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第47話 皇国の秘密
しおりを挟むゲートがあった塔を出た。
まずは商業区画から案内するとの事らしい
そこ区画に一歩入ると世界が変わる
とても賑やかな場所だった
食べ物の良い匂い、綺麗な家具が並べられた店、どこにどの店があるのか細かく案内板の様なものも設置されていた。
「レオノーラ 今日は祭りか何かなのか?」
レオノーラはこちらを不思議そうに見る
「これが日常ですわ 帝国は違いますの?」
帝都ドーラに行った事ないから分からないけど、少なくともルーヴェルやウェグリアの街はここまで賑やかではなかった
「でも、帝国との戦争でエングリーズを落とした情報は既に伝わっているかもしれないので、いつもよりは賑やかかもしれませんね」
賑やかと言ってもうるさいわけではない
それぞれのお店が活気付き、売る側も買う側も楽しそうだ
そして何よりレオノーラの人望がとても厚いように感じる。
レオノーラが街に入ってから、そこにいた人達から名前を呼ばれ、手を振られている。
子供達には花や人形など貰っていた。
それにレオノーラは話しかけてきた人たちの名前も覚えているようだ
普通、貴族と平民の間には壁があるように思えるのだが………
「レオノーラ また一つ聞いてもいいか?」
「はい!カイアス様 なんなりと」
「なぜこんなに平民というか、この辺の人と仲がいいんだ?それに名前も覚えているようだし 普通もう少し皇族と平民には格差があるだろ?」
「そんな事はありませんわ……と言いたい所ですが、確かにそうですわね 私が異常なのでしょう……
私の家族は皆、壁…………というか見下しています スキルや階級だけで人を決めるなんて事は私は出来ません!それにこの皇国は……………」
この子……良い子だ!
「おい!カイアス あまりトキメクんじゃないよ?」
分かってるって!
レオノーラの話では
やはりこの皇国でもスキルや生まれによって人の価値までも決める慣習があるようだ。
しかし、レオノーラはそれに反対している
貴族からや家族からは嫌われているが、皇国の民からの信頼はかなり厚いようだ。
だからレオノーラは、結婚を急いだようだ
それは次のジ=ザグナス皇国皇帝の選定がもう少し先まで迫っているからだ
その選定のやり方は、皇子であれば本人が、皇女であれば自分と結婚した相手がそれぞれスキルを用いて命をかけて勝負する。
それも生死をかけての戦闘だそうだ
しかし、正々堂々とはならないのが上流階級の世界だ
次期、皇帝やその皇妃になりたいのは全員同じだ。
しかし、皇帝になる為に下手に動くと、皇帝になれなかった後が怖いらしい
皇帝や皇妃になる事を諦め、その後も今の良い生活を続ける事を選んでしまう。
なので次期皇帝の有力候補を援護する、つまり他の候補者を徹底的に邪魔するそうだ
レオノーラは次期皇帝になる為に今まで多くの男性と会ったようだ。
しかし紹介される人は皆、レオノーラのスキルに抗う事すら出来ない人だった。
レオノーラは良い人だが、自分の結婚相手が皇帝になれなければ、この貴族と平民、スキルで人の価値を決めてしまう慣習は今後も続いてしまう。
だから、相手を選ぶ時は心を鬼にして厳しくした。
さらに自分がいなくなればもっと酷い環境になってしまうと危惧している。
そして、皇帝から紹介される人では無理だと考えていたが、他の兄弟から邪魔が入った。
相手を探さないといけないのに、戦争への参加の指示が来た。
与えられたのは地下に作られた通路の防衛だけ。
さらに、自分で用意していた装備品も無くなっていたようだ
しかも、部下にと言われて連れてきた兵士も家族の息がかかった者らしく指示は効かない
怠惰な者ばかり……
どんなに良い人でもそこまでされてしまったら気が立ってしまう。
そしてレオノーラは自分の無力さに嘆いていた所に俺たちが来た。
そしてスキル〈魅了〉を使い使役した兵士を使い戦闘に入ったようだ。
だが、俺たちには〈魅了〉は効かない
言葉遣いからデュランは従者だと分かった。
レオノーラはもう俺しかいないと決め、その話を持ち出したようだ。
俺がどんな性格でも、どんなスキルだったとしても自分を慕ってくれる民を守る為に結婚ようと行動した。
それがここまでの経緯だ。
俺たちは商業区画を抜け、居住区画、そして冒険者組合がある武具屋が集中する区画に入っていた。
どこにいてもレオノーラは人気者だった。
皇女の権限で道の整備、建物の修理、教会などに金銭や物資などの寄付を行っているからだそうだ。
教会のシスターは俺が婚約者だと聞くと俺の手を握り涙を流しながらレオノーラの事を話してくれた。
そして、どうかあなたが皇帝となりスキルによって虐げられている者たちを助けてほしいと、レオノーラ様を守ってほしいと懇願された。
俺たちは今、皇城に向かっている。
挨拶と報告の為だそうだ。
レオノーラは少し元気がない。
俺もそうだ
首都に来れば、適当に逃げて情報収集をした後、帝国に戻って復讐を考えればいいと思っていた。
しかし、これ程までにスキル至上主義に反対し、動いている皇族を知らない。
人に頼られるのは嫌いじゃない
利用しようとしてくる奴はセーレたちが勘付く
レオノーラはただ純粋に国の民の為に全力だ
俺はレオノーラの力になりたい
しかし、俺が皇帝になる?
そんな大きな話になるなんて
俺が考え事をしていると
レオノーラは突然、俺の前に立ち、頭を下げた。
「カイアス様!申し訳ありません!」
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