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第63話 決着の時

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「ぐっ!があ!」


前と同じだ。身体が焼きつくようだ。
でも前と違うのは俺の意識がまだあるという事だ!


あの時は即座に意識を失ってしまった。
それにセーレは頑なに止めていたが、今は止めなかった。


 それは俺が100%をほんの僅かな時間だけど使用可能になっている事を知っていたのだろうか………。

 でもそれを言わなかったのは何か理由があったのか?
 また俺の事を心配しての事だろうか。
セーレは言っていた。


 アンタはこんなところでは死なないと。
それはやはり知っていて、尚且つ俺が100%を使うということも分かっていたのだろうか。

それはセーレのみぞ知る………だ。

 しかし100%の使用、それも長くはもたない!
記憶が流れ込んでくる。
魔神の生きた記憶が。

数万年?数十万年?いやもっとそれ以上の長い長い記憶だ。


そして俺の身体も変化していく。


 手や身体だけを見ると女性のような身体つきになっていく。


セーレと身体を入れ替える。それが100%なのか?


 そう言えば前にセーレがそんな事を言っていた気がする。


駄目だ!頭が痛い。動けない。



「何が起こってるんだ?君のその姿が本当の姿なのかい?」


カリグラが狼狽えるような声を出している。

……………そうだ。

今はカリグラを倒す事だけを考えろ。


もう1分も意識を保っていられない。
完全に意識が飛ぶ前にこいつを敷地外へ押し出す!


「君が何をしようと無駄だ!これで終わりだ!」


カリグラが蹲る俺の顔に向けて蹴りを放つ。


でもこの蹴りはよく見えた。
とてもゆっくりに感じた。
もし今、動けるなら簡単に回避できるだろう。


スキル


〈真の服従〉


「…………動くな」


「な、何?なんで?動けないんだ」


カリグラの動きが止まった。


でも次は何を命じれば?
あああ!!駄目だ。考えがまとまらない。
もう意識が………。


「…カイアス。落ち着いて。次は相手を敷地の外へ吹き飛ばすんだ。さあどんなスキルを使えばいいかもう分かるだろう?」


この声はセーレの声か………。
いや自分が話しているのか?
それすらもよく分からない。
でもなんだろうとても安心する声だ。


少しだけ落ち着いた。


………分かったよ。俺が今、何をすべきなのか


スキル


〈真の浮遊〉


「カリグラよ。さらばだ」


「や、やめろ!お、俺は皇帝に……」



カリグラが叫んだ。こいつが叫ぶのを初めて見た。


だが止めるつもりなど無い。 
それにカリグラの話を聞く余裕もない。



選定戦のルールの1つにはこんなのがあったはずだ。


視認できない程、空中へ移動すれば失格となる。


 俺はカリグラを浮遊させ、上空へ吹っ飛ばした。


 身体能力がどれだけ強化されていようと動けないなら意味はない。


「や、やめろーーー!!」



 カリグラの身体は宙に浮き、そしてすごい速度で空へと飛び上がった。

瞬く間にカリグラは見えなくなった。


それと同時に鐘の音が聞こえた。


ゴーンゴーンゴーン

この鐘の音が意味するのは明確だった。
選定戦の決着。

そして俺も同じくして意識を失った。
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