのみスキルを解除する。

そして、玉座の間から出るように促す。



この間、レオノーラは一言も話さなかった。そして玉座の間には皇国側の貴族や軍人のみが残った。

俺はもう一度、口を開く。
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