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第5話 怒り

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ダールの農場についた


もう夕方だが、どこにいるだろうか?



いた!こっそり近付くか



「ったく。カイアスの野郎!適当な仕事やりやがって。ドロップアウト如きに仕事を与えてやってるのに…」



このクソ野郎!怒りが込み上げる



 適当な仕事?農地の開拓を18時間も休みなくやらせた上に休憩しようとすれば、こいつのスキル〈投石〉で小石をぶつけられる。

 
 お前はただ酒飲んでただけのくせに!
この……クソやろう…!



「だめだ!落ち着け!!」



セーレが話しかける。


「なんだ?邪魔をするなよ」



「怒りでスキルのコントロールがブレてる!50%から75%まで上がってる。そんな状況で怒りに任せて〈服従〉を使えば暴走するぞ?お前の復讐はこんな簡単に終わっていい物でも、軽い物でもないだろ!!」


 ああそうだった。俺が苦しみ続けた7年間はこんな怒りに任せたもので終わっていいものではない。



「セーレ……。ありがとう…」



「いいさ。カイアス。お前は私にとって当たりなんだ。人の命は短いが、ようやく楽しめそうなんだ。こんなことで終わらないでくれよ?」



「セーレ……。お前今までどんな奴のスキルだったんだ?というかいつからスキルに?何者だ?」



「レディにそういう質問をするもんじゃないよ?その内教えてやるよ。融合度100%に達したら記憶も共有だから嫌でも知る事になるけどねぇ。今まで100%を達成した宿主はいないけど!」


とりあえずこのジジイはどうしてやろう



〈透明〉〈浮遊〉〈気配隠蔽〉解除



ダールが気付いたようだ。



「あん?お前誰だどこから入った?!
お?お前カイアスか?なんだその格好は?余裕あるなら働け!!また石ぶつけられたいか?ああ?!」



こいつはどこまでいってもダメだろうな。


「………ダール」



「何だ!落ちこぼれ!また痛い目に合わせてやるよ!スキル〈投石〉!」


 ダールの後ろの岩が持ち上がりこちらに飛んでくる。人の拳くらいの大きさだ。速度もある。


「俺はなぁ!もうドロップアウトじゃねぇんだよ!!命ずる。岩よ砕けろ!」


 こちらに飛んできていた岩が砕けて散らばった。


「な、何しやがった?!スキルが使えるのか?」


「もうお前に言うことはない……。苦しんで死ね!!命ずる。ダールの手足の骨よ、折れろ!」


ゴキッ!ボキッ!

嫌な音がした。



「がああああああ!!」



ダールが地面に転がりまわる。



「痛いか?苦しいか?俺はこれよりもっと辛い目にあっていたんだよ。お前には家族もいたな?そいつらにも同じ苦しみを与えてやる」



「ま、待て!待ってくれ!家族は関係ないだろ!俺を殺しても構わん!家族には手を出すなー!!」


セーレが口を挟む。俺にしか聞こえないが

「へぇーこいつこんな感じなのに家族想いなんだねぇー。ねぇ?どうするの?慈悲を与えるの?容赦しないの?」


もちろん。後者だ。
こいつの家はあそこか。明かりがついてるな。またこの〈服従〉の力を試そう。



「おいダール。命ずるお前の家から目を離すな!  そして命ずる!!風よ竜巻となり、そこの家を薙ぎ倒せ!!」


「や、やめろ!やめてくれ!頼むお願いだ」


巨大な竜巻はダールの家に向かって進み続ける。そして、家を跡形もなく消し飛ばし、竜巻も消えた。



「ああああああー!!!」


ダールの叫び声が響き渡る。


……虚しい

「…ダール。……命ずる。首の骨よ。折れろ」

ゴキッ

そして俺の復讐は一段落した。
 森に帰るか。思ったより虚しいものだな。

「なんだいなんだい?辛気臭い顔しちゃって。お前を苦しめた奴を一族ごと滅ぼしたんだ!少しは気分も晴れただろう?あのジジイの叫び声最高だったじゃないか?」


「いや…思ったより虚しいもんだなーと思ってさ。今日は仕事明けだったし疲れた。帰って一旦寝るよ」


「そうかい……」



〈空間転移〉


スキルを複数使えるのは本当に便利だ。



 一瞬でイメージした通り、森まで帰って来れた。フィーナももういないようだ。


 そういえば、〈服従〉を使えば家も簡単なんじゃないか?


「命ずる。木々よ、1つにまとまり土台となれ。おお!?」

 木が曲がり大きなドーム状になった。
その上に登る。何か使えるスキルは……



これだな。



〈物質変換〉〈刀剣〉〈重量変換〉



 木の葉に触れる。するとそこだけまた木材になった。〈刀剣〉で鋭利な刃物を空中から召喚できた。
 それで木を切り床にする。

〈重量変換〉で重さも変えて家を建てる。


 2時間ほどで家ができた。
 1階建てだが、以前よりもしっかりした作りだ。必要な物も食品以外はスキルで作れる。

 ベッドや机なども揃えた。普通の民家と変わらない程度には作れた。
 いい出来だ!


腹も減ったなぁ。魔獣でも狩るか。
セーレが反応した。


「狩りかい?!いいねぇ。狩りは大好きだ。 〈服従〉を使えば簡単に倒せる。試しに行ってみな!」


「あーそうするよ。でも疲れたなぁ。スキルなんて使ったことないから慣れてないのか?」


「そんなもんだよ。周囲の人間はスキルの調整を早くて5歳から学ぶんだ。お前は17で開花。他の奴らがスキルで何をしようと考えている時、お前は手足の動かし方を学んでいるんだ。身体能力が高い分、覚えも早いがね」


 そんなもんなのか。
 その内慣れるだろうし、これからどうするか考えないとなぁ
 

 とりあえず魔獣狩るか。何かいい感じのやついないかなぁー


そうして家を出る。
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