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第59話 降参なんて聞こえない
しおりを挟むな、なるほど。
そうやって教えてくれるのは有難いんだが……。
今、戦闘中……。
「命ずる!スキルを使うな!」
しかし、雷を纏った拳が連発で飛んでくる。
全ての動作が高速だ。
同じ雷のスキルで相殺しているが、拳の威力までは相殺できない。
何発かもらってしまう。
「命ずる!スキルを使うな!!」
ファリオンは変わらず雷を纏った格闘を仕掛けてくる。
〈服従〉が効いていないのか?
「おい!ファリオン!」
「……………………」
「無視かよ!」
「いやカイアス。……こいつ多分、自分の耳を潰したんだ。最初は効いていた〈服従〉が今は効果がない。〈服従〉を生物に使う時は認識させないといけない。耳が聞こえない奴には効果がないんだ」
マジかよ。そこまでするのか。
いや死にたくないならそうするか。
それを躊躇せずに行ったのはすごいが……。
しかし耳が聞こえないのに、なんで俺の全方位からの攻撃に対応できるんだ?
「はい!はい!それはね!周囲に常に弱い雷を飛ばしてるんだよ。それで耳が聞こえなくても飛ばした雷に触れたらそこに何があるのか分かるから反応できるんだと思う。前に魔界にそんな事を言っていた悪魔がいたんだ!」
ベリスは相変わらず元気だ。
そうか。あいつが来た時も姿を消していたはずの俺に気付いたのはそういうことか。
あれも完全に消えたわけではないからな。じゃあ姿を消して撤退する事も出来そうにないか…。
空中に逃げても雷を使った空中移動や雷を放つ事も出来るだろうから意味はないか。
どうやって反応しているかが、分かった所で今は耐えるしかない。
と思ったがこいつの攻撃は速い。確かに速いが、あの〈神速〉のヴィクトリア程ではない。
あいつはもっともっと速く、剣撃の全てが洗練されていた。
こいつに負けているようではヴィクトリアにも絶対に勝てない!
それで思い出した。
以前、ヴィクトリアとの戦闘で少なからず認められた戦法だ。
こいつも同じような対策してたら効果はあまりないが…。
やる価値はあると思う。
混合スキル
〈縛鎖:焔〉
〈縛鎖:霆〉
〈縛鎖:科戸〉
炎・雷・風の属性で編んだ鎖を3種類、俺の周囲に展開する。炎だけでなく他の属性の鎖も作れるようになった。
やり方は前と同じだ。
見た目は炎と雷と風を纏っているように見える。
しかし、それを編み込み鎖にしている。
強度も鋼鉄クラスだ。
中央突破しようものなら鎖で八つ裂きだ。
ファリオンは警戒しているようだ。
先程まで近接戦闘を続けていたが、俺から距離を取った。
だが、俺から距離を取る事は悪手だ。
俺は〈浮遊〉のスキルを使い、周辺の木や岩を持ち上げ投擲する。
この間には、〈刀剣〉を使い周囲に剣を召喚する。
こちらに高速で接近してきたらその通り道に剣を置いておけば自滅する。
そして余った剣は〈浮遊〉で操りファリオンに斬り込む。
混合スキルを3種同時に使用し、〈浮遊〉や〈刀剣〉を使って攻撃する。
もう頭が忙しい!!
それにファリオンもよく避けている。
が、人間である以上、必ず限界は来るわけで。
剣の一本がようやくファリオンの右脚の先を斬った。
斬り落としてはないが、かなりの深傷だろう。
ファリオンは高速移動する時に必ず踏み込んでいる。脚を負傷すればその踏み込みはもう出来ない。
俺の勝ちだ。数で押し込むしか出来なかったが、勝ちは勝ちだ!
結局、この鎖使わなかったな……。
また別の時に使おう。
そしてファリオンだが……。
やはり足の負傷は致命的のようだ。
もうまともに立ち上がれないようだった。
「これで終わりだ」
「まっ待ってくれ!こ、降参だ!」
「聞こえないな。レオノーラへの侮辱。死をもって償え!」
周囲に刺さっていた数本の刀剣を〈浮遊〉で引き抜く。
そして、その全てをファリオンに突き刺す。
そのまま息絶えた。
これで2人倒した。
残り5人か………。
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